第一章

「夜がまた来る」



























一歩目



























――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

生きとし生けるものの存在事項を許さぬ斜陽の化身が綿津神の如き威を以って荒れ狂う。

その様子は終わりへの使者か、はてまた破滅への足音か。

……ふと、そんなことを思った。

町の外は今日も風が吹き荒れている。

けれども、今日のそれはなんだかとても嫌な予感がする、と天樹錬はそう思った。

「なんだろ……。なんか、胸騒ぎ」

天蓋の向こう。

灰色に覆われた空はどこまでも、深い。

「嫌な予感、する」

もう一度、今度は声に出して呟き、錬は踵を返してフィアの待つ家へと向かった。





こえがきこえる













               



――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

雲の上では全く感じられないその暴虐。

それを思ってヴァーミリオン・CD・ヘイズは一つ舌打ちを漏らした。

「……嫌な風だな」                              だれかのこえ

この風は、冷たすぎる。

普段ならばハリーと談笑している彼も、今は無言を通していた。

場所は上空3000m。

Hunter Pigeonの操縦席から眺める俯瞰世界。

陽光届かぬ荒廃の地はどこまでも、広い。          

「何か、……気に食わねぇ」

再び舌打ちをして、ヘイズは大きく操縦席の椅子に身を沈め、目を閉じた。




     なにかのこえ


















――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

一歩でも境界から踏み出せばそこは死の世界。

だがこの場にはその気配は欠片も届かない。

「ヒマだね、エド」

手近な壁にもたれかかり、リ・ファンメイは不満げに呟いた。

「……はい」

普段のように無表情に、エドワード・ザインが返す。

何と言うことも無い状況。

けれど二人の目線は投影されたディスプレイに映る外の様子を見ていた。

「……ヘンな感じ。言葉じゃ言えないんだけど、なんか、朝からこうなんだよね」

「…………」よんでるこえ

ただファンメイとエドは外の様子を眺めているだけ。

映し出された世界はどこまでも、暗い。

「…………」

会話はそれっきり途絶える。

ファンメイとエドは、そのまま動かなかった。

そしてその頭上では、一人の少女が立体ディスプレイに映し出され、じっと世界の果てを見据えていた。














            さがしてるこえ








――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

身をすくめる人々を嘲笑うが如く強まってゆく風。

それに黒沢祐一はほんの少し眉をひそめた。

「……不穏な空気だな」

「あ? なに言ってんだい兄ちゃん」

場所は中近東のある町、そこにある酒場。

琥珀色のガラスを傾けていて祐一は黙する。

数多の戦を越えてきた、科学では証明のつかない一種の”勘”。

しかし魔的なまでの的中率を誇るそれが、今警鐘を発していた。

「淀む……流れ、か」

見据えるは今の流れ。

平穏を望むにはどこまでも、遠い。

祐一は数秒目を閉じて瞑目すると、意を決して席を立った。

歩き出し、人ごみにまぎれ、掻き消えた。





     てんをながれてちにおちる

















――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

人の世の終わりを告げるが如く、その烈風は容赦ない。

「…………」

それを窓の外に感じながら、ディーは目を閉じた。

そうすることで、何かが聞こえそうだった。

風の音がまるで怨嗟の声に聞こえる。

「……ディーくん?」

「どうした、デュアル?」

後ろから声。
ちをはしっててんにのぼる
振り向けばセラとサクラがいた。

「うん……ちょっと、妙な胸騒ぎがしてね」

知らず、横に立てかけている『森羅』に手が伸びようとし、意思の力で抑え込む。

「妙な気配でも?」

「いえ。妙なというか……」

言いよどむ。

これはまるで、何かに監視されているようだ、と。

……でも、だとしたら、”なに”から?

