少女達は明日へと歩む
〜The Dragon Girl〜


















時は、西暦2198年11月6日。

シティ・ロンドンの一室で、『李芳美リ・ファンメイ)』ことファンメイはベッドにうつぶせになり、シーツに膝を突いたまま両足をぶらぶらさせて、ふんふんふ〜ん、と、お気に入りの鼻歌を歌っている。

検査を終え、エドともお話を終えたファンメイは、ただ、ひたすらに待っていた。エドが世界樹の外に出ていられる時間には制限があるためだ。







今のファンメイは、『龍使い』としてのその体の都合上、毎日のように検査を受けている。

その検査が終わった後は、エドの所に行っていろんな事を話している。

そして、歌う。

一生懸命練習して、いつかみんなをビックリさせてやるという、(彼女自身にとって)ただただ純粋で真っ直ぐな目的の為に。

…実は過去に、歌い始めてから五秒以内に頭を叩かれた経歴もあったりするのだが、それに対するリベンジも理由の一つだったりする訳なのだが。

だが、それよりももっともっと大事なのは、エドと一緒に歌う事がとっても楽しいことだからだ。

初めて会った時のエドは、それこそ、人間らしい感情を表に出さない、文字通りの人形のような子だった。

感情が無いわけではなく、感情の出し方を知らない。

基本的な返答が全て『はい』と『いいえ』でしか答える事が出来なかったくらいだ。

だけど、今は違う。

世界樹事件の後、エドは変わってきた。

歌う事が大好きで、歌を歌うたびに様々な言葉を発してくれるから『はい』『いいえ』だけの日々とさようならを告げられる日も、そう遠くは無いだろう。

まだ声変わりもしていない少年の声と、元気いっぱいの少女の声。

狭い操縦室で奏でられる、一組の男女による二重奏。曲目は、ジーン・Dの『パーフェクト・ワールド』だ。

その為にも、ファンメイは、毎日エドの所に通っていた。

体調が良くても悪くても疲れていても、これだけは絶対にやめなかった。








その内に時間が経過して、エドが制御中枢に戻らなくてはならなくなった為に歌の時間が終わりを告げた。

未練がましさを捨てきれなかったが、これは決まりとして、或いはある種の秩序として守らねばならない事だとリチャードが言ってい為に、エドに別れを告げて、ファンメイはこの部屋に、この病室に戻ってきた。

そしてファンメイは、この部屋にリチャードが来るのを、鼻歌を歌いながら待っていた。

―――否、どちらかというと待っているのはリチャード自身ではなく、ヘイズからファンメイ宛てに送られた『荷物』を待っているのだ。









ヘイズからファンメイ宛てに『荷物』が送られたと知ったのが、つい今朝の事。

中身については一切の説明も寄越さず、ファンメイどころかリチャード先生にも伝えていないらしい。

本当なら一刻でも早く、この目で『荷物』を見てみたいのだが、生憎とファンメイにはこの街の外へと出る事が許されていない。

何故なら、リ・ファンメイは『龍使い』なのだから。

『龍使い』とは、シティ・北京で開発された魔法士で、黒の水と呼ばれるデバイスを利用して身体構造制御を行う事により戦闘を行い、物理面と情報面の両方において鉄壁の防御力を持つ事が出来る。

能力の構成上、攻撃範囲に限界がある為に広範囲での戦闘には向かないが、対個人、特に対騎士戦では圧倒的な戦力を誇る。

だが、黒の水が本体を侵食する事により暴走する欠陥―――つまりが『使い続ける内に術者の肉体に蓄積していき、最終的には独自の構造を形成して術者の自我を乗っ取り暴走する』のを解決できなかった。

その為に『脳を除く肉体の全てを黒の水で構成された被検体のコピー』を生み出し、さらに被検体を隔離して暴走による死亡までのデータを採取する為に閉鎖実験施設―――通称『島』という特別施設が、ヒマラヤ山脈上空の『雲』の向こうに作られた。

『島』には四人の『龍使い』―――『李芳美リ・ファンメイ)』、『雷小龍レイ・シャオロン)』、『戒蒼元カイ・ソウゲン)』、『飛露蝶フェイ・ルーティ)』が生存していたのだが、数ヶ月前の『島』への砲撃と、『龍使い』達を襲った悲劇の運命により、現在で生き残っているのはファンメイただ一人だけとなってしまった。

大切な友達を、仲間を、大好きだった少年を一度に失い、ファンメイは一人ぼっちになった。

だけどその時、ファンメイは真の意味では一人ぼっちなどではなかった。

ヴァーミリオン・CD・ヘイズという一人の男が居た。

そして彼は、自らの過去を明かすと共に、こう言った。










『何が何でも生き続けろ。
 それで何になるのか分からないし、苦しいだけかもしれねぇ。
 この先どんなに頑張っても、いい事なんかひとつも無いかもしれねぇ。
 それでも生きろ。生きて、突っ走って、這い蹲って、そして笑え――――――』











それは、十年前に死んでしまったヘイズの育ての親の言葉。

もしそれがなければ、ファンメイはあそこで仲間の後に続いて命を絶っていただろう。










『島』の崩壊以来、ヘイズは常に自分の傍に居てくれた。

ファンメイにとっては、それが、とても、とってもありがたかった。







ファンメイの左手の薬指でかすかに光を放っているのは、かつて、ヘイズを通して、大好きだった少年から受け取った銀色の指輪。

あの時のお礼を言う機会は、永遠に失われた。

誰よりもファンメイの事を想ってくれた少年は、最後に『メイは生きてるじゃないか』とファンメイを励まし、そのまま『島』と共に帰らぬ人となった。






―――なにやってんだよ、このバカ女!

