白い道
ここは、ケープタウンから北東に1300kmの位置にあった「シティ・プレトリア」の跡地。2000年頃は南アフリカ3首都の1つであった。現在である2199年では、アフリカ海の中では珍しく、地図に「公開」されている町である。そのため、ここでは多くの行商人が補給のために立ち止まり、またアフリカ海の小島に用のあるものはここで移動手段を乗り換える。このような人の出入りによってこの町はいつも活気にあふれている。 そんなところに一組の親子がいた。 「テーラちょっと待ってくれ。どこへ行くのだ。迷子になるぞ」 「大丈夫、大丈夫。そんな広くない町なのでしょ。それに、今日は私が始めて他の町に来た記念で、1日付き合ってくれるのでしょ。お父さん。これくらいで音を上げない」 「そうは言ってもな。何でわざわざ、こんな小道とか急な階段とかを通るのだ?こっちに広い道があるだろう」 「そっちから行っても意味無いんだよ。それに、こっちのほうが近道だし」 「だから、近道って。はぁ…。何に対してだよ」 「それは、秘密。付いてくれば分かるよ」 そう言いながら、テーラはどんどん進む。ハンス(テーラの父親)も息切れを起こしながらもどうにか追いつく。“研究職だからってたまには運動しないと”と思いながら。 「お父さん、ここが目的地だよ。この門の向こう」 “この門、あれ、どこかで見たことがあるような?” そう思いながらも、ハンスはテーラと門の中に入っていく。 ‘2名の入場を確認しました’ 二人に聞こえるように制御装置は報告をする。しかし、二人には聞こえなかった。
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「セレスティ・E・クライン、か。やはり似ている」 半年前に手に入れた、旧友の家族の写真と、これもまた半年ほど前に全世界へ流された映像から手に入れた画像。この二つから、写っている赤子と少女は同一人物だと自分のIブレインは伝えてくる。しかし、まだ確信は出来ない。明日には、結果が来る。それまでは気にしないでおこう。何度もそう思ってきた。それでも、考えるのをやめるのは難しい。それどころか、なぜ賢人会議へと、もう同一人物のつもりで思考が走る。だからといって、自分の立場上賢人会議の内情を知ることも、ましてや賢人会議に行くことなんかも出来ない。そんなもどかしさが彼、鶴見をいつもは向かうことのない方へと誘う。
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「おい、テーラ。本当にここであっているのか?」 「う、うん。多分」 テーラに自信がなくなるのもしょうがない。門を入ってから、街の雰囲気が変わっている。ただの盛況な跡地だったのが、シティ内に入ったような。いや、それ以上の水準。ここは、どこだ? 「お父さん。どうしたの?行くよ。道分かったから」 「あ、あぁ。ちょっと待ってくれ」 “そうか、自分は他の町にも行ったことがあるから、ここの異様さを感じる。しかし、テーラは初めての外の町だ。だから、この町の異常さを感じないのだろう。それにしても、信じられない。ここまで明るい空、そして節約という言葉のない、贅沢なエネルギーの使い方。今、どのシティを見ても、こんな噴水なんて見ることは出来ない。有ったとしても動いてないだろう。まるで、戦前にまでタイムスリップしてしまったのではないかと感じる。” そんな景色を前に娘の後を付いていく。 ハンスはこの時、周りの人が自分達を見ているような気がしていたが、それはテーラが大声を出したからだと思っていた。そして、自分を追いかけている人影があるのをハンスは気付く事はなかった。
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鶴見は周りが騒がしいことで我に返った。 “ありゃ、ここは外交区画の博覧会場前…だよな。ここも戦前は毎日行列状態だったのに。今じゃ家族連れが数人来るくらいだものな。まぁ、元々外来客用の施設だということもあるが…。 それにしても、うるさいな。今日は何か有ったか?” 鶴見は周りを見る。そうすると、騒ぎの中心が分かった。そこへ、向かってみると騒ぎが起きている理由も分かった。ただの人間がいる。魔法師はどでかいコンピューターが歩いているのと同じことで、起動していなくても特有のノイズが情報の海に流れる。