DESTINY TIME RIMIX
〜それはとても眩しい想い、月の光が照らす夢〜
灰色の世界に生きる僕らは、
たどり着くべき場所を見失ってはいない。
それはとても眩しい想い。
そして来るのは、希望を砕く絶望。
だけど、夢を見る事を忘れず、
叶えて行こうと信じて進むなら、それが未来を作る。
小さな、勇気の為に。
皆の、笑顔の為に。
―――【 彼 女 が 望 む 、
さ さ や か な 幸 せ 】―――
〜RESHUREI&SERISIA&BUREED&MIRIL&RON&HINA〜
闘いの舞台は、かつてイラクという国があった研究所跡。
輝く剣閃を主軸とした、望まない戦いがそこにある。
展開されているのは、物理法則などほぼ無意味に等しい世界。
ぴかぴかと光る無機質なライトの光がその役目を全うして、戦う者達を照らしていた。
『双剣を持つ天使』
『真なる龍使い』
『騎士』
『氷使い』
『風使い』
そして『魔術師』
それぞれが全てにおいて違う能力を持ち、それぞれが持つ能力を発揮しつつ戦闘を繰り広げている。
『双剣を持つ天使』は望まぬ戦いを強いられ、
『真なる龍使い』と『氷使い』は手加減を余儀なくされ、
『騎士』と『風使い』は『双剣を持つ天使』が持つ『同調能力』に対抗できる能力を持たないが為にろくに手出しも出来ないでいて歯がゆい思いをしており、
『魔術師』は、目の前の『双剣を持つ天使』との会話を終えて、道を見つけた。
『真なる龍使い』
レシュレイ・ゲートウェイ。
『騎士』セリシア・ピアツーピア。
『氷使い』ブリード・レイジ。
『風使い』ミリル・リメイルド。
『魔術師』天樹論。
今この場にそろっているこの五人の考えは、不思議でもなんでもなく一致団結している。
その答えは、『双剣を持つ天使』ヒナ・シュテルンを救うこと。
『双剣を持つ天使』ヒナ・シュテルンの中で、彼女を無理矢理戦いに狩り出す存在かつ能力である『自動戦闘状態』を破壊するために。
この子に、ほんの一握りでいいから、
人としての幸せを、もたらすために。
煌く剣。
轟く烈風。
絶命を誘う鎌。
舞い散るは悲しみの翼。
音速を超えて光速へ、
光速を超えて神速へ、
神速を超えて魔速へと進化した戦い。
(I−ブレイン疲労率、六十五パーセント)
レシュレイのI−ブレインが、抑揚の無い声でそう告げる。その瞬間に三ナノセカントの速度で襲い掛かってきた騎士剣『月』による攻撃を弾き返し、レシュレイはヒナの次なる攻撃に備えて体制を整える。そうした矢先に、再度、騎士剣『月』が襲い掛かるが、すかさず切り払って反撃してさらに切り払われてさらにさらに切り払う。
その行動にかかる時間は現実時間にして一秒にもならない、魔速の剣戟。
いつ終るとも知れる切り払い合戦。
いかに『真なる龍使い』といえども、I−ブレインが疲労しないわけではない。ヒナを殺しては全てがアウトなためにさっきから微妙な力加減をしているためにI−ブレインに余計な負荷がかかってしまい、いつもよりI−ブレインの疲労が激しい。最も、それはレシュレイだけではなく、ヒナの『同調能力』の範囲内で戦闘するブリード・レイジと天樹論とて同じはず。少しでも気を抜けばヒナに支配されるし、かといって強すぎる攻撃を叩き込んでもまずいから、I−ブレインを最大起動するわけにもいかない。全くもって神経を使う戦いだ。
これで、ヒナがさらに何かとんでもないことをやらかしてくれた日には、血管の一本や二本は軽く切れてしまいそうだ。
無論、『真なる龍使い』にも弱点は存在する。能力のベースが『龍使い』である以上、その弱点もおのずとして踏襲せざるを得ない。
すなわち、『実現可能な攻撃範囲に限界がある』という点だ。もう一つの『運動能力』については、ラジエルトが『運動能力制御』のプログラムをつけてくれたお陰で解消しているものの、レシュレイの肉体を構成する細胞の数は有限で、質量保存の法則を乗り越える事は出来ていないために、レシュレイの細胞の数を勝手に増やすのは不可能であるということ。逆もまた然り。例えば、腕を伸ばすならその代わりとなる細胞を身体の他の部分のどこかから持ってこなければならないということだ。
しかしそれは、同時に『龍使い』としての長所もまた踏襲しているということになる。
『龍使い』同様、『絶対情報防御』を持ち、レシュレイの体を構成する『遺伝子改変型I−ブレイン』は細胞の配置によって微細な論理回路を形成し、あらゆる情報構造体攻撃を完全に遮断する。『双剣を持つ天使』の能力がいかにとんでもない能力だろうと、それが、『相手の情報を支配する』能力である限り、龍使いには通用しない。よって、ヒナが常時展開している『同調能力』の効果は、レシュレイには全く効果が無い。
だが、問題はそこではない。
この戦いにおける最大の問題は『手違いによる致命傷』である。
手元が狂った、ヒナが中途半端な抵抗をしたために下手にヒナに致命傷を負わせてしまったりしては元も子もない。そもそも、あっちは
『自動戦闘状態』などという厄介極まりないものに支配されているため、こっちが手加減していてもあっちは全力を尽くして攻撃してくる。それも、ヒナが望まなくても、だ。
しかし、しかしだ。幸いなのか、ヒナの戦闘能力はこちらよりも僅かながら低いようで、一応、ヒナが放つ攻撃にはついていけるし、回避だって可能だ。正直、本気を出せば負ける要素は殆ど無いが、だからと言って本気を出したらどうなるかは先の説明どおり。
要するに、この戦いは持久力に全てがかかっているという、今までに体験したことの無い戦いだった。
「…だが、この程度の戦いなど!!!」
そうだ。
この程度の戦いで根をあげてなどいられない。
この程度の規模の戦いなど、今までに何度もあったこと。それが今回は「相手を殺さない」という絶対条件がついているだけであって、少なくともかつて手合わせした男…名をヤーザムと言ったか…に比べれば、今のヒナの攻撃は単純かつワンパターンだ。
ヤーザムの能力は『騎士』だったが、持っている武器は何とブーメラン。それも、狩猟用などというチャチなものではなく、ただ純粋に相手を切り裂くために作り出された特注品。加えてヤーザムは筋肉隆々な体つきをしていたために、接近戦に持ち込んだとしても、あっちが隠し持っていた大剣でかなり苦戦させられた。しかもやたらと近距離戦闘していると、ブーメランの法則にしたがってどこを如何飛んでいるのか分からない上にスピードがべらぼうに速い上にどこから返って来るのか分からないブーメランに切り裂かれる。全く持って隙の無い戦法だった。
