FINAL JUDGMENT
〜そこに守りたい子達が居るなら〜





















両手に大きめの袋を持って目的地にたどり着く頃には、午前十一時をとっくに回っていた。

目の前の街路を大急ぎで走り抜けながら、天樹由里は視界の隅に見える脳内時計に対してちょっとした苛立ちを覚える。

「うう〜、これじゃ完全に遅刻〜」

「ゆ、由里さん、落ち着いて、な、の〜!!」

大慌てで走る由里を、茶色いポニーテールの少女、シャロンが諭す。

とは言いながらも、シャロンの息は途切れ途切れで、結構な無理をしている事が嫌でもわかった。

『身体能力制御』が使える由里と違い、シャロンは自己の運動係数を制御する能力なんて持ち合わせていない。つまり、一般の十六歳の少女が持つ程度の運動能力しか併せ持っていないのだ。

だけど、それでも急がなくてはならない。

約束の時間は午前十時だから、一時間の遅刻である。

因みに家を出たのは…午前十時五十分の事。この時点で既に五十分もの時間オーバーを招いているわけである。これでは、取り返しをつけようともつけられるわけが無い。

で、そこから十分ほど、シャロンのペースに合わせて走り続けているわけである。

ちょっとだけ寝坊したり、新しい居候が出来たから―――なんて理由は理由としてはなりえないだろう。きっと。

せめてバスか何かが整備されていればいいのだが、生憎とそんな便利なものは無い。

フライヤーを使えばあっという間に着くのだが、シティ・ニューデリー内では一般人クラスの立場である由里がそうそう簡単にフライヤーを借用出来る訳が無いし、目的地まで距離的には三キロもないのだから、仮に申請しても却下されるのがオチだ。

「うう〜、間違いなくみんな怒ってる〜っ」

あうう、と情けないため息を吐いて、街路を駆ける。

両手に持った荷物が少し揺れる。中身がちょっぴり心配になったが、今はそっちに意識を回してなんていられない。

隣を走るシャロンとて手ぶらではなく、両手に荷物を持っている。由里の袋に比べると配分は少なめだが、荷物持ちで走るというのは、例えるなら着衣水泳並みにきついものだという事を改めて理解させられる。

偽者の青空に照らされた、シティ・ニューデリーの街。

人口投影の設備が何時壊れるか分からない今、こうやって青空を見る事が出来るのは今しかないのかもしれない。

時間帯の事もあり、多くの人が街路を歩いている。

その隙間を縫うように走り抜け、長いベンチに様々なカップルが座っている公園を横切り、少し進んだところでやっと目的地に到達する。

「着きました――っ!!」

大きな声と同時に、急ブレーキをかけて止まる由里。

両手の大き目の袋をどさりと地面に置く。隣のシャロンも同じ行動を取った。

脳内時計は『午前十一時十分』…結局、一時間と十分の遅刻だ。

ぜぇぜぇ、と呼吸して、まさに貪るように脳と肺と心臓に酸素を送る―――由里の隣に居るシャロンが。

由里には『身体能力制御』があるのでそれほどのダメージではなかったが、『天使』であるシャロンにとっては二十分のフルマラソンはきついものがあったようだ。

こんな街中で飛ぶなど出来る訳が無い。それをやったら最後、マザーコアを求める軍の人間達につけ回されるどころでは済まないだろう。

しかし、それを覚悟の上で文句一つ言わずについて来てくれたシャロンに対し、由里は素直に感謝したかった。

「しゃ、シャロンちゃん!大丈夫!?」

しかし状況が状況なだけに、急いでシャロンの背中を擦ってあげる事を最優先にした。

少しだけ楽になったらしいシャロンは、それでもぜぇぜぇと酸素供給を続けている。

(…お疲れさま、シャロンちゃん)