しかし、騒ぎの中心にいる二つの影にはそのノイズが見られない。それで、うるさくなっていたのだった。その二人をよく見ようと人をかき分けていった時。 「あ、誠兄ぃ」 影から飛び出してくる小さい影、そしてそれを追いかける大きな影。誰だったのかを思い出す。 「テーラ、それにハンスも。どうして、ここに」 「自分は、今日からプレトリアに行くって伝えましたよ。鶴見こそ、明日到着だったはずでは?」 「いや、ここは“庭”内ですよ。二人の招待申請は明日だから、不法侵入になるのですが。ずっと付いてきているやつとか見ませんでした?伝えておかないと」 「いや、自分は見ていないが…テーラは見たか?」 「多分あっちの赤い帽子の人」 「わかった。言ってくるから。テーラとハンスはそこで待っていて」 鶴見は赤い帽子の人の元へ向かう。 「テーラ。赤い帽子の人なんて前からずっと付いてきていたか?」 「うーん、そういうわけじゃないのだけど。ずっと付いてくる人の気配が有って、それが赤い帽子の人と同じってだけで…。うーん、勘みたいな」 「勘かよ。まぁ、テーラの勘は当たるからな。でも、それだけで、鶴見に言うのは…違っていたらどうするのだ」 「でも、大丈夫そうだよ」 鶴見が戻ってくる。 「知り合いが相手でよかったよ。元々、向こうも自分に連絡するところだったらしいけど。自分来ちゃったしね。それにしてもよく分かったね。尾行の人」 「女の勘よ」 「女の勘って。今いくつだよ」 テーラの髪をぐちゃぐちゃにする。 「うわぁ〜。髪ぃ〜」 鶴見はテーラの文句を無視して、ハンスへ伝える。 「それで、どうします?もし“プレトリア”に戻るならもうすぐポートが閉まるので、急がないといけないのですよ。それとも今日もこちらで泊まりますか?今からでも空いている所はあると思いますけど」 「いや、荷物を宿のほうに置いてあるから一度戻ることにするよ。」 「そうですか。それなら出口までお送りしますよ」 「そこまで迷惑はかけられないよ、それに何か予定があったのじゃないか」 「ちょっと考え事していただけですから…。あ、セラ」 「セラ?あぁそうだった。今持っているよDNAデータ。ウォルターさんとマリアさん。あ、奥さんね。それとセラ。新しいファイルを動かしたら出てきたよ」 「やはり、そうでしたか。一つ増えていたような気がしたのですが、気のせいだと思っていて。持ってきてくださってありがとうございます」 「良かった。それじゃ、私達は戻るから。テーラ行くよ」 「ちょっと待ってよ。お父さん。またね誠兄」 髪を梳きながら、振り返って挨拶をする。そして、見えなくなる。 “さて、この2つのDNAデータをすぐに調べるとするか”
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‘ピー’ “ふー、終わった。後は、前にもらった賢人会議のセレスティのDNAデータと合わせて” ‘カチャカチャ…パチ’ プログラムが回る 「一致」 “そうか、ワルターの子は賢人会議にいるのか。次は内部情報も、もらってこないと。このデータを出せば許可は下りるだろう。たぶん。安全ならいいのだけど。それにしても保護しろって。一番難しいところだぞ。はぁ” いすの背もたれに体重をかける。 ‘ピー’ 「うわ」 後ろから倒れそうになる。 “危なかった、何でこんなにタイミングが良いのだよ。まぁいい、このテーラのDNAデータを魔法師測定プログラムにかけて” プログラムが動いている間に今日の監視者との会話を思い出す。 「よう、ストーカー」 「あぁ、鶴見さん。よく分かりましたね」 「分かったのはあの子だよ。対象者の女の子。せっかくの式鬼なのだから、ころころ変えないと。ずっと後ろにいた人がいるって言っていたけど」 「え?それはありえないですよ。自分、式鬼はさっき変えたし。これで4体目ですよ。それより、鶴見。部外者に開門法教えましたか?今日は誰も通る予定の無い門なのに開けて入ってきたのですけどあの人たち」 「それこそありえない。確かに、論理回路入りの名詞を渡してしまったけど。開門法までは教えてない」 「でも実際通る人はいないし。ポートは知っていなきゃ外側からは開けられませんよ。スイッチも心理学上行きたくないところにおいてあるのだし」 「まぁ、偶然だろう。気にするなよ」 思い出している間に、プログラムが終わる。 “偶然だろうってか、全然そんなこと考えてないよな。自分” コンピューターの表示を見る。 「該当分類無し」 “収穫無し、か”
