第九章

「黄金夜更」



























大空の星 井の狭さを知らず


されど 大海の広さを知る 






















赤々と赤熱した大地が色を息吹く。

暴虐的なまでの鉄の嵐に蹂躙され、罅割れた町。

そこに相対する二つの集団があった。

一つは兵団。

シティの軍もかくやといわんばかりの豪奢な装備に身を包み、ただ目の前の獲物を見る。

一つは五人。

共通点も何もないばらばらの人種の集まり。彼らは歯を食いしばり、目の前の集団を睨みつける。

「あんたたち、なんなのよっ!」

ファンメイが叫んだ。

隠し切れない怒りと憤りをにじませた声。

しかしこの無機質な集団はそれを歯牙にもかけず、ただ事実のみを答えた。

「――――『黄金夜更』

先頭にいる男がこれ以上はないほど簡潔に答えた。

「おーごんよふけ?」

こんな状況だというのにはてな、と首を傾げるファンメイ。

彼らがシティの軍ではないことに気がついたのだろう。

と、ヘイズが一歩を前に踏んだ。

「黄金夜更・・・・・・名にし負う世界最大の空賊がこんなへんぴな町に何の用だ?」

どうやら彼には聴き覚えがあるらしい。

なるほど。確かに世界最大の空賊であるならば同じ空賊であったヘイズが知っていてもおかしくはないだろう。

フィアも錬もそういった事情には疎い。

真昼か月夜ならば知っているだろうが、いまいちシティ以外の勢力というのはわかり辛いのだ。

「目的は何だ」

射殺さんばかりの目つきでヘイズが問うた。

男が答える。

「教える必要はない」

一問一答。

無機質なやりとり。

しかし今の男の声の中には隠しきれない高揚が渦巻いていた。

「だが」

男が腕を上げる。

差し出された手、その先の指が指すものは、

「その娘を置いて逃げれば見逃してやる。さもなければ、共に殺す」

先ほどの爆裂で気を失い、ファンメイに担がれているリューネだった。

「・・・・・・リューネを・・・・・・?」

――――マザーコアフィア龍使いファンメイが目的ではないのか?

自問しても指し示されるはひとつの事実。

・・・・・・おそらくはあの夜の襲撃も、狙いはリューネだったのだ。

「・・・・・・・・・っ」

唇をかみ締める。

どんな理由が彼女にあるのかわからない。

けれど、それは町をまるまるひとつ焼き滅ぼしてまで償わせるものなのか。

こんな寂しい笑みを浮かべる少女が、それほどまでのことをしたというのか。

あんなに楽しげにフィアとファンメイと笑いあえる少女が、こんなやつらに付け狙われるなんて、ありえない。

怒りと憤りが体を満たす。

気づかれないよう、後ろでにナイフを構えた。

やつらはまだ自分の”能力”を知らない。

ならば、この身の力を判断するのは先ほどの行為しかない。

「・・・・・・皆、僕の周りに」

静かに告げる。

何か策がある、と感じたのか、全員素直に錬の周りへと集まった。

それを見た『黄金夜更』が嘲笑う。

「抗うか。たかが炎使いの分際で・・・・・・・・・・

・・・・・・そう。やつらが見たのは自分がナパーム弾を凍らせるところだけ。

何の予備知識も持たないものならば、そう判断するのが妥当だろう。

――――ならば、脱出は容易だ。



『世界面変換デーモン』サイバーグ 常駐 『自己領域』 展開)



