第十六章

「今にも落ちてきそうな空の下で」



























――――轟け――――






















灰色の空の下、寒風荒巻く大気の中を、次々と爆炎が彩ってゆく。

光と紅、爆音と閃光が断続して灰色の世界を極彩色に染め上げていた。

そして、それらを生むのは戦闘に他ならない。

灰白色に覆われた世界、誰にも知られることのない激戦が今幕を切っていた。

「いつまでもちょろちょろしてんじゃねぇ!!」

怒号と共に真紅の機体から紫電が放たれた。

空気をオゾン化させてこの世の何よりも早く一閃をもたらすそれは荷電粒子砲。

その速度は光速と等しいため、この攻撃を視認してから回避することはできない。

不可避の威を持つその一閃に正確に噴射口を打ち抜かれ、煙を上げながら二機が墜落した。

だが、すぐさま報復とばかりに大量の弾幕が打ち出される。

「っちぃ・・・・・!」

真紅の機体、Hunter Pigeonのマスター。ヴァーミリオン・CD・ヘイズは舌打ちしつつ命令を叩き込む。

前面180度。

半球状にばらまかれたおよそ300もの弾幕に対し回避ではなく突撃を選択。

この世界のどんな戦艦であろうと敵わない爆発的な加速を行い、一直線に突っ込んでゆく。

「大判振る舞いすぎるぜ、ったくよ・・・・・・ぉ!!」

語尾の叫びを力と変え、ヘイズは両手の指を打ち鳴らした。

その響きは周波数を保ったままライン形のスピーカーを通って外へと響き渡り、『破砕の領域』を形成する。

空気分子によって描かれた論理回路は情報解体の威力を担い、飛来した弾幕を解体した。

それによって生まれるのはたった数mの間隙。

だがヘイズにとってはそれで十分だ。

再び指を打ち鳴らして『破砕の領域』を形成し、もう一回弾幕に穴を生めばそれだけで完全なる逃げ場が確保できる。

慣性制御とヘイズ自身の圧倒的な空間把握能力によってHunter Pigeonは機体とほぼ同じ大きさの隙間を次々にすり抜けて行く。

そして抜けると同時に報復の一閃。

予測演算の粋を尽くしたその一撃は狙い違わず演算機関の空気取り入れ口を爆散させてゆく。

「これで15・・・・・っと」

敵機が墜落してゆくのを確認すると同時に機体を捻ってマシンガンの掃射を回避する。

続く動作でバレルロール。

超強引な軌道変更によって生まれた水蒸気爆発を持ってスマートミサイルを消し飛ばし、大きく敵の陣形を迂回する。

「リューネがいねぇからってやる気になってやがんなー。・・・・・・俺はてめぇらのストレス発散の相手なんぞになりたかねぇんだがよ」

そう毒づく。

その言葉どおり、『黄金夜更』は完全にこちらを殲滅する気でいる。

目的であるリューネがいない以上。ヘイズとエドはただの邪魔者にしかならないのだから当然といえば当然なのだが、

「それにしたってここまでやるか普通・・・・・・?」

機体を空中で横滑りさせてマグナムミサイルを回避。

返す刀で指が弾かれ、その一群が消し飛ばされる。

と、息つく暇もなく上から三機編隊の突撃。

「ったく」

『破砕の領域』を形成。機銃掃射を先ずは消し飛ばす。

「よくもまあ」

同時に機体を加速。三角形を描いている敵編隊のド真ん中へと突っ込ませる。

「そんなに」

まさか突っ込んでくるとは思わなかったのだろう。

泡を食ったように隊列を乱れさせるその編隊の頂点にそれぞれ『破砕の領域』をブチこむ。

「じゃんじゃん撃ってこれるもんだな・・・・・・?」

船首に『破砕の領域』が着弾。

その力はほんのわずかだが進行方向をぶれさせた。

ちょうど、三角形の頂点がそれぞれ外側へと向くように。

「どんだけ金持ってんだてめぇらはっ! ――――少しは俺にも寄越せ阿呆!」

