――――夢の彼方――――
――――ぜったいにあきらめない
そう少年は叫んだ。
――――無駄だ
そう絶望は返した。
寒風荒巻く世界の中、色を失った世界の中、その二つのみが色を持っている。
その色とは赤と黒。
少年の体は満身創痍というのもおこがましいほどぼろぼろであり、生きているほうが不思議なくらい。
I−ブレインの加護をもってしても立つことすら困難なはずなのに、少年は立っている。
その姿を絶望が嘲笑った。
最早少年にまともな意識など残っていないだろう。
それは完全に心を折るための嘲笑。
けれども、少年はそれを受けて尚雄雄しく立った。
――――決めていたと。
告げる。
――――そう。そんなことは既に決めていた。
この胸を刺す痛みも、
殺した人の恨みの声も、
大切な人のこぼす涙も、その全てをこの身に刻んでゆくと――――!
「っぁぁぁああああああああああ――――――――ッ!!!」
吼える。
死んでいなければおかしいほどの傷を受け、発狂していなければおかしいほどの呪いを吐かれ、それでいて尚少年は屈さなかった。
心が叫ぶ。
――――全ては、己に胸を張るために!
(――――最秘奥根源創生機関・『百錬千打』 起動)
そう。この身は世界で唯一、”創生”の業を許された存在。
魔法士の原型にして最終形。アルファにしてオメガ。始まりにして終わり。
全ての根源を内包する暁旦夕暮たる存在。
だから、ただ思うだけでいい。
大切な人を守るため、大事な人を救うためなら、天樹錬はどこまでも走り続けることができる。
目を上げれば、絶望が佇んでいる。
…………あぁ。
他のみんなも、自分と同じ事を思っているだろう。
どんなに苦しくても、どんなに辛くても、全てを越えて輝く日まで、いつか夢見た思いを決して終わらせない、と――――
「――――いこう。これで、最後だ」
死に体の身に息を入れる。
たった一呼吸。それだけでも体は動いてくれた。
最早感覚などとうに消え去っている。
――――それでも、この身に届くものがあった。
それはどこか遠く遠いところから響く、仲間の叫び。
………フィアが、真昼が、月夜が祈っている。
………祐一が、ファンメイが、ディーが、セラが猛っている。
………サクラが、イルが、エドが走っている。
………ヘイズが、クレアが、リューネが駆けている。
………そして、”アイツ”も吼えている。
――――大切な人を守るために、どこかの誰かの未来のために。
さぁいこう。この身に宿る、たった一つの決意にかけて。
思いは不屈。信念は不倒。
故に生み出されるは絶対のみ、だ!
見せ付けてやろう。これが人の強さだと。
人はあきらめないのではなく、――――――――あきらめないのが人なのだと。
「あ――――ァ、ぁ、ああああああああ…………ッ!!」
集うは決意。果たすは信念。
ただ強く願い望み希い、この意思を以って光輝となす――――――――!!
「――――――――『展開』」
…………故に、この思いの行き着く先は――――――――
「――――――――『■■■■■■■■■』――――――――!!!!!」
――――さぁ、それでは終わりの物語をはじめよう。