―――バカって言うなあ、このカニ男!




…毎日のように繰り返された口喧嘩の日々には、もう、二度と戻れない。






その後はヘイズと共にシティ・ロンドンのリチャードを頼り、黒の水の暴走の治療に勤しんだ。

だが、そこで自身の体の未来について知らされ、 自暴自棄になって飛び出したところをフィアという天使の少女に救われて、天樹錬、エドワード・ザインと出会い、世界樹の事を知り協力するも、世界樹が実は欠陥品だという事を知り、その後、暴走した世界樹を止める為に、みんなで一緒に頑張って戦った。

その結果、世界樹の幹の内部に取り込まれたウィリアム・シェイクスピアの演算機関とエドのI−ブレインが完全に世界樹の情報構造の一部となって制御中枢の機能を果たす事となってしまった。

因みに、ウィリアム・シェイクスピアは世界三大戦艦の一つで、巡航速度は時速8000キロ弱、最高速度は14000キロを叩き出せる200メートル級の特務交錯艦だ。

ただ、雲の中での機動力は、世界三大戦艦の一つ・FA-307に少し劣るらしい。

シティ「ロンドン」が開発した、人形使いの登場を剪定として設計された飛行艦艇の試作機で、武装は流体金属メルクリウスである。

エド自身の通常の脳が問題無く機能してくれているのが幸いして、エドは思考する事も出来れば会話をする事も出来る模様だが、有機コードによる接続を外した瞬間に、世界樹が代わりの中枢を復元して再び暴走してしまう可能性を十二分に秘めている。

結果、シェイクスピア内部の破損した操縦層の代わりに、長期運用に適した生命維持層が運び込まれ、エドは当分の間その中で過ごす事になった。

言うなれば、世界樹の暴走を防ぐ為の人柱というものだろう…という表現的に何か非人道的な物を感じるが、ニュアンス的にはそう言わざるを得ないのだから仕方があるまい。

最も、シティ・ロンドンとてそれにまかせっきりという訳ではなく、エドに変わるより安全な制御中枢を構築する為に、研究員達が作業に入っている。

それと同時に、世界樹の被害を受けた地域では『制御テストの一環』として、取り込まれてしまった町を植物組織から分離して建築材の状態に復元し、ついでと言ってはなんだが『被害自体の調査』の為にその町を元通りに復旧する、という作業が始まった。






そして、今に至る。

だが、エドの代わりとなる制御中枢の開発は今の所遅々として進まず、当初の予定から大幅に遅れている。

その反面、『制御テストの一環』云々の方は中々好調な進行状況を見せているので、シティ・ロンドンの科学者達に力が無いわけではない事は此れで証明されている。






…少しは、ファンメイ自身の事についても触れておこう。

あの時の事を思い出すと、今でも涙が出そうになる。故に、出来る事なら思い出したくなど無かったのだが、一度起こってしまった事実は総てに置いて事実と認識されるのだから、認めないわけにも、触れないわけにもいかない。

世界樹との戦いを終えた時に、ファンメイの身体は人としての形状を保っていなかった。

戦闘服の裾から生え出した無数の触手は、いくら命令を送っても人間の姿を取り戻さなかった。

フィアが持つ『同調能力』があって、やっと人間の姿を保つことが出来た。

だけど、そんな中でも、たった一つだけ、ファンメイには理解できた事がある。

それは、いくら体が壊れていようとも、ファンメイの意思はいつでも彼女自身と共にあり、最後の最後まで自分を保つ事が出来る。

だから、頑張る。

みんなと一緒に戦う事は出来ないけれど、それでも、ファンメイは自分の戦うべき相手と戦い続けると決めたのだから。








ヘイズは今、アメリカの方へと向かっているらしい。何でも、調べないといけない事があったそうだ。

自分を置いていったヘイズに対して最初はぶーたれていたファンメイだが、リチャードからヘイズの本心を聞かせて貰うと、その気持ちはどこかへと飛んでいってしまった。

こんな体じゃ、まともに戦えない。

仮にヘイズについていったとしても、突然、病気が再発して足手纏いになってしまう可能性だって否定出来ないから。

心配じゃないと言えば大嘘になるけれど、同時に、ヘイズなら大丈夫だという思いがファンメイにはある。

何故なら、ヘイズの愛機である150メートル級高速機動艦『Huter Pigeon』は、気象制御衛星が掃き出した太陽光を遮断する雲を抜け、空を駆けめぐることが出来る艦船。特殊な機能と非常に優れた魔法士を必要とするため、世界で三機しかないというシロモノだが、そんな凄いものにヘイズは乗っているのだ。