故に、その三機はHunter Pigeonに対し無防備な腹を向けることになる。

「リューネに対する仕打ちが一番気に食わねぇが、それも俺には気に食わん! ――――私怨も含んでトサカにきてんぞ俺は!」

無茶苦茶な論理展開の叫びと同時にHunter Pigeonが無茶苦茶な行動を開始する。

船首よりさらに先、つまり三機編隊の敵機の中央に『破砕の領域』を形成する。

刹那、その部分の大気が情報解体される。

空気分子をもって論理回路を形成する以上、大気を解体すれば効果もすぐ消えてしまうがそれでも構わない。

それによって生まれた真空部分、そこに全速でヘイズは機体を突っ込ませた。

真空になった空間は無論周りの大気からその欠損を補完するために空気を吸い込む。

そこに音速を超過する爆発的な物体を投げ入れたのならば、どうなるか。

中心へ流れ込む大気と真空の断層は圧倒的なスピードによって巻き起こる”空気の餌”となるのだ。

「――――吹っ飛びな!!」

大気が爆発した・・・・・・・

一瞬押し込められた大気が烈界となって顕現し、周りの三機はおろか、今接近しようとしていた別の四機までもをこれでもか、と弾き飛ばす。

そしてそれらはきりもみしながら墜落していった。

あの急な爆破に吹き飛ばされたのだ。

ショックアブソーバがあろうがなかろうが意識はブラックアウトしているだろう。

ともあれこれで撃墜数は25弱。

「さて、あっちはどうだか・・・・・・?」

そこでヘイズは船外カメラの視点を変えてウィリアム・シェイクスピアの方を見やる。

ゴーストハックに特化された流体金属、メルクリウスによって形成されし白銀の鳥はスピードタイプの船ではない。

よってヘイズのように突撃特攻回避を繰り返すのではなく、乱戦混戦に持ち込むのが戦法だ。

そして、その言葉どおりウィリアム・シェイクスピアはとんでもない混戦を繰り広げていた。

「・・・・・・・・・おいおい」

ヘイズの声のトーンが一オクターブくらい落ちた。

メインディスプレイに映る流体金属の鳥。

それは紛れも無く、艦隊相手に”格闘戦”を行っていた。

十二枚の翼の一枚が鋭利な刃と研ぎ澄まされ、すれ違い様に敵機を切り裂いてゆく。

ミサイルが雨あられと降り注いで来たのならばそれに合わせて機体の形状を変えて回避する。

いや、そればかりか意図的に自機の表面を滑らせて相手に撃ち帰してまでいた。

「・・・・・・・・・もはや船じゃねぇなあれ」

今もまた、ウィリアム・シェイクスピアが”抜刀”した。

メルクリウスで形成された白銀の大剣。

幅広、肉厚の騎士剣を模したそれを力任せに振り回す。

――――大斬撃。

最早それは剣ではなく鈍器として威力を発揮する。

逃げ遅れた敵機を数体打ち据え、打ちのめし、叩き落してゆく。

それはまるで空を踊る舞踊のよう。

白銀の鳥は相方を潰しながら踊りまわる。

「こりゃ、こっちも負けていられんな」



『人食い鳩の名が泣きますね?』



ぼやくように呟いた独白に律儀にもハリーが答える。

「そういうこった。それにそろそろ一軍が出てくるだろうしな」

目の前に突貫してきた二機を『破砕の領域』の衝撃で跳ね飛ばし、ヘイズは答える。

そう、未だこの戦闘空域にいるのは昨日の戦闘で言う”二軍”なのだ。

おそらくは『黄金夜更』が適当な戦力として集めた者たち。

本当の敵である大戦よりの翼の担い手たちは未だ姿を現していない。

だがそれもここまで。

いくら奴らとて、50機も無駄な被害を出すことに目をつぶれるわけが無い。

ここまではあくまでも前哨戦。

ただ火力に物を言わせて追いすがるひよっ子どもに付き合ってやったに過ぎぬ。

そう考えたとき、

「!」

突然左右よりの挟撃!

