第十九章

「夢の終わりに」



























――ただ邯鄲の刹那に永遠を求めた――






















灰色の大天に朱の華が次々に咲き乱れる。

開花の証はすなわち爆音であり、舞い散る花弁は打ち砕かれた鉄であった。

だが、今はそれとは別に無数の紅が空にちりばめられていた。

赤い円弧を引きつつ空を翔る流星。

それらは砕きの力を宿した大量の砲弾だ。

下手な大きさの巡洋艦ならば表面積すべてを打ち抜いてもお釣りのきそうな弾幕がたった二隻の船を追っている。

「んの・・・・・・っ! ばかすかばかすか撃ちまくりやがって!!」

怒声と共に真紅の船から指をはじく音が断続して鳴り渡った。

その微細な振動が空気分子の配列に干渉して『破砕の領域』を形成する。

一瞬にて数十もの弾丸を一挙に情報解体。

だが圧倒的に手数が足りない。

どれだけ『破砕の領域』を形成しようが次々に弾幕は肉薄してくる。

それもそのはず、

「反則だろあれは・・・・・・!」

毒づくヘイズの視線の先。メインディスプレイに映し出されているのは『アレイスター』の姿。

最早ステルスを使うまでもないと判断したのか、光学迷彩は解除されている。

それによって全貌を現した『アレイスター』なのだが、

「――――ありゃ戦艦じゃなくて”砲台”じゃねぇか」

そう。ヘイズが毒づく通り、『アレイスター』はまっとうな戦艦の形状をとっていなかった。

戦艦にしてあるまじき、流線型ではないずんぐりむっくりしたそのフォルム。

両端の形が等しい卵型とでも形容すればいいのか、その姿は虚空に浮かぶひとつの”球”であった。

いかなる情報制御で浮かんでいるのかは計り知れない。

だがそんなことを問題にしている場合ではないのだ。

『アレイスター』の全面を覆うように存在する無数の穴。それら全てが紛れもない”砲口”なのだ。

「っ!」

号砲正射。

先ほどまでの弾幕とは比べるのもおこがましいほどの火線がばら撒かれる。

『アレイスター』の巨体にしてみればそれは機銃のようなものなのだろうが、普通の戦艦にとってはそれは大口径 弾にも匹敵する――――!

「――――――――!!」

ヘイズは無心で船を駆る。

あんな馬鹿げた砲撃、一発でも食らったらその時点でゲームオーバーだ。

『破砕の領域』を撒き散らし、形振り構わずに逃げをうつ。

だが、そこで機体に振動。



『後部に被弾! 第三副砲塔半壊!』



いきなり横より肉薄してきた一機の荷電粒子砲だ。

「くそが・・・・・・っ!!」

さしものヘイズとて雨霰と降り注ぐ大口径砲弾を回避しながら他の機、それも自分と同レベルの駆り手とは戦えな い。

ヘイズが必死で回避し、打ち飛ばし、そしてその一瞬の隙に肉薄してくる。

しかし、この砲弾の雨を回避せねばならないのは相手も同じ――――

「味方ごと打ち砕くのも承知の上か!」

視界の隅で三機、弾幕を回避しきれずに朱色の華を咲かせたのを見てヘイズが吠える。

味方だろうがなんだろうがおかまいなし。

敵さえ滅することさえできればよいのだ、と無言の攻撃が語っていた。

怒りで頭が沸騰しそうになる。

どこまで、どこまで傲慢なのか『黄金夜更』とは。

マグナムミサイルを消し飛ばし、荷電粒子砲をやり過ごし、機銃の嵐を掻い潜り、スマートボムを回避する。

一瞬たりとも動きを止めてはいけない。

一撃一撃が必殺。それらは千を重ねて滅殺と化している。

故に動きを止めれば待つものは消滅のみだ。

必死にヘイズは船を操り、回避と迎撃を続ける。

だが、万全の状態ならともかく、被弾重なる今の演算機関の出力では躱しきることなど到底不可能――――!

「っ――――」

歯を食いしばると共に、『破砕の領域』をかいくぐってきた二発が尾翼の上半分を根こそぎ奪い取っていった。

乱れるアライメントを必死に立て直す。

しかしここですでに必至。

その一瞬の隙を見逃すわけもなく、強襲してくるは三機のカミカゼ――――!

直撃するコース。

それを悟った瞬間にヘイズがI−ブレインを一喝した。










(――――『破滅の領域』 展開)










ナノセコンドにも満たぬ極小時間に顕現するは36の解体の力。

囲んで押しつぶす暇はない。

列は3、並ぶはそれぞれ12。真っ向から消し飛ばせ――――!

