■■nisiB様■■

世界樹の下で
−まもるべきもの−
風が鳴る。
突然、銀色の鳥が弾けた。
『メルクリウス』で構成された船体を、槍のようにして突き出してくる。
その数は数え切れず。
ざっと見ても数百近くはある。
あぁもう・・・!
(スキャンを中止。『ミスティールティン』を戦闘モードに移行。周辺情報を取得・・・完了。擬似空気分子制御開始)
ソラとの交信回復の手続きを後回しにして、回避行動に移る。
100メートル級機動駆逐艦『ミスティールティン』のコントロールルーム。
そこにある円筒形のコントロールボックスの中で、シリィはため息をついた。
ぼこぼこと泡が浮いてゆく。
筒の中は羊水と同じ液体で満たされており、人が最も快適に過ごせる温度に設定されている。
シリィはその中に、一糸まとわぬ姿で浮かんでいた。
首筋には何本ものコードが接続されており、それが筒の上と下に分かれて接続されている。
そこから筒の外のコードに接続されていて、外のコードの上には、脱ぎ散らされた服やら何やらがあった。
だって、整頓してる暇なんてなかったんだから・・・・・・。
誰かに向かって言い訳しつつ、シリィは向かってくる『槍』に目を向けた。
視界が船内から外界へと切り替わる。
途端に、空中に放り出されたような感覚を覚えた。
じゃ、避けましょうか。
(擬似空気分子制御、83パーセント完了。収束荷電粒子砲使用可能。『目標』との接触まで1秒)
『ミスティールティン』が動いた。
そのまま滑るように宙を舞う。
その軌跡を縫うように、白銀の槍が次々と通過してゆく。
この船は、機体表面に刻まれた論理回路で、空気抵抗を極限まで減らすことによって、さらに高機動を実現できるのよ。
こーんなことくらいじゃ、落ちないんだから、って誰に説明してるんだろ私。
内心得意になりながら『槍』を避けてゆく。
と、通過したはずの『槍』の一つが急に軌道を変えた。
狙う先は、次にこちらが移動するはずの空間。
シリィの口端に笑みが浮かぶ。
その首筋につながるコードから、薄く光が漏れる。
さらに――っと。
(分子制御が100パーセント完了。全出力80パーセントに設定、慣性制御開始)
そのまま『槍』に向かって行き・・・・・・。
直後、ありえない角度で船体が曲がった。
ほぼ直角ともいえる角度で真上に上昇。
そのまま鉛色の雲すれすれまで上昇して、雲と触れるか触れないかの位置を飛行する。
無論、『ミスティールティン』には雲の中を飛ぶ力はない。
雲に接触しただけでも機能不全に陥るだろう。
(慣性制御成功。論理エラー、装置の一部に機能不全が発生。切り離して運転を再開)
さすが試作機、ちょっと使っただけでもコレだわ・・・。
と、先ほど避けた『槍』の群れがこちらに向かって飛んでくるのが見える。
それを視界の隅に捕らえると、
(荷電粒子砲スタンバイ。収束率80パーセント)
流線型の艦体の左右に、小さな砲門が出現する。
ロックを示す電子音。
直後、砲門が青く光り、一瞬遅れて『槍』の群れが吹き飛んだ。
飛び散った破片が溶けるようにして、本体である『ウィリアム・シェイクスピア』に巻き戻る。
と、『ウィリアム・シェイクスピア』の船体表面が揺らめき、青く輝いたような気がした。
(慣性制御開始。右方向に緊急移動)
 船体が慣性を無視して右に動き出す。
 が――、
(危険、高温の熱源の接近を感知、危険、回避)
 I-ブレインがエラーを発した直後、左側面を何かが駆け抜けた。
 それは鉛色の天蓋にぶつかり、青白い火花を散らす。