斜め後方より二機、滑るようにその体躯をこちらの横につけた。

「やっぱ来たな・・・・・・!」

その動きは先ほどまでの雑魚どもとは比べ物にならない。

実際の戦闘を生き抜き続けてきた者のみが得る大胆な機動。

「――――だがそれでも甘ぇ!」

叫びとともに強引に機体を捻る。

重力制御と慣性制御を併用し、船首を基点として真紅の船はコンパスのように回転する。

「!?」

鼻先で回転するという力学上ありえぬ機動を果たしたHunter Pigeonに驚いたように二つの機体に戸惑いが走った。

それが隙だ。

回転したことによってHunter Pigeonは後を左の機に向けることになり、そして、

「出直してこい!!」

爆発加速。

後部演算機関より補助動力のジェットエンジンが猛火を吹いた。

そしてそれは当然その真後ろにいた一機に襲い掛かる。

鼻先に爆裂を食らい、前も見えぬままその敵機は落ちた。

さらに、

「ぉ・・・・・・!」

加速したHunter Pigeonはそのまま下へと身を躍らせた。

残る一機が追い、そしてその後ろからさらに追加の7機が来る。

だがヘイズはそれらを意にも介さず、

「任せたぜ」

たった一言を告げた。

刹那、Hunter Pigeonの真下。

追撃の八機にとっては完全に死角となるその場所から白銀の槍が怒涛をもって放たれた。

回避することなどできるわけもなく、あえなくその八機は身を紅に彩った。

そしてそれを確認する間もなく、

「!」

咄嗟に機体を捻ったその数m横を無数の紫電が通過していった。

砲撃部隊。

見ればいつの間にか敵機は数を取り戻し、完全な隊列を組んでこちらに船首を向けていた。

・・・・・・・・・ここからが、本番だな。

もう奇襲も奇策も通用しない。

後は真っ向から叩きのめすのみだ!

先ずは、

「その高慢チキな態度へし折って、『アレイスター』を引っ張り出してやるよ!!」

その叫びと共にヘイズはエンジンにさらなる火を叩き込んだ。

加速する。












           *

















断続的に爆裂音が響く。

留まることなく光が交錯する。

停滞することなどありえない。

それらは灰色の空舞う戦士の舞踏。

彼らはただ速く、ただ疾く、と空を行く。

「――――第二砲塔掃射! 弾種撤甲弾!!」



『了解しました!』



真紅の機体がここに来てさらに加速した。

追いすがるミサイルをすべて回避し、側面から突撃をかける。

放たれるのは装甲を穿つ幾本もの火線。

しかしそれは一瞬の判断で陣形を変えた敵編隊の前に虚空を貫くことになった。

同時に敵機は6機編隊に分かれ、上下左右前後より弾幕を放ってくる。

それぞれが弾体を収束。

駆逐艦であろうと直撃すれば壊滅的な打撃を受けるほどの砲撃が全方向から襲い来る。

並みの艦相手ならば必殺を越えて滅殺の型。

だがHunter Pigeonには通用しない。

破壊力・貫通力を高めるために弾体を収束させたのだろうが、それでは逆に、

「狙いやすい、ぜ」

言葉と共に動く指と足。

鳴らされる数は6つを数えて『破砕の領域』と化す。

一気に6つの必殺を消し飛ばした。

そして加速。

一気に包囲をつき抜け、反転して逆に人食い鳩は狩りに回る。

だがその瞬間後部に衝撃。

「ちぃ――――っ!」

反転した瞬間を狙われた。

後衛より前へ出た敵機の機銃の乱射が後部を捉え、装甲を一部削り飛ばした。

単純な速度、旋回性では敵わぬと見た『黄金夜更』がとった戦法。

それがこの誘導戦法だ。

『破砕の領域』を使用せざるを得ない状況に追い込み、さらにそこから全力を出さなければならない状況へと持ち込む。

すれば後は簡単だ。

全力へと移行するほんの刹那の隙に攻撃を加えればいい。

後衛が弾幕を張り、前衛が突撃。

牽制の包囲も含めてそれらは空の牢獄と化す。

いくらHunter Pigeonとてこの連携の前には攻撃を受けざるを得ない。

いや、むしろ損傷が装甲だけで済んでいることがまさに絶技。

Hunter Pigeonのマスターがヘイズでなければとうに撃墜されていることだろう。

最早ヘイズは砲撃系統の処理をすべてハリーに任せ、完全に船の操縦に意識を集中させている。

撃墜数、現在67機。

大戦でこのスコアを叩き出したのならばエースどころか英雄扱いだ。

「っそ!」

また一撃。

回避しきれずに右翼中央部に被弾。

ミサイルなどの破壊の大きいものは何とかかわしているのだが、機銃系統まで手が回らない。


(I−ブレイン疲労率 15%)