主動力はWZ-0型演算機関。巡航速度は時速時速17000キロで、最高速度は約50000キロ。雲の中での機動力は三隻の中で一番下なのがちょっと情けない…と、こんな事を言ったら『人格を持った中枢コンピュータ』であるハリーが拗ねてしまうだろう。きっと。

戦前にあるシティが開発した演算期間式の飛行艦艇の試作機で、武装は荷電粒子砲一門と、船体の両側面に埋め込まれたスピーカー。

戦う前に勧告を出すのがヘイズのやり方だという事を、ファンメイはこれまでの付き合いで理解している。だから、スピーカーは『Huter Pigeon』にとっては、欠かせない武装の一つだと言える――と、ファンメイは勝手ながらそう思っているのだ。






「錬とフィアちゃん、どこに居るのかなぁ」

そんな呟きの中で思い出されるのは、世界樹騒動の中で出会い、勘違いし、共に戦った二人の仲間。

この二人の関係を一言で表すと、俗に言う見事なまでのバカップルという奴になるだろう。きっと。

一人は、ファンメイとあまり身長が変わらない癖に、口だけは達者で性格もシャオロンとは似ていない。けれど、確かな実力と心の強さを持っている黒髪の少年。

もう一人は、ちょっとした事ですぐに頬を赤らめるけれど、それでも、その大きなエメラルドグリーンの瞳の奥に、とても強い意思を込めた金髪の少女。

だが『世界樹』の件で騒動が終わってから、あの騒動で知り合ったこの二人に出会える機会はまるっきり失われている。

唯一、『世界樹』の中枢となって生きているエドだけが、ファンメイが知りうる『近くに居る子供の友達』である。














…だが、この日、その関係に変化が訪れることになろうとは、誰が予測できたであろうか。















一体、どれほど待っただろうか。

『脳内時計』のカウントを確認しなおすと、どうやら、エドとの歌の練習を終えてこの部屋に帰ってきてからおおよそ三十分が経過していた。

だが、普通に時を過ごしている時と只管待っている時とでは、時間経過の流れの感覚が遥かに違うように感じられる。ファンメイにとってのこの三十分は、一時間にも二時間にも感じられた。諺で言う一日千秋の思いとはこういう事をいうのかもしれない。

コンコン、と扉がノックされて、がちゃり、という音と共に開かれると、その奥から一人の、それも、ファンメイが良く知っている人物が姿を現す。

「――――ファンメイ、お前にお届けものだ」

度の入った眼鏡に無精髭の見た目三十台くらいの男、リチャード・ペンウッドだ。

「あ、やっと来た〜」

待ち惚けた相手の姿を肉眼で確認し、ぶー、と唇を尖らせて起き上がるファンメイ。その様子ははたから見れば元気っ子そのまま…というよりも、これが本当のファンメイである。

常に天真爛漫で物事を前向きに考える。いくら音痴と言われようが料理をするなと言われようが、決して諦めないで我が道を突き進むのが少女の持ち味なのだから。

…最も、料理に関しては、ファンメイの料理を食べた事のある者は口を揃えて『お前はもう二度と料理をするな』と言うので、己の料理の致命的才能の無さを認めざるを得ないのだが。

「そう言うな。予想以上に大荷物だったものでな。
 ヘイズの奴も気が利かない。せめて、事前に荷物がどのくらいのものなのかを伝えてくれていれば、こちらとしても少しは楽になるというものなのに」

「何それ?
 いざ荷物が届いてみれば、まさか四十キロくらいあったりする大荷物だったりとか?」

ファンメイのその言葉に、一瞬だがリチャードの顔に驚きが浮かぶ。

「…まだ実物を見てもいないのによく分かったな。
 重さはおおよそ四十キロで、箱の大きさは縦70センチ、横160センチ、高さ40センチだ。一体中に何が入っているんだか…と、どうしたファンメイ?
 鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をして」

「…だって、適当に言ったら当たりだったんだもん」

嬉しい様な困った様な顔で、指先で頬をかきながら苦笑いするファンメイ。

事実、ファンメイにとっても予想外の事態だった。リチャードに『そんなわけがなかろう』と軽く流されるのがオチだと思っていたのであって、何も正解を出したかったわけではなかったのである。