窓ガラスに手を伸ばし、掌で結露の雫をふき取る。

伝わった世界の温度。

それはどこまでも、寒い。

ディーはそのまま目を閉じ、風の音を聞くに任せた。

















                                                                それはことば





――――寒々しい風が吹き荒ぶ。

けれども、それは決してこの砦を侵すことはできない。

人類の最後の砦が一つ、シティ・モスクワ。

その最奥、軍部の一部屋にて、天樹月夜は一人の少年と向かい合っていた。

「アンタの趣味、悪いわね」

「……やかましいわ」

テーブルの上には湯気を立てるティーポット。

その中には何故か緑茶が入っている。

「あーあ。どこでいったい道間違えたのかしら私の人生」

「意外にこっちが正道って気もするんやないかー」

「殴るわよ」

「……アンタ一応捕虜なんやけどなぁ……」

苦笑する少年、――――イリュージョンNo,17。

「そりゃヒマなのはしゃぁないやろ」

「……違うわよ」

「あ?」

少年の言葉が止まる。

月夜は一度大きく息を吐いてから言った。

「なんかね。あの時から何かが変なのよ」

それは、シティ・神戸崩壊のときから。

「あれから、何かの歯車が狂い始めた気がする」

シティ・マサチューセッツで起きたディーの事件。

エリザベート・ザインの遺産の暴走。世界樹。

そして今回の『賢人会議』。

「なんていうか……、”流れ”ってヤツが狂ってるように思えるのよ」

イルは答えない。
                     ことばはひびく
行く末など分かるはずも無い。

この世界の行き道はどこまでも、儚い。

沈黙が下りた部屋で、ティーポットの湯気が立ち上って、消えた。






























そして――――





「……なに、これ…………」





シティ・マサチューセッツ。

自らの愛機の操縦槽の中で、クレアヴォイアンスNo,7は呆然と呟いた。

一糸纏わぬ姿で操縦槽に浮かび、自らの分身の能力を以って意識を向けるは、一つのシティ。

「壊滅してる……。なんで、そんな動きは全く……」

シティ・シンガポール。

千里眼の認識力を以って知覚したその都市は、完膚なきまでに破壊されていた。

それも、クレアが気づく間もない、とんでもない短時間で。

「紙くずみたいに、外壁が引きちぎられてる……。それにこの溶解跡は、炎法零式?」

圧倒的だ。

スキャンを重ねる毎にここがどれほど馬鹿げた戦力で破壊されたかが判明してゆく。

「……いえ」

いや、問題はそこではない・・・・・・・・・

破壊の内容など、起きてしまったものに過ぎない。

今するべきことは、”原因”の追跡。

破壊にはルートが存在した。
                                          ひびいてつげる
シティの北部。そこの外壁から進入し、蛇行しながら中心まで進み、最終的には円を描いて西側より消えている。