そして迎撃は成功した。

消し飛ばすまではいかなかったものの、機体の大半をこそぎ取られた3機は煙を上げて落ちてゆく。

それを一瞥してヘイズは通信を開いた。

「聞こえるか、エドワード・ザイン」

数秒遅れて目の前に投影ディスプレイが出現した。

『はい』

一機、また一機と白銀の武具群で『黄金夜更』を屠りながらエドが答える。

だから簡潔に告げた。

「このままじゃ埒があかねぇ。一発俺が叩き込むから援護を頼む!」

その視線が向くのは『アレイスター』。

悠然と遊弋する黒い悪魔は不気味なまでに動かない。

・・・・・・違うな、動かないんじゃねぇ。

あのような巨体。重力制御を以ってしてもやすやすと動かせるものではない。

なにせ砲台が表面をすべて占めているのだ。どうやってすばやく動くというのだ?

だから完全なステルスを装備に選んだのだろう。その鈍重な動きを見せぬために。

「頼むぜ」

『まかせて』

ならばその化けの皮を剥がしてやろう。

すべてを倒すなどどだい無理。もとよりこちらの標的は『アレイスター』のみなのだから。

ぐん、と真紅の船が加速を行う。

目指すはただ一点。

追いすがる戦闘機群など意にも介さない。

そちらは信頼を任せたエドが片っ端から撃ち落としてゆく。

ここで『アレイスター』がようやく突っ込んでくるこちらに気づき、砲塔が旋回した。

だが遅い。

先ずは一撃、光を食らえ!

「――――全砲塔瞬間一斉掃射フラッシュファイア!」



『了解しました!』



ハリーの応答と共にHunte Pigeonに備わる全ての砲塔から荷電粒子砲が放たれた。

発射の紫電を目視しようと、その巨体で躱せるものならば躱してみろ!

光速の掃射は発射と同時に着弾する。

無数の光芒が『アレイスター』を捉え、

「な、に――――――――!?」





外壁に当たる前に掻き消えた・・・・・・・・・・・・・





弾かれたわけではない。重力制御で捻じ曲げられたのでもない。

純粋に、掻き消しやがった――――!?