遠距離ではブーメラン、近距離では大剣。
一見アンバランスだが、ぞの実バランスの取れた構成。
「…そうだ!!あの時に比べれば!!!」
気合を入れて、疲労でノイズが響いているI−ブレインの稼働率をさらに上げて、レシュレイは再び『漆黒の剣』を振りかざした。
右からの攻撃を約0.3秒で弾き返して、ほぼ同時に左から襲い掛かってきた攻撃をそれから0.1秒後にはもう弾き返している。同時に背後から鎌が『菊一文字』を上段に構えて斬り掛かってきたので『遠距離武器無効化』でガード。
「っ!!!」
刹那、打ち合わせでもしていたかのように今度は頭上から透明な風の刃が襲い掛かってくる。地下にあるはずのこの部屋に何故このような明確な攻撃意思を持った風が吹いてくるのかは分からないが、おそらくこれがミリルの能力だろう。とりあえずこれも『遠距離武器無効化』で防ぐ。それにより、ヒナの体には傷一つ出来ない。右腕と左腕が勝手に動いて二本の騎士剣
『月』と『星』で反撃に出るが、双方とも回避されたために、ヒナは安堵の息をつく。
(…そして、何のダメージも来ない…というわけですね)
通常、同調能力者が相手を攻撃すると、その痛みや損傷が全て痛覚としてフィードバックされてしまうのだが、どうしてかヒナはそういう状況に陥らない。おそらく、『賢人会議』が複雑怪奇なプログラムをいじくって、そういった仕様の『双剣持ちの天使』にでもしたのだろうか。かなり新しい試みといえるが、その辺だけは、『賢人会議』に感謝したいところだった。
(I−ブレイン疲労率、六十パーセント)
「…I−ブレインの疲労する速度が…早い。このままいけば…きっと…」
不安と期待が、同時に沸きあがる感覚。
I−ブレインが疲労するということは、戦闘面においては圧倒的不利を生み出す最高の要素である。流石に常時『同調能力』を展開していれば、ヒナとてI−ブレインの疲労を引き起こすに決まっている。その証拠に、先ほどまではヒナの半径二十メートルに展開されていた『同調能力』が、今では半径十八メートル程にダウンしている。
当然といえば当然の理屈だ。何しろヒナは常時『同調能力』を展開しつつも、二本の騎士剣
『月』と『星』でレシュレイとブリードを同時に相手にしつつも、『遠距離武器無効化』により、後方からミリルが放ってくる『無限の息吹』や、規格外なまでに柄の部分が延びたセリシアの持つ騎士鎌『光の彼方』による攻撃を防ぎつつ(ちなみに『光の彼方』の最大射程はおおよそ二十一メートル。で、情報の過負荷によって効果範囲が減少した今のヒナの、『同調能力』の効果範囲は十八メートル。見事に『光の彼方』の最大射程から攻撃される状況である)さらに論からの『天使逆転支配』という、『同調能力の中で能力を展開し、徐々に相手の同調能力の範囲を侵食して、最終的には同調能力者を逆に支配する』能力に対しても『同調能力』で戦っている。論はこの能力を使い、ヒナの脳内に埋め込まれている『自動戦闘状態』を消滅させるつもりらしい。『天使逆転支配』によって、お互いの『同調能力』が鬩ぎあっている間にも、論の考えが流れ込んできたのだ。
…正直、並みの魔法士ならば、一瞬でI−ブレインが焼ききれているような戦闘だ。
確かにヒナは、無限に近い脳内容量を持つ『無限大の脳内容量を持つ魔法士型』ではある。しかし、こうも一度に大量の能力を並列処理していては、処理オチが起きるのも全く持って不思議ではない。事実、先ほどからヒナのI−ブレインからはひっきりなしに『I−ブレイン、情報の過負荷によりエラーエラーエラーエラーエラーエラー…』との報告が響いている。
『処理展開追いつかず。『同調能力』範囲、半径十七メートルに縮小』
新しいエラー報告。I−ブレインに自動的にログが記録される。もはやログの数は五桁をとうに超えている。そのうち八割ほどがエラーログである。
通常の戦闘であれば焦るべきこの状況だが、ヒナはそれに対しあせりなど感じてはいなかった。
むしろ先ほどから感じていたのは、期待感。
その顔は―――泣き笑いの顔だった。
―――もう少し。
―――もう少しで、
私のI−ブレインが
処理オチして強制停止する。
―――そうしたら、
―――そうしたら、
『自動戦闘状態』
なんていう忌々しい能力を消す術を考えて、実行に写そう。
―――そして、
―――望まない殺人を強要される生活じゃなくて、
―――普通の魔法士として、
―――皆と、一緒にいたい。
―――お菓子の作り方とか、
―――編み物の編み方とか、
―――お料理とか、
―――お化粧とか、
―――おしゃれとか、
―――いろんなこと、一杯覚えて…
―――そして、
―――最も、望むのは、
―――論の、隣にいたい。
―――論の、役に立ちたい。
―――論と、一緒に、歩いていきたい。
そんなことを考えると、気づかず、頬がうっすらと紅潮する。
無論、今の御時世に人を殺さず生きるなんてことは実行できっこないことぐらい、ヒナには分かっている。
ヒナが戦うのはあくまでも『生きるために必要な戦い』だけであり、不必要な殺しまで行いたくないという、ただ、それだけの事。血に濡れてきた自分の汚れた手がそれを手にする資格があるかどうかは分からないが、そのうちでいいから是非とも手に入れたいと願うもの。
(I−ブレイン疲労率、八十パーセント)
さらに新しいエラー報告。I−ブレインに自動的にログが記録される。
普通であれば絶望すら感じるこの警告が、今はとても嬉しく感じる。このままのペースで行けば、遅くとも、現実時間にして一分後にはI−ブレインが強制停止を起こしてくれているだろう。
そうすれば、きっと…いや、『きっと』ではなく、『必ず』論は『自動戦闘状態』を消滅させてくれるはず。
そう、信じたい。
論とは―――――その、出会い頭から好きだった。
生まれて初めて抱いた恋心。
生まれて初めて、ヒナに優しくしてくれた人。
自分のやっていることに後悔こそすれど、絶対にネガティブにはならずに、常に前を見て、前向きに生きる。過去の事を気にしないわけではないが、それに深くは囚われずに人生を突き進む―――そう、私が望んでやまなかったこと。
(―――ヒナ!!!!)