「……つまり、この崩壊は外的要因が原因。――――なのに」

そう、進入と脱出の痕跡が存在するのならばこれは間違いなく原因となった”なにか”があるはず。

だがしかし、

「――――なのに、なんで何も捉えられないの……!?」

クレアは悲痛な叫びを上げた。

「なに、これ……? 私の千里眼でも行方がわからない……っ、そんなことが――――?」

これだけの痕跡が揃っているというのに、行方が全く分からない。

『千里眼』クレアヴォイアンスの力をもってしても完全なるロスト。

破壊の痕跡はシティの西側出口をもってぷっつりと途絶えて、

「いえ、違う。見失ったんじゃない、消えたんだわ・・・・・・

低い声でクレアは呟いた。

完全なる空間転移。存在情報の改竄。

何をもって姿を消したのかは分からない。

それでも、この『千里眼』の目を欺くことが出来る、ということは。

「……普通じゃ、考えられないわね」

特定の個人情報さえ存在すれば、たとえそいつが地球の裏側にいようと見つけ出すことのできる、クレアの『千里 眼』。

今回はその詳しい個人情報こそ無かったが、それでも歩いて追える程の痕跡は残っていたのだ。

それが、追跡しきれない。

『雲』の上へ逃げた……? ――――うぅん、それは無理ね。ウィリアム・シェイクスピアも、Hunter Pigeonも動いてい ない」

そして、他に雲上航行艦などという化け物スペックの機体が存在するわけもない。先ずあったとしたらすぐ感知で きる。

それが意味するところとは、つまり、

「……他の勢力。ここのところ騒いでる『賢人会議』の線辺り、ってこと……?」 

マザーコアの使用に反旗を掲げるあの組織の動きとしてはおかしくは無い。

問題は、表舞台にも出ないほどの少人数組織である『賢人会議』のどこにそんな戦力があるか、ということ。

「……ディーでも……無理、なのに……」

数少ない『賢人会議』の中で素性の判っている、否、自分のみが判っている人物。

世界最強ランクの騎士に位置づけられる弟の全力をもってしても、シティ壊滅などできはしない。

自分が実際に見たことのある最強の魔法士、黒沢祐一ですら不可能だろう。

シティの上層部を皆殺しにすることは可能かもしれないが、それでも建物なども一切合財壊滅させるなど、どうい う魔法か。

「……実際に、向かってみるしか無いわね。そろそろ発表もされるだろうし」

シティ・シンガポールの崩壊。

それはおよそ一年前に起きたシティ・神戸崩壊とはまた違った恐怖を呼び起こすだろう。

シティ・神戸の崩壊は残るシティにマザーコアの危険性を提示し、同時に安穏と縋ってきたシステムの現実を突き つけた。

……それならば、今回のシティ・シンガポールの崩壊は一体何をもたらすの?

より一層の恐怖か。不安か。それとも絶望か。

「…………うぅん。もしかして、狼煙みたいな……もの?」

ふと、そんな言葉が口をついて出た。

狼煙。                   つげるははじまり

始まりの合図。――――何の?

何かの始まり。――――何が?

脳裏に浮かんだ想像を、頭を振って追い散らす。

そんなことはない。そんなことはないはずだ。

何故なら、もしこれが始まりの合図だったとしたら、

「今から起こることは、もっと酷いことってことじゃない……!」

シティ崩壊よりも恐ろしいこと。

思いつきもしない。

人類滅亡?

全シティの崩壊?

大戦の再来?