この事態を招いた当事者として、由里は、シャロンが落ち着くまで背中を擦り続けることにした。













シャロンの荒れた呼吸が止まるまで、おおよそ五分の時を使用した。

で、これで事実上は一時間十五分の遅刻である―――流石に気まずい。

こうなったら残された手段は一つ―――堂々と正面から平謝り。だ。

目の前にそびえ立つ建物は、丸天井にたくさんの窓がついているドームのような建物。

やや古ぼけた門の表札には『ラクシュミ孤児院』と書かれている。

大きな袋を両手に持って、いざゆかん、と、由里は一歩を踏み出して、

「あ」

「あ」

「あ」

小さなゴムボールを追って小さな足でとてとてと歩いてきた四歳くらいの女の子と目が合った為、由里と女の子とシャロンが一声に同じ言葉を発した。

「…おはよう、ミニス」

固まること約一秒足らず、真っ先に我に返った由里が軽く手を上げて女の子に答える。

そして数秒の時が間を刻む。

孤児院の外にいたのは、三歳から七歳位の男の子と女の子達合わせて二十人ほど。

ある子は砂場で砂遊びをしていて、またある子はおままごとをしていたりと、思い思いの時を過ごしていた。

大方、由里の事が待ちきれず、遊び始めてしまったのだろう。

それ故か、由里の姿に気づいた男の子や女の子が、わぁっ両手を振り上げて走り出す。

包囲するように由里とシャロンの周りを囲むと、それぞれが一声に叫び始めた。

「あ―――っ!!由里お姉ちゃんだ―――っ!!」

「そうだ―――っ!!ちこくが好きな由里おねーちゃんだぁ―――っ!」

「みんなぁ―――っ!!由里おねえちゃん、来たよ―――っ!!」

決め手となったのは、誰かが発したその言葉だった。

さて、この言葉が発せられた以上、何が起こるかを想像するのは難しくないだろう。

すなわち―――とても素敵な大騒ぎになるのである。

孤児院一階の玄関から、或いは窓から、子供達が次々と飛び出してきた。

その数、庭にいた子供達と合わせて五十人ほど。

一声に飛び出した子供達は、先に由里とシャロンを包囲した子供達の後ろに並び、てんでばらばらに騒ぎだした。

「由里ねえ、おっそーいっ!!」

「わたち、ずっと待ってたんだからね―――っ!!」

「ぼくだって―――っ!!」

「お隣の人はだれー?」

「新しい先生かなー?」

「おっきなおねえちゃんだー」

「ぽにーてーるだーっ」

「クーといっしょ―――っ」

「わぁーい、いっしょいっしょ」

クーと呼ばれた赤い髪のポニーテール少女が、無邪気な笑みを浮かべてぴょんぴょんと小さく飛び跳ねる。

今までの境遇から、こういった小さな子を見た記憶が殆ど無かったシャロンにとって、今の光景はとても新鮮なものだった。

同時に、心の中でなにやらうずうずしたものが湧き上がる。

気がつけば、知らぬ間に一言を発していた。

「…か、可愛い」

顔を赤くしたシャロンは、高まる心拍音と、湧き上がる期待に乗せられて、そうっと目の前に両手を伸ばしてみた。

彼女の中に眠っていた、女性であれば誰もが持つ、母性本能からの行動だ。

「あ、だっこだー」

「だっこしてくれるのー?」

子供達の問いに、シャロンは無言で頷く。

「わぁーい!!」

言うが否や、真っ先にジャンプした女の子を受け止めてだっこする。その子は、先ほどシャロンと同じポニーテールだと言われていたクーという女の子だった。

シャロンは十六歳にしてはかなり小柄なほうだが、それでも、この年頃の子供をだっこするのは簡単だ。

クーを抱きしめた時に胸の中に広まるのは、とても優しくて暖かいぬくもり。

思わずぎゅーっと力を入れて抱きしめると、「うう、ちょっと苦しいー」という抗議が返ってきたので、思わず力を抜いてしまった。

そのまま「たかいたかーい」をやってみると、クーは嬉しそうにきゃっきゃっと歓声をあげる。

そんな様子を見ていた他の子も、

「ずるーいっ!!」

「つぎはぼく―――っ!!」

「やだー!わたし―――っ!!」

と、口々に抗議を始めた。

「はいはい、落ち着いてなの。クーちゃん、ごめんなの」

「えぇ〜、もっとだっこ〜」

両手をぶんぶんと振り回して、だだをこねるクー。

「順番なの」

「うぅ〜なの」

…クーを地面へと降ろそうとしたところ、見事に口調を真似された。

あやうく笑いそうになってしまったところをなんとか堪えて、

「口調を真似しても駄目なものは駄目なの」

そう告げて、シャロンはクーを地面へと降ろして、次に順番を待っていた子を抱っこする。

「つぎー」

「えーっ、つぎはぼくーっ」

「早く〜」

「う〜、もう〜、待ってなの〜〜。はいはい、ぎゅ〜っなの」

「うわーい、あったかいなの〜」

「むぅ、だから真似しないでなの」

次はぼく〜、とか、早く〜、とか、なの〜、とか言いながらぶーたれる子供達をなんとかなだめながら、一人一人に対して平等になるようにだっこしていく。

その様子を見ていた由里の口の端には、自然と微笑が浮かんでいた。

ちなみにその心の中では『シャロンちゃん、なんだか保母さんみたい』と思っていた。

…しかし、大部分の子供達は、当初の目的を忘れてなんていないようであった。

未だに由里を取り囲む子供達は、傍らに置かれた袋への視線と、由里への視線を忘れない。

「うー、由里おねえちゃん、いつまで待たせるの―――っ!!」

「それよりもお菓子―――っ」

「お菓子―――っ!!」

「お菓子お菓子――――――っ!!」

「甘いもの―――っ!!」

「おみやげ―――っ!!」

「あ、そうだ―――っ!!今日はお菓子じゃなくておみやげだ―――っ!!」

「そう言わないとあげないって、前にいわれてた―――!!」

「おみやげ―――っ!」

「おみやげおみやげ―――っ!!」

