DESTINY TIME RIMIX
〜動け、その想いに従って〜



















能力の差だけが勝敗を決するとは限らない。


唯純粋な想いが奇跡を起こす。


勝負は最後まで分からない。





最後まで、踊り続けよう。
























―――【 こ の 身、 朽 ち 果 て る わ け に は 】―――
〜THE RESHUREI&SERISIA&EXITES&RAZIERUT〜











レシュレイ・ゲートウェイ。
セリシア・ピアツーピア。
エクイテス・アインデュート。
同じ科学者に生み出された者同士の戦いは、熾烈を極めていた。
この戦いにおいて、エクイテスの攻撃間合いで戦うことは間違っても得策ではない。
故に基本になる攻撃の戦法はヒットアンドアウェイ。一撃加えたら離脱の戦法。
無論、これではエクイテスに致命傷を与えられるわけがない。
一撃加えたら離脱するということは、効率よくまとまったダメージを与えられないということだ。
そしてそれとは反対に、エクイテス側としては一撃でほぼ致命傷に出来るだけの破壊力がある。
エクイテスの唯一の問題はその機動力の無さであるが、その機動力の無さを補う為に、圧倒的なまでの防御力を持っている。
―――厳密には情報という名の防御壁を纏っているというのが正しいのだろう。
相手からの攻撃に耐えに耐えて、お返しとばかりに必殺の一撃を見舞い相手を情報防御という名の鎧ごとカチ割る。
―――それが、エクイテス・アインデュートの戦い方であり、世界中で彼以外には真似の出来ない戦い方だ。
最強の矛と最強の盾を同時に持つ、まさしく矛盾という言葉を具現化したような存在。
加えてその「矛」は彼自身の拳な上に、情報解体能力まで兼ね備えている。騎士が常時『騎士剣』を持つようなものだ。
だが、レシュレイの持つ『遺伝子改変I−ブレイン』は、『黒の水』無しでもあらゆる情報干渉をシャットダウンする究極に近い防護を持つが故にレシュレイには物理攻撃がほぼ通用しない。
故に、接近戦においてなら騎士すら凌駕する存在の一つ。
…なのだが、今ではそのレシュレイの持つ究極に近い防護すら無意味。
常識を超えた防御力とはいえ、一応、耐久力の限界というものはある。
いくら『龍使い』真なる龍使いドラゴンブレード)とて、耐久力の限界値以上の攻撃を喰らえば肉体にダメージが走るし、それが重なれば皮膚細胞が壊死する危険性がある。
しかもエクイテスの一撃はその全てが「耐久力の限界値以上の攻撃」に認定された威力を持っているのだ。
故に、完全に無敵というわけではない。
それ以前の問題に、物理世界と生物学の法則に準ずるならば、この世に存在する物質の中で劣化しない存在などありえないのだが。
そして今レシュレイの目の前に、皮膚細胞を劣化を通り越して破壊せんと襲い掛かる一撃があった。
コークスクリューなどとは次元の違う殺人的威力を持った一撃。
だが、その一撃はレシュレイに命中せずに、金属を殴る鈍い音と共に突如として目の前に現れた漆黒の盾によって防がれた。
「ぜぇ…ぜぇ…間に合ったか…」
土煙を盾にして強襲してきたエクイテスの攻撃を、とっさに左手に作成した漆黒の盾を使って全力で受け流した。
結果、回避にこそ成功したが、肉体にダメージが入った。
だがこの程度、痛みさえ感じぬこの体なら何てことは無い。
それよりも問題はセリシアだ。
リーチの差があってかろうじて致命傷を避けているものの、完全にエクイテスの攻撃を避けきれている訳ではない。
その証拠にあちこちに打撲の後が残ってしまっている。
一撃で仕留められていないのは、戦闘前にエクイテスが言っていた『女性に本気を出さない』というポリシーを守っているせいだと思いたかった。
そうでなければ紙にも等しいセリシアの防御能力など、最初の一撃であっさり破られているはずである。
レシュレイに攻撃を防がれてもエクイテスは気にせず、続けざまに左拳の一撃を繰り出す。
「…っく!この!」
右手を変形させて作成した『漆黒の剣ソードオブシャドウ』を薙ぎ払い、正面から襲い掛かる拳の一撃とぶつかり合う。
だが、エクイテスの方が明らかに威力が高い。
故に右手を誰もいない方向へと流すように動かして、力のベクトルを変えて受け流す。
組み合った時に相手の方が力がある場合は、受け流すのが一番だ。
「…分かっているじゃないか!!」
得意の一撃を受け流されて体勢を崩しているエクイテスだが、その様子に焦りなどは微塵も存在しない。
そこに、セリシアがエクイテスのアキレス腱目掛けて『光の彼方』の一撃を薙ぐ。
だが命中した『光の彼方』の一撃は、やはりエクイテスの皮膚細胞にかすり傷程度しかつけることが出来なかった。
「アキレス腱を狙ったか…ギリシャ神話の英雄アキレスが唯一持っていた弱点からアキレス腱という言葉が生まれた。
 如何なる強者であろうとも絶対に鍛える事のできない、人間の完全なる急所の一つ、だったな。
 そのとおりに事が運んでくれれば良かったのだろうが…生憎と童話と現実は違うものだ」
そのまま後ろすら見ないで裏拳を繰り出すエクイテス。
だが、その時にはもうレシュレイは攻撃範囲内には居ない。
結果、エクイテスはそのまま攻撃を空振りした。
その隙を逃すわけには行かない。
「っと!!」
強化カーボンの地面に突き刺した『漆黒の剣』を支点にして、棒高跳びの要領で勢いをつけたレシュレイはそのままエクイテスの顔面を蹴り穿つ!!
「ちぃッ!!」
バランスを失い、エクイテスが吹っ飛ばされた。
そのままエクイテスは振動と破壊音を伴って強化カーボンの壁に頭から激突する。
「…どうなった!?」
作戦というか奇策が成功したものの、それでも尚警戒を緩めないレシュレイ。
だが、エクイテスはすぐには起き上がらない。
レシュレイがふと思いついた戦法。
直接的に『斬る』ことでダメージが通らないなら『叩きつける衝撃』でダメージを与えればいいだけの話だ。
結果、その理論は成功し、難攻不落のエクイテスにやっとダメージらしいダメージが入ったようだ。
その証拠に、エクイテスは一時的にだが脳震盪を起こしたらしく、頭を押さえていた。
だが、そこまでだった。
「ううおおおおおっ!!」
目を見開き、予測よりかなり早く立ち直ったエクイテスはレシュレイに対して体当たりを仕掛けた。
いきなりの事態にレシュレイの反応が本当に僅かに遅れ、刹那、エクイテスに突き飛ばされたレシュレイの体躯が壁に叩きつけられる音がした。
「レシュレイッ!!」
反射的にセリシアが叫んだ。
尚、この時点でレシュレイとの距離が結構離れていたために、エクイテスの速度ではどう考えてもセリシアには追いつけないのでセリシアへの追撃は来ない。
ぱらぱら、という強化カーボンの細かな破片が零れ落ちる音と共に、レシュレイが激突した壁からは多少の砂煙が上がっていた。
それはすぐさまレシュレイによって払われる。
「…くそっ、距離が近すぎて避けれなかったか!!」
プッ、と口から血の混じった唾を吐き捨て、左腕で口元を拭ったレシュレイは何とか立ち上がった。
「…流石の『真なる龍使い』でも、流石にそれを喰らえばダメージが入るみたいだな。
 衝撃という名の見えないダメージは、時にかなりの脅威になる」
「言ってくれるな…兄さんだって、さっきの一撃でやっとダメージ入ったじゃないか。
 衝撃と振動は防御方法の難しい攻撃方法だし、衝撃や振動の能力の使い手なんて滅多に見ないから対策も立てにくい…って事か」
「この程度などダメージにもならん。
 さて、最初の決意はどうした?俺を殺してくれるんじゃなかったのか?
 この程度では俺の肉体を超えることなど到底出来ぬぞ」
そう、エクイテスは待っている。
殺されるのを待っている。
殺してくれる相手が居るからこそ、エクイテスは戦いへと狂いきれる。
はたから見れば異常者ともとれる行動だが、エクイテスにはそれしか道がない。
「……この程度で崩れる決意なら最初からしていないさ。
 少しの事で崩れる決意なんて決意じゃない。そんなのはただの『その場限りの出任せ』だ」
「いい言葉を言ってくれるな。正にその通りだ。
 ああ、俺は口先野朗が一番嫌いでな、そういう方向にお前達が育ってなくて安心したよ」
「兄さんに…育てられた覚えも無いけどな」
「そいつは言わない…約束だろう」
レシュレイとエクイテス、お互いの息が途切れ途切れの状態であろうとも続く会話。
無論、両者に余裕など無い。
だがこれは、お互いがお互いの事を認め始めているからこそ出来る会話だ。
なら、次に行うのは生易しい言葉を交わすなどではない。
―――行動で示すのみ。だ。
「…続けるぞ、兄さん」
「言われずとも」
分かっている。までは言わなかった。










