■■草薙様■■

神と人の狭間で


さて、これから語らせていただくは神に最も近い存在と言われる
魔法士の物語だ。
え?私は誰かって?そんなことは気にしない。
語り部が偉そうなこと言うな?
仕方が無いな。語っている中で私の名前も出てくるから
自己紹介はそのときにでも。
閑話休題
さてこれからこの物語を語るわけだが、この物語は専門用語作者の勝手な設定
が数多く存在するからね。少しだけ説明……
そんなことは最後にやれ?
まったく…作者は勝手だな。
まあいい。じゃあひとつだけ先に紹介させてもらうよ?

宗教:この物語の中の宗教は言わば『小さなシティ』のようなものを形成しているのある。 実際に軍隊を持ち必要とあらば戦争もする。また一つ一つの宗教が独自の魔法士体系を持ち 下手をすると一人の魔法士がシティの魔法士30人分の戦力を持っていることすらある。

ま、こんなもんかな。
では………


開幕

1章:神の代弁者ラジエル

荒れ果てた教会。
最近は全然珍しくない光景。
無論そんな所を訪れる人間は普通いない。
が、そんな見捨てられた教会に今彼は立っている。
「つまり、俺は普通じゃないと…」
………
「さ、任務を早く終わらせて昼寝しよ。」
何故、彼―――黒鉄 樹はこんなところにいるか。
それは彼が普通ではないから……
というのもあるが一番の理由は彼がある組織に属していて、組織の任務は絶対。
そして現在その任務の遂行中だからである。
組織の任務は絶対なのだが……

「やっぱ『逃げちゃいました〜』って愛想よく言ってごまかすかな?面倒だし…」
……飛鳥に殺される。
「駄目だ、駄目だ。仕方ない…封印は邪魔だけど相手は普通の魔法士だし
ま、大丈夫だろ。」

とまあこの様子である。
一方、追われる側の魔法士はというと
「奇襲だ…奇襲しかない…あんな化け物、正面からじゃ絶対に勝てない…」
と物陰に隠れている。

実際にこの状況では奇襲できれば普通は勝てる。
そう、普通ならばの話だが…

「ま、捕獲対象を逃げられなくすればいいわけだ。
なら……」
(E.I-ブレイン起動、システム状況:『ラジエル』、『ミカエルロック』により起動不可。
『デス・コール』起動可能。)
彼がI-ブレインを起動した瞬間、『世界』が少し歪んだ。
もしここに、クレアヴォイオンスNO.16が居たならばその『歪み』を
見て戦慄しただろう。そう、『世界』が歪んだのである。
「うん、好調だ。じゃ、どこかの誰かさん?苦しんでくれ!」
(『デス・コール』起動。コード『Pein』準備完了)

『我、汝が世界閉ざされることを願わん!』

瞬間、この教会の十字架の裏側から恐怖に耐えかねた男が叫びながら飛び出す。
(I-ブレイン起動、身体制御展開。運動係数30、知覚係数50で定義)
「う、ワァァァァァァ!!」
男は身体制御をかけた肉体で突撃する。
高速で来る男を樹は見て、指を拳銃のようにして、一言
「第一感、剥奪!」
その一言が引き金を引いた。
突然、男は身体制御を解いた。
「目、目が……目が見えない!?」
そう男の視覚は突然消え失せた。
彼の一言と同時に。
「何…故?どうし…て?見えない、見えない…何にも見えない!」
男は最早、発狂寸前である。
「あー、狂わないでくれる?そうしたらあの世に行ってもらうことになるから。
ま、仕方ないか。突然何も見えなくなるんだから。」
彼は他人事のようにさらりと言う。
「ま、シティの温室育ちじゃ、俺には絶対勝てないってことだ。
さ、輸送隊呼んで引き渡すから大人しくしててくれよ。」
が、男はまったく諦めていなかった。
今の彼の声から位置をI-ブレインで逆算し距離を測っていた。
(絶対に、絶対にこいつは殺す!道連れにしてで……)
突然、男は何も考えられなくなった。
意識も遠くなっていく。
その薄れた意識の中に死の囁きを聞いた。
「抵抗しようなんて考え無きゃ殺さなかったのに。
残念だよ。ひっじょーに残念……」
男は永遠の闇に堕ちた。