「おみやげおみやげおみやげ―――っ!!!」

ラクシュミ孤児院の無邪気な子供達主演による、素敵な素敵なおみやげの大合唱。

…はっきり言って、聞いている側としてはうるさい事この上ない。

由里は耐え切れず、思わず耳を塞いだ。

で、そこから連鎖反応が巻き起こったかのように、シャロンが抱っこしていた子も、おみやげの事を思い出したらしく、合唱に参加する。

「う…流石にこれはきついなの」

合唱の音量に耐え切れなくなったシャロンもまた、その時に抱っこしていた四歳くらいの男の子を地面に降ろして立たせてから、両手を使って耳を塞いだ。

だが、それでもおみやげの合唱は止まるところを知らない。

このままでは一向に事態が進展しないと判断した由里は、最終手段に出ることにした。

大きく息を吸って、叫ぶ。

「ああもう、食い意地が貼ってるんだからっ!うるさい子にはおみやげなしっ!!」

由里のその言葉を聞いた刹那、子供達は一声にぴたりと押し黙った。

鶴の一声とは、まさにこういう事を言うのではないのだろうか。

「ふう、大人しくなってくれた。
 じゃあシャロンちゃん、あれ出して」

耳を塞いでいた手を取り、胸をなでおろして安堵した由里は、事前の打ち合わせどおり、シャロンに一言。

「あ、はいなの」

淀みなく答えるシャロン。

実は、昨日の内にちょっとした作戦会議をしてあったのだ。

ごそごそ、とまさぐったシャロンの服のポケットから、古ぼけた鉄製の鍵が取り出される。

「あ―――っ、そんなところに―――っ」

「ずる―――いっ!」

「ふっふーん、まだまだ甘いですっ」

ぶーたれる子供たちに対し、思わず得意げになる由里。

実は、大きな袋には、由里にしか開けられないという特殊な仕掛けをしてあるという事を理解しているのだ。

その為に、子供達は躍起になって鍵を探そうとしていた―――最初のころは。

そして、由里には過去に一度、孤児院におみやげを持ってきて、鍵をポケットに入れていたら子供達に難なく取られてしまった経験があったのだった。
その為に、由里は様々な仕掛けを施して、子供達に対抗した。

意地になっているわけではない。ただ、子供達にちょっとでいいから『待つ』という事を覚えて欲しかったが故の行動である。

―――だが、由里の遅刻する度合いの高さから、結果的に子供達に対して『待つ』という事を教えている事には他ならないのだが。

今では子供達は由里の真意を理解しているが、おみやげの大合唱だけはもはや恒例行事のようなものになっており、やめるつもりはないらしい。

「じゃあ、お願いねシャロンちゃん」

「はいなの」

由里からの指示をうけたシャロンが、錠前に鍵を突っ込んで回す。

がちゃり、と音がして、袋のリボンに隠された錠前が外される。

このせいで袋が僅かに重くなってしまっているのだが、文句を言っていられないのが現状だったりもするのだ。万が一、リボンがほどけて中身をぶちまけてしまったらとんでもない事になる。

続いて、シャロンの手によってリボンがほどかれる。

固唾を呑んで見守る子供達。

「えーと、これかなっ?」

そういって、由里は袋の中に詰まったたくさんのものの中から一つを選んで取り出した。

取り出したその手にあったものは―――カカオとミルクがたっぷり使われたチョコクッキー。

「これは…リベカの分ですっ」

「うん!!」

「えーと、次は…ラフィンの分!」

「おうっ!!」

と、そんな感じで、袋の中から次々と取り出されるお菓子を、由里は次々と子供達に渡していく。

シティ・ニューデリーでのお菓子の生産能力は低い。

故に、孤児院のおやつとして出されるお菓子はいつも決まりきったものになってしまい、子供達は表では文句こそ言わないものの、内部では不満たらたらの筈だ。

その為、由里が他のシティに買出しに出かけたりして、こういったものを購入してくるわけである。

出来ることなら、お菓子などではなくぬいぐるみとかそういった物をプレゼントしたいのだが、生憎と今の世界事情からそういった類の嗜好品を手に入れるのは非常に難儀な技で、特に正規ルートでの入手は絶望的である。

最終手段として闇企業的なところをあたれば何とかできなくも無いが、由里はそういった道に足を踏み入れる事を確固として禁じていた。

場合によっては、この孤児院の子供達にもなんらかの被害がかかる可能性が十二分に考えられるからだ。

そのうちに、袋の中身は段々と減っていき、

「これで最後です」

「わぁーいっ!!」

最後に、袋に詰められたお菓子セットを受け取った六歳くらいの子供は、ぴょんぴょんとはねて大喜びする。

これで、由里が持ってきた分とシャロンが持ってきた袋の中身は、四つとも空っぽになった。

お菓子を配り終えて、あちこちでお菓子を口にする子供達を見届けた後に、由里は隣に居たシャロンへと振り向いて告げる。

「…シャロンちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど」

「なんなの?」

「私、これからちょっとここの院長さんとお話をしてこなくちゃいけないから、シャロンちゃん、この子達と遊んであげてくれる?」

「…え?」

「だから、言葉通り、この子達と遊んであげてって事」

「そ、そんな事言っても、私、こういう子達に接触したことってないなの。だからどうしたらいいなの?」

由里からの突然の依頼に戸惑うシャロン。

だが、無理も無いだろう。今までが戦いばっかりの人生を歩んできたせいで、幼い子との触れ合いが殆ど無いシャロンには、そういったコミュニケーションの取り方に対する知識が無いのだ。

『高い高い』程度の事なら一応理解できてはいるのだが、幼い子がどんな遊びをするのかという事に対しては、シャロン自身が体験していない為に、どうすればいいのかが分からない。