「んー、まあアレだ。お前さんのカンもたまには当たるって事で良しとしておいたらどうだ?」

「何かそれだと、普段のわたしのカンが外れてるみたいな言い方なんだけど」

「ん?事実じゃないのか?」

「ふーんだ!!どーせわたしのカンは当たりませんよーっだ!」

歯に衣を着せぬリチャードの発言にぷいっ、とそっぽを向くファンメイ。だが、それは本心からの怒りなどではなく、ただ単にへそを曲げた女の子のものだった。

ここ数ヶ月の入院生活で、リチャード先生の性格は分かっている。

この先生は、他人を傷つけるような事を本気で言うような人間ではない。常にジョークをはべらせて、『その場』に対する『余裕』を持たせる事を常に忘れないのだ。

「お待たせいたしました」

ファンメイがそっぽを向いたのと同時に、扉の向こうから声が聞こえた。その声は、ファンメイにとって初めて聞く声だ。

「…お、来たか。ようし、こっちだこっち」

「失礼いたします」

その向こうから、作業服を来た男性の作業員が二人ほど、リチャードが言ったとおりの大きさをした荷物を運んで、こちらへと歩みを進めてくる。

どうやら、荷物を運んできてくれた人のようだ。

その二人を誘導する為に扉の方向を向いて、リチャードは手を振る。

一応エレベーターを使って来たとは言え、ファンメイの部屋とエレベーターは結構離れている。にも関わらず、二人の作業員の顔はそれほど赤くない。

単純計算で凡そ二十キロの重さの荷物を運ばされたとはいえ、元々そういった仕事を得意とする連中だったからだろう。

二人の作業員に対してリチャードが財布から然るべき額のお金を払った後に、作業員は『それじゃ、失礼しました』という営業用の笑顔と言葉を残して去っていく。

後に残されたのは、ファンメイとリチャードと馬鹿でかい箱。材質はおそらく強化プラスチック製で、白を基調としている為に中身が見えないようになっている。

「…ヘイズ、一体何を送ってきたんだろ。
 パンダさんかな?パンダさんだよね?パンダさんのぬいぐるみかなぁ?それも水玉模様のー」

告げられる言葉が全部パンダなのは、ファンメイが無類のパンダ好きだからである。やはり中国生まれだからだろう。

しかし、白黒じゃなくて白と水玉模様のパンダなんて、普通の人は見たくないと思うのだが。

開ける前から不安半分、期待半分といった感じの表情で箱を見つめるファンメイ。これで期待はずれなものが出てきたら、それこそ大魔神様のお怒りというものをこの目で見る事が出来るだろう。

「さぁてな…しかもご丁寧に送料はこっち払いときてやがる」

ゼロがいくつか並んだ領収書を見て、リチャードは指先でこめかみを押さえた。

流石ヘイズだ。こういう時ばかりは異常なまでにしっかりしている。

「はいはーい!今度会った時に、五倍にして請求してやればいいと思うの――!!」

それを聞いたファンメイが弾かれた様に顔を上げて、悪気など一欠けらも無い笑顔で告げる。ファンメイはそういう『ノリ』に対し、得てしてノリやすい性格なのだ。

「甘いなファンメイ。私なら十倍と言うぞ」

「うわー、流石リチャード先生。言う事が違うねー」

「当たり前だ。何年間あいつの保護者をしてきたと思っている。思えば、本当に苦労のかかるガキだったよ…」

さっきの怒りは何処へやら、その言葉で昔の事を思い出したらしいリチャードは、黙りこくって両目を瞑ってしみじみ、という余韻に浸っている。

(こんな時にフィアちゃんが居ればリチャード先生の脳の中が覗けて面白いのにな―、つまんないの)

と、ファンメイはどうでもいい事を考える。どうやら、本人が気づかぬうちに少なからずヘイズの影響も受けているらしい。どうでもいい事を考えるのは、ヘイズの得意技だったからだ。

だがそれよりも、ファンメイは目の前の大きな荷物の中身が気になって仕方が無かった。すぐに閉じられた箱に視線を戻して、再びじっ、と見つめる。

改めてみてみると、箱の形は、縦方向と高さが横に比べるととても短い。加えて、箱本体と蓋が別々になっているタイプだ。

だが、気がかりな点が一つある。

それは、箱の横面全てに対し、一つずつ付けられた鍵―――というより寧ろ錠前だ。

まるでそれは、中身が自分から出てこないようにする為の『檻』のようにも感じられる。

(…う〜ん、なんていうか『正方形の形をした棺桶』って感じかなぁ)

顎に手を当てて、心の中でファンメイは呟いた。

…その一秒後に、我ながら嫌な発想だとファンメイが気づいたのは言うまでもない。

世界中の絶望と一欠けらの希望が詰め込まれた封印された箱のお話よりはマシかもしれないが、棺桶という単語をいい気持ちになる人間など居ない。敢えて喜ぶ人種を挙げるとすれば、桶屋くらいのものだ。

「それはいいけどさ、早く開けようよ―」

つい今しがた考えてしまった嫌な考えを打ち消すべく、また、ファンメイ宛てに来た荷物だと口語された以上、ファンメイの好奇心は目の前の白い箱にのみ注がれている。今の言葉とて、リチャードの方を見ないで、箱だけを見て発せられたものだ。