『ヘイズ!』

「っ!?」

エドの叫びで我に返り、『アレイスター』が放った報復の掃射をかろうじて回避する。





――――そこで、見た。





「―――――――!」

絶句する。

今、確かに確認した。

今までは遠目からだったためわからなかった『アレイスター』の砲撃の瞬間を、確かにこの目で見た。

実態弾も、荷電粒子砲も、砲塔から放たれてはいなかった・・・・・・・・・・・・・・

確かに発射の前兆を示す紫電や、砲口が熱を帯びていることで一応発射をしていることはわかる。

だが、発射の瞬間が見えない・・・・・・・・・・

まるでそこだけフィルムのコマを切り取ったように映像が欠けている。

いや、切り取ったのではなく、これは塗りつぶしだ。

逆算すればわかる発射からの時間。

その、発射してからのほんのコンマ0数秒の間だけ、弾丸が一切知覚できないのだ。

まるで、そこに”見えない壁があるように”――――

「これ、は・・・・・・・・・」

答えはひとつ。

既に自分たちはそれを体験している。

「一方通行の空間制御・・・・・・・・・!」

そう、これは初めてリューネと出会ったプラントに彼女が施していた”永久改変”と類似するもの。

ありとあらゆる場所を無作為に繋ぎ、全てを惑わす夢幻回廊。

「劣化版ってこと・・・・・・か?」

いくら同じ仕様を目指そうとも、肝心の”固定”はリューネ以外にはできない。

故に”無作為に干渉する”という世の調律を乱すことはできないはずだが――――

「・・・・・・となると、残る可能性は時空間の分割、あるいは展延か?」


『”時間単位改変”をわずかながらに感知。ビンゴのようですね』


”延性時空間”ってところ、か・・・・・・どこまで厄介なもん持ってやがる」

苦々しげに吐き捨てるヘイズ。

「おまけに荷電粒子砲まで飲み込んだトコ見ると、分割までしてそうだな・・・・・・」


『内外の時間単位をずらして無限数に分割、”時間の到着を遅らせる・・・・・・・・・・”、ですか』


無表情に答えるハリー。

対してヘイズの顔は緊から険へと鋭さを増してゆく。

「決して追いつけない時間と空間の分割。・・・・・・ってアキレスと亀かよおい」


『ゼノンのパラドックス。これは盲点でした』


――――そう。これが『アレイスター』の防壁の正体。

『自己領域』の能力の応用。

自らの周囲の空間を時間単位改変の差異によって”通路”と化すのだ。

水が低きに流れるように、空間を一種の”堰”として機能させ、一方通行の道を作り上げる。

そしてその内部の時間単位を無限数に分割。

すればその部分は外部から知覚されない。

これはいわば極小規模な”時空転移”。

空間として認識できる部分において時間単位を滅茶苦茶に分割することで外部からの攻撃を全て”送り飛ばす”絶 対防御。

そして、内部からの攻撃は逆に引き伸ばされた空間を抜け、その無限分割の範囲を飛び越えて放たれるのだ。

つまるところ、この防御は外からの攻撃は全て遮断し、中からの攻撃を通り抜けさせるものなのだ。

ヘイズたちは知る由もないが、この防御壁の名前は『キタヴ・アル・アジフ』

規模が大きいだけの空賊である『黄金夜更』が持つには不自然すぎる絶対防御――――

「っ・・・・・・・・・こっちの攻撃は全部無効化されるってことか」

実態弾だろうと荷電粒子砲だろうと全てが掻き消されてしまう。

こちらの最強の切り札である『虚無の領域』ですら通用しない。

論理回路に”触れたもの”を情報解体する『虚無の領域』では、”触れれないもの”を解体することはできないか らだ。

空間と時間が無限分割され、虚数的な間隙を間に挟む以上、『虚無の領域』は効果をなさない。

表面の空間間隙だけなら解体できるのだが、それでは内部の時空分割が残ってしまう。

確かにそうすれば『アレイスター』は砲撃を行えなくなる。

しかしそれでは駄目だ。延性時間が残っている以上、こちらの攻撃は未だ通用しない。

『虚無の領域』を発動させたならばヘイズは戦力を失うことになり、そしてエド一人で『アレイスター』を攻略す ることは不可能だ。

どちらも相手を攻撃できぬ千日手に陥るのみ。

それならば数は150をわったものの、未だそれだけの戦力を保有する『黄金夜更』に軍配が上がる――――

「・・・・・・・・くそ。もう一手が足りねぇか・・・・・・っ」

後一手。

ヘイズの『虚無の領域』と同等の破壊力を持つ一撃があればこちらの勝ちだ。

情報的でも、物理的でもどちらでも構わない。

空間を押しつぶすほどの威力を持った一撃が必要なのだ

たとえるならばそれは空間の断裂。

たとえるならばそれは『蠢く世界』リザントグローヴ

たとえるならばそれは――――重力崩壊ブラックホール

光ですら飲み込む虚の太陽。特異点の牙ならばあれを打倒しうる―――――――

「くそったれが・・・・・・!」

だがヘイズはそれを知らない。

いや、知っていたとしてもその使い手は既に瀕死。

ヘイズとエドにできることは、ただただ今は撃墜されぬように立ち回ることだけだった。

おぉん、と。

それを嘲笑うように『アレイスター』が低く震えた。
























            *





















―――――ぴちゃり、と。赤いものが頬を濡らした。

喉に込みあがる異物感。耐え切れず嘔吐する。

びしゃり、と床に撒き散らされたそれは、真っ赤な血。

それが自分のだと認識するまでに、数秒の時間を要した。





(体温低下。出血多量。危険。生命維持に重大な影響が及ぼされる恐れがあります)





I−ブレインの警告もどこか靄がかかったよう。

世界全てが霧に包まれ、ぼんやりとしか知覚できない。

それでも全身力を振り絞ってなんとか焦点を合わせた。

「ぅ、ぁあ・・・・・・・・あっく・・・・・・ぅん・・・・」

背後からファンメイの苦鳴。

必死で龍使いの少女は自らの体を押さえつけている。

もし解放されていたならば、自分も立ってはいられなかっただろう。

「・・・・・・・・・・・っ」

前を見る。

そこには累々と横たわる兵士たち。

一般人の彼らがこの暴走から逃れられるわけもなく、『ゲーティア』含みで『黄金夜更』はほぼ壊滅状態に陥って いた。

「ばけ・・・もの、が・・・・!」

がらり、と騎士が三人身を起こす。

その左半身は残らず紅に染まり、足も奇妙な方向へと折れ曲がっている。

だがそれでも剣を構えた。

これが最後。

ならばせめて憎き敵を一人でも多く道連れにしてやろう、と。

「・・・・・・・・・・・は」

応じるようにナイフを構える。

そんなくだらない妄想の前に屈するわけにはいかない。

いや、ここで自分が倒れてもたかが騎士三人ごとき、ファンメイ一人でもなんとかなるだろう。

けれど、コイツらの前で膝を折るという行為が、酷くいやだった。





(痛覚遮断)