半透明上の揺らぎが錬たちを包み込む。

「な、騎士だと――――!?」

案の定。こいつらは自分を完全に炎使いだと確信していた。

故にこの隙はまさに必然。

先頭の男が何かを叫ぶ前に、すべては外界より隔絶された。

振り返り、告げる。

「あまり好き勝手に動いちゃだめだよ。この球形の部分から一歩でもはみ出したら消えちゃうからねこれ」

『自己領域』より体の一部分が出てしまった場合、ひとつの事象の中で時間単位の差異が生じる。

そんな矛盾などありえぬため、その時点で自己領域は消滅するのだ。

無論、大規模に閉鎖空間を作ればそういうことも可能なのだろうが、錬はそんな前例はひとつしか知らない。

否、そんなことができるやつはあの常識はずれウィズダム以外にいるわけがない。

「行くよ。僕と同じペースで走って!」

だが自己領域とて無限の持続時間を持つわけではない。

I−ブレインをフル稼働させて形成するのだから当然時間がたてば疲労と共に消え去る。

そのため騎士はその移動に最速を期すのだが、この状況では勝手が違った。

何かを自己領域に取り込む場合、自分が抱えるのがもっとも理想なのだが、祐一ならばともかく、錬にそこまでの 力はない。

そのため必然的に足取りは普段より遅くなる。

すなわち、そこまで距離を稼ぐことができない。

この調子ではもって10分。それが自分にも『月光』にも限界だろう。

いや、限界まで頑張っては何かあったときに対処ができない。

先を見積もって持続は5分と計算。

凍ったように動かない軍勢の横を大きく迂回し、町の外へと出る最短ルート、大通りへ出る。

「・・・・・・・・・!」

途端、全員が息を呑んだ。

目の前に広がるは一面の赤。

ただ大地の朱に染めて荒れ狂う炎の嵐だった。

家屋は残らずなぎ倒され、憩いの広場であった公園など見る影もない。

時折あちらこちらで光るのは余波がくすぶっている証か。

紛れもない大焦熱地獄が現実を侵食していた。

「・・・・・・ひどい」

ぽつりと漏らす。

――――手を伸ばしたまま倒れる子供がいた。

――――妻をかばって、しかし共に押しつぶされた老夫婦がいた。

――――必死で下敷きになった者を助けようとして自分もまた同じ運命を辿った者がいた。

最早この場で動くものは自分たちだけ。

けれど、確かに聞こえていた。

手を伸ばし、体を引きずり、誰かを呼ぶ声。

死に体と成り果てたその目が確かに告げていた。

ただ一言、――――「タスケテ」と。

「・・・・・・・・・っ」

ぎり、と奥歯をかみ締める。

許されない。

こんなことは絶対に許されない。

ヘイズが呟く。

「ふざけんなよ・・・・・・・・・」

上空を仰ぐ。

そこに浮かぶのは静止した幾つもの船影。

・・・・・・まずはあれらだ。あれらを止めるなり叩き落すなりして目を覚まさせる!