 一瞬送れて激しい振動が『ミスティールティン』を襲った。
(チェック中・・・・・・完了。船体左側面を収束荷電粒子が通過。船体論理回路の15パーセントが消滅。分子制御率60パーセントに低下。慣性制御不可)
 何!? 何が・・・!?
 半ばパニックになりながら、シリィは必死に状況を確認した。
 嘘でしょ!?砲門なんて何処にも――。
 そこまで考えて気がつく。
『ウィリアム・シェイクスピア』の船体側面、流体金属で形成された即席の砲門が青白い火花を散らしていた。
 そのまま砲門は溶けるように船体に吸い込まれる。
 このォ!
『ミスティールティン』の砲門が青く光り、一瞬遅れて『ウィリアム・シェイクスピア』の艦体側面で 爆発が起こった。
 シリィ、小さくガッツポーズ。
 と、『ウィリアム・シェイクスピア』の輪郭が歪み・・・・・・。
 え―――。
 先ほどの槍よりもさらに細い、数百の針が飛び出した。
 無論、細いといっても丸太ほどもある。
 接触しただけでもヤバい。
 そのうち数十本が『ミスティールティン』を捕らえる。
(目標をロック完了。荷電粒子砲、一斉射撃)
 前方で『針』の群れが弾けた。
 荷電粒子砲に巻き込まれた『針』が砕け、さらにその反動で多数の『針』の軌道が変わる。
 突破した四本の『針』が真っ直ぐこちらを狙った。
 既に慣性制御は使えない。
 更に二本を砲門で打ち抜き、残りの二本を必要最低限の動きで回避する。
『針』が通過するのを確認して、『ウィリアム・シェイクスピア』に向き直り―――。
(高密度情報制御を感知、危険、回避)
 突然、全センサー類が一斉に警告を発した。
 視界の隅に何かが走る。
 回避命令を送ると同時に、船体を激しい衝撃が襲った。
 衝撃はすぐには止まず、断続的に数回繰り返される。
 見ると、先ほど回避したはずの『針』が真後ろで方向を変え、荷電粒子砲で弾いたはずの『針』までもが、こちらに向かってきている。
(緊急回避。船体ダメージが増大。論理回路の破損が60パーセントを突破。分子制御率20パーセントまで低下)
 マズい。
 そしてひたすらにヤバい。
 紙一重で一番近い『針』をかわす。
 明らかに船体の動きが鈍ってきていた。
銀色の『針』は、更に軌道を変え、再び『ミスティールティン』を狙う。
 このままだと、いずれ・・・・・・。
 シリィは首を振ってその考えを吹き飛ばした。
 そして、荷電粒子砲で『針』を打ち抜く。
 だが、さらに衝撃が襲った。
『針』が迫るが荷電粒子砲が機能しない。
 見ると、砕いた破片が砲門や船体外壁に突き刺さっている。
 それらは、機関を破壊すると、液体となって外に流れ出て『槍』に巻き戻った。
 さらにそれが本体に巻き戻ってゆく。
(破損率90パーセント、制御率5パーセント、危険)
 ・・・・・・。
 もはやグウの音も出なくなったとき。
(・・・ジャミングが解除、ソラリスとのリンクを復帰)
 シリィはキレた。
(『ちょっとソラ、アンタ何やってんのよ!?』)
 こっちがどれだけ心配したか――。
 続きの言葉は喉元で飲み込まれた。
『ウィリアム・シェイクスピア』から更に打ち出された針が、真っ直ぐこちらに向かってくる。
 既に使用のできない荷電粒子砲に命令を送り、破壊された慣性制御装置にもアクセスし、必死に回避行動を取る。
 諦めない、最後まで、絶対に。
 だが、動きが鈍い。
 この時、もはや分子制御はまともに機能していない。
 目の前に『針』が迫る。
 間に合わな――――。