「あー、えっと、それは…」

「いいからあそぼ―――っ」

頭を人差し指で抑えた由里の思考は、近くの子供の叫びによって霧散した。

「うん、あそぼ―――っ!!」

「あたし、おおきなおねえちゃんがいてくれたらなぁって思ってたのー」

「こっちこっちー」

「おままごとがしたい〜」

「だ〜めっ、かくれんぼ〜」

「鬼ごっこ〜」

それが引き金になったかのように、シャロンの周りに次々と子供達が集まる。

口々に口論する子供達は十人ほど。

「せ〜のっ!!」

「え!?え!?」

「ずるずる〜」

「それそれ〜」

その十人に一斉に左腕を掴まれて、シャロンはおっかなびっくりな足取りで子供達に連行された。

一人一人の力はとっても弱いけど、十人も集まると流石に対抗できないし、下手して子供達に怪我を負わせてもいけないので、迂闊な行動が取れない。

「ちょ、ちょっと、由里さ〜ん」

助けを求めてその名前を呼ぶも、

「…ごめんねシャロンちゃん、それはちょっと私でも無理なんです」

申し訳なさそうに小さく舌を出した由里から返った来た答えは『諦めなさい』と如実に告げていた。

「え、えぇーっ!」

そんなシャロンの叫びは、子供達によって孤児院の第二玄関まで連れて行かれたときに、完全に途絶えた。













「いつもご苦労様。由里」

シャロンの姿が見えなくなったのを確認してから二秒後、背後から聞き覚えのある声がかけられる。

振り向くと、見慣れた姿が目に入った。

それは、ふわっとウェーブのかかった栗色の髪の毛を肩口で切りそろえた、眼鏡をかけた由里と同い年の少女の姿。

「あ、ルーエルテスさん、こんにちは」

ルーエルテス・オルフェリーア。それが今目の前にいる、この孤児院の院長の名前だ。最も、この建物は以前は別の人が経営していたらしいが、とある事件に巻き込まれて死亡してしまった為に、今こうしてルーエルテスが後を継いでいるという事しい。

由里は何度もこの孤児院に来ているので、お互いに顔を知っている。

時間的にお昼が近かったせいか、いつも着用している茶色を基調とした修道服のような服の上に、エプロンをつけていた。

本人曰く実年齢は二十一歳らしいが、どんな手法を用いたのかその外見年齢は十代半ばで、由里と同い年にしか見えない。

これを『サバを読む』と形容していいのかどうか、由里は結構迷った事もあった。

「…変わった事は無いですよね?ルーエルテスさん」

「ええ、みんなとっても元気に過ごしてるわ。
 シェンナは相変わらずおねしょ…」

「せんせい!!」

振り向くと、今正に滑り台から降りようとしていた五歳くらいの小さな女の子が顔を真っ赤にして怒っていた。どうやら聞こえていたらしい。

「えーっ、またおねしょしたんだー」

「日本のちず作りだー」

「うるさーいっ!」

滑り台の上で、小さな喧嘩が勃発した。

何の前触れも無く巻き起こった子供達の小さな喧嘩を見て、思わず苦笑を漏らす二人。

だが、事の発端としての責任を感じてか、しばらくすると、ルーエルテスが子供達をなだめる為に歩き出した。

「はいはい、喧嘩はその辺でね」や「おねしょするのは仕方が無いことなんだから」といった巧みな言葉で、子供達を落ち着かせる。

一通りなだめ終えた後に、ルーエルテスは再び由里の居る所まで戻ってきた。

「…うまい事誤魔化しましたね」

「当然。そうでなければ孤児院の院長なんてやっていられないから。
 …ところで、お連れさんのあの子の様子を見なくていいの?」

「それが、ちょっと危なそうだったから流石に見てあげようと思ったんだけど、シャロンちゃんったらどこに行ったのかさっぱりで…」

きょろきょろ、と由里がシャロンの姿を探すと、

「…えっと、こうなの?」

右側から聞き覚えのある声がした。

「あうー、それはさっきやったかもー」

「反対方向に動かしてみたら?」

声のした方を振り向けば、窓越しには何故か知恵の輪を相手に悪戦苦闘するシャロンの姿。

おそらく、子供達がどうしても解けない知恵の輪を解いてくれるように頼まれたのだろう。その周りには十人くらいの子供達が、期待のまなざしでシャロンの手元を見つめていた。

困惑するシャロンに対し、聞こえていなくても「がんばってね」とこっそりエールを送った由里は玄関の中へと入り、孤児院の院長の部屋へと向かった。










「―――いきなり本題を切り出しますけど…メルボルンで、『賢人会議』による襲撃事件が起こったそうですね」

二人分の足音が院長室の床に反響する中、ルーエルテスは告げた。

「…うん」

そう頷いた由里の口調は重く、表情は暗い。

用意された椅子に座るなり俯き、両手の拳を握り締めている。

「これでまた、たくさんの街の人達が、そして子供達が殺されました…。
 『賢人会議』―――あなた達は一体何がしたいのっ!?」

俯いたまま、由里は叫ぶ。

その小さな肩が、ふるふると小さく震えている。

頬を伝うのは、瞳から流れおちる小さなしずく。

「あらあら、相変わらず泣き虫さんなんだから…」

微笑を浮かべて、ルーエルテスはエプロンのポケットから清潔なハンカチを取り出して、由里の頬を伝う涙を拭う。

その間にも由里は嗚咽交じりの言葉を紡ぎ続け、ルーエルテスは悲しさと悔しさを同時に混ぜた由里の言葉を静かに受け止めていた。

「…でも、どうしてルーエルテスさんがその事を知ったんですか?」

胸のうちを吐き出して少しだけ落ち着いたのか、由里がゆっくりとルーエルテスに問うた。

「ふふ、こう見えても、研究部にも司令部にも軍部にも知り合いくらいいるんですよ」

「すごい人脈ですね」

「それは褒め言葉と受け取ってよろしくて?」

「そうです」

と、素直に由里は頷く。

ここの院長を務めているルーエルテスは、実は第三次世界大戦にも参戦していたらしい。

といっても前線に立ったわけではなく、専ら司令塔として働いていたようで、その作戦立案能力の高さから「ミッションコンプリーター」という大層な異名で呼ばれており、どこぞの「プランナー」とは、敵ながらもお互いに認め合っていたようである。