そう考えている間に、『同調能力』を通して論の声。
(…頼むから、戦闘中にそんな恥ずかしいこと考えないでくれ)
ちょっと照れたような論の声。少し目を逸らして論を見てみれば、その顔が赤かった。ついでに、頬に右手の一指し指を当てている。明らかに、論が照れている証拠だ。
『ふふ、ごめんなさい』
相槌を返す。一歩間違えれば死亡するこの状況下でのやりとりは非常に滑稽で、非常にレアな光景だ。ちなみにレシュレイとブリードには『同調能力』が効かないために、この会話を聞かれることがないと思うとほっとする。
ナノセカント単位での戦闘はさらに続く。
いつ終るとも知れぬ戦い。
だが、始まりがあれば、必ず終わりはある。
その言葉を信じて、
今はただ、時を過ごすのみ――――――。
そう、
もう少しで、わたしは本当に自由になれる。
だが、この刹那に、ヒナは知る。
『自動戦闘状態』の、隠された真実を。
気がつくべきだった。
予測すべきだった。
考えの範疇に入れておくべきだった。
『賢人会議』を甘く見るべきではなかった。
世界が残酷な事なんて、
分かりきっていたはずなのに――――――。
ここ最近、立て続けに発生する脱走者に対して、それ以降に作られた魔法士に対して、『賢人会議』は強固なプロテクトを仕込んでいた。
それが『自動戦闘状態』その魔法士の意思に関係なく、その体を戦いへと狩り出す能力。
だが、この能力の真の恐ろしさは、その魔法士がピンチに陥る時にこそ発揮される。
すなわち、『もう少しで死にそう』『もう少しでI−ブレインが処理オチしそう』な時に陥ると、その魔法士の意識を完全に消去して、その魔法士がいくらダメージを負おうが、たとえ腕が千切れていようが、その体が動かなくなるまで戦わせるというもの――――――。
突如、脳内に言葉が響いた。
さながら、それは―――――――。
希望を打ち砕く、絶望。
『『自動戦闘状態』最大起動。外部からの情報構造体による攻撃などを完全に遮断。同時に、マスターの意思を完全に消去します』
すなわち、ヒナを完全な『心無き天使』へとするための、
人としてありえないほどの冷血かつ冷酷にして
残酷で非常な手段。
――――そん……な。
少女の目から、一滴の涙が少女の頬を伝った。
ぺたん、と、ヒナはそのまま床に腰を下ろした。その小さな手がふるふると小さく震えている。
『自動戦闘状態』がその進化を発揮するまでには、少々タイムラグがある。その間『自動戦闘状態』は一時的に解除され、ヒナの体はほんの少しの間だけ、自由を取り戻す。
ヒナの様子の変化に気づいた五人は、一旦警戒の為に様子見を決め込んだ。結果的に、それは正解だった。もしこの時に攻撃していれば、下手すればヒナは何の反応も出来ずに攻撃を喰らってしまっていただろう。
そのまま二本の騎士剣
『月』と『星』をリノリウムの床に置いて、ヒナは両手を目に当てて泣き出した。
涙が、次から次へと溢れてくる。
嗚咽が止まらない。
息が苦しい。
絶望が憎い。
運命が憎い。
そして…それに逆らえない自分が…情けない…。
「ひっく…ひっ…うう…っぐ…あぅ…ひぅ…」
突如攻撃の手を止め、いきなり泣き出したヒナの様子を目にして、
「待て!攻撃するんじゃない!!ヒナの様子がおかしい!!だけど警戒の手を休めるな!!」
「な、何だ!?さっきまで戦闘を繰り広げてきたかと思えば、今度は泣きじゃくったぞ?一体何がどうなっているんだ!?」
レシュレイとブリードは警戒しつつも攻撃の手を止めて、困惑した。
「…どうなって…いるの?」
同じくして状況を掴めないミリルの声。ヒナの様子にかなりの不信感を覚え――――。
「…!!」
突如、ミリルの表情が険しくなる。その顔には怯えすら浮かび上がっている。
そう、こういう時のミリルの嫌な予感は、すさまじく高い確率で当たってくれる。しかもお約束にも、刹那的に激しく致命的に嫌な方向へと向かっていって結末を迎える嫌な予感ばかりが。
それを見たブリードは、弾かれたように顔を上げて叫ぶ。
「ミリルッ!!もしかして例の『嫌な予感』がするのか…」
その言葉を言い終わらぬ内に、
(大容量のデータの転写開始を確認)
頭の中に、何かが転送される感覚が、ヒナ以外のその場にいる五人に確認された。
この世に、本当に希望は無いのだろうか。
世界にはどうあがいてもどうにもならないことがある。
それ故に、世界に希望はない事を再認識する。
なんで、どうして、と、ヒナは心の中だけで問う。
それは、この世界全てに対する問いかけでもあった。
――――世界は、全てにおいてわたし達を裏切るものなんですか?
全ては残酷。
全ては無慈悲。
全ては絶望。
全ては策略。
全ては無駄。
全ては無意味。
しかしそれでも、ヒナは諦めることをやめなかった。
こんな時に不謹慎かもしれないけれど、やっておくことが出来たから。
さっきは詳しくは言えなかった、ヒナが逃げ出した時の状況。
それを、論に知っていて欲しかった。
そして、それをこの場にいる全員に伝えていた。
この人達には、わたしの全てを知っていて欲しかったから。
わたしが、消える前に―――――――。
(大容量データの転写を確認)
「…っ。これ…は!?」
「ヒナちゃんの…記憶!?」
「…しかし、なんて…」
「…こんな…ことが…」
「…………」
いきなり頭の中に出現したデータの山に、レシュレイ・セリシア・ブリード・ミリル・論は声を失った。
―――【 軌 跡 の 末 に あ る 未 来 】―――
〜THE HINA〜
――――また、人を殺した…。
その日も彼女は、血まみれで帰ってきた。
傷つけられたからじゃない。むしろ彼女が傷つけた側。そして殺した側。
もう、何人殺しただろうか。
――――やめて………出てこないで………。
耳にはまだ、殺した人たちの断末魔の叫び声が残っている。
老人。
子供。
女性。
男性。
それぞれの命の怒りと悲しみが奏でる葬送曲。
それが、ヒナを苦しめる。
ヒナの心を痛める。
手足は返り血に濡れ、二本の騎士剣
『月』と『星』も、もはや元々の色である金色の部分は全て紅く塗り替えられている。心なしか肉片も付いていた気がしたので、すぐに洗い落とした。
――――もう……嫌……よぉ………。
ヒナの心は、見て分かるとおりに、殆どぼろぼろだった。
だけど、その日は違った。
『賢人会議』のエージェントのおかげでチャンスを手に入れて逃げ出すことを決心した時、ヒナは駆け出した。
軽い足音が廊下に反響し、警報ランプのけたたましい音と共に世界の彼方へと消えていく。
――――こっちに行って…それから…。
地図を見ながら世界を駆ける、華奢な体格。
肩の辺りで切り揃えられたエメラルドグリーンの髪が、走るたびに宙を舞う。
清楚な顔立ちの、まるでお嬢様みたいな西洋系の少女。
無論、きっちりと凹凸があって、出るべきところは出ている。
そしてそれは、走るたびに上下に揺れ……。
『…っと、やばいな、考えを変えないと…ま、待てセリシア!!ご、誤解だ!!』
『どわっ!!!に、睨むなミリル!!!!』
『いかんいかん…オレは何を考えている…って、何かオレまでヒナに睨まれてる!?』
邪な考えを脳裏に閃かせてしまい、それぞれの彼女に詰め寄られる男性陣だった。
――――っ…ぜい…ぜい…はぁ…はぁ…。
息が苦しい。
荒れる呼吸を整えることなど後回しにして、一心不乱に走る。
辺りは警報ランプのせいで真っ赤。
よって、視界がかなり悪い。
そして、壁の向こうから『賢人会議』のエージェントが現れる。
刹那のうちにそいつらを片付ける。
――――また、痛い………!!!
ずきり、と、ヒナの心の痛む音が、ここまで聞こえて来た。
望まぬ殺し。望まない戦い。
だけど、今だけは、
ヒナは、生きるために、戦う――――。
――――きっと大丈夫……この調子なら、きっと逃げ切れる……。
希望的観測。
そう、明らかな希望的観測。
だが、この場においては、絶望を持つよりは遥かにましだったと言えよう。
後に、更なる絶望を知ることになっても。
――――早く……早く………早く…………早く!!!!