 走って、走って、走って。
 崩れる施設内を、転びそうになりながらもひたすら走る。
 ソラの前方に小さな光が見えた。
 出口まであと少し、という所で、シリィから通信が入る。
 良かった、リンクが回復したらしい。
(『ちょっとソラ、アンタ何やってんのよ!?』)
 どうやらかなりあせっているようだ。
 開口一番これなら、まだ無事だということか。
 メッセージを送り返そうとして・・・・・・。
(シリアルとの接続が切断)
 あれ?
 失敗した。
 そして、出口に辿り着く。
 不思議に思いながら、上空を見上げた。
 今は雪が止んでいるらしい。
 鉛色の雲がどこまでも広がっている。
 そして、『ウィリアム・シェイクスピア』が見えた。
 『針』を突き出したその姿は、さながら栗の様になっているが・・・。
 その『針』の先を、視線で追う。
 そこに、数本の銀色の『針』で貫かれた『ミスティールティン』の姿があった。
 え?
 一瞬何が起こったのかわからない。
 ふらふらと数歩、歩く。
 背負った『アポカリプス』がやけに重く感じた。
 ソラが見つめる中、音も立てずに、銀色の針が抜かれる。
 引き抜かれた場所から、水のようなものが流れ出た。
 支えを失った『ミスティールティン』が、自動で降下を開始する。
 全ての針は、瞬時に『ウィリアム・シェイクスピア』に巻き戻る。
 そして再び『ミスティールティン』に向かって放たれた。
 止めを刺す為に。
「う――」
(分子運動制御、開始。『氷盾』起動)
(『アポカリプス』連動。拡大率を最大で定義)
「――うあぁぁぁぁぁぁ!!」
 何もかもが吹き飛んだ。
 それまで考えていた事が。
 ソラが走り出す。
 何も解らない。
 解ることはただ一つ。
 許さない。
「ああああ――!!」
 言葉にならない絶叫を上げながらソラが走る。
 信じられない速さで、『ウィリアム・シェイクスピア』と『ミスティールティン』の間に割り込んだ。
(『氷盾』展開――)
 両者の間の空間に、『ミスティールティン』をすっぽり覆いつくすような大きさの壁が出現する。
 それは、急速冷却され、青く輝く空気結晶。
 解き放たれた『針』は軌道を変えることなく『壁』に衝突し、凍りついた。
(指向性運動を追加。『炎神』連動起動)
 直後、青白く輝く壁が砕けた。
 凍りついた『針』はそれと共に砕け、さらに破片が『ウィリアム・シェイクスピア』に目掛けて飛んでゆく。
 と、金属をこすり合わせたような音が響き、二対十六枚の翼が展開された。
 さらに音が響き、一枚の翼が盾のように広がり前方に展開される。
 そして、氷の散弾を真っ向から受け止めた。
 着弾地点から凍結が広がってゆく。
 だが、穴が開くどころか、傷一つつかない。
 やがて、全てを受け止め終わると、ビキビキと音を立てながら凍りついた盾が変形を始めた。
(『炎神』展開)
 凍りついた盾の前に小型の太陽が出現する。
 変化が止まった。
 ビキ、と一際大きな音を立てて、巨大なひび割れが走る。
 それが合図だったかのように、無数のひび割れが走った。
 ひび割れが限界に達すると、盾を形成していた一枚の翼は粉々に砕け散り、大気中にきらめく。
 そこまで、僅か五秒。
 ソラは視界の隅に、ゆっくりと降下している『ミスティールティン』を捕らえた。
 まだ無事だ。
 自分はあれを守らなければならない。
 白銀の鳥は、一つ欠け、十一枚になった翼を大きく羽ばたかせた。
(指向性運動係数を付加、『炎神』終了)
 展開された炎球が砕け、『ウィリアム・シェイクスピア』目がけて突き進む。
 白銀の鳥は、もう一枚の翼を前面に展開してそれを受け止めた。
 直後、ソラは己の目を疑った。
『ウィリアム・シェイクスピア』が、攻撃を受け止めたその翼を、引き戻すことなくそのまま射出したのだ。
 まっすぐこちらに向けて。
 慌てて回避行動に移る。
(『氷盾』起動)
 方向をずらす為に、進路を阻むように氷の壁を展開した。
 これで、壁に衝突した巨大質量は、僅かながら軌道を変化させられるはずだ。
 が、さらに、その『翼』が砕けた。
 中から数百にも及ぶ『針』の群れが飛び出す。
 一本、一本が丸太並の太さを持つ『針』が、壁を避け、あるいは砕き、真っ直ぐにソラを狙う。
(回避ルート予測・・・・・・予測成功。回避不可)
 ――圧倒的だ。
 だが――、
(周辺情報を取得・・・・・・完了。『フォース』(空気壁)起動。密度を10倍で再定義)
 まだ、諦めない。
 全てが当たるわけではない。
 こちらに向かい来る数本、それらを弾くだけでいい。
(接触まで、残り二秒)
 ソラは『針』を睨みつけ、
(完了。『フォース』局所展開)
 手を掲げた。
 一メートルほど前方に揺らぎが発生する。
 前方にだけ展開して、収束率を高めるつもりだ。
(接触)
 四本の『針』が空気壁に衝突した。
 周囲では、『針』が地面に突き刺さり、雪とその下にある土砂を巻き上げる。
 一本の『針』が弾かれて、ソラの真横の地面に突き刺さった。
 衝撃によろけそうになるが、必死に踏ん張る。
(危険、『フォース』半壊)
 I-ブレインが警告を発する。
 周りには突き刺さった巨大な『針』の群れ。
 何処にも逃げられない。
 さらに一本の『針』が吹き飛ばされてゆく。
 残り二本。
 揺らぎが軋んだような気がした。
(危険、『フォース』崩壊)
 I-ブレインが警告を発する。
 一息遅れて、空気の壁が消滅した。
 遮る物の無くなった二つの『針』が、獲物を狙う。
 ソラはあらかじめ用意しておいた回避方向に動こうとして――。
(エラー、回避不能)
 I−ブレインが発する、理解できない警告。
 一瞬、何が起こったのかわからなくなる。
 二本の『針』は、ソラが見つめる中、瞬時に枝分かれをした。
 その数、四つ。
 回避方向は、ふさがれた。
 プログラムの実行は間に合わない。
「――ッ!!」
 半ば適当に、回避行動に移る。
 だが、一つの『針』が、的確にソラを貫いた。