そのためにも、今はHunter Pigeonへと向かわなければならない。

だが、そろそろ自己領域の展開に小休止を挟む時間だ。

「・・・・・・・・・一旦解除するよ。そこの路地に入って」

くい、と倒壊した建物で半ば崩れかけている路地を指差し、全員で飛び込む。

自己領域を解除。

現実世界が色を取り戻し、すべての感覚が復帰する。

フィアとファンメイ、リューネを奥へ押しやり、自分とヘイズで入り口に陣取る。

「・・・・・・・・・ふぅ」

ナイフをしまって一息つく。


本物の騎士ではない錬が自己領域を展開するとなると、どうにも持続時間か性能のどちらかを落とさなければなら ない。

なにせ本当は騎士剣の補助領域まで使用して発動するものなのだ。

確かにこの『月光』の結晶体は紅蓮とまではいかないが量産騎士剣をはるかに超える性能を有しているものの、い かんせんやはりそれでも演算力不足。

今現在月夜と真昼がなにやら自分のそれぞれの能力を特化したタイプと同等あるいはそれ以上にする計画を練って いるらしいがないものねだりはできない。

ただ、あの兄と姉にかかればそれは夢物語ではないのだろう。

現に家を出発するとき、月夜の作業机には四つの見慣れぬものがおいてあった。

――――蒼いナイフ『蒼天』

――――黒の手甲『ヘカトンケイル』

――――真紅の指輪『ムスペルヘイム』

――――無色のペンダント『ライジングサン』

その四つだ。

おそらくはあれが試作品。

・・・・・・と、そんなことを考えているうちに休憩は取れた。

「そろそろか?」

目を閉じ、瞑目していたヘイズが動いたこちらの気配を感じて目を開けずに言った。

その言葉にファンメイがリューネを抱えなおし、フィアがそれを支えて立ち上がる。

「うん。そろそろ行けそう――――っと」

首を引っ込める。

危ういところでその鼻先を兵士たちの一群が走り去っていった。

・・・・・・あぶないあぶない。

どうやらあちらさんはこちらを捉える手段は持っていないようだ。

ああいった手合いならば普通使用するのはサーモグラフィーや情報制御を探知する機器だが、前者などこんな炎の 海の中では使える訳がない。

となると残るは情報制御を探知する機器。

先ほどは持っていなかったようだがおそらく今は持っているだろう。

逃げ出したときはこちらを炎使いと思っていたがために使う必要がないと判断していたらしく、自己領域の痕跡を 辿られてはいないところからの判断だ。

だが、そうなると迂闊に自己領域は使えない。

このペースだと少なくとも後一回は小休止を挟むことになるだろう。

その際に追いつかれる可能性が高い。

・・・・・・・・・ならば、搦め手だ。

「私の出番、ですね」

何も言わずとも悟ったか、フィアが錬の横へと寄り添う。

そう、天使の翼の領域に取り込めば無血で目的地までたどり着けるはずだ。

問題はあのナイフの結界だが、世界をまるごと取り込めばそこだけを避けて行くこともできるだろう。

「フィア、お願い」

その言葉と共にフィアが目を閉じる。

刹那の間もおかず、生まれ出でるのは金色の翼だ。

一瞬にしてそれは爆発的なまでに拡大。

半径5000mを一挙に支配下に収めた。

ふわりふわりと舞い散る羽は金の雪。

情報制御を感知したか、兵士の一群がこちらの方を指差している。

だが無駄なこと。この天使の翼の領域内にいる限り、何人たりとも誰かを傷つけることなど――――――――












「――――危ねぇっ!!」












ヘイズの怒声。

よく響くその声と同時に肩をつかまれ、錬はフィアもろとも路地裏の奥へと引きずりこまれた。

その刹那。

壁に無数の弾痕が穿たれる。

「え――――?」

愕然とフィアがその光景を見つめる。

いや、それは自分も同じだ。

天使の翼はちゃんと発動している。

なのに、何故あいつらは攻撃ができる――――!?

「錬さん・・・・・・あの人たち、私の力が・・・・・・・・・」

「な、なんで・・・・・・・・・?」

――――わけがわからない。

どうしてあいつらにはフィアの力が効かないのだ?

そのとき、ファンメイが叫んだ。

「ヘイズ、あれ!」

指差す先は一人の兵士のうなじ。

そこには、黒い小さな素子が接続されていた。

「あれは――――」

ヘイズが呆然と呟く。

錬にも見覚えはある。

あれはかつて自分がエドと一緒にヘイズと戦った時に彼がフィアの能力を防ぐためにつけていたデバイス。

確かにあれがあればフィアの能力は無効化される。

――――だが、

「なんであんなもんを持ってやがんだ!?」

あれはヘイズがリチャードに頼み込んで作ってもらった世界でたった一つだけのもの。

世界に『天使』の能力者はフィアしかいないのだからそれも当然。

そもそも普通の人間はおろか魔法士でさえ自分たちをのぞけば『天使』を見たことのある者は五本の指で事足りる だろう。

シティ神戸崩壊時に共に滅んだとされる欠番の能力者。

それが『天使』、フィアのはずだ。

故に、天使の翼の能力は見る者すべてにとってほぼ確実に初見。

なのにあいつらはそれを見越したかのように抗体デバイスを持っていた。




















――――――――まるで・・・天使・・の能力を持つ者を捕らえに来たかのように・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





















「――――っ!」

一瞬で身体能力制御をたたき起こし、運動速度を10倍に定義。

飛来した無数の銃弾を片っ端から切り払う。

しかしたかだか十倍の加速ではすべてを打ち落とすことなど不可能。

フィアが後退する時間さえ稼げばいい。

「下がれ!」

ヘイズの指が打ち鳴らされる。

同時に錬を守るように空気分子の論理回路が盾となって銃弾を解体した。

一挙動で身を翻し、逃走に移る。

こんな場所では袋の鼠も同然だ。

縦一列に長く伸びた隊列では全員を自己領域の範囲に収めることもできない。

先ずは脱出だ。

しかし悠長に走っている暇もない。

ならば、



「仮想精神体制御デーモン」チューリング 常駐 ゴーストハックをスタート)