おまけにゆっくりだが、着実に疲労も溜まってきている。

長期戦はこちらが不利だ。

「――――んなことはハナっからわかってんだよ!」

I−ブレインに一喝を叩き込む。

そう、そんなことは最初から充分に理解している。

こちらは2機。あちらは500以上。

どんなに個が強くとも数の前に平伏すのは古代からの自明だ。

今こそ互角以上の戦いを繰り広げれているが、このまま疲労が蓄積し続けてゆけばやられるだろう。

それはエドも同様。

ヘイズのように予測演算の粋を集めた戦闘スタイルをとっているわけではないが、彼は十二枚の翼を自らのゴーストハックにて維持しなければならないという負担がある。

加えてそれを改変させて攻撃しているのであれば尚更負担は増すであろう。

故に、今の状況は互角に見えて実は必至。

敵もそれを知っているからこそ突撃という最終手段にはこないのだ。

じわりじわりと数に任せていたぶりを続けている。





――――だが、そんなことで言い訳を許すのか。





相手の方が数が多かった。

たったそれだけの理由で一人の少女の命を見捨てるのか。

たったそれだけの理由で彼女が流した涙を裏切るのか。

あの時、ファンメイを『島』から助け出したとき、自分はどう生きると決めた?

この世に存在を許されない存在。

それを助けるためにシティを敵に回したのではなかったのか。

ヘイズにとっても、この戦いは過去の焼き直し。

フェイ・ルーティ。

カイ・ソウゲン。

そしてレイ・シャオロン。

彼らが自らの命を投げ出してまでファンメイを救ったように、今度は自分たちがその役目を負うべきではないのか。

悲しみも苦しみも全てを見せずに堪え、しかしついに助けを求めた声にこそ、救いは与えられるものではないのか!

違うか! ヴァーミリオン・CD・ヘイズ!!








「――――違わねぇよ。だからやり遂げる。それだけだ」








自問の叫びに答えるはまた自らの決意。

偽善と呼ぶがいい。

愚者と蔑むがいい。

その称号こそがこの身にはふさわしい。

・・・・・・だが、偽善をやらずして救えるかもしれない命を見過ごすくらいなら俺は蔑まれようが構わねぇ!

助けを求める声にこそ、生きようとする強い意志を持つものにこそ、救いは与えられるべきだ。

どんなに苦しくても生きることだけは諦めてはいけない。

走って、疲れたらなら歩いて、傷ついたなら這いつくばってでも前へと進め。

その一歩の踏み出しの助けを自分は担っている!

ならば弱音を吐く暇などないはずだ。

不利と思うな負けると思うな、愚直なまでに突貫しろ。

・・・・・・そうだろ、親父?

目を開く。

ディスプレイに映るのは今まさにこちらに砲門を向けきろうとしている一群。

陣形は包囲。弾種は実体。

鋼を貫く貫通の力が連









(I−ブレインの演算効率を120%に再設定)









続して響









(予測演算を展開。1番から36番までを開始――――――――終了)









き渡――――――――


















(展開――――『破滅の領域』)



















指を鳴らす。

その微細な振動は船体横のライン型スピーカーより外へと吐き出され、空気分子の動きを変更して論理回路を形作る。

ここまでは『破砕の領域』と同じプロセスだ。

そして、その論理回路が空気分子の動きを変動させ、新たな論理回路を作り出す。



――――その数、36。



『虚無の領域』のように絶対の威力を作るのではなく、『破砕の領域』よりも二段階ほど上位の論理回路を複数個生成する力。

これが、『破滅の領域』。

展開され、この論理回路群に囲まれればもはや逃げ場はない。

世界最強の騎士の情報解体能力を遥かに超える一撃が次々に叩き込まれるのだ。

故に破滅。

唯砕くのではなく、一発で無に還すのでもなく、滅殺を確定するが故に破滅。

『虚無の領域』を使うよりもI−ブレインの疲労はかなり少なく、得られる効果は『破砕の領域』を上回るこの攻撃。

これが今回用意したヘイズの切り札”二つ”のうち一つ。

『破滅の領域』は敵艦隊を発射した弾幕ごと取り囲み、

「――――消えろ」

一気に押しつぶした。

咲く爆炎は12。灰色の空を一瞬のみ朱に彩り消えた。



(I−ブレイン疲労率 35%)