「…そうだな。ヘイズに言うべき文句はその後で考えるか…。
 と、そうだ、この錠前を開けるための鍵はさっき受け取っておいたはずなんだが…と、あったあった」

白衣のポケットをまさぐり、リチャードは鍵を探し当てる。

因みに、もし鍵が見つからなければとんでもない事になっていただろう。あらゆる意味で。













かちゃり、かちゃり、かちゃり、かちゃり…。

リチャードの持つ鍵によって、四つの錠前の鍵が解かれる。

それを確認した後に、ファンメイは箱の蓋に手をかける。強化プラスチックの蓋は思っていたより非常に軽く、これならファンメイでも開ける事が出来るだろう。

そしていざ、封じられたパンドラボックス…というのは大げさすぎる言い方だろう―――の蓋を開けた途端、













一瞬だけ、時が止まった。












その『一瞬』が終わり、そして時は動き出す。

「…おい、ヘイズの奴、これは何の冗談だ」

「ねぇ…これってもしかしなくても本物だよね」

リチャードは唖然として、ファンメイは妙に落ち着いた口調でそれぞれの思うがままの言葉を告げた。
















――――そして訂正しよう。パンドラボックス程度の言葉ではちっとも大げさではなかったと。


















「…だってこれ…どう見ても人間の女の子じゃない…」
















真っ先に、ファンメイは思ったままを口にした。

腰まで届く長い白い髪の毛に少しばかりのウェーブをかけた美少女が、瞳を閉じて、胸の上に手を置いた状態で眠りについていた。

白い肌に小さなその顔はまるで精巧なアンティークのようだが、胸の辺りが静かに上下運動を繰り返しているところを見る限り、この子は絶対にアンティークなどではない。

しかし、それよりも最も重大な事実は、

「…寝る前に胸の上に手を置いて寝ると、悪夢を見るんじゃなかったっけ?」

「ファンメイ、着眼点はそこじゃないだろう…」

ファンメイの言葉に対して、0.5秒後にリチャードが突っ込みを入れる。

「分かってるよ―。どうしてお人形でも何でもない、本当の人間の女の子がわたしの所に送られてきたのかって事でしょ」

「まあ、私としてはそこを突っ込んでもらいたかったわけで…ん、これは…」

少女の手に、四つ折りにされた一枚の白い紙切れが握られているのを発見したリチャードは、それを手にとって開いて見る。

そこには、この十年間で見慣れた汚い字で、しかし、この少女に対する謎の大部分を氷解させる為の事実が書かれていた。






『――――おっす。
 先生、ファンメイ。元気にしているか?
 何の前置きも無しに突然こんな大荷物を送っちまって、正直、済まないと思っている。

 この子は、アメリカ大陸で、地理的にはメキシコ…で良かったんだな。
 んで、山沿いにある小さな空洞で倒れていたのを、オレが偶然に発見したんだ。ハリーが生命反応を感知してくれたお陰でな。

 後、初めて会った時、この子は、それこそ、手の付けようが無いほどに怯えていた。
 水も食事も受け付けないで、ただただ部屋の隅っこでじっとして震えているだけだったんだ。まるで、この世の全てが敵に回っているような、そんな感じ…って言えばいいのか?
 だけど、オレとしても手を打たないわけにはいかないから、色々とコミュニケーションを試したら、やっと口を開いて食事をしてくれるようになった。
 ただ、なんでそんな所に居たのか、一体何者なのか――を聞くような、野暮な事は出来なかったけどな。
 でも、この子は絶対に先生達には危害を加えない。それだけは、きっと約束できる。

 それと、オレは今、ちいとばかりヤバイ事になっちまって、この子まで守れる自信がねぇ。
 こんな時にシティ・ロンドンまで戻ったら、先生達にまで巻き添えが及んじまう。
 だから、ちょっとした知り合いに頼んで、その子を荷物に偽装して先生達のところに送る事にしたんだ。
 それに、この子の身の上を知ったら、先生だって、ファンメイだってこの子を放っておけない筈だからよ。



 何故ならその子は『魔法士』で――――』














その次の文章を読んだとき、リチャードの顔に緊張が走ったのを、「綺麗な子…」と言って女の子を見つめていたファンメイが気づくわけがなかった。















…この時のリチャードにとって、ファンメイに気づかれていないという事は逆に幸いだった。

ファンメイは鼻歌を歌いながら女の子の方に視線を向けているから、表情を悟られずに済んだ事は幸運だったとリチャードは思う。もしこれがファンメイにばれたら、とんでもない事になるからだ。

万が一に備えてファンメイに表情を悟られないように手紙で顔を隠した状態で、手紙の続きを読む。
 
『…運送の際に荷物置き場に置かれていた筈のこの子が、無事に生きている理由はこれで納得できただろ?
 I−ブレインによって寝ている間にも体温調節が出来るわけだから、凍死する事はありえない。
 まあ、一応郵送の時には、中身のカテゴリ指定は生物、かつ絶対に衝撃を与えない事、と書いておいたわけだけどな』