ラグランジュを展開したまま付近の壁にゴーストを送り込む。

壁は情報構造体に干渉されて一瞬揺らぎ、すぐに命令どおり通路を形成した。

即座に飛び込む四人。

家宅不法侵入だがまぁ見逃してもらおう。

これで間合いは開いた。

錬は今度こそ自己領域を発動させようとし、



(システムエラー 演算処理に致命的な妨害を検出)



「っ!?」

例の”結界”にそれを阻まれた。

「向こうからも来てやがったのか・・・・・!」

忌々しげにヘイズが吐き捨てる。

・・・・・・しまった。

なにも敵はあの兵士の一群だけではないのだ。

すでに包囲されていたと考えてもおかしくはなかった。

「く・・・・・・っ!」

だとするとこれはマズイ。

こんな場所では狙い撃ちされ放題だ。

庭を横切って外へと飛び出す。

狙われやすくはなるが、結界の外へさえ出れば何とかなるはずだ!

「錬!」

ファンメイの叫び。

それを聞いた瞬間反射的に横っ飛びする。

一瞬遅れて自分がいた場所に無数の弾痕が穿たれた。

「危な・・・・・・っ。みんな! 結界の基点を探して!」

転がって体勢を整えながら言い放つ。

それさえ破壊できればこちらの勝ちだ。

今までの行動からして相手に魔法士は存在しない。

「っ!」

この演算効率ではラグランジュの起動すら危うい。

無理をすれば起動くらいできるだろうが、その代償に間違いなく神経は焼ききれる。

鷹の目つきで錬は基点を探す。

あの一瞬では自分たちの正確な場所を探知するのは不可能。

ならばここら一帯を囲むような形でこの結界は形成されているはずだ。

つまり、この家の角にある可能性が高い!

「錬さん!」

フィアが叫ぶ。

指差す先、敷地の角に刺さるあれは確かに基点の刃――――!

だが、その時、屋根の向こうからフィアを狙って構えられている銃口に気がついた。

「――――フィア!」

駆け出そうとするが間に合わない。

通常の加速では二歩も踏まぬうちにフィアは撃たれる。

それなら――――

「フィアちゃん――――!」

「――――ファンメイさん!?」

神経が焼ききれるのを覚悟でラグランジュを発動させる前に、ファンメイがフィアを抱きしめて跳躍していた。

一拍遅れて銃声。

「あ、ぅっ!」

ノイズメイカーの効果がある今では龍使いとてまともな防御・再生能力は発動できない。

加えて今は気絶したリューネも背負っている。

普段ならば意にも介さぬ弾丸はファンメイの足を打ち抜いていた。

「ファンメイ!」

ヘイズが叫ぶ。

小型の携帯銃をもって戦っていた彼だが、射程も威力も段違いな相手に自然壁に隠れる形になっていた。

そのヘイズが壁より飛び出そうとする。

だが遅い。

彼らの目的がリューネの殺害であるならば、今の状態は願ってもない好機――――!

「・・・・・・・・・!」

それでも諦めずに地を蹴る。

それは錬も同じだ。

みすみす、目の前で大切な人を死なせるもんか!

意を決してラグランジュを発動させようとノイズを無視してI−ブレインに命令を送ろうとする。

その、瞬間。

「錬さん!」

フィアが懐から小型の銃を抜き放った。

何かあったときの護身用に月夜が持たせてくれたお手製のハンドガンだ。

フィアはそれを錬から見てもほれぼれするような手つきで構える。

一秒とかかっていないコンマ何秒かの早撃ち。

そして狙いも神業だった。

一分の乱れもない流れるような照準より刹那の間もおかぬ神速トリガー。

論理回路により極限までスピードを高めた弾丸が、基点のナイフを打ち砕いていた。



(――――演算効率回復)



全速でI−ブレインを叩き起こす。

無数の銃口がこちらに狙いを定める。



(――――I−ブレイン 戦闘起動)



引かれるトリガー。

――――ヘイズが指を鳴らす。



「空間曲率制御デーモン」アインシュタイン 常駐)



自分らを百殺せんと弾丸が迫る。

――――ファンメイが身体構造を改変する。



(――――「次元回廊」 発動)



そのタイミングはまさにナノセコンド。

コンマ01秒後に自分らを蜂の巣にするはずだった銃弾は残らず無限の空間の穴に飲み込まれ、

奔った黒い爪牙に叩き落され、

展開された論理回路に解体された。

「!?」

必殺のはずの攻撃を全て無効化され、敵に動揺が走る。

「今、だ!」

その集団のどまんなかに『破砕の領域』を遠距離から叩き込み、ヘイズが吼える。

言われなくても、だ!