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「トム、聞こえる?トム。おいファントム!」 「聞こえるよ、レグ。ごめんね、ちょっと気になることが有ったから。消えていた」 「そう、それならいいのだけど。でも、あんた今どこにいるの?」 「どこって。プレトリアだけど。今回はここの調査なのだから。ちゃんとトレースしていないのかよ?」 「ええ、でも。急に情報の乱れが出たと思ったら、消えちゃって。今、そこから半径1kmあたりを探しているのだけど見つからなくて」 「そんなに移動してないはずだけど…。こっちでも調べてみるよ」 トムは時計を見てみる。 “緯度経度は、っと。えっ「北緯27°西経172°」だと? 嘘だろ。それって” 「「太平洋!?」」 「トム。まさかと思うけど。太平洋のど真ん中にいない?」 「あぁ、いる。そっちも、ということは故障じゃないって事か。これだけの距離をI-ブレインを使わずに転移させるだけの技術はやはり」 「庭しかないわね。やっと見つけたってわけね。まさか、海底だったとは。海の中を見るのは私でも簡単じゃないから。びっくりだわ。じゃあこっちは、上に連絡しておくわ」 「あ、ついでにグランとバインとレインに連絡。プレトリアまで来させて」 「連絡するのは良いけど、すぐには来られないと思うわ。レインはいま他シティだし、バインもすぐには動けない。グランでさえ任務が入っているのよ。来られるのは1〜2週間後といったところかしら。それでもいい?」 「良いも悪いもどうにもならないのだろ。それなら待つしかないじゃないか。あぁ、これも表のやつらがいなくなるから」 「そのおかげで、見つけることが出来たのだけどね」 「まぁ…な」
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次の日 「ようこそ。テーラ、ハンス」 「おはよう。鶴見」 「誠兄。おはよう」 門を通ったテーラとハンスを鶴見が迎える 「昨日はすまなかったね。鶴見」 「いや、大丈夫だったよ。それより今日はどこに行きますか?」 「私、博物館に行きたい」 一瞬、鶴見が首をかしげる。 「博物館?あぁ博覧会か。多分行けるはずだけど。あそこも、広いからどこから行くか決めないと」 「なら、武器博」 「うーん。また、女の子らしくない趣味だね」 「そ、そんなこと無いもん。よく友達とチャンバラするし」 「男友達と、な」 「それは言わないのぉ。本当のことだけど…」 「まぁ、行きますか?武器博に。よろしいですかハンス」 「よろしく頼むよ」
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武器博受付 「あれ、鶴見さんどうしました?こちらにまで来られるとは。報告された研究結果は、全て挙げてありますけど」 「いや、今日は案内だから」 ハンスとテーラを紹介する 「そうでしたか。それでは、ごゆっくり。ただCブロック以降は立ち入りが出来ませんので」 「はいよ」 人形使いブース
「この液体は何?」 「水銀だよ。シティ・ロンドンが開発したメリクリウスの原型。右にあるのがメリクリウスの初期型。これだったら、演算機関でも動かせるから。たしか、魔法師で無い人が動かすには・・・。」 展示の案内板を鶴見は確認する。 「有った。これだ。これを動かしてみて」 「うん」 テーラは恐る恐る触れてみる 「うわー、本当に動いている」 テーラの思い通りに銀色の液体が動き出す。 「へぇー、結構うまいじゃないか。動かすにも技術がいるのだけど・・・」 となりにある銀色の固体の展示板に触れる 「誠兄ぃ、そっちのはなぁに?うわっ」 テーラが動かしていたものが、爆散する。 「やはり、集中が途切れると駄目か。ちなみにこっちは、今テーラが動かしていたものを情報強度と物理強度を上げたものだよ。I-ブレインが必要になるけど、安定性は格段に上昇しているのだ」 「ふーん。それじゃぁ、こっちの人型は?」 「これは、シティ・エディンバラで開発された。人形使いのデバイスだよ。大戦時は重すぎたのと、シティ・ロンドンとの戦闘で負けて、すぐに頓挫することになったけど。