I−ブレインが今更ながらに告げた。

・・・・・・あぁ、遮断してなかったんだ。

そこで自分が既に痛みなど感じていなかったことに気づく。

ファンメイの一撃もそうだが、見れば体中に無数の弾痕。

・・・・・・・いつのまに。

これはひどいな、と思った。

体の表面で朱色に染まっていないところなどまったく無く、軋んでいない骨など一本もなかった。

500人が一斉に放つ銃弾の壁。その中で第一級の魔法士30人とやりあった代償がこれだった。

・・・・・・でも、これで僕らの勝ちだ。

後三人。

たったそれだけを倒せば地上は制したことになる。

リューネが自由になれる道まで後一歩なのだ。

「・・・・・・・・・・・ふぅ」

一息。

それで最後の力を搾り出す。

「小僧・・・・・・・・・覚悟はいいか」

「とっくにできてるよ」

言葉と同時に騎士の姿が掻き消える。

錬はそれを知覚した瞬間前に疾走を開始した。

後ろに下がれば未だのたくるファンメイの黒の水があるからだ。

それに何より、後ろを騎士たちの注意からはずす事ができる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





(I−ブレイン疲労率77% 著しい身体の損傷のため早急な処置を要求)





うるさい黙れ。

それに、誰が自分が倒すと言った・・・・・・!

心の中で咆哮をあげ、錬は地面をゴーストハック。自らの周りに『死線』を形成する。

その途中、全力で叫ぶ。

”出番だ!!”

瞬間、『自己領域』を纏った三人の騎士が左右と上空より出現し、

「!」

「ぬ!」

「ちぃ!」

否や飛び退った。

流石は腐っても第一級。一度使った手は見抜かれるというわけか。

逡巡する暇もなく体をさらに前へ投げる。

その頭上を銀光が通過し、髪の毛を数本もっていった。

だがそれは三人のうち一人の攻撃。

残る二撃は左と上。逃げ場を残さぬと肉薄する。





(『氷槍檻』をオートスタート)





その刹那、無数の氷槍が錬を取り囲むように出現、地面に突き立つ。

本来は敵を捕らえて打ち砕く筈の檻は今身を守る城壁となっていた。

ちぃ、と舌打ち漏らして距離を取る騎士三人。

そこへ並列で未だ稼動しているチューリングを発動、たった今しがた自ら作り出した氷槍の壁をゴーストハックし て爆裂させる。

「!」

騎士たちの顔に浮かぶ驚愕。

それに追撃とばかりに炎神を起動。

赤光一閃。灼熱よ、暴れて唸れっ!





(発動 『炎神・百鬼』)





荒れ狂う灼熱が顕現し、氷の飛礫ごと騎士たちを飲み込んだ。

『自己領域』を発動できる間合いではなかった。

故に騎士たちがとれる手段はたった一つ。

「なめるな小僧・・・・・・っ!」

情報解体。

丁度正三角形を描くように三人の騎士剣が振り払われ、灼熱と氷撃を原子単位に分解する――――

「そこッ!」

――――直前に錬は『炎神』に氷礫を衝突させた。

瞬間、あたりは一瞬にして水蒸気に包まれた。

「!」

氷槍ではなく氷礫を放ったのはこのため。

水蒸気爆発をあえて起こすことなく、ゆるやかな融和による水蒸気の煙幕を狙っていたのだ。

そして、固体と違って気体は一度に全てを情報解体することはできない。

「ぬ・・・・・・ぅ!」

「これで・・・・・・!」

情報解体の不発による一瞬の隙。

それを逃さず錬は全力で地を蹴った。

ナイフを逆手に構え、体ごとぶつかってゆくような突撃。

と、いきなり煙の中から二筋の銀光が出現した。

「!」

ギン、とそれが何であるか確認できずに、しかしナイフで受け流した。

苦し紛れの投擲。

それすなわち最早敵に打つ手がないということだ。

「ぉ・・・・・・・・・!」

裂帛を刃に込め、錬は敵の意識を刈り取るべくその全力を振り絞り―――――――











(システムエラー 演算処理に致命的な妨害を検出 I−ブレインへの負担が生命維持を超過 全演算処理強制停 止)











「っが――――――――――!?」

世界の全てが反転した。

視界が黒と赤に点滅し、まるで脳味噌を直接トンカチか何かでぶん殴られたような衝撃が意識を滅茶苦茶に叩きの めした。

今までI−ブレインの加護によってなんとか保っていた負傷が一気に現実を侵食する。

傍から見れば、錬の体から大輪の赤い華が咲いたように見えただろう。

びちゃり、と周囲が真紅に染まる。

苦鳴の一つすらあげることができずに、錬はそのまま固い床に倒れた。

全身が雷に打たれたように動かない。

I−ブレインは完全に停止している。

「ぁ・・・・・・・・・・く」

全力を振り絞って、しかし動いたのは指一本だけだった。

最早まともな焦点も結べぬ視界の先、床につき立った銀が見える。

・・・・・・・・・そう、か・・・・・・。あの、ナイフ・・・・・・!