だが、レシュレイとエクイテス、二人の防御力の差がダメージの差を明確に分けていた。
先ほどの展開で、より大きいダメージを負っていたのは…やはりレシュレイの方だった。









そして幾度目かの接近戦。 
エクイテスが体を回し、放つのは破滅の如き威力を持った後ろ回し蹴り。
だが、その右足はレシュレイの顎をぎりぎりで捕らえる事が出来なかった。
セリシアの『光の彼方』がタイミングよく邪魔をしたせいで生じた一瞬の隙が、レシュレイに回避する為の時間を与えたのだ。
続いてレシュレイの反撃、『漆黒の剣』が額に命中したものの、その圧倒的物理防御力と情報防御力の前にはかすり傷程度しかつかない。
無論、反撃が来る前にレシュレイは距離を置く。
次の瞬間、エクイテスの視線がセリシアの方へと向けられた。
「…先ほどから遠くからのちくちく攻撃…でいいのか?を繰り出しているセリシアに一つ教えておいてやろう…」
ここで一呼吸置いて、
「遠距離が安全だと思ったら大間違いだぞっ!!」
レシュレイとセリシア両名の攻撃を耐えたエクイテスは、叫びと同時に強化カーボンの壁を殴りつけた。
かなりの強度を持っている筈の強化カーボンの壁が唯の瓦礫と化し、エクイテスはその瓦礫を思いっきり蹴りつける。
圧倒的速度で飛来する瓦礫と化した強化カーボンの壁だったもの。但しその目標はレシュレイではない。
「しまった!」
「え!?」
攻撃とエクイテスの接近にばかり集中していたセリシアは、前方より迫り来る黒い何かの存在に驚いた。
それが何かは確認する必要すらない。
だが、いきなりの予測外の攻撃に、セリシアの反応が遅れた。
「「セリシアッ!」」
レシュレイとラジエルトの悲痛な叫び声がハモった。
その間にも黒い何か――瓦礫と化した強化カーボンの壁だったものはセリシアの目の前に迫る。
その大きさはセリシアの身長にも匹敵しており、直撃すれば大ダメージは免れない!
「っ!」
刹那、セリシアは反射的に『光の彼方』を縦に振るって瓦礫と化した強化カーボンの壁だったものを切り裂かんと試みたが、結果は無残なもので、瓦礫と化した強化カーボンの壁だったものを真っ二つに切っただけ。
――刹那の間を置いて、切り裂かれた壁だったものの片方は問答無用でセリシアに命中した。
だが、セリシアとてまともに喰らったというわけではない。
鎌という形状の都合上、即座に振り回すという行動が取れなかった。
だからこそ『光の彼方』の柄の部分で少しでも衝撃を減らそうと真正面に『光の彼方』を構えたのだ。
結果、それによりダメージはかなり抑えることができたが、瓦礫と化した強化カーボンの壁だったものが生み出したその衝撃までは防げなかった。
「あうっ!!」
結果、足が地面から離れ、セリシアの軽い体は宙に浮いて、彼女の望む望まないに関わらず後方へとふっとんだ。
で、セリシアの背後にあるのは、ご存知強化カーボンの白い壁。
このまま吹っ飛び続ければ、背中をまともに打ち付ける事になってしまう。
否、下手すれば背骨を折る危険性すらある。
そんなのはまっぴら御免だ。
「このままじゃっ…」
そう言った次の瞬間に、地面へと足をぴん、と伸ばしていた。
結果、何とかして地面に足を突く事には成功したが、体の後方への移動ベクトルまでは修正できない。
ずざざざざざーっ、という音と共に後方へと引きずられていく、
そして、白い壁は刻一刻とその距離を縮めていって―――。
鈍い音から刹那の間を置いて、ふっ飛ばされた細い体躯が何かに叩きつけられる音…は、がしっという力強い音に変わった。
その原因が何にあるのかを、セリシアは一瞬で理解した。
セリシアは強化カーボンの壁に背中からまともに叩きつけられ――――そうになったところを、あの僅かな瞬間にその位置まで移動したレシュレイに背中から抱きかかえられていた。
そのお陰でこんな状況なのに、セリシアの心拍数は上昇してしまう。
振り向き、レシュレイの顔を見て驚いた。
セリシアの体重は軽い。
だが、それでも吹っ飛ばされた時の勢いは結構あった。
結果、セリシアの体を受け止めることは出来ても、セリシアが吹っ飛ばされた時の勢いまでは完全にとめることは出来なかった。
故に、レシュレイの背中が強化カーボンの壁に激突していた。
だが、レシュレイはそれを意に介さずに、ふぅ、という安堵の息の後に微笑みを浮べる。
痛みという感覚を無くせる『真なる龍使い』だからこそ出来た荒業だ。
「…な、なんとか間に合ったな…」
「こ…怖かった…そ、それよりレシュレイは大丈夫ですか?」
「いくら魔法士と言ってもやっぱりセリシアは生身でしかも女の子なんだろ。だから、俺が盾となるのは当然の理屈だ」
そしてレシュレイはその腕を放し、セリシアの体を地面に下ろして問うた。
「…大丈夫か?」
「…はい、大丈夫で…痛ぅ!!」
セリシアが顔を歪めて右腕を押さえる。
見ればその細腕には切り傷があり、確かにそこからは赤い血が流れ出ている。
おそらく、先ほどの瓦礫と化した強化カーボンの壁だったものの欠片が当たり、切り傷を作ったのだろう。
「…っ!」
悔しげに顔を歪めるレシュレイ。
あの時のエクイテスの攻撃が分かっていれば防げた事態だった。
その想いが、レシュレイがレシュレイ自身に己の未熟さというべきものを攻めさせる。
だが、それを察知したセリシアは、
「このくらい…レシュレイに比べたら大丈夫です。
 …だから気にしないで下さい。骨が折れているわけでもないんですから…。
 さあ、まだ戦いは終わっていないんです、行きましょう、レシュレイ」
気を強く持ち、大丈夫なように振舞った。
ここでレシュレイにいらない心配をさせるわけにはいかないから。
「セリシア…ああ、そうだな!!…まだ終わっていないんだ!」
顔を上げ、明るい声で返答するレシュレイ。
無論明るい声など出していられる状況ではないが、こんな時だからこそあかるく振るわなくてはならない事をレシュレイは知っていたし、セリシアもそれを理解していた。
ちなみにラジエルトは「またやってくれるよこの二人」とか言って、微笑ましく二人を見つめていた。
…が、ここが戦場である事を思い出し、すぐさま表情を引き締める。