もちろん、両者ともども、それ以外の敵軍には恐れられていたのは言うまでも無い。

味方にすれば頼もしいが、敵に回すととてつもなく恐ろしいという点が共通していたからだ。

「ルーエルテスさんも頑張っているんだから、私も頑張らないと」

「…でも、無理はしないでね。由里」

話の最中に、突如、穏やかな顔でルーエルテスが告げる。

「…何がですか?」

一瞬、その言葉の意図が理解できず、由里は聞き返していた。

「貴女は頑張り屋さんだから、そのうち無理しすぎて体を壊しちゃうかもって思っただけよ。
 …前のあの事件の事からすごく頑張っているみたいだけど、やっぱり貴女はまだ年頃の女の子なんだし、ちゃんとした睡眠を取らなきゃだめよ。
 この前なんて、徹夜明けでここに来たから、目の下にクマを作ってたし。
 あの時の事が尾を引いているのは分かるけど、あれはどうしようもなかったんだから…」

「う…」

二つの意味で、由里はうつむいた。

一つは、前回孤児院に来たときに『くまさんが出来てる―っ』と子供達に言われたのを思い出したからだ。

あの時は忙しくて寝る暇すら無かったとはいえ、由里とて外見年齢十七歳相当の少女である。流石にそれを気にしないわけにはいかなかった。

もう一つは―――以前起こった『あの事件』についてだ。

ルーエルテスの『あの時の事』という単語が、かつての『あの事件』を思い出させる。

そして、その言葉を聞く度に、心の中につらいものが押し寄せてくる。

―――それは、由里が『賢人会議』を倒そうと思った事の発端とも呼べるもの。

五ヶ月前にシティ・シンガポールで起こった、『賢人会議』による子供達の虐殺事件。

記憶を掘り返せば、今でも鮮明に思い出せる。

血にまみれた、幼い子供達。

まだ、いっぱいやりたい事があったのに、それも叶わない夢になってしまった。

親を亡くして一人ぼっちだったところにやっと『家族』が出来たのに、掴んだ幸せはあっさりと壊れてしまった。












――そう、あの日、由里は決めたのだ。

戦うんだと。

これ以上、可哀相な子供達を出したくない為に。

そして、子供達を守る為に―――。











だが、由里といえども、一度に世界規模で孤児院を回るのは到底無理な話だ。

シティとしても、そうそう簡単に外出許可を出してくれるわけではない。

その為に、予め日付を決めて、その日に向かうようにしている。

その時に、そこの院長から話を聞く。

新しく受け入れた子供が居るか、何らかの形で犠牲になった子供はいるか、などを詳細に聞いて、その上で対策を練ったりする。

今のところはシティの方もある程度の予算をまわしてくれてはいるものの、それでも、安全かどうかと言われたら、首を横に振るしかない。

だが、交渉の成果は一応せいぜい地下シェルターなど最低限の防衛機能が備えられた程度で、これ以上の設備投資は困難らしい。

もちろん、エネルギーに余裕さえあれば、もっとまともな設備を作れる。

だが、シティ・ニューデリーもまた、慢性的なエネルギー不足に悩まされており、シティ維持の為のエネルギーを第一に優先しなくてはならないため、それが限界だったという事らしい。

それもこれも、全てはマザーコアを強奪する『賢人会議』が悪いのだ。

マザーコアにゆとりが出来れば、人々の暮らしはもっともっと楽になる。

なのに『賢人会議』はそのエネルギーを平気な顔で強奪する。

『賢人会議』を反社会的行為を平然と行うような状態に追い込んだものが何なのかなんて知らないけれど、それでも、人々の暮らしを脅かすような『賢人会議』を許すわけにはいかない。

『賢人会議』さえいなければ、あんな風に無残にも殺されていく子供達だって居なくなるはずだったんだから―――。

天樹由里は、一欠けらの疑いも無く、そう思っていた。

それは、彼女の過去の経験から編み出された、一つの見方―――――。











「…ごめん、迂闊だったわ」

せっかく明るくなり始めた由里の気持ちを再び静めてしまった事を理解したルーエルテスは、素直に謝罪した。

「構いません…私は、絶対にそれを忘れないって決めたんですから」

「…ふう、強がっちゃって…そこが由里のいいところでもあり、悪いところでもあるんだけどね…。
 …あ、そういえば今度、ここに知り合いが訪れるって連絡があったわ」

と、会話の途中で話を変えるルーエルテス。おそらく、同じような話をいつまでも引きずっていては拙いだろうと判断しての事だろう。

「知り合い…ですか?」

「ええ、由里だから明かすけど、その人はシティ・メルボルンの軍人さん。
 で、シティを…っていうよりは、シティに住む弱い人々を守る為に一生懸命に働いているんだって」