床に刺さるそのナイフは、『黄金夜更』が誇る絶対結界。

三つ以上の頂点で平面ないし空間を指定することにより、その内部に最高級のノイズメイカーと同等のジャミング と引き起こす魔法士殺しの刃だ。

迂闊だった。

乱戦、そして味方の魔法士がいるゆえに先ほどまでは使ってこなかったこの道具。

たった三人となった今では使ってくるのがあたりまえだろう。

「やっと・・・・・・止まったか・・・・・・」

じゃり、と軍靴が床を鳴らす。

そんなわずかな音が聞こえるほどの”静寂”が今この場に下りていた。

それがありえないことに騎士らは気づいていない。

「ここまでやるとは思わなかったぞ。名も知らぬ魔法士」

剣が構えられる音。

逃がさぬように囲んでいるらしい。

「だがこれで終わりだ。空の決着を待つまでも無い。――――我等の勝ちだ」

ではな、と剣が振り下ろされる。

I−ブレインが止まった今、知覚はおろか認識すらできないその攻撃を前にして、錬は尚諦めなかった。

剣が振り下ろされる前に渾身の力で前へ飛び、同時にナイフを投擲する。

だが今は何の加速もしていない状態。

これが150kmの剛速球だったとしても余裕で捌かれることには変わり無い。

この必至の状況を打破するには到底届かない手段、と騎士三人の誰もが思った。

瞬間、爆発的にナイフがその速度を増した。

「!」

その速度たるや、通常のおよそ40倍。

月夜謹製、投擲用ナイフ『迅雷』

月夜の全精力をもって刻み込まれた微細すぎる論理回路は、騎士の運動加速に匹敵する速度を刃に与えていた。

「ちぃ!」

判断は一瞬。

胴の中央へと飛来するその刃を振り払う。

軽い金属音と共に弾かれる刃。

そのほんのわずかな刹那の間に、錬は目の前の騎士に体当たりを敢行していた。

左右からの挟撃を避け、残る脅威は前のみ。

だが、それでも遅すぎた。

常人の身体能力、それもボロボロに傷ついた状態で、二手三手相手に無駄にとらせようと、50倍の運 動加速の差は埋めることはできなかった。

ナイフを切り払った騎士剣は翻って一直線に錬の頭を襲い、












――――黒い光に弾き飛ばされた。












・・・・・・・・・やっと、復活・・・か。

慌てて飛び退った騎士らの中心に倒れこみ、錬は吐血と共ににやりと笑った。

今の衝撃で全身の傷口がさらに開いたような気もしたが無視。

結界から転がって逃れ、I−ブレインを再起動する。

そのときには既に彼女は横にいた。

「ごめんね錬。遅くなっちゃった」

ぎぃん、と。こちらを狙い放たれた斬撃を黒の投網で絡み取って投げ飛ばし、リ・ファンメイは言った。

そしてその後ろには、

「錬、大丈夫!?」

「錬さん!!」

金髪の天使と黒髪の調律士がいた。

「な、ん―――――――!?」

いきなりの抹殺対象の出現に騎士らが驚愕する。

無理も無い。いきなりのこのこと殺されるべき対象が戦場に現れたのだ。

それも、

「なぜ・・・・・・そのガキが復活している・・・・・・!?」

叫ぶ声はファンメイに向けられたもの。

いくら『龍使い』のことを知らずとも、あれだけの”暴走”はこんな短時間で元に戻ることなどないとわかる。

「あの肉体構造の変異暴走、ほんの二、三分で収まるはずがない・・・・・・!」

「だから治めたのよ・・・・・

あっけらかん、とリューネが言った。

「いくら”永久改変”ができなかろうと、一時的に身体構造を平常に戻すことなんて朝飯前どころか寝起き前よ」

それはまだ寝てるのではないか。

「そういうコト」

黒き翼がファンメイの背中に顕現する。

リューネのバックアップのおかげか、その動きは今まで以上に淀みない。

「っ・・・・・・・、だが、そんな都合よくこの場に来れるわけが――――」

「ううん。ちゃんと私たちは”呼ばれたから・・・・・・”来たのよ」

一息。

”出番だ”ってね」

「っ、あのときの・・・・・・!」

そう。『死線』を発動したときの錬の叫び。

あれはその場の誰に向けられたものでもなく、遠く離れたフィアとリューネに届くように叫ばれたのだ。

「ぐぬぬ・・・・・・っ。貴様ら・・・・・・・・・!」