  











「…行くぞ」
そのまま眼前のエクイテスを見やり、『漆黒の剣』を構えたレシュレイが疾走し、エクイテスへと切り込んでいく。
「はい!」
その後に、セリシアも続く。
















戦いは、少しずつ終わりへと近づきつつあった。
だがこのままでは「レシュレイとセリシアの敗北を持ってしての終わり」へと辿り着くのは必然。
























――――そう、『このまま』なら―――― 

























―――【 墜 天 使 の 想 い 】―――
〜THE BUREED&MIRIL&SHARON&KURAU&INTRUDER〜















もう一つの賢人会議Another Seer's Guild)』の一室に紅の翼が所狭しと飛翔する。
無論、飛翔するのは紅い翼だけではない。
無数の氷の槍。
漆黒の黒衣。
不可視の風の刃。
そして主の動きをトレースするように流れるように滑らかに動く蒼い髪。
だが、そんな中にあっても尚、紅い翼は一際目立っていた。
紅蓮の炎のような軌跡を引きつつ戦場を飛び交う紅い翼。
それは『殺す』為にだけ動く力を宿した最悪の殺人兵器だ。
圧倒的リーチとサイズの紅い翼には、未だ傷一つついていない。
当然といえば当然かもしれない。
何せ、これはあくまでも『創生』して『具現』したものであり、存在情報さえ抹消してしまえば実際の現実世界には形として残らないものなのだから。
「相変わらず馬鹿でっかい攻撃範囲だ!!俺の攻撃も遠距離系だが、それを上回る奴がいるとは!」
「調子に乗らないでっ!!」
執拗とも言える紅い翼の攻撃に、黒衣の男と蒼髪の女性の声が同時に響く。
「調子になんて乗ってない!!」
シャロンが反撃に躍り出て、ブリードがその一撃を回避する。
あんな攻撃を受け止めるなんてのは正気の沙汰じゃない。
鋭い音と紅い翼がブリードの脇をぎりぎりの間合いで通り抜けていった。
…と思った刹那、「ゴガシャァッ!!」というもの凄い音と共に、ブリードの背後でもくもくと砂煙が舞い上がった。
「げ!!」
ブリードの代わりに紅い翼の直撃を喰らった傍らの地面を見やり、ブリードは驚き思わず飛びのく。
そこにあるのは、人間四人位なら余裕で落ちそうな巨大な落とし穴。
それに存在するのは奈落の底まで続いていそうな、一筋の光すら届きそうにない光の深遠へと誘う永久とこしえ)の闇。
その底に何があるのかを知る者として、
「…気をつけろ、そこは元々溶鉱炉だった箇所だ!!
 今はもう溶鉱炉しての本来の役割は微塵も果たしてはいないが、それでもその深さは下手な谷底すら凌駕する!!
 絶対に落ちるなよ!落ちたらまず助からんぞ!」
額に冷や汗を浮かべたイントルーダーが叫んだ。
「言われなくても落ちたくねぇよ!!」
で、ブリードがそう返すのは当然の反応。
万が一の危険の事を考慮して、ブリードはすぐさまそこを離れた。
が、ブリードのその行動を読んでいたかのように見事なタイミングで紅い翼が襲い掛かってくる。
まるで、ブリードをその穴に落とすために、ブリードがそこから動けないようにするためにだ。
否、『まるで落とすために』ではなく『正に落とすために』のが正しい言い方なのだろう。
だが、ブリードとてそんなところに易々と落とされるわけにはいかない!
(I−ブレイン、情報感知割り当て変更。攻撃感知・攻撃回避の値を十に再定義。身体速度を通常の三十倍に再定義。
 要領不足につき『舞い踊る吹雪スノウロンド)』強制終了)

一時的に『舞い踊る吹雪』を強制終了させて、シャロンからの攻撃感知と攻撃回避に全力投下。
当然ながら、ブリードの周りをたゆたうようにワルツを踊っていた絶対零度の無数の結晶は一時的に消失する。
ブリードを永久の闇に落とさんとして次々に襲い掛かる紅い翼を、普段より強化した身体速度を活かして回避する。
防御なんて甘い考えが通じる攻撃ではないことを先ほどの『氷盾』で十二分に理解している。
だから避ける。
攻撃こそ最大の防御…ではなく、この場合においてなら『回避こそ最強の防御』とでも形容すればいいのだろうか…我ながら言いえて妙な形容詞だったが、今はそんなちゃちな事を気にしている場合ではない。
シャロンの攻撃をかいくぐり、ブリードはとりあえずではあるが安全圏への避難を完了する。
脳内時計は戦闘開始から丁度五分を告げたが、この場にいる者達にとっては、その五分が数十倍にも数百倍にも思えた。
それと同時に、イントルーダーが口を開いた。
但しその口から紡がれたのは、
「…なあシャロン、一つ聞きたい」
今更ながらの質問だった。
「…つまらない感傷ね…今此処で、そんな事を聞いてどうするの?イントルーダー」
「疑問に思ったんだが、シャロンは俺達を倒した後にどうするつもりだ?
 『堕天使の呼び声コール・オブ・ルシファー』には殺戮衝動に狩り出す効果は無かったから、殺戮衝動を発散するために戦っているって訳でもないんだろ?」
「ええそうよ…だけど、ノーテュエルもゼイネストも死んで、今の私がここにある。
 これが現実。だから、あなた達を倒した後にするべき事は、もう決めてあるわ」
「何だ?」
「んー、とりあえず、この世界に仕返しをするの…
寒気で空気が凍るかと思った。一体何を言い出すのだこの少女は。
「こんな世界だからゼイネストもノーテュエルも死んでしまった。
 世界が私達を非難するなら、私が世界を滅ぼす。元々この世界だって、非常に危うい状況下のもとに成り立っているんじゃない。
 そんな世界で生きていったい何になるの?
 私が……私達が一体何をしたの……どうして、どうしてこんな…」
言葉の終わりが近づいたその時に、シャロンが握り締めた両手の拳が震え始め、震えは全身へと行き渡る。
その瞳から一滴、また一滴と流れた涙が頬を伝う。
感情が抑えきれない、止める事も出来ない。心の中にしまいこんでいた今までの思いが一気に表へとあふれ出た。
魔法士でも『墜天使』でもない、人間としての少女の本心。
かけがえの無い仲間を失って一人ぼっちになってしまった少女の言いたい事が、感情の渦と成り外へとあふれ出した。
「世界なんて…大嫌い」
その一言が、言いたいことがごちゃごちゃになってしまった少女の言葉の全てを表す言葉。
今まで言えなかった、心の中に秘めていた想いが、いっぺんに溢れ出てしまった少女の言葉。
だから思ったの…こんな世界、一度滅びてリセットしちゃった方がいいんじゃないかって。
 だってそうでしょう。人類が生まれた事は間違いじゃない。それは真実。
 だけど、人類が進んできた道はどう考えても間違っちゃったんだから。
 …マザーコアによる犠牲政治、そしてその事を多くの市民に隠蔽。
 加えて、未だに軍なんていうお馬鹿さん達による圧政。
 本物の『賢人会議Seer's Guild)』の思い上がった愚行等…挙げればきりが無いわ。
 こんな世界だからこそ人々は協力しなくてはいけないのに、人々の心には強力の『き』の字も無いじゃない…。
 結局、人々は戦争から何一つ学んでいなかった…だからワイスみたいな犠牲者や、私達みたいな者達が出来てしまった。
 私達がどんな想いをしたか…先ずはこの二つの組織に思い知らせてやるわ…。
 まず真っ先に軍と『賢人会議』を倒す。この二つの組織のせいで、余計な問題ばかりが勃発しているんだもの。
 …だからこの世界においてさらなる混乱と阿鼻叫喚を招く災いの種を取り除くことから始めなくてはいけないって、そう思ったの