「そうなんですか…でも、どうしてそんな話を私に…?」

由里のその問いに対し、ルーエルテスは左手の人差し指を立てて、微笑を崩さぬまま答える。

「んー、なんていうか、由里とその人って似てるのよ。
 物凄く一直線なところとか、他人を思いやれるところとか。
 あ、外見年齢は二十歳くらいだから」

「…なんでそこで外見年齢の話になるんですか」

「だって、三十路過ぎのおじさんとかが来たら、由里がびっくりしちゃうと思って」

確かに驚くかもしれないが、それとこれとは別問題な気がする。

自分ばかりが冷やかされるのもなんか悔しいので、由里も言い返すことにした。

「もぅ…そういうルーエルテスさんはどうなんですかっ」

「え?」

「私にばかりそういう話を振らないで、少しは自分の事を考えたらってちょっと思っただけですけど何か?
 確かルーエルテスさんには、待ち人がいたはずじゃなかったんですか?」

「あー、言ったわねこいつ〜っ!!
 ど〜せ私は帰らぬ人を待つ寂しい女だわよ〜〜っ!!」

言うが否や、ルーエルテスは両手で由里のほっぺたをつまみ、軽く左右に引っ張る。

「ふぁ、ふぁにふるんでふかぁっ」

『な、何するんですかっ』という由里の言葉は、ほっぺたをつねられている為に思い通りの言葉として発音されてくれない。

「こういう悪い口にはおしおきだー」

続いて、ルーエルテスは軽く力を入れて指を動かす。

「い、いひゃいでふ、いひゃいってふぃってまふ〜」

『痛いです、痛いって言ってます〜』と言っているのだけれど、やっぱり正しい発音にはならない。というか、なってくれる訳が無い。

「えーと、後はこうしてあーして…」

「ほめんなはい〜〜」

『ごめんなさい』と言っても、ルーエルテスは許してくれず、その後しばらくの間、頬をつねられたり引っ張られたりと、いろんな意味で遊ばれた。

ルーエルテスは、オイタをした子供に対しても頬をつねっておしおきをしているという話を、由里は今更ながらに思い出していた。

もちろん、本気で引っ張ることは絶対に無いという事は分かっていたのだが。
















「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃった」

「…」

申し訳なさそうに謝るルーエルテスに対し、由里はぷい、とそっぽを向いた。

一日に何回謝れば気が済むんですか、という言葉は心の中だけに押しとどめておいた。下手に口にすると、また、さっきのような事が起こるかもしれないからだ。

ルーエルテスに散々引っ張られた両側の頬は赤く腫れていて、ちょっとひりひりする。

「だって、由里のほっぺたってとっても柔らかくて、思った以上に伸びちゃうから悪戯心をくすぐられるんだもの。
 ここの孤児院の子供達じゃそうはいかないから尚の事だし」

「…だからって、人をおもちゃにしないでっ」

そっぽを向いたまま答える由里。

だけど、本気で怒っている訳ではない。ちょっと、へそを曲げているだけだ。

「ほんの冗談じゃないの」

「冗談でも痛いのはどうかと思います」

「一種の愛情ひょうげ…」

「同一性別で愛を語るのもどうかと思います」

「…はぁ、ほんと、貴女って頭が固いわね」

拗ねたまま一向にこちらを向かない由里に対し、失笑するルーエルテス。

「あ、頭が固いのは生まれつきですっ」

照れくささを隠し切れないツンデレ少女のように、由里は頬を僅かに赤くする。どうやら、心の中では気にしていたことらしい。

そんな由里を見て、ルーエルテスは聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。

「だけど、貴女のお陰で、子供達には希望が沸いている事も確かなのよ。
 あの子達はみんな、親兄弟を失っていて、親の愛情を求めている。そして、そこに貴女が来てくれて、それが嬉しいから、たとえ本当の親じゃなくても、あの子達はみんな、貴女を慕ってくれてる。
 あの子達が浮かべる笑顔は、私だけの頃には見ることが出来なかったわ。
 だから…ありがとう。由里」

「…」

魔法士である由里には、その言葉が聞き取れてしまった。否、ルーエルテスも最初からそのつもりだったのだろう。

胸の中にあった怒りが急速にしぼんでいくような、そんな感覚。

だけど、一度そっぽを向いてしまった手前、そうやってすぐに態度を改めるわけにもいかないので、結局、それから五分位してから、さも『今、機嫌を直しました』といった感じの顔をして振り向いてあげた。