・・・まだもう少し効率化できるな。

先生とのシミュレーションでは理論上、I−ブレインの疲労度は15%増しに抑えれると判断していた。

初発のためか、想定よりI−ブレインに疲労がきている。

だが見合った成果は挙げれた。

「うっし。次行くか!」

機体のアライメントを取り直してヘイズは再び突貫をかける。

そこへ



『・・・・・・あ』



「あん? ――――うぉあっ!?」

目の前数mを轟音を上げて白銀の大剣が通り過ぎていった。

一瞬の硬直。



『あぶないよ』



「遅ぇっての!!」

エドの声に変化はない。

・・・・・・この野郎・・・・・・

文句の一つも言ってやろうとヘイズが口を開きかけ、



『はなれて』



「・・・・・・・・・!」

今度の反応は自分でも完璧だった。

Hunter Pigeonの最大加速でウィリアム・シェイクスピアより距離をとる。

それと時を同じくして、白銀の機体から幾本もの――――

「――――――――は?」

思わず目が点になった。

流体金属メルクリウスで構成されたウィリアム・シェイクスピア。

その船体から、”武器”が生えていた。

先ほどの大剣と筆頭に槍、斧、槌、矛、鎌、戟など知識としてしか知らないマイナーな武器までもがその姿を見せていた。

「・・・・・・おい、もしかして」

つぅ、と冷や汗が背筋を伝う。

・・・・・・・・・・マジか?