「…………」
先ほどまではあれほど音の絶えぬ戦場に、今、久しく沈黙が舞い降りた。
四人とも、絶句せざるを得なかったのだ。
無論、シャロンの気持ちも分からなくはない。
不幸な境遇の元に生まれ、仲間は彼女を残して死に、そして今彼女自身もとんでもない能力を持って生まれてきてしまった事を知ってしまった。
世界を信じる事をやめて、世界を捨てる事を決意した少女。
それだけが自分にできるたった一つの、世界への抗いなのだと信じた少女。
確かにシャロン自身の正義としては、筋が通っているとは言えるのかもしれない。
正義の定義は、一人一人違う定義を持つ。
だけど、それと同時に、こちら側にも絶対に言える事と、絶対たる信念を表す正義がある!!
それは―――。
「シャロン…確かにそうだ…人間は間違ってしまった。
 発達した科学力という名の凶器の元に人は暴走して道を誤り、世界を滅亡へと誘い込んだ。
 それは確かに今此処にある事実だし、俺だってその考え事態には否定出来ない…。
 だけど…それでも人は幾らでもやり直せるんだ!
 お前を不幸にした理由がなんであれ、その可能性を頭から否定する事だけは間違いなんだ!」
四人の心に共通して浮かび上がったその言葉は、ブリードによって確たる形となった。
刹那、シャロンの表情が険しくなった。
そして、感情のままに叫ぶ。
なら止めてみてよ…あなた達が信じる人間の可能性を!!
 こんな世界でそんな事が言えるのは在る意味賞賛に値するわ!
 そして、言い出したからには実行しきって見せなさいっ!

怒気を孕んだ声でシャロンは叫び、攻撃を再開した。











分かりきっている事だが、人数的には四対一でブリード達が圧倒的有利に立っている。
しかし、いくらブリードやクラウが戦闘経験を積んでいようと、魔法士、特に多人数を相手にすることに秀でた魔法士を相手にするには分が悪かった。
基本的に一度の攻撃の最大攻撃範囲に制限があるブリードやクラウと、状況や場合や戦場といったものを一切合財無視して無差別攻撃を放てるシャロンとでは、『龍使い』が戦艦を相手にするのと同じような、圧倒的な優位と劣位の差があった。
 









故に戦況はちっとも変わらない。ブリード達が不利なままだ。
今しがたクラウがシャロンの攻撃を回避しきれずに、その一撃を腹に喰らって吹っ飛ばされる。
壁に叩きつけられる前に受身をとった為に最悪の事態は逃れたが、肉体的ダメージはかなり大きいようだった。
それを見て、ブリードは思案する。
(…真っ向勝負じゃ無理だ…あいつを破るためには奇策しかない…。
 『干渉不能の掟ロストルール・イリュージョナル』が切れる隙に攻撃を差し込めればなんとかなるのかもしれないが…)
そのまま考え込む事、現実時間にして約一秒。ブリードの頭に電球が光り、
…奇策を思いついた。
故に、思い立ったが即実行。
「ミリル!!今から俺が仕掛ける!!だから、何とか回避に専念してくれ!」
「え!?ええ!?」
目を開いてシャロンの居る方向へと飛び出したブリードにいきなり無理難題を突きつけられて困惑するミリル。
非常に酷なことを言っている気がしないでもなかったが、それでもブリードは構わずにミリルから遠ざかって駆け出す。
進路を阻む紅い翼を氷剣で蹴散らし、氷盾で防ぎ、後は根性で回避する。
I−ブレインが紅い翼の次なる攻撃地点を予測してくれているものの、完全に回避できる自信は無い。
だが、よく言うではないか――肉を切らせて骨を絶つ。と。
その間にもブリードは次の演算を開始。
脳内への負荷が激しい為に今まで封印していたが、このまま出し渋っていたら本当に死にかねない。
ここで披露しないでいつ披露するのだ。
『舞い踊る吹雪スノウロンド)』――――『形状変化フォルムチェンジ)』――――『番号code)――――『数多の槍アイシクルダスト』――発動)
刹那、数え切れぬほどの数の氷の槍がブリードの周りを完全に包み込むかのように具現化する。
「何か思いついたみたいね…試してみなさいよ」
嘲るように言い捨てるシャロン。
「シャロン…いつダメージを与えられる状況になるように戻るか分からないんなら…」
だが、ブリードはそんなシャロンの言葉に構うことなく、口の端に笑みを浮べて、
「戻るまで絶え間なく攻撃し続けるだけだ!!」
ブリードのその叫びを合図に、無数に等しい数の氷の槍が速度差をつけてシャロン目掛けて襲い掛かった。
これなら、攻撃判定は常に発生している。一つの氷の槍が貫通しても、また次の氷の槍が襲い掛かる。
そうすれば、『干渉不能の掟』の切れた瞬間に―――。







「――――甘いの」
だが、ブリードの放ったこの奇策も、シャロン相手では通じなかった。
無数に等しい数の氷の槍がシャロン目掛けて襲い掛かっている間に――――、














ドシュゥッ!!!