荒れる吐息の中、凛とした意思でヒナは心の中で叫ぶ。
喉はもう限界を迎えているはずなのに、走る。
その言葉はヒナの年齢には絶対的に相応していない、絶対的な悲哀に満ちたもの。
零れる涙。
喰いしばった歯。
ヒナは幾度も目から流れる涙を腕で拭いつつも、走る。
殺しながら、走る。
その後には、さらに大量の血が舞う。
次々と肉片と化す『賢人会議』のエージェント。
趣味が悪すぎるぬいぐるみ。
そして、長い戦いの末に、地図に書かれた扉を発見して、力任せに扉を開けたが、ヒナの力では少ししか開かなかった。
それでも、現実時間にして七秒もの時間をかけて、やっとヒナが通れるくらいまで扉を開けて、その中へと飛び込んだ。
かくして、ヒナは外へと脱出した。
外に置いてあったフライヤーを使って、ヒナは無我夢中で逃げた。
途中で大吹雪に会って、どこかの研究所にたどり着いた。
階段を下っていくと、声が聞こえた。
びくり、とヒナの体が跳ねた。
扉の向こうから聞こえてくる声は…おそらく五人分。
誰なの!?と声に出さず唇が動いた。
だけど、声を聞いているうちに、思った。
無意味な話のようで、意味を持っていて、
その場限りの他愛の無い話だけど、それでも盛り上がって、
嘘偽りの無い、心からの笑い。
――――ここには、わたしが求めたもの…『暖かさ』がある。
そう確信して、扉を開いた。
普通の女の子としての日常が、そこにあるかもしれないという希望を込めて。
目の前にいたのは、五人の少年少女。
蒼色の髪。どことなく人のよさそうな少年。
桃色の髪。太陽のような明るさを持つ笑顔をしている少女。
白い髪…きっと生まれつきの白い髪であって、きっと白髪では無いと信じておこう。あの外見年齢であの白髪だったら、相当な苦労人だけど…その瞳に確固たる意思を持つ少年。
銀色の髪。明るく振舞ってはいるけれど、その影に隠れた暗闇を隠しきれていない少女。きっとかなり辛い経験をしてきたんだと思う。あの暗闇は、わたしと同じものだから。
そして…黒髪…ヒナが大好きな少年。
(これが、わたしからの視点で見た、あなた達だった…)
いつのまにか泣き止んだヒナが、今度は目を閉じている。その瞳を掌で隠しながらも、次の言葉を告げる。
「だけど…」
先ほどまでとは比べ物にならないほどの、重い感情を持った言葉。
『『自動戦闘状態』最大起動。外部からの情報構造体による攻撃などを完全に遮断。同時に、マスターの意思を完全に消去します』
時が、止まった。
その言葉は、決定的に現実的に絶対的に契約的に、この場の全てを絶望へと誘い込んだ。
(…此れが、今の私に告げられた言葉…)
そういったヒナの瞳からは、一滴、また一滴と、絶望と悲しみと切なさに彩られた涙が零れ落ちる。
必死の思いで『賢人会議』から脱走して、やっとここまで来れたのに、絶望はいつでもそこにある。
この世に…神様はいない。
神様は―――――死んだ。
それを最後に、映像は消えた…。
―――【 一 人 の 救 世 主 】―――
〜RESHUREI&SERISIA&BUREED&MIRIL&RON&HINA〜
映像が終ってから最初に言葉を発したのは、セリシアだった。
しかし、その声は震えており、現実を認めたくないという彼女の思いを如実に表していた。
「…そんな、それじゃあ…何!?いくら頑張っても、ヒナちゃんは『賢人会議』から逃げられないの!?ヒナちゃんは、もう戦うことしか考えられないの!?明るい世界を見ることは出来ないの!?一人の女の子として生きる権利も力も資格も全て剥奪されて、何も考えずにただただ人を殺す日々を送り続けなくちゃいけないの!?
そんなの…ヒナちゃんがあまりにも可哀相すぎるわ!!!」
その瞳に涙を溜めて、セリシアが悲痛の表情で叫んだ。
「…あちらの方が上手だったという事か…だが、俺は認めない!!この世に完全なプログラムなど存在しないはず!!だから、きっとそのプログラムも破る手段はあるはずだ!!…だから諦めるな!!自分を見失うな!!俺達『魔法士』は、あらゆる物理法則や常識を覆す存在!!だから…絶対に手はあるはずなんだ!!!」
セリシアに便乗するように、レシュレイも叫ぶ!!その瞳に秘めた意思は確固たるものであり、全てを諦めない彼の性格を如実に表していた。
だが、裏を返せば、それは不安を押し隠すための必死な思いでしかない。もちろん、ヒナはそれを分かっていた。
そして、論は考える。
もはや、『天使逆転支配』で間に合うような状況は終っている。外部からの情報構造体攻撃が遮断されるという事は、『天使逆転支配』でいくら頑張っても無意味だという事だ。
早急に別の手段を考えなければならない。悠長な事などしていられないし、そんな余裕すら失われた。
だが、どうする。
どうすればいい。
試行錯誤すること現実時間にして四秒。
それまで考えた項目は数千以上。
…ふいに、論の頭に名案が浮かび上がる。
『外部からの情報体構造攻撃』が駄目なら、『内部からの情報構造体攻撃』はどうだろうか。
論が持っているとある能力のプログラムを一部書き換えた能力を使えば、『自動戦闘状態』がヒナを完全に侵食する前に、『自動戦闘状態』を止めることが出来るかもしれない。
分かっている。
どうすればいいのかくらい分かっている。危険極まりない賭けに出ていいのかと、理性と知性と計画性が頭の中で肩を組んで並んでいる。
可能性の面から言えば、この策は諦めるべきだ。そもそも、失敗時のリスクが圧倒的に高すぎる。いわゆるハイリスクハイリターン。成功すればヒナを『自動戦闘状態』から救い出せるが、失敗すれば…下手をすればヒナが絶命してしまう。この策は、それほどまでに危険なものなのだ。
さらに、もしこの策が成功しても、その次にとあるプロセスが待ち受けている。無論、ここでも成功させなければならない。脳内シミュレーションの計算の結果。二つのプロセスの成功率は限りなくゼロに近い。
逆にここでこの策に出なければ、『自動戦闘状態』がヒナを完全に侵食する前に、また別の方法が見つかるかもしれない。あくまでも『かも』の世界だが。
成功率が激低な目の前の現実に挑むか、時間を置いて時を待つか。
分かっている。
オレが取るべき行動くらい、オレ自身がよく分かっている。
少しでも可能性の高いほうに賭けたほうがいい。
オレは博打は好きじゃない。
論は何度も自分に言い聞かせる。
安全第一が一番だろうが!!