樹は組織の本部、シティパリ跡地にある教会に着いた。
「はあ…気分悪いな。殺さなくても良かったかも…」
先ほどの行動を悔いてみる。
「……懺悔室、行こ。」
彼は任務で人を殺すたびに、懺悔室に行く。
誰かに言わないと殺すことが日常になってしまいそうで怖い。
もちろん、言ったからどうにかなるわけではない。
そんな気持ちからそうしている。
考えながら歩いているといつの間にか懺悔室の前にいた。
ここは組織の中で最も訪れる人間が少ない場所。
何しろ、正義だと言って人を殺すのだ。罪悪感を感じる人間は
この組織にはほとんど居ない。
「失礼します。」
言いながら、扉を開ける。中からは懺悔室には似つかわしくない
タバコの臭いがする。
「ん、またお前か。よく飽きずに来るな。あれか、懺悔大好き君か?
それとも、懺悔すりゃ殺人が許されると思ってるのか?」
聖職者からは最も遠い聖職者、それが組織の懺悔室に居る
悪徳神父、アロンソ:アークランだ。
この男は、組織の中の唯一の一般人だがそんなことは
気にせず、自由気ままにしている。
何でも昔は名の知れた科学者だったそうである。
無論、ほとんど誰も知らないが。
「全く、いつ来ても口が悪いねえ。もう少し愛想良くしたらどう?
そんなんだから誰も懺悔しに来ないんだよ。」
いつも通り、進言する。
「ふっ。懺悔なんてもんはな、どうしようもないほど情けない人間が
するもんだ。そんな人間が少ないから俺はここでずっと働いてんだよ。」
遠まわしに、『お前は情けない』と言っている。
なんというかこのやり取りのおかげで、すさんだ心が潤うから不思議である。
「ところでお前さん。彼女のこと大切にしなきゃ駄目だろ。」
突然、このイカれ悪徳神父はよく分からないことを言い出した。
「は?俺に彼女は居ないですよ。悪徳神父。」
「そうか?居るじゃないか。憎いねえ。」
もう会話にならない。
そう判断できる状況なので戻ることにした。
「じゃ、戻ります。悪徳神父さん。タバコの吸い過ぎは早死にのもとだよ?」
「そうか、このギネスブック級の鈍亀。彼女の気持ちに気づくことを祈るよ。」
そう言って、懺悔室を出た。
瞬間、

ヒュッ

風切り音と同時に刀の刃が首に押し付けられる。
「何やってるのよ、バカ!何であんな任務失敗してるの?
あの程度の任務も達成できずによく『四将』に居られるわね!
まったく、こんな事ばっかりだと下っ端にもバカにされるわよ?
悔しくないの?」
早口で色々言われる。これもいつもである。
「飛鳥…お願いだから昼寝させてくれ。そういった苦情はあとで好きなだけ聞くから。」
この説教少女は、鋼月 飛鳥。樹と同じ組織に属している。
この2人は歳も近く、任務も共同でやることが多いので必然的に会話の回数も多くなる。
樹にとっては避けたい人間の一人である。
「あんたが、一人間抜けなだけで士気が落ちるってこと分かってる?
もう少しシャキっとしなさい。シャキっと…って逃げるな!」
彼女は追いかけようと動こうとするが、足が全く動かない。
「魔法使ったわね!?ずるい!!ちょっと正々堂々自分の足だけで逃げてみなさいよ。
ちょっと……」