 泡が上に流れてゆく。
『ウィリアム・シェイクスピア』の船内、広いコントロールルームの中央に、巨大な円筒形の制御ボックスがあった。
 その中に浮かぶ一つの影。
(被害確認・・・・・・艦艇構成に異常なし。演算機関正常稼動)
 エドワード・ザインはゆっくりと目を開いた。
(ゴーストハック、オートスタート。『翼』を射出。2秒後に拡散、『針』を射出)
 今、その目には自分を追ってきた追跡者と、その船が写っている。
 船は落とした。
 あとはあの魔法士だけ。
 自分に親切にしてくれた人、食料までくれた人。
 でも、敵。
(拡散、『針』を展開)
 これで終わりだ。
 炎使いではこの攻撃を避けることはできない。
 破壊予測数よりも針の数が多くなる。
 そして、絶対に避けられない。
 地面に『針』が突き刺さる。
 もうもうと雪と土砂が巻き上がった。
 すぐさまセンサーが働き、生命反応を捕らえる。
 まだ生きているらしい。
 少しだけ驚いたが、すぐにI-ブレインに命令を送る。
(二対の『翼』を射出。1秒後に『針』を展開)
ゴーストハックにより、『メルクリウス』に仮想意識を流し込む。
 ふと、エドワードの表情が曇った。
 一言で言うならばそれは迷いだろう。
 エドワードが瞳を閉じる。
 そして、再びその瞳が開かれたとき、そこには表情は無かった。
 ただ、前を見続けるだけ、何も感じず、何も思わない。
「にんぎょう・・・・・・」
 呟かれた言葉は、明確な声になる事は無く、気泡となってはじける。
 直後、二対の『翼』が打ち出された。