最早残るこの三人に逃げ場などない。

暴走というアクシデントこそあったものの、全ては天樹錬とリ・ファンメイという二人を甘く見すぎていたが故の 敗北だった。

「・・・・・・・・・っ」

最後の力で一歩を踏む。

ファンメイと隣り合うようにして歩を進める。

騎士三人はそこで我に返ったように『自己領域』を発動しようとし、








「――――おかえしです」








その前にフィアが床にナイフを突き刺した。

「ご――――――――!?」

たちまち膝が折れ、崩れ落ちる。

既に心が折れていたのか、それだけでもう三人のうち二人は立ち上がらなかった。

「お、のれ・・・・・・、おのれおのれおのれおのれおのれ・・・・・・っ!!」

たった一人が、残った。

「貴様らのような、貴様らのようなガキどもに!!」

現実を見据えず、夢想を理想と錯覚し、自分たち以外を全て蔑んできた者の末路。

それを錬は、哀れだと思った。

同時に、過去の自分も夢想ばかりを追い求める、という点では同じだったな、と思い返した。

けれども今の自分は違う。

答えは出た。

この胸を刺す痛みも、

犠牲にしてしまった人たちの怨嗟の声も、

大切な人のこぼす涙も、その全てをこの身に刻んで走ってゆくと。

ファンメイが言ったように、今とは過去の全てを受けて進んでゆくもの。

どんなに嫌悪すべきことでも、

どんなに目を逸らしたいことでも、それらは全て、”いま”の礎。

どれ一つ欠けても今ここにいる自分は在りえない。

だから、全てをこの身に刻んでいこうと決めた。

『黄金夜更』のように、犠牲が出るのは当然だ、となんて絶対に言ってやらない。

どれだけ無謀だろうと、絶対に回避できない犠牲だろうと、あがいてあがいてあがき抜いてやる。



――――故に、今この決着が在る。



「我等の理想を、潰させてなるものかぁぁぁぁぁぁああああっっ!!!」

刃が走る。

現実を見ずに理想ではなく夢想へと逃げ、そしてそれすらも気づかなかった『黄金夜更』。

さぁ、終わらせよう。

ヘイズとエドの方はどうかは知らないけど、僕らの決着はここにある!

「こんな、こんなガキどもに――――――――」

向かい来る夢想の刃。

錬とファンメイは並んで立ち、拳を振り上げ、

















「――――――そいつを」

「舐めてたのは――――」



































「「――――――どこの誰だ!!!!」」























ファンメイの拳が騎士剣を打ち砕き、錬の拳が頬骨を砕き割り、そして二人の打撃が騎士 の意識を完膚なきまでに刈り取った。

























        *
























最後の『ゲーティア』が壁に叩きつけられて倒れ伏す。

それを確認した瞬間、世界が霞んだ。

「っ――――――――ぁ」



(意識レベル低下 出血量・体温共にレッドゾーン 要早急処置)



・・・・・・そうだ。ばかすか・・・・・・と、銃弾食らったん・・・・・・だっけ・・・・・・

同じくらいの負傷を受けているはずのファンメイがぴんぴんしているのでうっかりしていた。

生身の自分にとっては、この負傷は十分な致命傷だということを。

ちょっとばかし・・・・・・やばい、のかな・・・・・・・・・これ・・・・・・・・

「――――――――く」

力が入らず、意に反して視界がぼやけてゆく。

ついには自重すら支えきれなくなり、錬は膝を折った。

「――――れ、 さ   !!」

「  っと、錬だ じ  !?」

「す いケ ・・   ・早  療  ――――」

周りでフィアたちが叫んでいる気がする。

それすらもおぼろげにしか聞き取ることができない。

いや、それはおろか今自分が倒れているのかどうかすらわからない。

フィアが、ファンメイが、リューネが必死の形相で何かを口走っている。

・・・・・・・・・おかしいな。

『ゲーティア』は倒れたんだ。それなのに彼女らはいったい何を焦っているのだろう――――?