逃げつつ、向かった先は大聖堂。
一応、義務なので報告をしに来た。
重い扉を開けると中には男が一人立っている。
綺麗な金髪に整った顔立ち。男でもハッとしてしまう見た目である。
が、樹は長い付き合いのため何も感じない。
「へクトル、報告に来たぞ。」
樹が美男子―――へクトルに声をかける。
「殺してしまいましたか…。まあ仕方ないです。彼が抵抗をしようとしたのが悪いのです。」
樹は時々彼がとても羨ましく思える。
人を殺しても負い目を感じることなく仕方ないと割り切れる彼の心が。
「ただ、任務には失敗したので罰と言ってはあれですが任務を命じます。」
さすがにこれには驚く。
「その任務って、今すぐ?」
恐る恐る聞くと
「当然です。そうでないと罰になりません。
で任務ですが今回は鋼月さんと2人で行ってください。」
衝撃×2
「で、内容の方ですが……聞いてます?」
「ああ、一応な…」
樹はやる気を失った。今すぐ部屋に篭城したい衝動に駆られた。
「任務ですが、『黒衣の騎士』と『天使』、『原型なる悪魔使い』の捕獲もしくは…
言わずとも分かりますね?」
「は!?お前、何言ってんだ!?気でも狂ったか!?」
ヘクトルの言ったことは信じられなかった。
この三人は宗教界でも有名である。
彼らを仲間にしようとする組織があるほど戦闘能力が高いと評されている。
「それはシティへの『介入』だろ?禁止事項の一つだぜ?」
「大丈夫。彼らは最早シティの敵だからね。何も言わないよ。」
「だが……」
「いいかい樹?彼らは強力だ。それこそ宗教界に影響が出るほどにね。
そんな人間を野放しに出来るかい?いや、できないね。だから説得して引き入れる。
無理だったら消す。敵になるかもしれないからね。これは決定事項だよ?
それとも逆らうのかい?」
何も言えない。
組織に逆らうとどうなるか知っているから余計に。
「あ、そうそう。ミカエルキーは解いておくから。これが何を意味するかわかるね?」
「絶対勝利…か。」
「そう、この任務は大げさに言えば我ら『テンプル騎士団』の今後を占う任務だから。」
こうして彼は自分でも気づかない内に大きな戦いの中に足を踏み入れた。



っとまあ一章はこんなカンジで終わり。
さて、冒頭で言ったとおり専門用語作者の勝手な設定の説明をさせてもらうよ?

テンプル騎士団:宗教集団の一つでキリスト教の派生。本来はシティローマ、バチカン地区に 本部を持つ組織だったが、シティパリに裏切られシティと決別。体制はトップにヘクトル、その下に に樹、飛鳥とあと2人からなる『四将』、その下に『神殿戦士』という一般戦闘員が居る。 一般戦闘員とは言うものの、みな魔法士でシティの魔法士から見ればかなり強いカテゴリーに入る。 『四将』は一人一人が天使の称号をもつ。戦闘能力は最早、怪物以外のなんでもない。 トップに居るヘクトルだが戦闘能力は低い。が、ある能力によって『四将』を統括できるため 力的にもトップと言っても過言ではない。

黒鉄 樹(くろがね いつき)
黒髪、黒目で顔は東洋系。整った顔立ちだが表情の起伏が薄いため印象は薄い。

世界完全操作特化型魔法士『神の代弁者ラジエル
この能力はまだ完全には明かせないが、『言葉』に情報を乗せて飛ばし相手が聞くことで設置、 彼の合図(これまた『言葉』)で爆破というものである。今回使用された『Pain』は相手の 感覚神経に寄生し爆発(神経の遮断)、感覚を奪うというものだ。ならば耳を塞げば防げるか と言うとそんなことはなく、とにかくどこかの感覚器に触れれば設置される、という代物である。 こう聞くと無敵に聞こえるが実際は正しいイデオムを言わないと起動しないので、複雑な動作を するものほどイデオムも長くなり、隙も大きくなる。

ま、この辺かな?
じゃ、ひとまず休もうか。
幕の内弁当でも食べながら気長に待ってください。

BGM:ゲーム『GUILTY GEAR XX#RELOAD』より「WRITHE IN PAIN」
作者さん駄目じゃないか。そんなゲームの宣伝なん……
え?出番無くす?勘弁してくださいよ!



<作者様コメント>
どうもはじめまして、どうでしょうかこの作品
短いといった点は勘弁してください。
まだまだ未熟なものですが徐々にレベルアップできるように
がんばりたいです。
できれば感想やお叱りなどもよろしくお願いします。
出来れば次回も期待していただけると幸いです。

<作者様サイト>
『なし〜』

◆とじる◆