「…由里お姉ちゃん、遊ぼうよー」

…その時になって、コンコン、と窓ガラスを叩く音がして振り向くと、その先には、右手に小さなお人形をしっかりとつかんでいる、ショートヘアの女の子の姿があった。

「…この前のおままごとの続きがしたいんじゃないの?」

「…なんで知ってるんですか」

「当然よ、私はここの院長なんだから。
 それより、行っておあげなさないな」

「…そう、ですね」

ちょっとぎこちない返事を返した後、由里は椅子から立ち上がり、女の子の元へと駆け出した。











その後、空が橙色に染まる『夕方』になるまで、子供達と遊んだ。

疲れきるまで、遊んだ。

由里のほっぺたが腫れていたことについて言及する子供は殆ど居なかった。みんな、ルーエルテスのおしおきの事を知っているからこその反応である。

唯一、シャロンだけが頭に疑問符を浮かべてその事を質問しようとしたら、子供達に口をふさがれて、その語、耳元で内緒話のようにして教えてもらっていた。

ちなみにシャロンはというと、感応力が高いというかなんというか、由里がルーエルテスとの会話を終えた時には既に子供達に馴染んでいた。

それを見たルーエルテスが『もしかしたら保母さんの才能があるんじゃないの』と、うんうんと頷きながら告げていた。











物事には、始まりがあれば、終わりがある。

それは絶対に絶対で、変えようの無い事。

そして、今日という日にも、終わりの時が近づいていた。

「それじゃあ、今日はこの辺で失礼します」

「失礼しますなの」

孤児院の入り口で、頭を下げて別れを告げる二人。

子供達の中には「やーだーっ!」とか「もっとあそぶ〜!!」と不満をたれる子供も少なくなかったが、年上の子供達やルーエルテスが諭してくれたお陰で、渋りながらも大人しくなってくれたようだ。

みんなで一箇所に固まって由里とシャロンの顔を見上げて、その後に続くのは、

「由里お姉ちゃん、またねー!!」

「バイバイ――っ!!」

「今度もクマを作らないでね――っ!!」

「おみやげーっ!」

「この次も、シャロンお姉ちゃんも一緒に来てね――っ!」

「かくれんぼ、面白かった―っ!」

「お怪我を治してくれて、ありがと――っ」

「なのー」

子供達なりの『さようなら、また会いましょう』の挨拶だった。

「うん、さようならー」

「また来るなのー」

二人は手を振りながら、ゆっくりと孤児院から遠ざかっていった。















すっかり空っぽになった袋は、孤児院のほうで引き取ってくれた。

大きい分、切り取って子供達の洋服を作るのにも使えるらしい。限りある資源の再利用、といえば聞こえがいいかもしれないだろう。

そして今は、街路を歩いての帰り道。

橙色に染まる偽者の夕焼けは本物そっくりだけど、偽者はどうあがいても本物にはなれない。

だけど、ずっと青い空のままだったり、ずっと漆黒の夜空であるよりはずっとましな筈。

そして、その夕焼けの下を並んで歩く二人は、はたから見れば、仲の良い姉妹に見えても不思議ではないだろう。

「で、シャロンちゃん、子供達とのふれあいはどうだった?」

夕焼けに照らされた由里の顔に、ちょっと橙色がかかっている。

「第一感想を述べるなら…由里さん、私を見捨てるなんてひどいなの」

そう言ってぷう、と頬を膨らませるシャロン。どうやら、子供達に連行される時に笑顔で見送られたことを未だに根に持っているらしい。

振り返った時に夕焼けの光が当たり、シャロンの顔が赤く染まる。

「見捨てたって言われても…でも、シャロンちゃんはまんざらでもなかったんじゃない?小さな子達に囲まれたんだから」

「それは…そうなんだけどなの」

シャロンとしてはそこを突かれると反論できない。実際、楽しかったのは事実なのだから。

「それに、見ていてすっごく楽しそうだったしね」

「…今まで、ああいう子達に触れられる機会が無かったからなの。だから、ああいった子達との触れ合いっていうのは、本当に初めてで、それでいて新鮮だったなの。
 そして、一つ分かった事があるなの」

「なあに?」

「由里さんが、ここまで頑張る理由をなの。
 以前、由里さんは、『賢人会議』に殺された子供達みたいな子達を二度と出したくないって言ってたなの。
 かわいい子供達を守りたい理由というのが、分かった気がするなの」

その言葉を聞いた由里が、微笑みを浮かべた。

向かい合う形になっていたシャロンは、その微笑みを素敵なアングルで見ることが出来た。

「…分かってくれたんですね、嬉しい!
 ――そう、それが、私が戦う理由の一つなんです」

少女の微笑みは、とても戦いに挑もうとする人間のそれとは思えないほど、柔らかくて暖かみのあるものだった。





















―――ところで、ここに一つの事実が存在する。

実は、今日の事からとある考えが導き出されて、帰り道の中でシャロンの心の中には一つの疑問が浮かび上がっていたのだ。

だが、状況が状況だったので、今はそれを口に出さないでおいたのだった。















<To Be Contied………>















―【 お ま け の キ ャ ラ ト ー ク 】―










ゼイネスト
「ふむ、今回も無事に終わったか」

ノーテュエル
「どーでもいいけど、作者はこの手の話を書くのが妙に苦手のようね。
 DTR時代にバトル連発してた悪い癖がまだ残ってるみたい」

ゼイネスト
「いきなりぶっ飛んだ話をどうも(棒読み)」






ノーテュエル
「んで、今回のお話なんだけど…天樹由里もまた、イルと同じことしてたのね」

ゼイネスト
「あの時の様な犠牲者を二度と出したくない…そういう思いが彼女を動かしていると、そういうわけか」

ノーテュエル
「そーそー(ポチッ)」

ゼイネスト
「…って何の前振りも無しでゲストを呼ぶなっ!!」

ノーテュエル
「甘いわ―――っ!クライアント流・二十五の必殺技が一つ『そ知らぬ顔でこっそり行動』よ!!」

ゼイネスト
「そんなの必殺技でもなんでもないだろ!!」

ノーテュエル
「何を言うのかしらゼイネスト!!
 人とは、常に隠された必殺技を用意しているもの!!
 どこぞのゲームで瀕死時に通常攻撃をすると、十六分の一の確率で『おしおきメテオ』なんてのが出たりするのよ!!」

ゼイネスト
「どこのFFYかっ!」

ノーテュエル
「そこで答えをあっさり言うな!!
 …と、早速誰かが呼ばれたようね」

ゼイネスト
「…神様、誰かこいつの暴走を止めてください」








ワイス
「おや、ここは…」









ノーテュエル
…どぉうりゃぁ――っ!!
 開幕直後の挨拶代わりに受け取れ―――っ!」(バキッ!!)