「――――錬さん!!!」





と、その叫びですべての感覚が覚醒した。

体の中から何か暖かいものが広がってゆく感覚。

ぼろぼろの体に”健康な体の情報”が同期され、ゆるやかに出血が収まってゆく。

そのやさしい感覚に焦点を合わせた。

「錬さん・・・・・・大丈夫ですか・・・・・・?」

目が合ったのは金髪の天使の少女。

エメラルドグリーンの瞳に涙を湛え、こちらの頭を膝にのせている。

視界を天使の翼が踊る。

ぽたり、と頬を熱い何かが濡らした。

見ればフィアは泣き笑いの表情でこっちを見つめていた。

「生きてる? おーい」

横からファンメイがひょっこりと顔をのぞいてきた。

かろうじて動けるようになった親指を立てて応じる。

そして、その横には、

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「――――先ずは約束の半分、果たしたよね」

無理やりに体を起こす。

その視線の先にいるのは、リューネ。

黒髪の少女はゆっくり息を吸い、










「うん。――――ありがとう」










涙を湛えた表情で、しっかりと笑った。

ファンメイも、フィアも、安堵の息をついている。

これで半分は終わった。

後は空軍組がどれだけやってくれてるかだけだ。

錬は未だぼろぼろな体にうんっと喝を入れ、ふらつきながらもなんとか立ち上がった。

「地上へ行こう。何かエドたちを手伝えることがあるかもしれない」

「もっちろん!」

ファンメイが呼応し、錬たちはゆっくりと地上へと歩み始めた。

全てが終わる、その場所へと。


















        *



















「すごい・・・・・・300機以上も落としてる」

「さっすがヘイズとエドだね!」

地上へ出た瞬間目に付いたのは、地に落ちて屈した無数の機影だった。

そのほぼどれもが演算機関のみを撃ち抜かれているのはどれほどの絶技なのか。

艦艇戦に疎い錬では想像もつかない。

「でも・・・・・・さすがに『アレイスター』はまだみたいですね」

「だね」

見上げる先に浮遊するのは漆黒の球。

艦艇の常識を根本から覆す、もはや船ではない”砲台”。それが『黄金夜更』が最大最強戦力、『アレイスター』 だ。

その砲台へと目掛けて何度も突撃を繰り返している艦が二隻。

既に『アレイスター』を取り巻く巡洋艦や駆逐艦は壊滅状態。

ヘイズもエドもそれを知っている故に最大の敵を討ち滅ぼすべく無謀な突進を繰り返しているのだろう。

愚直なまでの突撃。

見ればHunter Pigeonの砲撃も、ウィリアム・シェイクスピアの斬撃も全てはアレイスターの外壁手前で消し飛ばさ れている。

絶対防御。ゼノンのパラドックスを応用した時空間防壁。

あの前では全てが消し飛ばされるのではなく、”追いつけない”のだ。

けれど、それを前にして白銀と真紅は挫けない。

追いつけないならばそれを追い越せる何かをひたすらに捜し求めている。

「・・・・・・・・・・時空間の無限分割」

リューネがぽつりと呟いた。

「いつ・・・・・・あんなモノを手に入れたの? わたしが逃げ出すときはあんなものなかったの に・・・・・・?」

ということは、あれは少なくともこの一月以内に『アレイスター』に装備された防御というわけか。

時間と空間。

二つの絶対防御を重ね持つそれは決して一発では破壊することはできない。

物理攻撃しかできないエドはあれを破壊する術を持たず、

ヘイズの方も『虚無の領域』は一発で打ち止めだ。

一発で破壊できそうなヤツに心当たりがあることはあるのだが、あの狂人は現在生死不明。

「・・・・・・なら、僕が」

呟き、空を見上げる。

フィアもファンメイもリューネも、固唾を呑んで最後の激闘を見上げていた。
















――――そしてそれは、一瞬の油断だった。















極度のケガと疲労によって周囲への意識がおろそかになっていたほんの一瞬に、”それ”は起こった。

戦いには慣れておらぬフィアとリューネは無論のこと、激闘で疲弊していた錬とファンメイさえまったく無防備 だったこの一瞬。

とす、と何かが刺さる音がした。

「・・・・・・・・・ん?」

軋む体を押して振り向く。

瞬間、











(I-ブレインに致命的な妨害を検出 疲労度120%超過 全演算処理強制停止)











あの『七聖界』もかくや、という衝撃がI-ブレインを貫いた。

「なっ――――――――ぐ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁっっ!?」

苦鳴と共に倒れ伏す。

今のは、まずい・・・・・・・・・ッ!

無防備な状態で直撃を食らったため、完全にI-ブレインが停止してしまった。

おそらくはファンメイも同様。

・・・・・・ここまできて、まだ残党が!?

心に絶望が入り込む。

この状況はまずい。

『ゲーティア』との死闘を終えた今、錬とファンメイはもはや戦える体ではない。

フィアの力が『黄金夜更』に通用しない以上、今リューネを守れるものは一人としていない――――――――

「く、ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ――――――ッ」

全身全霊をもってしても、立ち上がるのがやっと。

そして、その瞬間に最後の妄執と目が合った。

「ヒヒ・・・・・はハぁ―――――ガ、ああああ!!」

瓦礫の山より這い出したる人影。

錬たちを囲むように四本目のナイフを地に突き刺した男。

その顔には見覚えがあった。

あの夜、錬と刃を交えた男。

足は砕け折れ、腕は曲がり、血を吐きながらもその男は仁王立ちしていた。

その目に宿るは爛々たる光。紛れもない、狂気だ。

血走った目は己が殺すべき少女のみを捉え、そして脇に抱え込むは大口径マシンガン。

「ハ、ははははははは!! 無敵! 我等は絶対――――その前に立ってんじゃねぇクソカスども がァァァァァァッ!!!」

乱射する。

「っこの――――――――うくぁっ!!」

なんとか躱そうと身を捻るが常人と同じ運動速度、否、致命傷に近い負傷がある今では躱しきることなど到底不可能。

滅茶苦茶に足を撃ちぬかれ、錬は目を見開いてくず折れた。

「錬!」

とっさにファンメイが飛び込む。

リューネの”一時改変”の加護か、本来ならば速攻で暴走しているはずなのだがそれは左腕だけに留まっていた。

そのゴム状になった左腕を振り払い、ファンメイは自分たちを囲む四点のうち、一本のナイフを弾き飛ばす。

結界の面積が半分となったその一瞬でI-ブレインを再起動。

だが、このケガと疲労は最早取り返しのつかない致命傷――――――――





(『氷盾』発動――――エラー 生命維持機構を維持できなくなります)





血の気が引く。

情報制御を欠片も発動できない。

こんなところで・・・・・・ここで役立たずになるのか!!!!