庭で作り直して、今では式鬼と呼ばれている」 「シキ?」 どのような字を書くのかもわからずテーラは悩む。 「うーん、どこから説明すればいいのかな。テーラは式神って知っている?」 「安倍清明!十二神将だよね」 テーラが元気に答える 「そう、その通り。それらに似ているから式鬼って言う名前でね。そして、いつもは札の替わりにこんな玉に入れて持ち歩くのだよ。」 鶴見は鞄から拳大の玉を取り出す 「けっこう大きいんだね。この中にも式鬼が入っているの?」 「いや、これは別のものが入っているけど。別に自分人形使いじゃないし」 「それもそっか」 「でもね、人形使いなら自分用にチューニングした式鬼を1体は持っているし、式鬼を複数使う式鬼使いという人もいる」 「ふーん、でもさ、なんで人型のものを持ち歩くの?さっきの、メリクリウスみたいに形がいろいろ変えられるほうが使いやすくない?」 「式鬼は対騎士戦用だからね。人型のほうがいいのだよ」 「なんで、式鬼が対騎士戦用になるの?人形使いが動かすっていう分に関しては、メリクリウスと一緒だよね」 「そうだね、最初から人形使いについて復習したほうがいいかな。テーラは人形使いの天敵が騎士だっていうのは知っているよね」 「うん、人形使いの攻撃はすべて騎士の情報解体で分解されてしまうから、攻撃できないのでしょ」 「それだと80点かな。正しく言えば、『人形使いが使役できるほどの情報強度では騎士の情報解体で分解されてしまう』というのがより良い解答になる」 「難しい言葉になっただけじゃん。結果的には同じことでしょ」 「そんなことはない、確かにメリクリウスなら攻撃部分と可動部分は同じだから、テーラの言っていることでも正しい。でも式鬼は攻撃部分と可動部分が違う。だから、関節とかの可動部分には柔らかい素材を使って、攻撃部分の腕、足とかには堅いものを使う式鬼のようなものが生まれるわけだよ。これだと、騎士の情報解体で斬ることはできなるわけだよ」 「ふーん。そうなのだ。今じゃ騎士も魔法師最強とは言えなくなっているのだね」 「確かにね、対騎士は魔法師にとって最初に考えなきゃいけない問題だから。じゃぁ、次はその騎士が使う騎士剣でも見に行こうか」 「うん」
騎士ブース
「ここは、剣しか置いていないの?」 「まぁね、なんだかんだ言って近距離高速戦闘で安定して使えるのは剣くらいだしね。ほかの武器を使う人もいるけど一般的ではないね」 「この4種の玉は?色が違うけど」 「これは、庭での騎士剣開発の方向性を示すものだよ。もともとはこれを飾ってある剣につけて遊べるようになっていたんだけど今は無理そうだな。前にけが人が出たと聞いたことがある」 「それで、これらはどう違うの?色が違うのは何か理由があるからでしょう。」 「あ、あぁ。あるよ。これらの玉は騎士剣開発の方向性の違いによって変えられているのだよ」 「方向性?」 テーラが首をかしげる。 「騎士剣自体の機能は大体完成されているのだけど。それでも、少し違う部分があるのだよ。最初に作られたのは、この白い玉で通称白虎、機能は“身体能力制御”と“情報解体”のみ。」 「あれ、“自己領域”は?」 「それは、ちょっと待って。“自己領域”はシティ・神戸の七瀬雪考案で最初からの搭載ではないからね。“自己領域”を含めたものはこの赤い玉で通称朱雀。まぁ、これのために一度白虎は作られなくなったんだけど、今では朱雀の“自己領域”の分を“身体能力制御”に使って、朱雀よりも最低で1.2倍は速くなる。それで、施設内の戦闘用に予備として持つ人も多くなったみたいだよ」 「ふーん、それじゃ、あと黒いのと緑のは?」 「黒いのは通称玄武、1対1が得意な騎士において、対多数を目的に作られた剣だ」 「具体的にどう違うの?」 「特殊な機能がついているのだよ。これも、もともとはシティ・神戸で作られたシステムなのだけどね。一番特徴的なのは、“最適運動曲線”だろうね。これは単純に言えば、敵をどれだけ最短で殲滅する方法を示すらしいよ。もともと搭載されていた剣は“森羅”というらしいけど、存在の確認はされていないみたいだね。たぶん途中で封印したのだろう。実際あれを使える騎士は希少だ。“使える”という条件だけでも双剣か重剣だけだろうし、庭内で“使っている”やつは一人だけだよ。最後にこの緑の玉だけど通称は青竜、これはちょっと他のと違っていて、今までのが軍部で開発されているものなのだけど、これだけは研究部で開発されているものでね。