「…か、は」
飛来したのは予測しなかった攻撃。 
その中から突如として飛来した紅い翼が、ブリードのわき腹を正確に抉った。


















―――【 こ れ が 恐 怖 を 超 え る と い う 事 だ 】―――
〜THE RON&SHUBEEL&HINA〜















論が動けない今、シュベールが何をするかなんて分かりきっていた筈の事。
だがそれでも、天樹論は動けない。
目の前に立ちふさがるシュベールという『壁』はあまりにも大きすぎる。
―――そんな中でも目に写るのは、容赦とは縁遠い言葉がとってもよく似合う光景。
「論…たすけ…!!」
「あはは、今の論に何言っても無駄よ」
救いと助けを求めて泣き叫ぶヒナ。
完全に処刑者エクセキューター)と化したシュベールは手加減など知らぬ存ぜぬ。
ヒナが先ほどシュベールに敗北した時に味わったばかりの地獄が、今、論の目の前で再び繰り広げられている。
右手だけでヒナの両腕を頭の上に上げさせて拘束し、そのまま左手から暴力の嵐が放たれて舞う。
真紅の鞭スカーレットビュート)こそ使っていないが、それでも喧嘩などとは程遠い一方的な虐待だ。
「う…」
耳を塞ぎたくなる。
肉を穿つ音がここまで聞こえてきた。
その後に続く少女の悲痛な声が、論の焦燥に拍車をかける。
分かっている。
何が起こっているかなんて分かっている。
本当は一瞬でも早くヒナを助けに行きたいのに。
頭と心がそれを大声で叫んでいるのに―――!!
「あ…」
恐怖で体が動かない。
故に、そんな声を出す事しか、自分には出来ない。
――終わった。と思った。
目の前の相手は、自分よりも強き者。
ヒナからは、この状況下でも動けない自分に対し非難の視線を送られた。
どうすればいいのか分からない。
何より、あんな痛々しい姿のヒナを見てなんていられない。
論は現実から逃げようとして目を瞑ろうとして、












―――――その時だった。 















 ―――コレデイイノ?












刹那、脳内の内に何者かが目を覚まして語りかけるような感覚が論を包んだ。








+ + + + + +







不思議な声は、さらに続けた。






 ―――貴方ハ、本当ニ、コレデイイト思ッテイルノ?




その言葉に、論は頭を振ってテレパシーでもするように答える。相手が誰だかなんてこの際関係無い。
正直、ほっといて欲しかったのだから。





 ――誰だか知らないが、こんな状況下にあって何も出来ないオレに何の用だ。




 ―――貴方ハ、アノ子ヲ救イタカッタンジャナイノ?




 ――その件だが、さっきヒナから侮蔑の視線をもらったさ…。
 大切な人が苦しんでいるのに何も出来ない事に対してな。
 …つまり、オレは失望されたんだろ。
 だから、放っておいてくれ。





 ―――自暴自棄ニナルノハ簡単ネ。
 ましら)デモ出来ルワヨ。ソンナノ。




 ―――何だと…お前はオレの何を知っているって言うんだよ。



猿と言われて怒りが湧き上がる。
何処の誰かは知らないが、いきなり出てきてぐだぐだ言われたくな―――。



 ―――ネエ、人ッテ、信ジタ相手ヲソウ簡単ニ見捨テルモノナノ?



論の反論は、その言葉によって、喉のすぐそこまで出掛かっていたところで止まって出なかった。




 ―――どういう…事だ。




 ―――アノ子ノ目ヲ見テ!




 ―――!?




声の言うとおりにして、論はヒナへと視線を戻す。
そして、そこにあったものは――――。


「ろ…ん」


拷問の中にあっても尚、希望を失わぬ瞳。
―――その目線は確実に論へと向けられている。



刹那、
論の心の中に、何か、熱いものが流れた。





 ―――あ。





 ―――分カッタデショウ?
 アノ子ハ、貴方が動クノヲ待ッテイルノ。
 ソシテ、虐待ヲ受ケナガラモ、ズット耐エテイルノ。
 ダカラ、貴方ハアノ子ノ希望ヲ叶エテアゲレバイイ。




 ―――ヒナ…こんな、オレみたいな奴の為に…。




論の瞳の端から、涙が零れる。






 ―――ソウ自分ヲ卑下シナイデ。
 貴方ハ、自分ガ思ッテイル程弱クナンテ無イ。




 ―――だが、どうやってシュベールを倒せばいい!
 オレの持つ能力じゃあ、シュベールには敵わないのに…。




 ―――ダカラ、考エルノ…貴方ニシカ出来ナイ答エガ、絶対ニ見ツカル筈ナンダカラ。





 ―――オレにしか、出来ない答え?





 ―――今言エルノハコレダケ―――後ハ自分デ考エテ。




 ―――お、おい!?




 ―――貴方ナラ出来ル筈―――ダッテ、貴方ハ――――。





…それだけを残して、声は消えた。







+ + + + + +






「…」
論の頭が、急速に冷えていく感覚を感じる。
クリアに覚醒する意識。
今の声が誰だったかなんて関係ない。
だけど、気のせいか、とても懐かしくて暖かくて優しい声だった気がする。
そして目は瞑らない。
論は、この現実から逃げてはいけないという確かな考えが、論の心の中にその存在を確立する。
元を辿れば、ヒナが痛めつけられているのは情けない自分のせいだからだ。
論がもっとしっかりしていれば、最悪、こうなる事は防げたかも知れない。
最も、過去の事など思い返しても意味が無い事くらい分かっているが、それでも考えずにはいられなかった。
全ては論自身が引き起こした事。
だから、自分が今の現実から逃げれていい理由なんて無いのだから。
そう言い聞かせ、論は考える。
――――そう。
先ほど脳内へと干渉してきた声が言う通り、考えろ。
考えろ考えろ。
考えろ考えろ考えろ。
考えろ――!!
遠距離に関する攻撃は全て無駄。
シュベールを倒すためには、やはり近距離攻撃以外に道はない。
だが、そこまで駒を進めるのにどれほどかかる!?
そしてそれ以前の問題に、どうやって近距離攻撃を叩き込む!?
目に見えている攻撃は、全て防がれる。シュベールを倒すためには『目に見えない攻撃』で不意を打つより他はない。
だが『目視できない攻撃』など、論には行うことができない。
元より『目視できない攻撃』などというのは、どこぞの時空の操り手が使う能力だ。
無論、そんな都合のいい能力なんて論は持っていない。
必要なのは、シュベールを一撃の元に倒せて、かつ、その攻撃が発生するまで見切られてはいけない。という二つの絶対条件。
そしてこの場合、望むものは圧倒的な力などではない。
シュベールは力技でどうにかなるような生易しい相手ではない。
演算防御能力が馬鹿げた高さなら、その全てを飲み込み無へと帰す究極の破壊で押せばいいとか考えそうなものだが、今ではその選択肢は意味が無い。
そもそも、I−ブレインは疲労して強制終了する直前まで追い込まれており、これ以上の長期戦など望めるはずもない。
I−ブレインが強制終了したが最後、全てが終わる。これを念頭において考えなくてはならない。
そんな中、そのような如何にもI−ブレイン疲労率がマックスまで引きあがりそうな選択肢など出来る訳が無い!!
考えろ考えろ考えて考え抜け!!
絶望などしている場合か!!
それは論自身への叱咤と激励。
直接的な攻撃が通じないのならば、間接的な攻撃でシュベールに致命の一撃を叩き込めばいい。
だが、その為には何が必要だ?
今までの戦いの知識と経験と失敗を総動員して考える。
『目に見えている攻撃』が必ずしも攻撃とは限らない。
不可視の攻撃でも、必ずしも見切られないとは限らない。
ならば―――!!!
『確かに見えているのだが一見攻撃とは認識されず不可視でも無い攻撃で、一撃で致命傷を狙える攻撃』くらいしかない。
いや待て。
そんな手段が本当に存在するのか。
―――いや、出来るはずだ。
頼りになるのは、この二本の騎士刀。
常に死と隣り合わせであるが故に、誰よりも死に敏感な戦闘経験。