 辺り一面に雪と土砂が撒き散らされ、もうもうと煙が巻き起こる。
「まったく、やっちまった・・・・・・。俺って本当にダメなヤツだな・・・・・・」
 晴れてゆく煙の隙間から、銀色の鳥を睨みつけ、ソラは毒づいた。
 足元の血溜まりが、凄い勢いで大きく広がってゆく。
 全身に力が入らない。
(思考ノイズを感知、エラー)
痛覚処理をできないソラの脳が、激痛に悲鳴を上げる。
 視界が霞んだ。
 血は、ソラの腹部から滝のように流れ出している。
 避けそこなった『針』が腹部を貫通し、そのままソラを地面に縫いとめたのだ。
 幸い、この『針』は本体から切り離されている為、今すぐ死ぬというわけではないが、このままでは動くことすらままならない。
 次がきたらおしまいだ。
(全血液の23パーセントが流出、危険。生命維持の為、血液循環を制御)
 I-ブレインが警告を発すると同時に、流れ出る血液の量が目に見えて少なくなる。
 生命の危機に立たされた為、I-ブレインの自己保存機構が働いたのだ。
 ここでの働きは、傷口付近の血液の循環を止めることである。
 だが、あくまで一時的な処置に過ぎない。
 急いで傷をふさがなければ、最悪、死亡する。
「ああ、シリィを守ろうと思ってこの様か――」
 格好悪いにも程がある。
 単純な怒りだけで、勝てるはずは無い。
 解ってはいたはずだが、やはり納得はできないようだ。
「本当に・・・・・・カ・・・ハァ」
 呟く口から血が流れ出た。
 そのまま激しく咳き込む。
 そして、今まさに『翼』を打ち出そうとする『ウィリアム・シェイクスピア』を睨み付けた。
 あの船にはエドワード・ザイン、施設の地下で出会った男の子が乗っているはずだ。
 自分はあの子を殺せない。
 命令云々ではなく、そう思う。
 だが、あちらはどうだろうか。
 この状況で『翼』を打ち出すことはこちらの死を意味する。
 迷いはないということなのか。
 ならば、自分はあの子には勝てない。
 出血多量により視界が霞む。
 二対の『翼』が爆発したように広がり、大量の『針』をばら撒く。
(危険。高密度情報制御を感知、回避・・・不能)
 I-ブレインが残酷な事実を告げてくる。
 それにあの数だ、迎撃したとしても全て破壊することなどできない。
 迫る『針』を見ながら、諦めにも似た感情が湧き上がってくる。
「・・・諦めさせてもらいたいものだが――」
(周辺情報を取得、『ラグナロク』起動プロセスを開始)
 柱に貫かれたままの姿勢で『アポカリプス』を抜く。
 もはや激痛は気にならない。
「――せめて、な・・・」
 風が吹きはじめた。
 ソラを中心として、風が吹く。
 穏やかだったそれは、だんだんと激しくなり、ついには雪が混じり始めた。
(『針』との接触まで三秒。『ラグナロク』起動プロセス完了。防壁の展開が失敗。危険、防壁無しで使用した場合、使用者の安全が――)
「うるさい」
 I-ブレインのエラーが瞬時に消え去る。
 最後に残るのは、実行開始と表示されたウィンドウだけ。
 起動すれば、自分が貫かれるのと同時に、ラグナロク(気化爆発)が発動するだろう。
「なんとかアイツだけ追い返すから、頑張ってロンドンに帰ってくれ。俺にできることはそれだけみたいだ」
 届くはずが無いとわかっていて、呟く。
(『それと、守れなくてゴメン』)
 そして、届くはずの無いメッセージを送った。
『針』を睨む。
(『ラグナロク』起――)


(『アンタって、ホント馬鹿ね』)


「え・・・・・・?」
 I-ブレインの動作が、一瞬遅れる。
 ソラが呆然と立ち尽くす中、視界の隅に黒い影が映った。
 船体の至る場所から煙を吹き、火花を散らし、しかし飛び続ける灰色の船。
 ソラが反応するよりも早く、ソレは両者の間に割り込み――。
 直後、鈍い音が響いた。






<作者様コメント>
はい、題八話をお届けします。
(あああああああ)
ゴメンナサイゴメンナサイ。
ボリュームが増して、さらに次に続きます(−−;
一区切りのはずだったのですが、いやはやどうにも。
しかもなんだか話の雲行きが怪しいですし。
つたない文章ですが、暖かくみまもってくれるとうれしいです。
では、次回に続きます。

(題名が違うとの突っ込みは――お察しください)

<作者様サイト>
なし

◆とじる◆