わからない。わからない。

「…………っ」

気がつけば、体が震えていた。

一糸纏わぬ自分を両腕で抱きしめ、クレアは身震いする。

「なんなの……」

発する言葉は、誰にも聞かれることなく溶けて消えてゆく。

「なんだっていうの……」

震えは止まらず。

合わない歯の根ががちがちと音を鳴らしている。

「いったい、なにが起ころうとしてるっていうのよ…………!」

その全てを意思の力で強引にねじ伏せ、クレアは叫んだ。



――――確かめる。



一体この世界に何が起こり始めているのかを。

眼帯をむしりとり、クレアは己が盲目を顕にする。

『実験訓練生、クレアヴォイアンスNo,7。FA-307の出撃許可を願います。場所は――――』

告げるは抗いの意思。

一息の間をおいて彼女は言った。

















『シティ・シンガポール。――――世界の流れの渦中へ』


















せかいのはじまり




       *
















「……あれ?」

錬が部屋に戻ると、待っているはずのフィアがいなかった。

いなくなったのはついさっきみたいで、テーブルの上にはココアの入ったマグカップが二つ、湯気を上げている。

自分の分と、フィアの分だろう。

「どこいったのかな?」

お茶にしようと、フィアの方から呼んでおいていないのは非常に珍しい。

”おかあさん”か誰かに呼ばれたのかなー、とぼんやりと考えてみる。

なんとなしに立ち上る湯気を見上げ、錬は頬杖をついて椅子に腰掛けた。

自分だけ先に飲んでいるのはまずいだろうと、ココアには手をつけない。

手持ち無沙汰に周りを見渡した。

ここは弥生の家のフィアの部屋。

ベッドが一つに机が二つ。クローゼットに本棚が一つずつ。家具としてはそんなものがある。

白で統一された壁には何故かカレンダーが三つもかかっており、おそらく町の人々から貰ったであろう小物が同じ く吊るされている。

「ネックレスに、ペンダントに、手袋に、指輪に……節操ナシに構ってるなぁ……」

ほぅ、と一息。                                           はじまりのおわり

町の人々にフィアが可愛がられているのは嬉しいが、なんというかこの貰い物の山を見ると複雑な心境だ。

これはやっぱり段々と”女の子”の部屋になってきたことを喜ぶべきなのだろうか。

自分でもよくわからないまま、錬は再び頬杖をついた。

フィアが来ない以上、先にココアに手をつけるわけもいかないし、帰ることもできない。

……いや、帰ることはできないのだ。

「……月姉、真昼兄」

あの『賢人会議』の宣言よりおよそ一月弱。

錬の兄と姉は未だここへと戻ってきていない。

一体メルボルンで何があったのか。

兄の真昼は『賢人会議』を名乗る少女と行動を共にし、月夜に至っては行方さえ知れない。

十一月八日。あの日にメルボルンへ向かう便を待ちながら聞いた『賢人会議』の宣誓。

あのときから、錬は何かの歯車が動き出したような錯覚を覚えている。

それも、よい感覚ではない。

歯車の中に異物が混ざり、いずれ破局を迎えてしまうような、そんな綱渡りの感触。

……酷く、不安だ。

「……リューネなら、何か知ってるのかな」

遠い世界の果て。黒髪の少女を思い出す。

世界を見守る大樹に意識を宿した、世界の調律者。

彼女ならば何かを掴んでいるのだろうか。

そう、思ったとき、慌しい足音が聞こえてきた。

「……?」

それが一体何なのか、と考えるヒマも無く、ドアが開け放たれる。

開いたドアの先、慌しい足音の正体の主とは、

「……フィア?」

肩で大きく息をしている、天使の少女であった。

感情の制御が上手くいっていないようで、周りに少しだけ天使の翼が顕現している。

「どうしたの? フィア」

肩で息をする彼女に何があったのかと錬は問おうとし、

「こ、これ、見て下さい!」

差し出されたのは一つの携帯端末。

よくわからないままに受け取り、映像を展開させる。






――――映し出されたものは、圧倒的なまでの破壊の跡だった。




おわりのはじまり


「…………な」

思考が止まる。

ディスプレイの右下。そこに表示されている文字は、「シティ・シンガポール」

「え…………」

どういうことだ。

脳がそう判断する前に反射は理解を告げる。

「……シティ・シンガポールが、――――壊滅したってこと?」

呆然と言う声は、自分でも思うほど無機質だった。

青ざめた顔でフィアが頷く。

「そう、らしいんです……。それに」

端末に手が伸ばされる。

早送りされて次の映像が映し出された。

それは、逃げ惑う人々の誰かが必死で記録したらしき映像だった。





爆裂する閃光。

吼え猛る獣声。

倒壊する建物。

……それはまさに、阿鼻叫喚の世界だった。





「…………」

飛び散る鮮血。

世界が紅に彩られてゆく。

そして、それを為しているものとは、紛れも無い一体の「巨人」ギガンテスであった。

「…………なんで」                                                        ここから ひびいてゆく

必死で搾り出した声はか細く、一瞬にして大気に溶け消える。

フィアが言う。

「マザーコアの暴走じゃ、ないですよ……」

あの事件はフィアと彼女の姉妹という同超能力者がいたからこそ起きた惨事。

使い捨てにされる運命だった天使の子供たちの”人間になりたい”という欲求が引き起こしたものだ。

七瀬将軍。フィア。39体のサンプル。劣化したマザーコア。

多くの偶然が重なったからこそ、あの事件は起きたのだ。

……それ、が?