そこまで読んでから、リチャードは箱の上蓋に改めて目を向ける。

そこには確かに【カテゴリ指定:生物、かつ絶対に衝撃を与えない事】と書かれている。しかも、重要な記述である事を示す為に赤文字で。

しかし、肝心の文字自体が小さい為に、注意しなければ中々見えないものでもあった。

ヘイズからの贈り物だという大前提の元に安心しきるのも良くないな。と思いながら、文字の存在を確認した後に、リチャードは再び手紙に目を通す。





『どうしてこの子があんな所に居たのか…そこまでは聞き出せなかったし、この子が話したくないんなら無理に聞きだすつもりもねぇ。
 だけど、ファンメイならこの子と打ち解ける事が出来るのかもしれない。それに、オレの船よりはそっちの方が安全な筈だ。先生の権限があるからな。
 …急な事になっちまって、本当に悪いと思っているけど。




 ああ、最後になっちまったけど、この子の名前だけは聞き出せた。
 アルティミス・プレフィーリング
 それが、この子の名前だ―――。




 んじゃ先生、ファンメイ。後は頼んだぜ。




 ―――ヘイズ』







手紙は、ここで終わっていた。

「あの馬鹿…いくらなんでも突然すぎるだろうが…」

リチャードが手紙を読み終えた直後の第一声がそれだった。

続いて、魂が抜けそうなくらいに『はぁ』という盛大なため息をついた後に、リチャードは近くにあったベッドに腰を下ろす。

手紙を読んだだけで疲れてしまった。無論、色々な意味で。

…というか、いきなり荷物が送られてきて、しかもその中身が生きている女の子だったんだから、驚いたり疲れたりしない方が珍しいだろう。

で、そんな疲れきった様子のリチャードとは正反対に、ファンメイの行動はというと、椅子に座ったまま少女―――アルティミスの顔を覗き込みながら、

「うわー、綺麗なお顔だ―。羨ましいなぁ。
 肌の色もわたしと違って綺麗な白だし、どうやったらこんな綺麗な顔が保てるのか聞いてみたいなぁ。
 早く起きないかなぁ。ていうか寧ろすぐに起きてよ〜。いっぱいお喋りしたいのに―」