I−ブレインが回転をあげる。

再びサイバーグを常駐、自己領域を発動。

先ずはフィアを自己領域に取り込み安定。そのまま抱きかかえて跳躍する。

続く動作でリューネを抱えているファンメイの下へ到達。

「ファンメイ! 行くよ!」

小柄な女の子とはいえ流石に三人も抱えれるほどの筋力は錬にはない。

フィアを抱えている以上、ファンメイには自力でこちらのペースについてきてもらうしかない。

「まかしといて!」

だがそこは流石に自らの体の扱いに関しては随一を誇る『龍使い』。

すぐさま足の銃創を修復して一部の無駄も見られぬ運動でこちらに追いすがる。

そして最後はヘイズ。

指を鳴らしかけた状態で固まっているところに横から慎重に自己領域へ取り込む。

「よし。また結界張られる前にハリーんとこ向かうぞ!」

銃を懐にしまい、ヘイズが言う。

ここからならばもう妨害もない。

錬たちは一路、空へと羽ばたくために駆け出した。
















         *

















「ハリー! 緊急発進!」

紅色の船にたどり着き、乗り込むや否や吼えるヘイズ。

『完了しています』

答える声は澱みない。

三本線のディスプレイが現れ、普段よりも少し口をへの字に曲げた表情で答える。

「なら行くぞ!」

走りながら有機コードを首筋に叩き込み、操縦席についたと同時に船の全ての能力が開放される。

灰色の大地よりゆっくりと船首を天へと向ける真紅の艦。

それは少しだけ船体を震わせるように静止した後、

「発進!」

『了解です』

まるで天に向かって落ちるようにその体を空へと舞わした。

初速の概念などまるでない。

この艦にとって航空力学など踏みにじる対象にしか過ぎない。

急加速。

灰色の空に向かって一滴の紅が落ちてゆく。

「ハリー、状況は」

指をぽきぽきと鳴らしながらヘイズが問う。

それに対してハリーは少しだけ間をおき、

『敵、飛空艦艇は中型58機、小型36機を確認しています』

「――――ご、58!?」

その言葉に錬は絶句した。


中型の飛空艦艇など最早それは戦艦のレベルだ。

駆逐艦、巡洋艦と同等とされる呼び名だが、それらは普通多くともせいぜい10機。

最重要輸送任務の護衛でさえ3機なのだ。

マザーコアを護衛するときよりも遥かに多いと聞けばこの異常はわかるだろう。

こんな戦力。大戦のレベルだ!