オレは分の悪い掛けは嫌いだ。
―――まだ、早い。
そういった言葉を、論は何度も自分に言い聞かせる。
「…っく…ひっく…」
そして一度だけ、涙を流して泣き崩れているヒナを見て、全ての考えがあっけなく吹き飛んで、
とうとう、叫んだ。
「ヒナ!!聞いてるな!?」
突然の声に、その場に居合わせた五人が顔をあげた。
「はい…聞こえてます…」
もうすっかり弱々しくなったヒナの声。
「ならば…オレに策がある!!!」
自分に集まる五人の視線を無視して、論は続けた。
「君は…『痛覚遮断』を持っているか?」
その問に対し、ヒナは首を横に振った。
「…く、ならば答えてくれ!!現実時間にして一秒足らずの激痛に、耐える事は出来そうか!?」
「それって…まさか!!」
セリシアが口を挟むが、論はさらに続けた。
「答えてくれ!!」
一秒弱ほど考えた末に、ヒナは顔を上げて答えた。
その表情は、今まで泣き崩れていた時の絶望感漂う表情ではなく、何かを決意して、何かを信じる時の、凛とした表情だった。
「出来ます…この忌わしい能力から解放されるなら!!!!」
それで、論の中の何かがふっきれた。
「…よく…言ってくれた!!!」
刹那の時を置いて、論はヒナへと駆け出した。
その瞳には、もう、迷いなど一欠けらも存在しない。
「論…打開策があるのか?」
恐る恐る問いかけるブリードに、論は答える。
「ああ…出来れば使いたくない手段だが、もう状況が状況なだけに迷ってなんていられない…外からが駄目なら中からだ!!!今からヒナの精神に干渉して、『自動戦闘状態』を内部から破壊する!!もはやそれしか打つ手は無い!!!」
「そんな事が出来るんですか!?」
目を見開いて驚くミリル。当たり前だ。他人の精神に入り込む能力など、見た事も聞いたことも無い。それに、これはある意味プライバシーの侵害とかに当たるんじゃないかとどうでもいい事を考えたりもする。
「やり方だけなら簡単なんだ…これは、かつて戦った天使の使ってきた『同調能力』から派生した能力だからな…だけど、正直、これの成功率はかなり低い。だから出来れば使いたくなかったんだが…。
とりあえず最後にもう一度聞く…本当にいいんだな?ヒナ」
迷うことなく、ヒナは頷いた。自分の精神に入り込まれるなどという物騒な事を簡単に容認したのは、健気に真っ直ぐに、そして純粋に論を信じての事だろう。
それを見届けた論は、安堵の息をついた後に、ヒナの目の前に立ちはだかる。ヒナの目の前に立ちはだかった論は、騎士刀『雨の群雲』を鞘から抜き出す。
(I−ブレイン起動。『思考進入サタン』起動)
同時に頭の中でプログラムをスタートする。『同調能力』をベースにして生み出した『天使逆転支配』のプログラムを少しばかり書き換えたばかりで、たった今作成したばかりの、相手の精神に入り込むこの能力のプログラムを。
脳内シミュレートでは…成功率はほんのわずか。
だが、今を逃してしまっては、おそらくチャンスは訪れないと、論の戦士としての直感が告げる。
目の前の少女を助け出すための、最後の希望をこの能力に賭けて。
失敗の許されない、一度きりの大勝負。
「…我慢してくれよ…!!!ヒナッ!!!」
苦悶の表情で、論は叫んだ。
ヒナの表情は、凛としたまま変わっていなかった。
論の考えが読めているなら、論が頭の中で何を考えているか、この後に何が待ち受けているかなんて分かっているはずなのに、それを甘んじて受け入れてくれた。
だから、論は決意した。
…絶対に成功させる。と。
そして論は、
正眼に構えた騎士刀『雨の群雲』を振り下ろした。
ぞぶしゃぁっ!!!!
「きゃああぁあああぁああぁぁああ!!!」
大量の鮮血が、光の下で散った。
そして響くのは、悲痛に満ちたヒナの声。
騎士刀『雨の群雲』は、
ヒナの左肩に深く突き刺さっていた。
論の意識が、そこで飛んだ。
命令を失った論の身体が、がくりと膝をついた。
『思考進入サタン』を発動するという事は、一時的にしろ、論の意識が他人の身体の中へと入っていっている事になるから、必然的に論の身体は魂の抜け殻状態になる。
すなわち、今の論の肉体はもぬけの殻というわけだ。だから、この時に他者の精神が論の身体の中に入ったりすることは、肉体の制御権を奪われることに他ならない…最も、この場にそれが出来る者はヒナ以外にいないが。
「な、何をしてんだよ論!!」
論の突然の行動に、ブリードは思わず論に駆け寄ろうとするが、
「待て!!」
レシュレイがそれを諭す。
「なんで止めるんだ!!!このままじゃヒナが!!」
「ブリード、論は自らの意識をヒナの精神へと進入させて、『自動戦闘状態』がヒナを完全に侵食する前に、内部から破壊しようとしてるんだ!!現に今、論から意識が感じられない」
「あ…」
言われて見ればその通り、論の眼は堅く閉じられている。
まるで、深い眠りにでもついたかのように。
ヒナも意識を失って、眠っているかのように動かない。最も、彼女の場合は激痛によって意識を失ったという可能性の方が高いかもしれないだろう。現に今、紅い血がヒナの左肩口から流れて続けている。
「今の俺達にできる事は、ただ、論が成功するのを祈るしかないんだ」
その拳を握り締めて、レシュレイは歯噛みする。
そして、最後に一つ付け加えた。
「だから今、俺達ができる事は、ヒナの傷の手当くらいしかない…急ごう」
その言葉を合図に、残された四人は行動を起こした。
目を開けると、周囲は一面の光の海だった。
論は、自分が生まれてからの数年間を過ごした、培養層の羊水を思い出した。
夢の中でまどろんでいるような、希薄な現実感覚。自分の身体を見下ろすと、ヒナの意識の中に入る前と同じ格好だった。無論、騎士刀『雨の群雲』も、論の右手にしっかりと握られている。
…と。
ヒナの左肩に騎士刀『雨の群雲』を突き刺して、そこの神経からヒナの中枢神経へとアクセス。そして今向かっているのは、ヒナを苦しめる全ての元凶が潜む地帯…すなわち、ヒナの脳にI−ブレインが存在する前頭葉だ。
…ここは、ヒナの神経構造の中って事だな…とりあえず、第一のプロセスは成功したみたいだな。
論は光のプールを見渡し、とりあえず、明るい方向へと向かって泳いでいった。
進むにつれて、光は密度を増していった。時折、光の中でもなお明るく光る小さな光が道標になっているみたいな、そんな感覚を論は覚えた。
情報の海をさらに進むと、ある地点を境に様相が一変した。一面の光で覆われていた視界のそこかしこに、水色の天使の羽がたゆたい始めたのだ。
論は油断無く周囲に気を配りながら、さらに前頭葉を目指した。
ふいに、どこからか殺気を感じた。たゆたう羽の一枚が刃に変化して論へと向かってきていたのだ。
…防衛本能かっ!!