と、思うが侭の言葉の羅列を並べていた。どうやらファンメイには、警戒心という言葉は存在していないらしい。

「あー、その件なんだが、ちょっと耳を貸せ」

とりあえずこれだけは言っておかなくてはならないなと思い、ファンメイの言葉が途切れた瞬間を狙ってリチャードは口を開いた。

「ん?何?手短にお願いね〜」

暢気な顔でリチャードのほうへと耳を傾けるファンメイ。そこにリチャードは口を近づけて、小声で呟いた。

「…じゃあ、本当に手短に言っておこう。
 とりあえずファンメイ、お前が『龍使い』だって事実は絶対にばらすな」

「ええっ!?なんで?」

リチャードから告げられた突然の警告に、ファンメイは一瞬だが驚く。

強く反論しないのは、こういう時にリチャードの言う事は自分を心配してのものだという事を理解しているからだ。

だが、せめて理由くらいは聞かせてくれないと気が済まないという旨を告げようとしたその瞬間に、箱の中の少女の腕がゆっくりと動いた。

「―――っと、どうやらお嬢様がお目覚めのようだ。
 いいか、言われた通りに『龍使い』の事は黙っているんだぞ。理由は後で話すから」

「う、うん、分かった」

リチャードの表情に真摯なものを感じたファンメイは、それ以上追求する事をやめた。

そして、二人は箱の仲の少女へと顔を向ける。

数秒後に、箱の中の少女が「う、うん…」と小さく呻き声をあげて、少し身をよじった後に、うっすらと目を開ける。

その瞳は燃える様な真紅の色を放っていたけど、大きくてくりくりしている可愛らしい瞳でもあった。

「…ふぁ…うぅ……う…?
 ここ、は…?」

小さな口が微かに動いて、小さな欠伸と小さな声が発せられる。それが、ファンメイとリチャードにとっての少女の第一声。

大人しいトーンを基調とした、可愛らしい声だった。














「…え…と、あなたたち…だれ?
 アルティミス、なんでここに居るの?」

ゆっくりと五秒ほどかけて上半身を起こした少女は、開口一番にそう告げた。

おそらく、長い事寝ていたせいで意識が覚醒するのに時間がかかり、結果、起き上がるのにそれほどの時間を要する事になったのだろう。

「んー…その前に、あなた、アルティミスちゃん…でいいんだよね?」

「…え!?
 ど、どうして…アルティミスのなまえ、知ってるの?
 アルティミス、まだ、なんにも言ってないのに…」

ファンメイの言葉に対して、少女はびくびく、と身をすくませる。

見て分かるとおりに、アルティミスの声音は小さく震えている。

否、震えているのは声音だけではない。少女の全身が小刻みに震えており、真紅の瞳にも怯えの色が混じっている。

それが意味する物はただ一つ―――恐怖。

見知らぬ場所、見知らぬ空気、そして―――見知らぬ人。

少女にとって、今、この空間は全ての物が、或いは全ての者が恐怖の対象となっている事だろう。

見知らぬ誰かが自分の名前を知っているという事は、時と場合によっては恐怖の対象となる。今、ここで起きている事がまさにそれだ。

だが、此処に置いてはそんな恐怖など不要なものであり、それを取り除いてあげなくてはならない。

それを知ってか知らずか、ファンメイは苦笑を交えて思ったままを口にする。

「…だって、最初に自分でアルティミスだって言ったじゃない」

「…あ」

ぽかん、と口を開けて呆けるアルティミス。どうやら、言われて初めてそれに気づいたらしい。

その仕草が一人の少年と重なり『まるでエドみたいな子』と、ファンメイは心の中でそう呟いた。

「ふむ、これで彼女の名前の紹介は終わり…といったところだな。
 ならば、私達からも名乗ろうではないか。
 先ず、私はリチャード・ペンウッド。ヘイズの育ての親だ」

「ヘイズ?
 …ヘイズって、あのあっちこっちが真っ赤な人?」

「…あははっ!そう、そういう事!」

「ん…まあ正解だが…しかし、あいつもまた凄い呼ばれ方をしたもんだ」

アルティミスの口から放たれた『あのあっちこっちが真っ赤な人』という発言に失笑を漏らすファンメイとリチャード。

実際、なんでもかんでも真っ赤にするヘイズの赤色好きは度を越していると日頃から思っていたからだ。

「で、こっちに居るこの子が…」

「はーい!わたし、李芳美!!水玉とパンダさんが大好きな十四歳!!」

リチャードの発言に反応し、のっけから、部屋中に響くほどの大きな声で元気よく自己紹介をするファンメイ。

因みに、この声は事前にリチャードがドアを閉めていた為に外には漏れていない。というか、漏れていたら別室の患者からクレームが来る可能性が十二分にあっただろう。

「…って、あれ?どうしたのアルティミスちゃん?」

第一声を終えて我に返ったファンメイが見たものは、両手で頭を抱えたまま、箱の中で丸くなってふるふると震えているアルティミスの姿だった。

自己紹介しただけで怖がられるその理由が分からず、ファンメイは頭の上に疑問符を浮かべてきょとんとしてしまう。

「…お前がいきなり大声を出すからびっくりしたんだろ。最初の第一声でびくんと驚いたかと思ったら、無言で箱の中にうずくまってしまったぞ」

二秒くらいほど間が空いて、リチャードからその理由が告げられた。

「あ、ご、ごめんね…」

それを言われて、初めて気がつく。

恐怖に苛まれている人の前でいきなり大声なんか出したらどうなるかなんて、答えは決まっているだろう。

知らなかったとはいえ、流石に心の中に罪悪感が湧き上がる。

ファンメイが素直に謝罪の気持ちを述べると、アルティミスが起き上がって顔を上げた。

「…いいの。
 とつぜんだったから、びっくりしただけだから」

アルティミスはそう告げてくれたが、その瞳の端に一滴の雫が浮かんでいたところを見ると、やっぱり怖かったのだ。

「あ、じゃ、じゃあ、涙拭いてあげるね」

その責任が自分にあると感じたファンメイは、ポケットから取り出した清潔なハンカチでごしごし、とアルティミスの涙を拭う。

「はぅ」

ハンカチで涙が拭われる事により頭に訪れた振動感に、アルティミスは間の抜けた声をあげた。

「ふぅ…よーし、これで大丈夫」

右手にハンカチを持って、まるで一仕事終わって汗を拭う農夫のようなポーズで、ファンメイは安堵の息を吐く。

「…お、終わったか。
 それじゃとりあえず、これから服を用意して来るんで、しばらく待っていてくれ。
 いつまでもそのボロ服じゃ、色々と拙いだろう」

アルティミスの服装を見ながらリチャードが告げた。

今のアルティミスが着ている服は、ちょいとばかり地味な印象の黒いカーディガンを羽織っており、足元までの長さの灰色のスカートという組み合わせなのだが、如何せん彼方此方がぼろぼろになっており、一部分にいたってはまるで釘にでも引っ掛けたかのように大きく破れている。

ファンメイを連れて行く予定などはなから無かったヘイズが適当な服を持ち合わせていなかった為に、ヘイズに発見されたままの服装で居ざるを得なかったのだろう。

一応、女性にとって見られると困る部分が無事なのは、ある意味不幸中の幸いと言ってもいいのかもしれない。

だが、色合いから考えても、デザインから考えても、黒と灰色という組み合わせは、少なくともアルティミスのような年頃の女の子が着る様な服ではない。

「…」

数秒の間を置いて、こくん、と、アルティミスは無言で頷いた。

「じゃあ、わたしのお洋服の中から選んであげる。
 そーいう訳で!リチャード先生は外に出た出た!!
 ついでに、不法侵入者がいないかどうか見張り続けること!!」

言うが否や、ファンメイはリチャードの背中をぐいぐいと押す。

「分かっているから、そう急くな」

そう言い残して、ドアノブを捻ってリチャードは外へと退散した。








【 + + + + + + + + 】








「…おかしい」

部屋の外で待ちぼうけを喰らいながら、リチャードは顎に手を当てて考えていた。

どうしても気にかかる事が、一つ残っていたからだ。

ヘイズの手紙の通りにアルティミスが――――なら、彼女の能力を発揮する為に必要不可欠な『モノ』は一体どこに在るのか?

