僕等の行方
――僕等は走り出す。目指す場所、或いは目指すべき場所へ
――出会い〜邂逅、ZEROandSETH〜
酷く視界が虚ろだ。少年はぼんやりと灰色の空を見つめた。
少年は兵器だった。何処までも完璧な、兵器だった。
けれど。もう製造者は少年を必要としなくなった。自分よりも良い兵器が見つかったのだろう。故に、少年は孤独になった。...否。元から孤独では在った。そう、自らを兵器とたらしめる程度には。
(...寒い)ぼんやりとした思考の中、辛うじてそれを捕らえる。防寒具の類は与えられなかった。本当は必要なのに。少年は、灰色の空を、はらはらと舞い降りる雪だけを見つめていた。他に世界は無いとでも言うかの様に
(高密度情報制御を感知)...ああ、敵かぁ...攻撃、しなきゃ。虚ろな中でも思考はそれなりに出来た。
右手の指が腰の騎士剣へ向かった。けれども。(...もう、良いかな)暗闇に塗り潰された思考回路は、そんな答えを弾き出した。
(攻撃感知、危険)頬に衝撃があって、寒さで青白くなった頬に紅く血が走る。それでも反応はしない。
「...アンタ、死にたいの」――声が落ちた。静寂の中、男とも女ともつかぬ声音は雪の様に舞い降りた。ゆっくりと、少年は声の方向を向いた。寒さか、それとも元からか白い肌。冷たく見据えてくる瞳は夜色。長いのか短いのかすら解らない夜色の髪。中性的で、性別が解らないキレイな顔立ち。紺色のコートを羽織り、片手に黒い騎士剣。
(剣より...刀...かなぁ)騎士剣を見、思った。それは剣と言うよりも日本刀の様な造りをしていた。
(騎士...って言うより何か、侍みたいだなぁ)「...うん。死にたいかな」質問に、微かに口元を上げて応える。「...なんで死にたいの?」「...何でだろうねぇ...」「意味わかんない」その人は眉を顰め、言い放った。「うん、オレもだよ」「アンタさ、」((高密度情報制御を感知))T−ブレインが叫ぶと同時。
――ドッ!!!!!!――地面が、爆ぜた。雪が燃え上がる。視界が血とは違う赤に染り上がる。
「ちょ...ちょっと!?アンタ、軍とか何かに追われてんの!?」慌てた様子のその人。「あ〜...そうかもね」「それじゃ困るんだけど!ちょ、アンタ名前は!?」き、と睨みつけてその人は半ば自棄に叫んだ。
「ゼロ。君は?」「おれ!?おれはセス!一応、オトコだから間違えないでよ!?ゼロ!」そのコが――セスが。自分の名前を呼んだ。――初めて、嬉しいと、思った。「...間違えないよ...セス」微笑んで、騎士剣を抜いた。
――出会いは必然。彼等は儚くけれども美しい硝子の様な道を歩み始めた。
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