論という『異物』を排除するために飛来する刃。それを騎士刀『雨の群雲』で一刀の元に切り捨てる。
さらにもう一枚、刃と化した羽が論の心臓目掛けて飛来する。
が、刃はいくらも進まない内に、光のプールから突き出した小さくて白い光の手に受け止められた。
刃は羽に戻って、さらに儚く輝いて霧散した。それを見届けたように、小さくて白い光の手も溶けて消えていった。
その手が誰のものかは、論には分かっていた。
…ありがとう、ヒナ。
さらに時は流れた。どれくらいたったのかが分からない。脳内時計は『四ミリ秒』を告げたが、論の意識には数分にも数時間にも感じられた。
ついに、論はヒナのI−ブレインへとたどり着いた。
第一印象は、まるで教会のような建物の中。
そこにいたのは、ヒナだった。
両腕を横に出して、まるで神話のイエスのように(論はキリスト教などこれっぽっちも信じちゃいないが)十字架に縛られている。
さらに、掌と足の甲に短剣が突き刺さっていて、そこから紅い血が流れていた。
閉じられたその瞳からは、涙が流れていた。
論が近づくと、ヒナはうっすらと目を開けた。
…やっと、ここまで来た。
論は、微笑みながらさらにヒナに近づいた。
ヒナも、論に微笑み返した。
「…どうして、そこにいるんだ?」
わたしは罪人なの。
ヒナの変わりに、周囲の空間が答えた。
「…何故だ?それは『賢人会議』のせいなんだろ」
だけど、わたしは逆らえなかった。だから、殺すしかなかった。わたしが助かるために。
「生きるために必要なことだったなら、許されるはずだ」
今度の問いに、答えは無い。
ヒナは、怯えと恐怖の入り混じった目で論を見た。
論はヒナを見上げて、優しく問いかけた。
「ヒナは…これから如何するんだ?」
周囲の空間が、悲しみに震えた。
わたしは人を殺しすぎた。
だからわたしは要らない子。
だから死ぬ。
そう叫んだ。
「違う!!」
論は叫んだ。
感情的になって叫んだ。
「君は、そんな事望んでない!!」
だって、わたしは…。
声に戸惑いが走る。
わたしは…わたしは…わたしは…。
「君は、生きたいんだろう」
違うの…だって…わたしは…わたしは…わたしは…わたしは…。
うわごとのように繰り返す。
論は小さく笑って、
「嘘」
言い切った。
どうして、そんな事が言えるの?
周囲からの返答。
そして、すぐに切り返す論。
「それは本当に、君の言葉か?そんな言葉ばかり言っているから、心の中に秘めたヒナ自身の本当の想いすら押しつぶしてしまって、お陰でいらない絶望を抱いているんじゃないのか?」
…それは。
「なあヒナ…オレはそんなに頼りないか?」
…そんなことない。
「なら、信じて欲しい。オレは必ず君を助け出す。そのためにここまで来た。だけど、肝心のヒナが絶望していたら、助けだそうにも助け出せない。つまり、オレのこの行動も意味の無いものになってしまうんだ…。それでもいいのか?」
その言葉を聴いた途端、ヒナの瞳から涙が溢れた。
その身体を小さく震わせて、泣き出した。
…そんなの、そんなのやだ…。
「だから、そうそうネガティブに考えないことだ…早く終らせて戻ろう…あの、灰色の世界に。
ヒナがこれから生きていく世界に。
安心してくれ。オレはその傍らについていくから」
ヒナの顔に、希望が生まれた。
…ろ…ん。
「だから…陳腐な言葉だが、決して諦めるな!!!ヒナが後一押ししてくれれば、それだけで全てにカタがつく!!だから頑張るんだ!!今まで、ヒナを拘束してきた運命を時放つ為に!!」
胸の想いを込めた、激励の一言。
その一言は、ヒナの大きな支えとなる。
…ろんっ!!!!
ヒナの瞳からさらに零れる涙。
そして泣き笑いの顔で微笑むヒナ。
「やっと…やっと笑ってくれたね」
論の瞳から、涙が零れた。
ヒナを拘束していた短剣が、音を立てないで砂になって崩れていく。
ヒナが手を伸ばした。
論も手を伸ばした。
二人の手が触れ合った瞬間、光が弾けた。
論は目を開いた。
霊廟のようにしんと静まり返る、何も無い空間。
目の前にいるのは、強大なサイズの黒い霧
ヒナは、天使の翼を広げながら、強大なサイズの黒い霧に下半身を飲み込まれていた。その強大なサイズの黒い霧が、ヒナを苦しめている『自動戦闘状態』であることは、明確な真実だった。
だけど、強大なサイズの黒い霧に下半身を飲み込まれていても尚、ヒナのその瞳は絶望してはいなかった。涙を一杯に溜めた瞳で、そして泣き笑いの顔で、論を見つめていた。
「…ヒナ、君を助けてみせる。あの時みたいに、君の力になれないのはもう嫌なんだ…だから、そいつの存在、オレが消滅させる!!!」
ヒナは、泣き笑いの顔で唇を動かした。
来てくれたのね…論…信じてた。
「ああ、長い時間がかかったけど、随分と遠回りしてきたけど、やっとオレはここまで来た…君という、ただ守りたい人の為に!!!!」
論は大きく頷いて、騎士刀『雨の群雲』を正眼に構えて、脳内のプログラムを起動させた。
(『抗える時の調べのサタン』起動、並列処理を開始。『極限粒子移動サタン』起動)
さらに、瞬時に脳内に二百五十六ケタの特定のパスワードを打ち込む。
(『極限粒子移動サタン』『システム番号』受信。プログラムナンバー二十四を起動。脳内コンディションオールグリーン、システム正常稼動、I−ブレイン稼働率九十九パーセント、処理速度正常、エラー無し、プログラムを起動。
『絶対死・天樹』発動)
論の最終奥義の一つが、今、牙を向く。
触れるもの全ての存在を一切合財構わずに分子レベル以下にまで分解してその存在そのものを否定して全てをこの世から亡き者にする、『極限粒子移動サタン』の最終派生能力!!!
その名は、『絶対死・天樹』!!!