そう思った刹那、ウィリアム・シェイクスピアはその機体を捻らせ、











――――乱舞を開始した。











「・・・・・・・・・びっくり箱か、ありゃ」

それしか言葉が思いつかなかった。

剣を、槍を、鎌を、槌を、その他諸々を振り回し、ウィリアム・シェイクスピアは寄るもの全てを叩き落してゆく。

いくら『黄金夜更』でも空中艦隊戦で剣や斧に追い回されるとは考えもしなかっただろう。

不意打ち・・・というか完全に常識外の攻撃に対し成す術もなく次々と敵機は撃墜されてゆく。

白銀の鳥は戦神と化して踊りまわってゆく。

「ある意味こりゃ楽でいいな・・・・・・」

今や『黄金夜更』の注意はほぼ全てエドの方に向けられている。・・・まぁ無理もないことだが。

故にヘイズは取りこぼした獲物を仕留めに回る。

「こういう仕事は”鳩”じゃなくて”烏”とか”禿鷹”って感じだがな・・・・・・?」

まぁいいとしよう。

とりあえずウィリアム・シェイクスピアの方へと船首を向ける。

未だ乱舞は終わっていない。

阿修羅のように武具を振り回すその姿は絶対に船としてはありえないものだ。

また一つ、また一つと敵機を叩きのめし、次なる獲物を探して回頭する。

その時。

振り回されていた一つの武器が何もない場所で見えない何かに当たったように突如軌道を変えた。

「!」

『!』

一瞬にして生まれる緊張。

ウィリアム・シェイクスピアは刹那のうちに武器を機体へと戻し、一目散に距離をとった。

その、エドが一瞬前までにいた場所に、極太の極圧の光砲が通り過ぎた。

「来やがったか・・・・・・!」

ウィリアム・シェイクスピアがあそこまでの至近距離にいながらも気づかない視覚的にまで完全なステルス。

そして何よりあの一撃必滅の巨大光砲。

『黄金夜更』はおろか、そんな機体はこの世界においてたった一つ。

圧倒的な火力と巨体をもって空を席捲していた大戦の黒い悪魔。



「――――『アレイスター』!!」



わずかばかりの空間の歪み、それだけを己の存在する証明として、『黄金夜更』の旗艦は見えぬ巨体を振りかざし、

「来るぞ・・・・・・・・。気合入れろよ、エドワード・ザイン!!」

『はい!!』

Hunter Pigeonとウィリアム・シェイクスピアを狩るために咆哮をあげた。





















 おまけコーナー・裏話編 

〜今明かされる云々〜

・前作「あの空の向こう側へ」のラスボスは当初はウィズダムではなく雪であった。

・最初のころ、ウィズダムの能力『七聖界』は何故か3つしかなかった。

・というか「あの空」の主人公は当初はディーの予定であった。

・『七聖界』が第六。「凍れる世界」はフィアが使うかもしれなかった能力。

・今日のラッキーアイテムはピンクの下駄。

・何故か作者は文章を書き終えたくせにHTML化したときによく題名を変更したがる。

・実は本作「deus ex machina」の真・主人公は錬ではなかったりする。錬はあくまで語り手のような存在かな。

・本作残るは後五章。前作よりも一章がすごく長いのに異様にペースが速いのはなぜだろう。

・作者の脳内設定では本作の登場キャラのパワーバランスはファンメイ>錬・ヘイズ>エド>フィアというところ(総合的)

・『黄金夜更』はただ単に魔術結社『黄金夜明』をもじったもの。なので部隊名とかはオカルト系で統一してあったりする。

・そろそろ最終作「Life goes on」を考え出し始めています。ちなみにほぼ全キャラ出そうかなと無茶なこと考え中。

・全キャラということは、あの最狂も・・・・・・?

・なんか錬とファンメイとセラがとんでもない能力を使い出す予定。

・secret code1:『鋼使い』・『神獣使い』・『魔弾使い』・『天雷使い』・『幻想使い』・『疾風使い』

・secret code2:『極光』・『蒼神紅覇』・『疾風怒濤』・『黒王天牙』・『熾天満たす光輝の祈り』セラフィムコール

・secret code0:『■■■■■■■■■』ラストファンタズム



あとがき

「さー、ラストバトルの第一陣を飾ったのは大空中戦。『アレイスター』を相手にどう戦うのかな?」

ヘイズ 「んとに戦力差ありすぎだ。まだ400機はいるんだろう?」

錬 「うわぁ・・・・・・大変だ」

ヘイズ 「いやお前らも人のこと言ってる場合じゃねぇだろうが」

「どっちも死の危険ばかりあるってことさー」

フィア 「やりすぎです・・・・・・」

ファンメイ 「大体『おーごんよふけ』の設定が無茶なのよー!」

「無茶は承知!」

錬 「ぅわ?」

「だがしかし! こういう組織は大軍に限るだろ!」

ヘイズ 「なんだよその根拠は」

「いやなんてーか、王道、みたいな?」

フィア 「それだけのために死にそうな目にあわせないでください」

ファンメイ 「私は傷治せるけど・・・・・・錬はやばくない?」

錬 「げ。・・・・・・・・・そういえば」

「そういえばそうだな・・・・・・むぅ、どうしようかな」

錬 「って気づいてなかったの!?」

ヘイズ 「・・・・・・・・・死ぬなよー?」

錬 「ごめん自信ない」

フィア 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・え、と。フィア君。その銃はなにかな?」

ファンメイ 「わー・・・・・・フィアちゃん怒らせると怖いんだよー・・・・・・」

「わ、わかった。なんとかしようと思ったりなんかしてはいないようなあがががががががっ!?」

ヘイズ 「おぉ・・・・・・・・・空中リロード・・・・・・」

錬 「フィア・・・・・・どこでそんな技術を」

フィア 「主に月夜さんです」

錬 「やっぱりか・・・・・・・・・」

ファンメイ 「んー。作者目眉間喉心臓肺見事に打ち抜かれてるからもう予告いっちゃおっか」

ヘイズ 「んだな。――――では、次章は第十七章『死力の場』」

錬 「今度の戦いの場は僕ら。魔法士同士の本物の”戦争”が繰り広げられるよ」

フィア 「錬さんとファンメイさんに対するは”アウセルデレイダ”。三級の魔法士なら楽勝でしょうけど・・・・・・何か、不安です」

ヘイズ 「それじゃぁ、次章を楽しみにな」








SPECIAL THANKS!
天海連理さん(誤字脱字校正部隊)
有馬さん(〃)
闇鳴羚炬さん(〃)