そして、『魔術士』としての能力を持った、もう少しで強制終了しかねないI−ブレイン。
これらだけでどうやって逆転するのか。
思考回路がフル稼働してしるべ)を模索する。
その先に、絶対なる勝利と未来がある事を信じて。











「可哀相にね…ヒナ」
どこか遠くを見ているよう瞳で、シュベールはそんな言葉を口にした。無論手は止めない。
ごすっ、という鈍い音。
腹部に走った痛みに対し歯を食いしばって耐えるヒナ。
だが、構わずにシュベールは続ける。
「いつも夢見ていた遠い日の希望。
 手を伸ばしても、足を運んでもすぐに届かぬ所へと去っていく明るい未来。
 掴めないことも届かないことなど知っていて、けれどそれが幻想であろうと、その想いは生きる標になっていたのに。
 ずっと、ずっと、その苦しみに押しつぶされないように、必死に論を想う事で、ヒナは生きてきたのに…いざこうなると、論は何もしてくれないんだからね!!
 これを偽善と言わずして何て言うのかしら!!」
それを聞いた刹那、きっ、と凛とした表情でシュベールを睨み返してヒナは叫んだ。
「…論は…論は今、必死で…貴女を倒す術を…考えているんです!!
 だから、それまで…わたしが耐えればい…」
ごす。
「い…あ」
衝撃に、息が詰まる。
今の衝撃が来た腹部はつい先ほども蹴られた部分。
「また…同じ…とこ」
とぎれとぎれのかすれた声。耐えきれず、瞳の端から涙が一筋こぼれ落ちる。
「今時耐える女は流行らないわよ。
 でもまあ、必死の弁解、ありがとうってところかしら?
 それにしても…随分と強くなったわねヒナ。前はすぐに泣いていたのにね」
感嘆の意味を込めて、シュベールはその言葉を発した。
そう、シュベールにいくらぶたれても、いくら痛めつけられても、ヒナは泣き笑いの顔を絶やさない。
頬が赤く腫れ、体中には痛々しい痣がいくつも刻まれていて、全身が痛みを発していているにも関わらず、だ。
そこには、なんだかんだ言っても、論への希望があるのだろう。
絶対に希望を捨てないというヒナの想いが、今、唯一の彼女の支えなのだから。










(待っててくれ…ヒナ)
心の中で、論はヒナに感謝する。
ならば論に出来る事は、その期待に答えてあげるだけ。
たったそれだけの回答にいつまでかかっているのか。我ながら情けなくなる。
圧倒的戦力差がどうした。
相性的不利がどうした。
そして、何より、













 

――――天樹論は、いつからこんな腑抜けになった?
















「んー、最後のカンフル剤投入―――」
その間にも、シュベールは右手に『爪』を起動させて、










ぞぶり。











もの凄く、嫌な音がした。











その瞬間、それが引き金になったかのように、論の頭の中で考えがまとまった。











「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」













目を見開いて、論は叫んだ。
意味の無い事だと脳内では理解できていても、それでも論は叫ばずにはいられなかった。











嫌な音の正体は、まだ包帯が取れていない、ヒナの左肩への一撃。
「あ…」
その後にヒナを襲ったのは…死んだほうがマシだと言わんばかりの激痛を超えた激痛。
流れ出る紅い血が、少しは治りかけていた傷跡から再び流れ出る。
当然だろう。今のシュベールの行動は、傷口を無理矢理こじ開けたようなものだ。
最も、その傷口を最初に開いたのは他ならぬ論だった。
だが、それがなければヒナは『自動戦闘状態オートバトルモード)』から解放されなかったから、必要経費と割り切るしかないだろう。
…だが、今のはどう考えても明らかに不必要な経費だ。
俗に言う二度刺しの刑…その後のヒナの叫びは、最早声にすらならない。
「…」
ギリ、と、論の口から歯軋りの音がした。
「…シュベール!」
左肩からとめどなく流れる血によって紅く濡れたヒナの姿をしっかりと目に焼き付けて、論は眼前のシュベールを睨みつけて叫ぶ。
「先に、俺じゃなかったのか…?」
ヒナの細い肢体を流れる紅い血の色が、論の怒りの炎に油を注ぐ。
「ヒナじゃ…なくて…」
シュベールによって無理矢理こじ開けられた左肩の深い傷の酷さを目の当たりにして、両手の握り拳に力が入る。
「俺を殺すんじゃ…なかったのか…!!」
ぎり、と歯が食いしばられる。
「シュベールッ!!!」
そして、論は再び叫ぶ。
だが、あまり意に介したような素振りを見せず、シュベールは侮蔑の視線で論を見る。
「あらあら、そこまで怒らなくてもいいじゃないの…論、そんなに死に急ぎたかったのかしら?」
口元に手を当ててくす、と笑みを浮べて答えた後に、ここで一呼吸。
「まあ――――どちらにしろ、ヒナは最初っからこうしてあげるつもりだったけどね」
「な…」
「!!」
論の視線が険しくなる。
ヒナはただ怯える事しかできない。
武器を持たず、ろくな攻撃も出来ない、ちっぽけな勇気を振り絞って反撃すれば数十倍になって返ってくる。
故に今、彼女に出来るのはそれくらいしかなかった。
そしてシュベールの口から告げられる無慈悲な言葉。
「だって、今この瞬間もあたしはヒナを痛めつけたくてうずうずしているんだもの…これも『処刑の乙女ディス・アイデンメイデン)』のせいなのかもしれないけど…。
 まあ、今はある程度発散されたけど…でもまだ不十分よ。
 それに言ったでしょ、ヒナの『主な』役目は……だったって。
 論が今のままじゃ、本当にこの通りの道を歩むしかヒナに残された道は無いわよ。
 貴方と戦っている間だけ、あたしは『処刑の乙女』の殺戮衝動を忘れる事が出来るんだから。
 だから論―――早く戦いましょう。
 いつまで考えてるの?
 貴方はどこまで情けない人なの?
 大切なヒナをこんな目に遭わせても尚あな―――」
「もう…いい」
論はシュベールの言葉を遮る。
「え?」
シュベールの視線が僅かに動く。
それは期待か、それとも何か別の意味があるのかは不明だが。
「もういいと言ったんだ」
論は再び騎士刀『菊一文字』と『雨の群雲』を同時に構えなおして口を開く。
「答えは出た!」
ここで一息衝いて、続ける。