途絶えない思考、解決しない疑問。

或いは、ヘイズでも『それ』を見つけられなかったのだろうか?

そう思いながら、思考を重ねていたところ、

「あ!居ました!!」

「ん?君は…」

声に反応して振り向くと、先ほどあの大きな箱を運んできてくれた作業員が、息を切らせて目の前に居た。

その手には、縦横がそれぞれ四十センチくらいの正方形の箱が抱えられている。

「リチャード様…ですね。
 実は、先ほどあの箱と一緒に運んでこようと思ったのですが、何らかの手違いが在ったようで、こちらの品物を運んでいないのを思い出したのです。
 そして、つい先ほど調べなおしたら、荷物室の片隅にこの箱があったので…本当に申し訳ありません。
 あの料金も、この品物を含んだものでした」

「…なんだ、そうだったのか」

安堵のため息と共に、箱を受け取ろうとするリチャードだったが、

「あ、この荷物はかなり重たいので、私が部屋までお運びいたします。
 案内してください」

「…む、そんなに重たいものなのか…それなら…」









リチャードの部屋に着くと、作業員はさぞ重そうに箱を下ろす。

置いた時の『ずしん』という音により、その重さが本物だという事が理解できた。

「それでは、今度こそ失礼いたします」

そして、先ほどと同じく営業用のスマイルを浮かべて、作業員は去っていった。

リチャードは作業員の気配が完全に消えるのを待ってから、入り口のドアの鍵をしっかりと閉めた後に、逸る気持ちを抑えてその箱を開けてみた。












「――やはり、こういう事か」











渋い顔で、リチャードは呟いた。

―――その箱の中には、リチャードの予測した物が入っていたからだ。













【 + + + + + + + + 】













一方その頃、リチャードが追加された荷物の確認を終えた時とほぼ同時に、アルティミスの着替えが終わった。

紫色を基調としたケープの下に白系の防寒着。スカートは二箇所にリボンのついた大き目のものというコーディネイトを施されたアルティミスの外見は、先ほどとは打って変わって愛らしいものになっていた。

「よーしっ!お着替え終わり―――っ!
 …ふぇー、これ、わたしが着たい…」

で、自分がコーディネイトしたアルティミスの服を見たファンメイは、ぽ―っとして彼女を見つめる。ファンメイ自身も分かっている事だが、やっぱり可愛い物には目が無いようだ。

言っておくが、そこに百合等の要素は一切合財入らない。ただ純粋に可愛いものに見とれただけであるので誤解の無いようにお願いしたい。

「…え?
 よ、良かったらアルティミスじゃなくて、ファンメイ…さんが着た方が…」

思わぬファンメイの評価に、ファンメイに悪いと思ったのか、アルティミスは小さな声でそう告げる。

「うーん…でも、やっぱりアルティミスちゃんが着ていてよ。
 だって、すっごく似合ってるもん」

その時に浮かんだファンメイの笑顔は、間違いなく本物だった。

同時に、ファンメイは心の中で思っていた。










―――自分を見る時のルーティの気持ちは、きっと、こんな感じだったんだろうな。と。















【 続 く 】











―――コメント―――







どうもこんちには。作者の画龍です。

『DTR』『FJ』の二作品(と言ってもこの二作は連動しているのですが)とはかなり違う毛色を持たせたこの作品は、

もうお分かりのようにファンメイがメインの物語です。

というか、多分、私としては初めてのWBキャラメインのお話です^^;





実は、この物語を書こうと思った発端は非常に単純です。

WBの男性キャラでは、イルがダントツで好きです。

では女性キャラでは?と聞かれたら、胸を張って答えましょう―――ファンメイ。と。

そして、彼女をメインとした物語を書いていないという事に気がついた――という訳で。




大切な仲間を一度に失った上に、自身を襲う不治の病と必死で戦い続け、加えて、その辛さを決して表には見せない『強さ』。

自分の体の状態を分かっていても、仲間を助ける事を優先する―――それは、かつての仲間達みたいな犠牲者を出したくなかったから。

…それが、私が彼女を好きな理由です。




さてさて、アルティミスという突然の来訪者に対しファンメイはどうやって接していくのか。

そして、アルティミスは何者なのか。アルティミスと関わる事で、ファンメイに何が起こるのか。その先に何を見るのか。

それをうまく表現できるように、頑張っていきたいと思います。

―――最も、今回は序章な為に殆どの伏線を伏せている故、まだまだ物語は動いていないのですが…。


後は、最後にアルティミスの設定イラストを載せておきます。






















※個人的にスカート部分がちょいと失敗したかも。と思ってます。
また、詳しいプロフィールについては後日に書きます。









HP↓

Moonlight Butterfly