「……シティ・シンガポールのマザーコアは」

「劣化はしてたと思いますけど、暴走なんてしていません」

一息。

「なにより、――――この巨人は”シティの外”から来たんです」

ならば、この巨人は何者かの手によって作り出されたものだとでもいうのか。

「それなら一体……、誰が」

「わかりません……」

二人して押し黙る。

聞こえるのは部屋の大気をかき混ぜる空調の音のみ。

そして、

「……行ってみるよ」

「え?」

唐突に口を開いた錬は、フィアを真正面から見据えて告げた。

「行ってみる。それで、何が起きたのかを確認してくる。……正直、嫌な予感がするんだ」

虫の知らせ、というわけではない。

なんというか、一寸先に闇ではなく奈落の崖があるような、そんな取り返しのつかないことが待ち受けている気が するのだ。

フィアは何も言わない。

ただ不安気に錬を見ているだけだ。

彼女もわかっているのだろう。今、この世界の流れが不可思議な方角へと進んでいることを。

そう、明らかに異常な事件が多発している。


それは いまはまだ なにももたないで



――――きっかけはシティ・神戸の崩壊。

続いたのは天に隠れ続けていた龍使いの『島』の露見。

さらにシティ・マサチューセッツのエージェント、デュアルNo,33の脱走。

そこにエリザベート・ザインの遺産、世界樹の暴走事件を経て、この間の『賢人会議』の宣誓に至る。





しかもこれは世界中に知れ渡っている”一般的な事実”に過ぎない。

誰にも知られなかった極大の戦、――――最大最強の魔法士との戦い。

『御使い』『調律士』『世界』を巡る二つの事件。

あの二つの事件だけでも、この世界のパワーバランスを崩すのには十分だ。

今までは考えていなかったが、ウィズダムとリューネ。その二人が存在する、ということはつまり、

彼らを作り出せるほどの力を持った機関が存在している・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、ということなのだから。

あの時リューネが持っていた資料から判断するに、意図して作られた存在ではないようだが、それでも『天使』を 有していたことには変わり無い。

「……何かが起きようとしているんだ。真昼兄も、月姉も、皆そう言うと思う」

もしかしたら、ただの杞憂なのかもしれない。

「けど、シティが一つ潰されたんなら、他のシティも危ないかもしれない」

人類最後の砦。残すところ、後5つ。

今はただでさえシティ・神戸が崩壊したことにより、各シティ間に不審感が高まっているとき。

疑心暗鬼に駆られたほかのシティが行動を焦らないとは限らない。

「私だって、そう思います……」

か細い声。

気がつけば天使の少女は髪と髪が触れ合うほどの至近距離まで近づいてきていた。

柔らかな匂い、優しい香りが鼻腔をくすぐる。

「でも、不安なんです……っ」

錬の胸にフィアの頭が預けられた。

上着を掴み、まるでどこかへ消えてゆく錬を引き止めるように、フィアは彼を抱きしめた。

「…………」

肩を叩こうとしたとき、錬は少女の体が小刻みに震えているのに気がついた。

……フィアには直感的に、判っているのだろう。

この不安。この恐れ。

今世界を包んでいる負の感情の奔流。

それは決して疑心暗鬼からくる思い込みなどではない。

”世界”が、変なんです。まるで、川の上流から悪い物質を流してきてるみたいで。だんだんと揺らいでいくん です」

嗚咽交じりにフィアが言う。

この場合の”世界”とは即物的な意味ではない。

『天使』アンヘル『御使い』アポステル『調律士』ワールドチューナーの三カテゴリが”世界”という呼称を使うとき、示しているものは情報の海そ のもの・・・・・・・・なのだから。