何かあるわけではないのだけど、騎士の基本的な機能と違うものを搭載できるのだよ、ゴーストハックとか、分子運動制御とか見たいにね。研究部には騎士とほかの魔法師の混合系が多数いるから。これから発展していくかもしれない方向性だと自分は思っている」 「ふーん、発展だから青竜なのだね、一番完成されているから朱雀なわけだし、速さという点で白虎なわけだ、でもなんで殲滅が玄武なの?玄武って亀だよね。殲滅とは逆のような気がするけど」 「うーん、これはちょっと逆説的なのだよね。テーラはさ、個人戦が得意な騎士が対多人数での戦闘をする時があると思う?」 「そりゃ、多数を殺すのだったら、敵陣に潜入して暴れまわるとか?」 「でもそれだったら、人形使いとか、炎使いがやったほうが効率的だよね」 「それを言ったらお終いだよ。それがだめっていうならどんな状況なのさ」 「たとえば、敵地に少数で情報収集しているとき。敵に見つかったとする。そうしたらどうなる?」 「人がいっぱい来ることになる。だからそれを倒すために…ってそれじゃぁ」 「テーラが言ったことも間違いじゃないて言いたいのかな?でも、それだけじゃ正解じゃない。自分を犠牲に味方の逃走時間を稼ぐために使うのだよ。手に入れた情報を自陣に持って帰るために。だから、味方を守る剣ということで玄武だってわけ、分かった?」 「うーん。でもそれって使用者は生きて帰れるの?」 「いや、無理だよ。使用者の戦闘力を上げるとはいえ戦力差が埋まるとは限らないし、それ以前に使用しただけで魔法師じゃなくなるし」 「魔法師じゃなくなるって?」 「さっき、自分は使用者の戦闘力を上げるといったけど、ちゃんと言えば玄武にとって必要最低限まで強制的に引き上げる。使用者の限界を超えてね」 「ふーん、そうなのだ。そういえばさ、庭のオリジナルって無いの?今までの大体が他シティからの流用だよね。」 「そんなにないな、確かに。まぁ、うちの研究部はもともと基礎理論からだったから。それに情報部が他シティの技術を“庭”内に報告していたから。オリジナルを作る人は少なかったね」 「へぇ、それならいろんなシティの情報がここにはあるの?」 「そうだね、たぶん今のシティすべての情報をあわせたとしてもここにある情報には足元にも及ばないと思うよ。戦中,後あたりで消えた技術も多いから」 「それならさ、雲の情報って無いの?」 「雲って、地球を覆っている?」 「そうそう、それさえあれば。こんな未来に不安のある生活をしなくてもいいのに」 「うーん、それは耳が痛いな。あの雲を作ったのは、うちら“庭”だから」 「えっ」
言葉の意味
博覧会「仮想」 正式名称「世界技術博覧会」。名称に世界がついているが実際には“錬金術の庭”内の技術しか展示していない。理由は“庭”設立当初で50年、現代でも10年は外部より技術力が発展しているというプライドからくる。
式鬼(しき)「仮想」 この頃、人形使いと言っても実際に人形を使うのが少ないなぁと思ったのがきっかけ。 高速弾頭に使われる論理回路によって通常人の約20倍の速度で通常運用できるようになった。ほかにもステルス回路や騎士の自己領域を相殺するため用の回路を描かれていることが多い。
青竜「仮想」 騎士剣分類の一つ。発展途上であり、基本的な形というものがない。共通点は騎士用以外の能力が入っていればこの分類になる。つまり「その他」
朱雀「仮想」 騎士剣分類の一つ。現在一番多く作られており、熱い分類。身体能力制御、自己領域、情報解体のシステム一つ一つに研究会があり、またそれらのバランスをどうするかなどの研究会もある。
白虎「仮想」 騎士剣分類の一つ。自己領域という分野ができてから下火になっていた。しかし、自己領域の使えない騎士、アンナによって構造の抜本的な改革により朱雀シリーズより最大で1.2倍の身体能力制御を行えるようになった。このため、狭いところなど自己領域の使いにくいところでの戦闘用にサブ武器として使用されるようになる。
玄武「仮想」 騎士剣分類の一つ。作中で鶴見は玄武のほうからの意味を伝えたが、軍部では死を雪のように降らすものとして、冬から玄武という名前がついていると言う人が多い。
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