ワイス
「あうちっ!!
 な、なんでいきなり正拳突きが飛んでくるんですか!!
 親父にもぶたれたこと無いのに!

ノーテュエル
「親にぶたれずに成長する子供なんているわけないでしょー!!
 というか、この私が苦労してボタンを押したら、よりによって何であんたが出てくんのよ!!
 FJ本編にも(由里の回想だけど)出てきたし!!一体何なのよこの扱いの差は!!」

ワイス
「そんなの僕だって知りませんよ!そもそも、呼ばれたくて呼ばれたわけではありません!!」

ゼイネスト
「ノーテュエル、お前にいい言葉を教えてやる」

ノーテュエル
「何よ」

ゼイネスト
「因果応報」

ノーテュエル
「むき〜!!なんでそうなるのよ〜!!
 てか、あんたもそうじゃないの!!」










ゼイネスト
「さて、今回は何について話しあおうか?」

ワイス
「えらく冷静に切り出してますねぇ」

ゼイネスト
「当然だ。
 今回はおちゃらけアリで語ってはいけないような話だからな」

ノーテュエル
「あんたの口からおちゃらけっていう単語が出てきてるのが凄いと思えるのは何故かしら…」

ゼイネスト
「気のせいだろう。
 んで、今回の要点…はさっき言ったからいい、か?」

ワイス
「…まだ、世界には無事な子供達がいるんですね。
 正直言って安心しましたよ」

ノーテュエル
「そっか、あんた、クレセント孤児院の院長さんをやっていたんだったわね」

ワイス
「ええ。
 そして、僕のような悲劇は、二度と起こってほしくなんてありません。
 だから、彼女達には頑張ってもらいたい…ただ、それだけですよ」

ノーテュエル
「素の状態だと怖いくらいに素直な善人ね、あんた…」

ゼイネスト
「シャロンも子供達と触れ合うことが出来たし、いい傾向だ。
 俺達がいなくても、何とか生きていてほしいからな」

ワイス
「ラクシュミ孤児院のルーエルテスも、脇役的存在として登場したとはいえ、いい味を出してますね。
 しかし、『ミッションコンプリーター』とは、また大仰な称号を…」

ノーテュエル
「そうそう、その人で思ったんだけど、実年齢が二十オーバーなのに、外見が十代半ばなんだっけ?
 どんな秘術を使えばそんなことが出来るのか、本当に疑問だわ」

ゼイネスト
「ま、その辺は後々まで待とうじゃないか」

ノーテュエル
「…うーん。それもそうか。
 で、後は何か語りたい人居る?」

ワイス
「そうですねー(はらり)

(ワイスの懐から、一枚の紙切れのようなものが零れ落ちた)

ゼイネスト
「!?」

ノーテュエル
「ちょっと!
 今!ワイスの懐から何かが落ちたわ!!これは何だ――!?」

ワイス
「い、いつの間に!?
 そ、それだけは見ないでくださ…」

ノーテュエル
「あーっ!!これは…」









(ピ――――――ッ!!!)←ネタバレを防ぐ為の放送禁止音。








ノーテュエル
「…放送禁止コードがかかっちゃったし、時間的にもそろそろ頃合いだから、今回はこれでおしまいにするわね。
 むふ〜、それにしても、これは本当に以外な展開だわ」

ワイス
「あ、危なかった…!
 これだけは今バレちゃ拙いですからね。色々と。
 そ、それでは次回『もういない家族の為に』まで、しばしの休みを」

ゼイネスト
「ふ〜、今回『も』無事に終わった。約一名の事が気がかりで気が休まらん」

ワイス
「まったくですよ」

ノーテュエル
「誰のこと言ってんのよ〜っ!!」←(お前だ)























<こっちもTo Be Contied〜>




















(あってもなくてもどうでもいいような)作者のあとがき>







すみません!今回も掘り下げなんです!
本家キャラ出したいんだけど、掘り下げが中途半端だとDTRの二の舞になりそうなので、しばらくはご了承くださいませ。


子供達の無邪気な姿を書く事が出来て、今回はちょいと満足って所でしょうか。
いえ、私自身も子供は好きなもので。
ただ、保育士になりたいとかそこまでは考えた事はありませんけれど。


ルーエルテスについてですが、まあ、彼女は恭子と同じで、ただの脇役ポジションですね。
といっても存在感は十分なキャラにしたいので、出番を作ってみたりはするのですが。


あ、キャラトークでワイスが落としたアイテムの答えが分かった人、居たら報告でもどうぞ〜。


それでは、この辺りで。


○本作執筆中のお供
アーモンドチョコ







<作者様サイト>
Moonlight butterfly


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