「建物とか、錬さんとか、そういったものは変わってないんです。でも、空の上の方とか、時々感じる遠い場所と かの”世界”が、儚く揺らいできているんです」

”世界”の揺らぎ。

それはまるで、対象を考えずにあらゆるものを情報解体するが如く。

「”情報の海”そのものに、ウィルスが混じっているような、そんな感じなんです……」

フィアの震えは止まらない。

天使の少女には、自分にはわからない”なにか”を敏感に感じ取ることができるのだろう。

安心させるようにフィアの背を撫でる。

「だいじょうぶ、……だいじょうぶだよ」

何が起こるかは分からないけれど、それでもだいじょうぶ。

僕がいる。みんながいる。

ファンメイだって、エドだって、ヘイズさんだって、祐一だって……

「――――みんながいるよ。だからだいじょうぶ」

フィアを抱きしめながら、錬は思いを巡らせていた。






――――みんなに会おう。
いまはまだ なにもせおわないで







フィアのここまでの怯えよう。

単なる”異常”では説明のつかないなにかが起きている気がする。

祐一なら、真昼なら、月夜なら、この異常に気づいているだろうか。

解明の糸口を示してくれるだろうか。

そして、フィアの姉妹にして同じ起源を持つあの少女ならば、何かを知っているのだろうか。

「月姉の行方も捜さなきゃいけないし……いい機会だと思う」

「……はい」

胸の中でフィアがか細く頷く。

錬はその頭をぽんと撫でて微笑み、

「僕はシティ・シンガポールの真相を確かめてくるよ。フィアは月姉の捜索をお願い」

「はい。シティ・メルボルンから辿ればいいんですよね」

「ん。それかシティ・モスクワ関連だね。……何かやらかしてそうで恐いんだけど」

あはは、と苦笑いするフィア。そこは否定するべきだろうに。

だが、そこに先ほどまでの懊悩はもうなかった。

うん、と頷きあい、錬とフィアは振り返らずにそれぞれのやるべきことへ向かって駆け出した。

















世界を冷たい風が覆い始めたこの日。

一つの流れが、確かに始まった。














けれど いつのひか きっとひびく――――■■■のうた














 どうでもいい裏コーナー

〜いきなり無関係編〜

WB格闘ゲーム・『Under The Blue Sky』追加パッチ






マリア・E・クライン

通常技
Lance  236攻 →Javelin
Shield  623攻 →Rampart
Fierce  214攻 →なし
Sortie  421攻 →なし

EX技
輝く彗星ブリューナク 236236攻
魔穿槍ゲイボルグ 214214攻
どうか――――  222特






答えを見出したデュアルNo.33

通常技 
凰臥ほうが 236攻 →凰牙おうが
灼冠しゃっかん 623攻 →なし
宗心和そうしんわ 214攻 (カウンター) →葬神羽そうしんわ(追加入力)
森羅開放  222特 (ゲージがなくなるまで攻撃力2倍・スーパーアーマー・ダメージ微回復・全ての技がタメでガード不能に・一戦に一度)

EX技 
天地両断てんちりょうだん 236236攻 (ガード不能)
絶空穿ぜっくうせん 214214攻
閃極・狂神乱舞せんごく・きょうしんらんぶ 2363214攻 (森羅開放中のみ使用可能)
Answer   弱弱6中強 (3ゲージ専用 森羅非開放時・体力20%以下・Time20以下時のみ使用可能 一撃必殺 セラには使用不可)







理性を失った天樹月夜

壜蛇ビンタ 236攻 →屍皇雷塵壜蛇すーぱーいなづまビンタ
黄金の右  623攻撃 →ノーコンの左
ヘルファイア乱れ撃ち 214攻 →地獄行 ヘルファーレン
月夜フィンガー  421攻 →なんちゃってアイアンメイデン
狂神化ゴッドバーサーク 222特

EX技
魂の一撃にして二撃のような惨劇  236236攻
シャイニング・T  214214攻
絶殺・なんとか月華  2141236攻
かおてぃっくぞーん  2363214攻
惑星砕きスターブレイカー レバー二回転+攻
極死旭獅・月夜きょくし・つきよ 「狂神化」中に236236236攻
ゴッドハンド  コマンド不明