「全ては一つに繋がった。

 俺にしか出来ないことがあるって分かった。

 そんな今だからこそ宣言出来る」


















さらにもう一度、一呼吸おいて叫んだ。



















「――お前を殺すための勝利の方程式は整った!!
 さあ、終わらせようシュベール・エルステード!!!」













「!!」
シュベールの顔に、僅かな、ほんの僅かな動揺が走ったのを、論は見逃さなかった。







論の発言から、シュベールは己が待ち望んでいた時が来た事を栄解した。
(本気の、瞳…そうよ、これでいいのよ論。早く…早くこのあたしを超えなさい!!)
誰にも言わず、誰にも打ち明けなかった秘め事。
だけど、それは決して悟られてはいけない。
―――だから、もう少しだけ仮面を被らせてもらう。
本心を押し隠す、素敵な仮面を。
仮面の下の素顔を悟られぬように、挑発的な口調で言い返す。
「――言ってくれる!言ってくれるわ!あたしを殺すか天樹論!」
「お前に如何なる能力があろうが関係ない!オレはその全てを抹殺する!!」
「―――ろんっ!!!」
その瞬間、ヒナの瞳に光が宿ったのを、論は見逃さなかった。







+ + + + + +








目を瞑って深呼吸して、論は気持ちを整理する。
冷静さを取り戻した頭が、勝利への布石をI−ブレインに映し出す。
そして今、やっと思いついた。
今ある能力だけでも『見えているのだが一見攻撃は無く、不可視でも無い攻撃で、一撃状況を逆転出来る攻撃』を作る事が出来る。
それには少々手間がかかるが、それ位出切る筈だ。
今になり、やっと閃き、やっと理解する。
そうだ。
何も『目に見えない攻撃』という言葉にそこまで躍起になる必要などなかった。
先ほども考えたとおり『目に見えない攻撃』だけが『シュベールを倒せる攻撃』というわけではない。
『攻撃を悟られずに、暗殺者のように刺す』事が出来ればいいだけの事。
論の未来と顔に、光が差し込む。
勝利の鍵はすぐそこにある。
そして論は凛とした表情で―――叫んだ。
「さあ、今こそお前の待ち望んだ答えは出たぞ。
 気づいてしまえば、本当に簡単な答えだった」
論のその言葉に、シュベールはヒナを痛めつけていた手をぴたっと止めた。
『真紅の鞭』からヒナを解放した後に後方へとヒナの体を運び、そこまま横たわらせる。
そして、懐から新品の包帯とガーゼを取り出して応急手当を行う。
「え…」
意外なまでのその行動に、一瞬だが論とヒナは唖然とした。
「このままじゃ本当に死んじゃうからね…」
耳元でささやいた、その一言。
それは、今までのシュベールのイメージを覆すかのような台詞であり、処刑者の口から出るとは考えられないものだった。
シュベールの表情を見て、今度はヒナだけが再び唖然とした。
シュベールがそのとき浮べた表情は、ヒナが昔見たかもしれない優しい表情だった気がした。
どうして、今頃そんなのが見えたかなんて分からない。
その後、つい先ほどまで立っていた位置まで歩いて戻り、
「…その言葉を待っていたのよ、論!!」
今再び、論の方を振り向いて叫んだ。
「ああ、ごめん…待たせた。シュベールも…ヒナも!」
「論ッ!!」
そしてまた泣き笑いの顔で声をあげるヒナ。
やっとわたしの信じた論に戻ってくれたのね。
やっと答えを見つけてくれたのねという言葉をその言葉に乗せて送る。
「…なんだかヒナ。今日は泣いてばっかりだな」
「誰が…泣かせて…いるんですか…」
「はは…違いない」
「…だけど、論は戻ってきてくれた。
 わたしの…大好きな論に戻ってくれた。
 それだけで…嬉しい…」
「いや、オレもどうかしていた。
 たった一つの戦いの中で、相手の方が実力が上回っていただけで落ち込んで…。
 生まれてからずっと、人生が戦いだった。
 ―――そしてこれからも、戦いの人生が続くんだ。
 だから、これもまた、オレの長い人生の中の一場面。
 ここを乗り切らないと、オレに未来はないってことだ。
 ―――だけどヒナ、もう大丈夫だ。
 オレはもう迷わない。オレはもう退かない。
 オレは―――――ヒナを守ってみせるから!!
「ろぉぉぉぉぉぉぉん!!!!」
刹那、ギリッ!という歯軋りがそこまで聞こえ、その直後に咆哮が響いた。
論とヒナが同時に振り向くと、その先に居るのは他ならぬシュベール。
不愉快という言葉を此れ以上なく最大限に体現している。
圧倒的な強さでひしめく怒りのオーラが、五メートル以上離れていても嫌というほど感じた。
「お惚気のろけ)は戦闘の後にして欲しいわねぇ!
 あたしが叶えられなかった夢に対する嫌がらせもほどほどにしなさい!!
 …最も、この戦いの真の勝者が誰かだなんてまだ決まっていないんだけどね!
 さあ、黄泉の門はすぐに開くわよ。
 このあたしが、死へと誘ってあげるから!!」
感情をむき出しにして、シュベールは叫んだ。
この時、ヒナは「あ」と口を空けた。
初めてだった。
ここまで激しく感情を露にするシュベールは、初めて見た。
シュベールがどうしてここまで感情を露にするのか。
どうして論に対してそこまで執着するのか。
シュベールの叶えられなかった夢とは何なのか…。
未だに分からない事が多い。
全ては、二人の戦いの結末にあるのだろう。
その時、何を知るかなんて分からない。
そして、ヒナはただ、見ているだけしか出来ない。
――否!
見ている以外にも、出来る事はある!!
「――論!」
ヒナが発した強い声に、論は思わず振り向いた。
「出来る限り応援するから、絶対に…ぜったいに勝ってくださいね!」
―――そう、I−ブレインが起動しなくても、応援位なら出来る。
何もしないで見ているくらいなら、何らかの行動を起こしたほうが遥かにマシなのは事実。
それを理解した論は、無言で頷き返した。
そして踵を返し、シュベールへと視線を戻す。
「勝利者なんて、すぐに明らかになるさ…。
 しかもオレには勝利の女神の応援つきだ」
「…想いだけでも、力だけでも何も変わらないのよ論!
 つべこべ言っていないで、さっさと決着をつけましょうよ!!」
返ってきたのは、怒りを隠さないシュベールの発言。
再び、二人の戦士の視線が交わる。
次の瞬間、最初に口を開いたのは論。
「――シュベール、お前は最後の一歩で間違った。
 オレに本当に勝ちたいと思うなら、オレを挑発なんてするべきではなかったんだ。
 そのお陰で、お前はオレに考える時間を与えた。
 …まあ、そのせいで同時にオレの頭の中ではある仮説が思い立ったんだが…それは後だ。
 …もう、全てを終わらせる…いい加減に疲れてきたしな
「…その台詞を何度言ったかもう分からないけど、正真正銘、これが本当の最後になりそうね。
 まあ――――疲れてきたのはあたしも同意見だし、早いとこケリをつけましょう。
 だから論…死へのエスコートは最後まで責任を持って行いなさい!!!