何も言わずに、論は騎士刀『雨の群雲』を振り下ろした。
騎士剣『雨の群雲』が触れた刹那、轟く爆音と共に引き起こった超爆発が続き、強大なサイズの黒い霧は断末魔の咆哮を上げて昇華した。
次の瞬間、この空間の全てが光に包まれた。光は三百六十度あらゆる方向から吹き出して、その奔流は論を運んでいった。
そんな中、論は確かに見た。
光の奔流の中、泣き笑いの顔で論を見上げていたヒナの姿を。
論は目を覚ました。
気がついたら、いつの間にか座り込んでいた。
おそらく、自分がヒナの中枢神経に入り込んでいる間にでも、現実世界の身体が勝手に座り込んだんだろうな、と、論は結論付けた。
「よ、やったみたいだな」
目の前に立っていた白髪の少年が、座り込んでその目線を論に合わせてそう言った。
「…ああ、何とか成功した…ところで、ヒナは?」
「ここにいます。ただ、ちょっと出血が激しかったから、今は安静にしておかないといけません」
論の問いに答えたのはセリシア。見てみると、ヒナの左肩口には分厚くて長い包帯が巻かれている。それは紅く染まっており、その傷がいかに深かったかを認識させるのには十分すぎる要素だった。
「…論。おはよう…痛っ!!」
目を覚ました一秒後に、包帯の巻かれた左肩口を痛そうな顔で押さえるヒナ。
「…分かってたけど、やっぱり痛いです…うう、どうしてわたしはいつもこんな目に会わなきゃいけないんですか…」
ちょっとばかりふてくされた声でそれを伝えるヒナ。だが、その態度はどこから如何見ても、へそを曲げた女の子のものだった。
が、論はそれをまともな意味で取ってしまい、顔をしかめた。
「ほら論、ああ言われているけど如何するんだ?」
レシュレイの問いに、論は答えた。
無論、その言葉はヒナに向けられたものである。
「そう言われても仕方が無かっただろ…あの状況下じゃ、あれが最善の策だったとオレは思っているし、結果的には『自動戦闘状態』を破壊できたじゃないか…つーわけで、流石にちょっとやりすぎたので機嫌直してくれ」
やや頬を赤らめての論のそんな言葉。しどろもどろになって言ったので、言葉の趣旨があってない。
しかし当の論は、そんな気分じゃなかった。
今の論の胸の中にはすごく熱いものがあって、そいつが「うれしいうれしいうれしい」と思いっきり叫んでいる。
「だけど…うん…ありがとう」
「あ、ヒナちゃん!!」
ミリルの静止も聞かず、ヒナは駆け出した。
そして、論の目の前で止まる。気を利かせたのか、さっきまで論の目の前にいたブリードが論の目の前から避けた。
「論…」
大好き、と言おうとしたヒナに、論はそっと手を伸ばした。優しい手つきで、ヒナの目元を拭う。
その指先に光っていたのは、涙だった。
「ど、どうして…わたし、どうして泣いて…」
刹那、論がヒナを抱きしめてこう言った。
「ヒナ…一つの闘いがやっと終ったんだ」
耳元で伝えられる、優しい声。
「ヒナが死ななくて、本当に良かっ…た」
論のその瞳から涙の雫が流れ落ちる。
論の声が震えているのに、ヒナが気がつく。
気がつけば、涙が、ヒナの頬を伝って流れ落ちた。
「わたし……わたし……わたし……」
その後の言葉が、言葉になるはずがなかった。
堰を切った感情の涙が次々と零れ落ちる。
やがて、ヒナは激しく泣きじゃくり出した。
論の手が、エメラルドグリーンの髪をそっと撫でる。
「君の気が済むまで…泣いていいさ…」
「………はいっ!!!」
周りの四人も、その言葉に反論しなかった。
それぞれのカップルで、論とヒナを祝っていた。
論の腕の中、ヒナは泣き続けた。
今まで苦しかった分、悲しかった分、辛かった分を洗い流すかのように。
いつまでも、いつまでも泣き続けた。
―――【 打 ち 倒 す べ き 存 在 】―――
〜RESHUREI&SERISIA&BUREED&MIRIL&RON&HINA〜
「ところで…」
ヒナが泣きつかれて寝てしまったのを確認してから、レシュレイは論に問うた。
「論、お前はこれから如何するんだ?目的は果たしたんだろ?」
それは、これからの論の生きる意義をかもし出させるための質問。
しかし、論の中での答えは、もう決まっている。
だから、迷うことなくそれを言葉に出した。
「そんなの決まっているだろ」
「『賢人会議』をこの世界から抹消する。それだけだ」
「じゃあ、聞いて欲しいことがある」
きりっ、と真面目な顔になって、レシュレイはリノリウムの床の上に座り込んだ。
それはまるで、論がこの答えを出すのがあらかじめ分かっていたかのような表情だった。
「…と、その前に、これから俺が話す事は、ヒナにも聞いてもらった方がいいだろう…何しろ、つい先日まで彼女がいた組織だからな…だから、ヒナが起きるまで待とう」
その言葉に、反論するものはいなかった。
―――【 必 然 と も 偶 然 と も 思 え る 出 会 い 】―――
〜SHARON&CURAU&INTLUDER〜
一時間悩んで、お墓を作る事にした。
研究所の中にあった高性能シャベルを用いて、この研究所にほど近い、小高い丘の上。どこもかしこも永久凍土に覆われた大地を土が見えるまで掘り返して、そこに二人のお墓を作った。
研究所内に転がっていた強化カーボンの廃材を、丹念に磨いてぴっかぴかにしただけの簡素な墓標。遺品も何も無いけど、粗末な墓標を立てる気にはどうしてもならなかった。
そして最後に、墓標に名前を書いて終了。
そこに記された名前は、
ノーテュエル・クライアント
ゼイネスト・サーバ
あの後、シャロンは何とか泣きやんだ。
いつまでも泣いてなんていられない。このまま泣きじゃくっていたままじゃ、死んだゼイネスト達に申し訳がつかないからだ。と彼女自身に言い聞かせて。
あたりは夜のように薄暗く、おまけに酷く寒い。I−ブレインを使って体温を調節しなければ、あっという間に凍え死んでしまう。
だけど、絶対にそれは出来ない。
ラジエルト・オーヴェナを探すまでは。
そして『賢人会議』………否、
『もう一つの賢人会議』を倒すためにも。
そう、
今のシャロンには、全てが分かる。
研究所のコンピュータに隠された真実が教えてくれた、明確なる道標。
『賢人会議』の名を借りた、偽者達の茶番。
それを断ち切るために、歩み出さなければいけないのだから。
舞い落ちた綿毛のような結晶が、墓標の上に小さな白い花を咲かせる。
それを掌で拭って、シャロンは出来上がったばかりの墓標に背中を向けた。
―――気配を感じた。
「誰っ!!」
反射的に振り向いた。
振り向いて―――その顔が凍りついた。
そこにいたのは、シャロンが良く知っていた人物だったからだ。
そして、その人物は口を開いた。
「あ、待って待って、私が貴女を殺す理由はどこにも無いわ」
「…え?」
いきなり言われた予想外の言葉に、シャロンは驚く。
おかしい。
これは何の冗談だろうか?