「おぉぁぁ――――――――――っ!!!」

疲労も、痛みも、負傷も、すべてを意思の力で押さえつけた。

しかしそれでも発動できたのはもっとも負担の少ない「ラグランジュ」を三倍加速。

最早ぼろくずと化した足を盾に、フィアとリューネを襲う銃弾を切り払う。

瞬間、

「ヒハハハハハハハハハ!!!」

男が何かを投じた。

黒い四角の箱。それは――――――――燃料気化爆弾。

「下がって!!」

それを視認したと同時にファンメイが前へ出る。

ファンメイは三人を庇い、黒の水の防壁を展開しようとし―――――――

「!?」

――――できない。

四点結界のノイズのせいでまともな強度が得られない。

それでもファンメイは自分の体を盾とした。




――――爆裂。




「あぁぁぁぁあぁあああああっ!」

その身をもって爆発を押さえ込んだファンメイの体が弾け飛んだ。

左足がちぎれ、右腕が砕け、全身が焼け焦がれる。

だがそれでも威力を殺しきることは敵わず、爆発の勢いで折り重なるようにして錬、フィア、ファンメイは倒れ た。

そこへ、

「死に消え滅びろ愚物どもが――――――――!!」

一片の慈悲も無く、放たれるは絶殺の弾丸――――――――!



















      *


















「――――――――」

I-ブレインが展開できない。

錬は迫りくる弾丸をラグランジュを使ってもいないのにスローモーションのように捉えていた。

足は完全に潰され、躱すことなど不可能。

せめて二人だけでもと、フィアとファンメイを突き飛ばそうとし、





















「だめ――――――――!!」























――――黒色の残像が、目の前を踊った。

続いて右肩に衝撃。

視界にちらつく漆黒に似たどこまでも深く純粋な色。

それがなんなのかを把握する前に、錬の体躯は横から来たものによって大きく突き飛ばされていた。

―――――え・・・・・・?

自分を、そしてフィアとファンメイを突き飛ばしたのはいったい何なのか、咄嗟に理解できなかった。

いや、理解したくなかった。





儚げな輪郭。





流れる黒髪。





――――そして、寂しさを含んだ笑み。





・・・・・・・・・リューネ!?

錬たちを突き飛ばして迫りくる絶殺から庇ったのは、紛れもない黒髪の少女。

寂しげな笑みの中に、一際輝く決意の色。

少女は笑っていた。

判りきった結末を前にして、それでも莞爾と笑っていた。

――――やらせない、と。

悲痛な泣き笑いでもなく、悲しみを押し殺した仮面でもなく、誇らしげな本当に本物の笑顔。

その姿に錬は自分でもよくわからないまま何かを叫ぼうとし、そして――――――――





































――――――――限りなく残酷な音が、響き渡った。




































 あとがき

錬 「・・・・・・・・・」

フィア 「・・・・・・・・・」

ファンメイ 「・・・・・・・・・」

ヘイズ 「・・・・・・・・・」

エド 「・・・・・・・・・」

錬 「これが・・・・・・終わりなの?」

「・・・・・・・・・あぁ。これが終わり。でも、はじまりでもある」

フィア 「そうですか・・・・・・・・・」

ヘイズ 「ちゃんと、アイツは救われたのか?」

ファンメイ 「わかんない。・・・・・・でも」

「救われてないわけがない」

エド 「・・・・・・・・・」

「最後の笑顔、見ただろう? ――――あれが、全ての答えだ」

ファンメイ 「でも・・・・・・・・・なんなのかわかんないけど、それでも――――」

錬 「それでも・・・・・・守りきれなかった・・・・・・っ」

「・・・・・・・・・・どう思うかは君らしだい。けれど、これははじまりだよ」

フィア 「なんの、ですか・・・・・・?」

「――――”Id”

錬 「え?」

ヘイズ 「なんだ? そりゃ」

「さて、ね。教えるには少し早い。スタート地点からゴールが見えてたら話しにならんだろう?」

ファンメイ 「・・・・・・・・・・ん」

「それじゃぁ、最後の一仕事だ。――――第二十章『絶』。顕現するは・・・・・・二つの”絶対”」

錬 「残すところは後二章。最後の最後まで、・・・・・・・・・走り続けよう」









SPECIAL THANKS!
天海連理さん(誤字脱字校正部隊)
有馬さん(〃)
闇鳴羚炬さん(〃)