リューンエイジ・FD・スペキュレイティヴ

通常技
なし

EX技
奇跡の歌ヘヴンズ・クライ・レプリカ 236236攻
熾天満たす――――セラフィムコール・アンフィニッシュド 222特 




 あとがき

「出だしの一歩。第一章『夜がまた来る』いかがでしたかー?」

サクラ 「まだあくまでも前兆。しかし”確たる予感”はあるというわけか」

ディー 「姉さんがいいトコ占めてますね。そういえばここで初登場かな?」

「んー、そうなるかな。ってか今回は人少ないね?」

祐一 「前回が余りにも多すぎたのだろう。今回は五巻の面子、ということだ」

イル 「そーゆーわけやな。やれやれや」

月夜 「まあまあここは抑えて抑えて。――――消すわよ?」

「…………(しまったコイツもいるんだったー!)」

真昼 「ほらほら月夜、直接的すぎるよ」

セラ 「……間接的にならいい、って暗に言ってます?」

ディー 「セラ。つっこみ禁止」

イル 「……なんつー殺気や。ってか作者。お前の脳内パワーバランスはどないなっとんねん」

「それは単純戦闘力の話かね」

イル 「……ん?」

「そだなー。そいじゃま、一応書いときますか。俺の脳内パワーバランスは以下な感じです。」


祐一≧イル=サクラ≧ファンメイ≧錬=ヘイズ=ディー>>エド>セラ (番外)フィア


サクラ 「見にくいな」

「うっわ酷!?」

祐一 「先ず完全にイリュージョンの聞きたいことを勘違いしているな」

真昼 「彼が聞きたいのは存在のランクだよね」

セラ 「それも違う気がします……」

「まぁ実際には最上位にウィズダムとリューネが入るんだけどなー」

ディー 「あれ? リューネさんは戦闘向きじゃなかったんじゃ?」

「いや、それがとんでもない方法思いついちまってなぁ。……ウィズダムに次ぐ戦闘能力を発揮できるように」

月夜 「また後付けってことね。本編中に思いつきなさいよそんなこと」

「うぅ、面目ない」

イル 「……あー、なるほど。前回嬢ちゃんが言うとったの、ようやっとわかったわ」

セラ 「えっと、ここのコーナーは作者の人を燃やしたり――、ですか?」

「だーかーらー、やめいッ!」

サクラ 「普通に章の紹介をしないからだろうに」

「お、そ、そうそう。紹介しなきゃな。……だから全員武器下ろせ」

真昼 「とはいってもね、まだ序盤だからそこまで説明することもないかな」

ディー 「シティ・シンガポールの崩壊。今の謎はあの”巨人”が何なのか、ですか?」

祐一 「それもあるがな。だがやはり最奥はその元凶たる組織だろう」

月夜 「なんてったっけ? キーワード」

セラ 「『Id』です。心理学用語で「欲望の源泉」を表す、心を構成する要素です」

「いらん口挟むなら心の要素は他に『自我』と『超自我』があるぞ」

イル 「それはどーでもええ」

サクラ 「同感だ」

「…………扱い変わってねーぞ」

セラ 「まだ『Id』が組織なのか、人名なのか、別の何かなのかすら判って無いです」

サクラ 「冗長なのもいい加減にして欲しいな」

月夜 「ん? 一発イっとく?」

「代理攻撃反対ー! ってか君に殴られたら流石にやjあsdfgh!?

ディー 「…………ゴッドハンド。ここのコーナーは暴走編とリンクしてますか」

真昼 「流石に月夜の攻撃だと復活は遅いみたいだね」

イル 「……前作でどーだったか、よーくわかったわ」

祐一 「そういうことだ。キリをつけよう」

サクラ 「次章では私たちの出番もあるらしいぞ。デュアル、セレスティ」

ディー 「今のテンションだと喜ぶべきか微妙なトコですね」

月夜 「はいはーい。それじゃぁ次は第二章・『戦禍の遭遇』、おったのしみにー!」

「……で、結局誰も前の章からいるウィズダ○の話題にゃ触れてない、と」

月夜 「てい」

「……………で、では次章でお会いしましょう……ごふっ」













本文完成:12月29日 HTML化完成:12月30日


written by レクイエム



                                            








                                                                              ”Life goes on”それでも生きなければ...