■■こみこみ様■■

Fantatic Dream 〜Sweet angel&Little twinkle〜 3




「そんなこと、ないです!」
突然、フィアが声を張り上げた。
今までの穏やかな感じからは想像出来ないことだが、現に目の前のフィアは手を握り締めて強く言い放っている。
と、セラのことを見てはっとしたように口をふさいだ。
「絶対…そんなこと、ないです。」
今度は小さな声で、しかしきっぱり言った。
「何でですか?」


わたしに笑顔をくれた人

わたしに言葉をくれた人

でもその人は 大切な母を傷つけた…


「何でって…。」
フィアはつぶやいて、唇をかむ。
「わたしには、わからないんです。あれから何度も考えて…でも、答えは出ていません。」
セラは、静かに言った。フィアの目を見ないように、少し俯いて。
「わたしは・・・間違ってるんでしょうか…。」
ぽつんとつぶやく。問い掛けるでなく、独白のように。


その人を好きでいること 絆を守りたいと思うこと

それは 母を苦しめる? それは あなたを傷つける?

分からない……


「間違ってないと、思います。」
また唐突に、フィアが言った。
「何でですか?」
同じ質問を重ねる。何でもいいから答えが欲しかった。
「だって、セラさんのお母さんは、セラさんの幸せを望んでいたんですから。」
思っていたのと全然違う言葉が、フィアの口から紡がれる。
「……?」
「セラさんが苦しまないようにって…それだけを、願っていたんですから。」
セラが理解していないのを知ってかしらずか、フィアは喋りつづける。
「セラさんは間違ってないです。自分を責めることをしなければ、セラさんは正しいんです。」


心は誰にも止められない 自分でさえも無理だから

想い続け 信じることが

痛みをこらえ 前を見つめることが

幸せを探し 歩むことが

あなたの大切な人たちの 望みだから…


「だから…。」


だから…


「だから、自分を傷つけないでください。」


だから いつも輝いていて


「これが、答えだと思います。」
「あ……。」
フィアの言葉が、ゆっくりと心の奥に沈んでゆく。
優しい風となり、そっと吹き向けてゆく。

“ポタッ”

「セ、セラさん!?」
慌てたようなフィアの声。
「な、何か気に触るようなこといいました?」
滲んだ視界に、フィアの心配げな顔が見える。
「違い…ます。」
首を横に振り、涙を拭って、何とか笑顔を作る。
「ホッとして…嬉しくて…そしたら…。」
たどたどしく言うと、また涙が溢れてくる。
「フィ、フィアさん…ありがとう、ございます。」
そこまで言うので、限界だった。
セラは、声をあげて、思い切り泣き出した。
「セラさん…。」
フィアが優しくセラを抱きしめてくれる。
そのまま、セラは気がすむまで泣き続けた。


「あっちの、取っ手が青い扉から、帰れるはずです。」
しばらくして落ち着きを取り戻すと、セラはフィアに帰り方を教えた。
「はい。ありがとうございます。」
にっこりと笑いながら、フィアが言った。
「じゃあ…さよなら。」
「セラさんも、お元気で。もうこの夢見ないようになるといいですね。」
「はい…。きっと、大丈夫だと思います。フィアさんのおかげです。」
口元をほころばせて、セラも微笑む。ディーに出会った頃より、ずっとやわらかい笑顔になっていた。
「いえ。いつか、現実世界で合うことがあったら、またたくさんお話しましょう。」
「はい。」
セラの返事を聞くと、フィアはまたにっこり笑い、扉の向こうに消えていった。
セラは、扉を開く前に、後ろを振り返った。
「もし…。」
誰もいない空間に向かって、小さくつぶやく。
「もし、お母さんの願いとわたしのしたいことが違っても…わたし、一生懸命に生きていきます。」
胸を張って、宣言する。
くるっと空間を見渡して、扉を開く。
無重力を漂うような感覚の中、セラは、マリアの笑顔を見たような気がした・・・。




【続く】



<作者様コメント>
Fantatic Dream3、できました!
…でも、また【続く】です…。
どぉしてまとまりのある文章にならない?(泣
さらに長引く夢話…(ハァ)
もっとも、次は現実の所になりまして、
それで完結、になります。
これ以上壊れないよう努力しますので、
多めに見てやってください……。
でわっ!
(ダッシュで逃げ去る作者、)
(「追うなっ!」の書置きのみが残る…。)

<作者様サイト>
『なし』

◆とじる◆