■■HaLU様■■

強さとは何か…。−Prologue 0−


強さとは何か…。

戦うとは何か…。

その問いに答えてくれる者はもういない。

永遠に続くと思われた時間はもうない。

俺の隣にいたアイツも今はいない。



闇夜に一筋の剣閃が走る。
その後にどさりと何かが倒れる音。
よく見るとそれは人間だった。
それを中心として血が広がっていく。
その人間を切った男−黒沢祐一は剣を仕舞う。 そして、今自分が切った人間の死体を見もしないで振り返り去っていく。

彼、黒沢祐一は今自分専用のシャトルの座席に座って外を見ていた。ある任務である男を殺してからか れこれ1時間になる。楽な任務だった。シティ神戸の重要機密書類を持ち出した男から書類を取り戻し 、機密保持のため男が逃げ込んだ施設の破壊とその男の抹殺。
別に珍しいことではない。こんな任務はよくあることだ。それに、黒沢祐一は過去の戦争で多くの人間 の命を奪っている。今さら、人一人殺したところでどうとなるものでもない。それに、これは任務だ。 感情なんてものは無意味だ。軍人に必要なものは上の命令に意見をせず、それをすぐに実行することだ 。

外を見ているうちにもうシティに着いたらしい。
祐一はシャトルから降り、ある場所へと向かった。
その途中で祐一は町に寄った。花買うためだ。アイツが好きだった花を買い、店を出て、町を歩く。
町の様子はいつもと変わらない。人々の顔には疲れが見えていた。それは、歳をとるにつれ、疲れから 絶望へと変わっていた。町の人々は知っているのだ。今の時代がどういう時代かを。
今の空に太陽などない。空を覆うのは厚い灰色の雲だけ。
その雲のせいで太陽の光が届かず、大地は極寒の地と化している。人々は過去の大戦で生き残ったプラ ントや発電所に身を寄せ、集落を形成している。だが頼みのプラントも発電所ももう寿命だ。プラント や発電所が機能を停止したら、彼らは極寒の大地へと放り出されることになる。人々はそれを恐れてい るのだ。 だから、町の人は疲れた顔をしている。生きた心地はしないだろう。
町の人々の疲れた顔を視線の端に入れながら、祐一は花を抱え、ある場所へと向かう。
しばらく歩いて、祐一は足を止める。
そこは小高い丘だった。その当たりはまだ暖かい。そして、その丘の中心に向かう。すると、そこには ひとつのお墓があった。そのお墓にはこう書かれていた。

――七瀬雪ここに眠る――
七瀬雪。
そう、彼女こそ祐一が最初で最後に愛した人。
その彼女も今はもういない。彼女は今シティ神戸のマザー・コアとしてこのシティを静かに見守ってい る。
祐一は墓に花を供え、墓をそっと指でなぞる。
「俺、また任務で人を殺してきたよ」
祐一は静かにそう言った。
「もう完全にシティの兵器だな。雪が一番嫌っていたのに……。兵器にはなりたくないって。そう言っ てたのにな……」
祐一は雪の墓を背にし座り込んだ。
「俺は何のために戦っていたんだろうな?誰かを守るため?誰かを幸せにするため?」
祐一は口を閉ざす。
――馬鹿馬鹿しい。誰かを守るため?誰かを幸せにするため?自分の言葉に吐き気がする。結局、俺は 誰も守ってはいないし、幸せにもしていない。したことと言えば、シティの正義の名の下に多くの人を 殺しただけ。新たな憎しみを生んだだけ。過去の戦争と何ら変わりない。自分たちの幸せのために殺し あった過去と。なら、何のために戦えばいい?どうすればいい?確かにシティのやってることは人を救 うことにつながる。だが、何かが違う気もする。大を救うために小を見殺しにするのか?小を守るために確 実に救える大を見殺しにするのか?どれも正しくて、どれも間違っているのかもしれない。
永遠に答えが出ない問い。
つまり、不変なるもの……。
そういえば、雪、君は言ってたな。

自分の周りの、すべての大切な人たちを守るために、戦う

「やっぱり君は俺よりもすばらしい騎士だったようだ」
俺にはわからない。わからない。
その時、一筋の光が祐一の視界を覆った。
そっと、目を開くとそこには――――。
雪がいた。
死んだはずの雪が。
“雪ッ、お前、どうして……”
雪が微笑みながら言った。
“大丈夫だよ、祐一。答えなんて今すぐ見つけなくてもいいよ。いつか、必ず祐一になら見つけること ができると思うから。だから今は、自分のできることをして。きっと、あなたの力が必要となるときが 来るから”
雪が再び微笑んだ。
そして、光が祐一の視界を塞いだ。

祐一は目をゆっくり開ける。
「寝ていたのか……。それにしても、今のは……」
祐一の前には誰もいなかった。あるのは雪の墓だけ。
祐一は静かに笑った。
――フッ、あいつらしいな。出来ることをやれか……。
そうだな。お前の言うとおりだな。お前もきっと悩んでたんだな。
祐一はそっと立ち上がる。そしては祐一は振り返り歩き出す。
――そうだな。今は出来ることをしよう。俺のしたことが正しいかなんて後の誰かが決めればいい。俺 は戦い続ける。たとえ、その戦いが間違ったものであっても。戦いの先に絶望しか待っていなくても。 俺が出来ることといえば戦うことだけ。この雪から授かった騎士剣『紅蓮』で。
今はどこまでも果てしなく戦い続けよう。答えが出るその時まで。
祐一はそっと紅蓮に触れた。



この後、祐一はいつ終るともしれない戦いに身を投じることとなる。
そして、祐一は天樹錬と出会うことによって、再びあの問いと向き合うこととなる。

――運命の歯車は、そっと動き出す。多くの者の想いや願いや悲しみを巻き込んで――



<作者様コメント>
はじめまして〜、HaLUです。
下手ですが何とか書いてみました。HTML初挑戦!!
最初に謝っておきます。
文章力なくてごめんなさい。構成力なくてごめんなさい。駄文でごめんなさい。
あと、脱字、誤字あったらごめんなさい。
なんか試しで見てみたらフォントが統一されてない気がするんですよね。
何でだろ?(書くときはあってたのにな〜)まあ、いいか。
さて、コメントですが、この話は完全にオリジナルです。
タイトルにあるとおりこの話は一巻の前の話になります。
答えの出ない問い。どちらも正しく、どちらも間違っているかもしれない。
そんなテーマをもとに祐一にスポットを当てて、彼の葛藤を書いてみました。
難しいですね。この問い。
あっ、セリフとか設定とか違うかもしれないけど許してください。
確かめようと思ったら友達に全巻貸してました。だから無理です。
感想とかもらえたらうれしいです。
それでは、これからもウィザーズ・ブレイン同盟を盛り上げていきましょう。

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