Fantatic Dream 〜Sweet angel&Little twinkle〜 2
小さな明りを求めてはいけませんか? 私たちは明りになってはいけませんか?
――神様――
祈ることは、別れですか?
「セラさん…。」 「はい?」 続けようとした言葉が、セラの返事で一瞬行き場を失う。 「あ、えっと…。」 もう1度頭に言葉を浮かべ、続ける。 「ここって…セラさんの空間なんですか?」 「よく分からないけど、多分そうです。」 ある程度予想通りの返答。 「じゃあ、あの、私が今出てきた部屋って、なんだか分かります?」 「いいえ。」 きっぱりした答え。 (やっぱりわかんないか…。) 心の声は、響かない。そのままうーんとうなって考え込み…。 「フィアさん?」 セラの声に、我にかえる。 「あ、はい…。」 うなるのをやめて、向き直る。そのままさらに質問を重ねる。 「セラさんも、あの部屋から来たんですか?」 「いえ、違います。いつも、気がついたらここに座ってるんです。あの部屋は、ちょっと気になってのぞいただけです。」 「いつも…?じゃあ、よくこの夢をみるんですか?」 「……はい。」 なぜか俯いてしまうセラ。I−ブレインが使えない事に、今はホッとした。こんなときに心をのぞいてしまうのは、いやだからだ。 「理由…分かってるんですか?」 「……はい。」 小さな声。今セラは、口を真一文字に引き結び、無表情のままなのに悲しげに見える。 「…よかったら、その…話してもらえません?理由。」 こんな風に聞くのは、いけないことだと思う。傷付けてしまうことになりかねないし、言いたくないのに言わせるなんていけない。 (それでも…。) それでも、聞かずにいられなかった。 (それでも、辛そうにしてるのにただ黙って見ているのは、納得できない…!) 「…分かりました。」 いろいろと考えていると、セラの声がした。意識を戻してみると、こちらをじっと見つめている。
何かに耐えるように。 何かに抗うように。
「お願いします。」 青い瞳は、どこまでも深く、澄んでいて。 その瞳に、自分の姿が映っていた。 一生懸命話してくれるのなら、自分も真面目に聞く。 姿勢を正し、見つめ返すと、セラの身の上話が始まった。
マサチューセッツでの暮らしのこと。 母親とセラ自身の関係。 突然起きた事件。 デュアルという少年のこと。 母親の本音と死。 シティを出て軍に追われるようになってから。
10年余りの間の出来事。自分が『生きて』きたよりもずっと長い時間だとは分かる。 それなのに。 この小さな少女の苦しみ、悲しみ、憤りは、普通の人よりも強く、深かった。 I−ブレインが使えなくたって、それぐらいのことはわかる。 分かるから…何もいえなくなってしまった。 言葉は無力で、心を傷つけることさえもできる。 フィアは、何もできない自分が悔しくて、ただ両の手を強く握り締めていた。 「フィアさん……。」 と、セラが声をかけてくる。 すがるような瞳。 「わたし…間違ってるんでしょうか…?」 「え…?」 一瞬、何を言われたか分からなかった。が、少しずつ、意味が浸透してくるにつれ、熱い衝動がこみ上げてくるのを感じる。 「そんなこと、ないです!」 力いっぱい言い放ち、驚きをあらわにするセラを見て、慌てて口をふさぐ。 「絶対…そんなこと、ないです。」
【続く】
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