『賢人会議』………否、『もう一つの賢人会議』の崇拝者にも等しき目の前の女性…クラウ・ソラスの口からそんな言葉が聞けるなんて…。
「その通りだ…お前さんと同じで、クラウは『賢人会議』………否、『もう一つの賢人会議』の犠牲者だからな。お前さんと戦う理由なんて無いんだよ、シャロン・ベルセリウス。
…ああ、申し送れた。俺はイントルーダー。つい最近『もう一つの賢人会議』に生み出された魔法士だ」
イントルーダーと名乗った青年が、ずい、と前に出る。
…だが、いきなりの出来事の連続に混乱したシャロンの脳は、オーバーヒートを起こしていた。
敵だと思っていたあのクラウ・ソラスがいきなりこちら側に寝返るわ、新しい魔法士は出てくるわで、ついさっき大きすぎるショックを受けたシャロンの脳には、いささか負担が大きすぎた。
「…とりあえず、落ち着いてから説明したほうが言いわね」
「同感だな」
パニックに陥ってるシャロンを見かねて、クラウの発言にイントルーダーが同意した。
―――【 崩 壊 へ の 秒 読 み 】―――
〜EXUITES〜
全てを燃やすべく、灼熱の炎が燃え盛る。
今まで使っていた部屋が燃えるというのには、多少だがやりきれないものがあった。
だが、時が経ちさえすれば、そんなものはどうだって良くなるだろう。
これまでの思い出と共に、脳の中から薄れていくだろう。
もはや『賢人会議』は、その命と役割を終えようとしている。
否…命と役割を終えるのは『賢人会議』ではなく、『もう一つの賢人会議』か。
資料、機材、老人の死体等、それら全てが炎の中へと消えていく。
それを見やったエクイテスは、ただ、一つだけため息を衝いた。
彼は知ってしまった。
ゲストラウイドを殺した後に、コンピュータからデータを引き出して、知ってしまった。
自分達が、通常ではありえないほどに魔法士としての能力を強化させた魔法士であることを。
そして、そのために、自分達にはあるデメリットが存在した事を。
だから、知った。
ゲストラウイドが、どうして「我らがこの世界の長となる」と言っていたのか。
彼もまた、自分達と同じだった。
だから気が触れて、性格が変貌してしまったのだろう。
そのことを知ってしまったから。
知らなければ良かったのに。
知らなければ、ここまで狂う事もなかったのに。
こうする必要も無かったのに。
でも知ってしまった。
自分もゲストラウイドも他の者も知ってしまった。
それはきっと大きな罪。
それと同時に、致命的な失敗。
「さよならだ…俺達の生きた証」
それだけを呟いて、エクイテスはその場から立ち去った。
あと数分もすれば、あの部屋だけが燃え尽きて火が消える。
その間に、やるべき事をやろうではないか。
あの男が作った、二人の魔法士に対する復讐もその一つ。
その二人のデータはここにある。
その二人は、生きていれば今、三歳と二歳のはずだ。
そして、少年と少女の組み合わせのはずだ。
今こそ、始めよう。
この世界への、最後のあがきを。
<続く>
―【 お ま け の キ ャ ラ ト ー ク 】―
セリシア
「色々ありましたけど、ヒナちゃん、やっと今回で報われました!!おめでとう!!(ぱちぱちぱち…)」
ヒナ
「うう…あ、ありがとうございます…こ、ここまで来るのに凄く長かったです」
ブリード
「少し前のキャラトークでは、俺達全員にその存在を忘れられていたからな。いや、もう出てこないものかと思ったぜ」
ヒナ
「(がーん!)ひ、ひどい…」
ブリード
「しかも第三話あたり以降から出番が全く無し。これじゃあ、記憶に残らないのも当たり前か」
ヒナ
「…どうせわたしは日陰者ですよ…うう…」
ブリード
(やべ!!泣かせちまった!!)
論
「ヒナを苛めるなっ!!!」
(I−ブレイン起動『死月・色即是空』発動)
論
「受け取れよ…あんたへの手向けの花だ…謳歌絶命、因果に伏す!!!」
ブリード
「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!(やられ台詞)」
論
「しかし(ミリル以外の女性の扱いが)下手だね。どうも(勝利台詞)」
ミリル
「だ、大丈夫!?ブリード!?」
ブリード
「あんまり大丈夫じゃねえ…」
論
「それに、その展開だったらオレが独り身になってしまうではないか…」
レシュレイ
「あー、本作カップリング多いからな」
クラウ
「というか、必ず誰かと誰かがくっつくのよね」
ブリード
「そういう時は、作者に懇願して新キャラを作っ…ん?何か紙が落ちてきた…どれどれ…『もう新キャラ作る予定はしばらく無いから無理。 作者』…なんだこりゃ」
ミリル
「そのままの意味だと思うけど…」
クラウ
「確かに、これ以上キャラ作っても大過ぎって感が否めないと思うわよ。ただでさえ大所帯なのに」
イントルーダー
「全くだ…ところで、クラウ・ソラスはいつの間にかクラウって書かれてるな。何故だ?前回はフルネームで呼ばれてたのに」
クラウ
「だって、苗字までいちいち書くのっておかしくない?」
レシュレイ
「あ、そうか…『クラウ』が名前で、『ソラス』が苗字なんだったな」
クラウ
「一時期は『クラウ・ソラス』で一つの名前だったみたいだけど、直されたみたいね」
ブリード
「それはいいが…一つ聞きたい」
イントルーダー
「何だ?」
ブリード
「ふと思ったんだが、この物語におけるセリシアのポジションって一体何なんだ?過去には戦っていたらしいが、今では殆ど戦っていないし…レシュレイはワイスと戦った。俺は錬や論と戦った。論はシュベールとも戦っている。ミリルもノーテュエルや論と戦っている、ヒナは言わずもがなだし、イントルーダーとクラウもまた然り…だが、セリシアだけが、一人で、あるいは二、三人で誰かと戦ったかってのが明確に書かれていないんだよな…もしかして、攫われたりするだけのピーチ姫的存在!?」
セリシア
「う、うう…」
クラウ
(あ、泣きそう…)
レシュレイ
「断じて違う!!」
ミリル
「きゃあ!!」
ヒナ
「な、何!?」
セリシア
「レ、レシュレイ…」
ブリード
「す、凄い強調…」
イントルーダー
「ていうか、今レシュレイが机を叩いたせいで、スチール製の机が真っ二つに割れたんだが…」
論
「流石は本作最強の『愛に生きる漢』だな」
レシュレイ
「いつの間にそんな称号が定着してるんだ!?」
クラウ
「作者がたった今考えたらしいわ」
レシュレイ
「…まあ、それは置いておいて…セリシアが戦ってないのは、オレが身を挺して戦っていたからなんだよな…理由は本編参照で」
ヒナ
「でも、前回でそれが間違っていた事に気がついたんですよね」
レシュレイ
「…まあ、な」
ブリード
「だが、普段はきちんと守っとけよ。ただでさえ異常者や変態の多いこの世界、いつまたワイスみたいなヤツが出てくるか分かったもんじゃないからな」
論
「何気に本作はデブオタとかの出現率が高いしな」
ミリル
「違いないですね」
ワイス
「全くだ」
ノーテュエル
「…だからアンタは出しゃばるなっ!!ここいらへんでケリをつけるわよっ!!!!(ABC同時押し)」
ワイス
「いきなりバニシングブースト(いわゆるブラッドヒート)かよ!?てか、ちょっと出ただけなのに出るなって人権侵害かよ!?」
ノーテュエル
「問答無用!!!(641236+強)昇華…『煉獄の十字架!!!!』」
ワイス
「ぐがぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!(死に台詞)」
論
「(ぼそっ…)何だ…死んだのかよアンタ」
ヒナ
「(こそこそ…)それ、前もやりませんでした?」
5770damege
Finality Drive Finish
レシュレイ
「…何だったんだ、今の…」
セリシア
「さあ…というか、こんな終り方でいいんでしょうか!?」
※Finality Dlive…いわゆるアナザーアークドライブ。つまりが上級超必殺技。
ちなみにアークドライブ(超必殺技)にあたるのが、Master Dlive。
<こっちのコーナーも続く>
<作者様コメント>
兎にも角にも、あとがきでも本編でもワイスは見事にやられ役が板についてきたなぁと思ってしまう今日この頃です。
今回でやっと『もう一つの賢人会議』の名前が出てきました。
もうこの辺で、このからくりが分かった人も多いんじゃないでしょうか?
…正直、我ながらかなりこじつけっぽい理由だとは思うんですが。
最後のアレ…まあ、格闘ゲーム風のシステム名考えたらこうなった。と。
基本システムはメルブラですが。
さて、『もう一つの賢人会議』の魔法士達は、この後如何動くのか?
ちょっとだけでも期待していてください。
<作者様サイト>
無し
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◆とじる◆
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