―――そして『魔術師』『処刑者』は同時に動いた。



















この戦いの決着の時まで後僅か。
全ての時が、完結へと向かって動き出す。






















〜続く〜






















―【 お ま け の キ ャ ラ ト ー ク 】―















ノーテュエル
「コラー!!ラ…」
ゼイネスト
「待て!何でここ最近のお前は、開幕の言葉がいっつも「コラー!」なんだよ!」
ノーテュエル
「あ、バレた?」
ゼイネスト
「バレるわ!」
ノーテュエル
「えー、だって面白いんだもん、この微妙な響きというかなんというか…」
ゼイネスト
「…ああそうかい」
ノーテュエル
「…もしかして呆れられた?」
ゼイネスト
「その通りだ」
ノーテュエル
「むき〜!即答かぁ!!
 …で、話を戻すんだけど、やっと風向きが変わってきたみたいね」
ゼイネスト
「一度ピンチに陥ってからの復帰、か。ありがちだがそれがいいとよく言われる(らしい)ケースだな。で、その代表は論ってとこか?」
ノーテュエル
「そうそう!論がついに動き出したわ!! 
 しかも「勝利の方程式は整った!」なんて思いっきりかっこいい台詞言ってくれちゃって!」
ゼイネスト
「こうしてみると何か論が主人公に見えてきそうな勢いだな。
 というか、本来主人公であるはずのレシュレイの出番が他のキャラと遜色無いが為に、レシュレイ=主人公っていう基本中の基本設定すら忘れる読者がいそうだ」
ノーテュエル
「うーん、この物語は『主人公が全ての中心となって活躍する』ってタイプの物語じゃないからねー。
 だからレシュレイの行動がどうにも主人公っぽくないのもそのせいなんだろうけど…。
 でもまあ、本家WBだってそんなもんだからいいんじゃない?」
ワイス
「本家に劣らずのキャラ数ですし、いちいち全員出してたらそれこそごっちゃになっちゃいますからね。
 その為か、一部キャラがどうしても死なざるを得ないみたいなんですが…」
ノーテュエル
「その代表格がアンタね」
ワイス
「それ言わないでくださいよ!気にしているんですから!!ヽ(`Д´)ノ
 それにあなたた…」
ノーテュエル 
「ああん!?」(ギロッ!!)
ワイス
「…いえ、何でもないです」
ノーテュエル
「よろしい」
ワイス
(くっそ〜。どうして僕がこんな目に…)
ゼイネスト
「お前というキャラの宿命だ」
ワイス
「『天使』でもないのに心を読まれた!?」
ゼイネスト
「いや、態度で丸分かりだ。
 ま、大事な人の死っていうのは物語の展開の都合上ほぼ外せないようなもの。
 仕方ないといってしまえば仕方ないと言わざるを得ないと思うがな。
 何より、敵ばかり死んで味方に誰一人犠牲者が無いって言うのは流石にご都合主義が過ぎる」
ノーテュエル
「そう考えないとやっていけないわよねー、私達」
ゼイネスト
「ま、これ以上この話を続けると何となく欝な気分にすらなって来そうだから置いてくとして…。
 とりあえず気になるのは、論の脳内に語りかけてきたのが一体誰か?ってことなんだよな」
ノーテュエル
「あれってI−ブレインかなんかのお告げじゃないの?」
ワイス
「非科学にあふれているこの世界で言っても説得力無いかもしれませんが、いくらなんでもそれは非科学的すぎます。
 可能性としては、論の脳内に誰かが話しかけたって可能性があるんです。
 …が、如何せんそこまで論と親しい関係を持った人物というのは、この話まで見ても登場はしていないようですし…」
ノーテュエル
「いずれにしろ、それはこの先で明かされるって思っていいと思う。
 まあ、ここまで読んだ読者なら多分予想はついていると思うんだけどねー」
ワイス
「ああ、あの人・・・)ですか…」
ノーテュエル
「おおっと、ココから先は機密事項だから黙っておきましょ。
 で、話を変えるわよ…私思ったんだけど、レシュレイ達勝てそう?」
ゼイネスト
「無理かもな」
ワイス
「即答ですか」
ゼイネスト
「今此処で嘘を言って何になる。
 戦闘能力の差は歴然と言うほど酷くは無いが、能力の相性が悪すぎるだろ」
ワイス
「ってことは、レシュレイ達が負けた場合、最悪…主人公交代とか?」
ノーテュエル
「やめなさい、冗談にもならない!(がすっ!)
ワイス
「うわらば!」
ゼイネスト
「あー、また横道に逸れたな…全く、疲れるのが出てきたもんだ」
ノーテュエル
「とりあえずワイスは人物特性に『口は災いの元』を追加すべきね」
ワイス
「〜〜ッ!!(反論出来ない)」
ゼイネスト
「…で、これは出来る事なら出したくない話題だったんだが…シャロンの能力がやばすぎるんだが…」
ノーテュエル
「まさに堕天使って感じだわね。
 攻めて良し、守って良しの万能系…ってことになるのかしら?
 うーん、どうやって攻めたらいいのか分からないわね…」
ゼイネスト
「この世に完全な能力など無い筈だ。それに言うだろう。問題の起こらないシステムほど脆いものは無い。とな」
ワイス
「ブリード達はその可能性に賭けるしか無い。という訳ですか…。
 …話が変わりますが、ちょっと思ったんですよ…本作って気持ち悪いくらいにキャラ同士が仲良くないですか?
 普通、仲間内で一人くらいは敵対する人がいてもおかしくはないんですが…。
 本家でいう『賢人会議』の件みたいに」
ノーテュエル
「…あ、確かに…あんた、たまにはいいとこつくわね」
ワイス
「余計なお世話ですよ」
ゼイネスト
「…言われてみればそうだな。
 本家WBでも、仲良くなる為にはそれなりの過程を築いて仲良くなるんだが…。
 まあ、本家とはスケールが違いすぎるから、この位でも別にいいんじゃないか?
 エクイテスとかの時は殆どの奴が事情を知ったから、一致団結という形が出来た。
 ブリードが論と知り合っていたから、ブリード達とレシュレイ達が出会った時に敵対せずに済んだ…ってとこか」
ノーテュエル
「まあ要約すると…細かい事は無視でいいんじゃない?」
ゼイネスト
「こういったことまで『細かい事』で済ませるお前が凄いと時折思うがな」
ノーテュエル
「いい褒め言葉をありがとう…んじゃ、今回はこの辺で〆ましょうか」
ワイス
「それじゃ、たまには僕が最後の言葉を飾りますか…次回『隣り合うは死。頼りになるのは己のみ』どうぞお楽しみに」


















<こっちのコーナーも続く>









<作者様コメント>







どん底に落ちてからの逆転は、時に先ほどの戦闘での有利不利の立場すら変える可能性があります。
ついに逆転の糸口を見つけた論は、この後どうやってシュベールに立ち向かうのでしょうか?
そして、レシュレイサイドやブリードサイドに勝機は…。
全ては次回で明かされますので、お待ち下さい。





<作者様サイト>
同盟BBSにアドレス載せてるんでどうぞー。ブログですが。


◆とじる◆