「・・・・・・ちっ、流石は『黄金夜更』ってわけか。まさか本当にここまでの戦力もってやがるとは、シティと 一戦やらかせれんじゃねぇのかこいつら」

忌々しげにヘイズが吐き捨てる。

世界最強の艦であるこのHunter Pigeonのマスターが嫌悪するほどの戦力。

そのとき、

『――――来ます。ロックオンされました』

無機質なハリーの声。

「上等。やるってんならやってやろうじゃねぇか!」

獰猛な、”人食い鳩”の笑みがヘイズに浮かぶ。

「お前ら、どっかに掴まってろよ!」

言葉と同時に指が弾かれる。

その音は厳密に周波数を保ったまま船外へと吐き出され、『破砕の領域』を形成し、迫り来る大口径砲弾を解体した。

同時に、砲撃の火蓋が切られる。

「お前らが誰に喧嘩売ったか、とくと思い知らせてやる必要があるようだ、な」

HUnter Pigeonが加速する。

向かう先は赤々と燃える町の上空。

こちらを滅ぼさんと突っ込んでくる無数の船影。

ヘイズが吼える。











「さぁ――――やってみやがれ。・・・・・・・・・この俺に対してな!!」


































 おまけコーナー・念話編 

〜れっつこみゅにけーしょん〜



――――この章の途中からを地の文抜きで、セリフのみで書くとこうなります。




ファンメイ 「錬!」

錬 「っ!」

フィア 「錬さん!」

錬 「――――フィア!」

ファンメイ 「フィアちゃん――――!」

フィア  「――――ファンメイさん!?」

ファンメイ 「あ、うっ!」

ヘイズ 「ファンメイ!」

錬 「・・・・・・・・・!」

フィア 「錬さん!」

集団A 「!?」





・・・・・・・・・・・・・・名前だけで会話できるのかあんたら



あとがき

「第九章・『黄金夜更』、いかがでしたか?」

錬 「とりあえず地の文無いとダメなことはわかったよね?」

フィア 「そうですね。基本的に会話が少ないですし」

「・・・・・・・・・善処します」

ヘイズ 「――――さて、この章から色々と泥沼化してゆくわけだが」

「そうだね。徐々に物語の中核が明かされていくよ。鋭い人だともうリューネの正体に気づいたんじゃないかな?」

ファンメイ 「リューネの正体? 実は未来から来――――」

ヘイズ 「――――やめんか。ややこしくなる」

ファンメイ 「・・・・・・むぅ」

錬 「でも、まだわかんないんとこが沢山あるんだけど」

フィア 「はい。リューネさんの能力とか、事情とかがまったくわかりませんね」

「能力・・・・・・は、この時点でわかったらエスパーの称号あげましょう。事情は勘で当たるかもね」

錬 「なに、そんなすごいのリューネの能力?」

「すごいっつーか・・・・・・ある意味、――――ウィズダム以上」

錬&フィア 「!?」

錬 「え、えと・・・・・・それって、リューネも『七聖界』セブンスヘヴンとかそーゆーの使うってオチ!?」

フィア 「・・・・・・なんか想像できませんけど」

「あぁ、安心しろ。戦闘向きの力じゃないから。・・・・・・と、今明かせるのはこの辺までだねぃ」

ファンメイ 「んむー、気になるよー?」

「もうちっと待ってなさい。プロットの予定で行くと・・・・・えー、13章あたりで明かされるから」

ファンメイ 「はーい」

ヘイズ 「となると、一応今回はちゃんと予定通りに進んでるのか?」

「・・・・・・まぁ一応は。「あの空」よりは脱線しすぎてないと思うけど」

錬 「いや、あれは脱線しすぎだったでしょ。比べるのがどうかしてるよ」

フィア 「確か・・・・・・最初のころはウィズダムさんなんていなかったんですよね」

「ぎゃー! そこまで言うんじゃねーっ!」

ヘイズ 「ってかよ。最初の方のコメントに俺が出るかも、とかなんとか書いてあるんだが」

「う。いや、その・・・・・・なんてーか、こう、ね? わかるだろ?」

錬 「・・・・・・その日本語がまずわかんないよ」

ヘイズ 「まず俺にゃお前がわからん」

ファンメイ 「だーいさーんせーい」

「陽気に人の存在全否定してんじゃねぇっ!!」

フィア 「・・・・・・そもそも人ですっけ」

錬 「・・・・・・・・・(なんかフィアがどんどん毒舌になってく気がするなー)」

「うぅ・・・・・・いいもんいいもん。所詮俺なんて夜中にランニングしてただけで都市伝説にされる存在だい」

ヘイズ 「・・・・・・・・・こりゃまたシュールな」

「お星様の馬鹿ー!」

ファンメイ 「それもわけわかんないんだってば」

錬 「そのうちdeusも脱線してくるかもね、この分じゃ」

フィア 「今HTML化してない生の文は十一章の途中ですけど、・・・・・・あれ、大丈夫そうですねまだ」

ヘイズ 「ま、少しは成長したってことかね」

「・・・・・・・・・そういうことにしといてくり。――――さて、次は第十章・『白銀の救い』」

ファンメイ 「灰色の雲の下、半年の時を経て約束が果たされるよ」

ヘイズ 「タイトルからして内容モロバレだろーがまぁ、少しは期待してやってくれ、な」

錬 「それじゃぁ、またね」

「んでわでわー」












SPECIAL THANKS!
天海連理さん(誤字脱字校正部隊)
有馬さん(〃)
闇鳴羚炬さん(〃)