第三章

「集う趨勢」



























さぁ、絶望を始めよう






















崩壊し、既に命の息吹を失ったシティ・シンガポール。

見渡す限りが瓦礫と死体に覆われ、鮮血の洗礼を受けていない場所などどこにもないこの都市。

そこで今、誰にも知られぬ戦いが開幕していた。





                                わたしはうたう



「――――っ!」

跳躍。右足の筋肉が断線するくらいに、全力で跳ぶ。

同時に「空間曲率制御デーモン」アインシュタインによる空間制御によって距離をごまかし、錬の体は一気に15mを踏破する。

そして、その選択は正解だった。

『賢人会議』の少女がばら撒いたナイフは一瞬にして紫電を纏い、恐ろしい勢いを以って一瞬前に錬がいた空間を 貫いていた。

……速い!

騎士をも楽に捉える加速を誇る刃の広範囲射撃。これがこの少女の必殺か。

「ラグランジュ」と「アインシュタイン」を簡易常駐していて助かった。

爆圧を右に感じながら錬は『迅雷』を四本抜き放つ。

同じように少女も新たな投擲用ナイフを構えていた。

「!」

「!」

期せず重なるわずかな逡巡。

共にナイフを指に挟んだ構え。その構えは、鏡に映したように同じだった。

……僕と、全くいっしょ……!?

驚愕を押し殺すように『迅雷』を解き放つ。

錬に物体の運動係数を改変する能力は存在しない。

故に投擲する際は自分の運動能力に頼るしかない。

そして月夜が稠密に論理回路を刻み込んだこのナイフはその速度を何十倍にも跳ね上げる。

少女のナイフを打ち落とすべく疾駆する四本の刃。

だが、

「……!」

それを嘲笑うが如く、少女が展開したナイフが一瞬にして無数の破片に砕け散った。

砕けた破片はしかし地に落ちることなく紫電を纏う。

紫電が走る領域は円形。それはまさしく”砲台”であった。

戦慄が背筋を走りぬける。

……ま、ず――――っ!

直感。予感。危機感。

体中の感覚が警鐘を鳴らす。

先ほどの攻撃が必殺だと? とんでもない。

これこそがおそらく真名を冠する必滅の攻撃。

生半可な防御では防ぐこと敵わぬ。『アレイスター』並の絶対防御を必要とするものだ――――



(「アインシュタイン」常駐 空間密度を改変)



ならば受け流す。

真っ向から勝てないならば搦め手で攻める。それが『悪魔使い』の戦術。

『次元回廊』の要領で空間を歪ませて錬は攻撃に備え、












「――――『魔弾の射手・幻楼』
よるのうみにいたり













瞬間。少女が攻撃を解き放った。

秒速一万mにも達する速度でナイフは最早銀の閃光と化して宙を駆ける。

それはしかし空間の歪みに囚われて錬には命中しない、――――はずだった。

「――――え?」

自分の声ではないような呟きだった。

無数の銀弾は確かに空間の歪みによって大半を絡み取られた。

だがしかし、わずかな三割は揺らぐように存在を朧に霞めて透過を果たしたのだ。

まるで、一時的にこの世から存在を切り離したように――――

「く、ぁ…………っ!」

ラグランジュを起動していない錬にこの弾丸の嵐を受け流す術は無い。

それでも速度の大半は奪えたのか、体を貫かれることは免れた。

しかし小柄な錬の体躯は乱打される銀弾に打ち据えられ、地面に叩きつけられた。

瓦礫に頭からつっこむ。

火花どころかスターマインがナイアガラよろしく散った。

「っ――――!」



(痛覚遮断、血流カット 「マクスウェル」、「ラグランジュ」常駐)



痛みも衝撃も無視して跳ね起きる。

開始早々大打撃だ。

骨こそ折れていないが、全身は重度の打撲で覆われた。

『月光』を構える行為すら体が軋む。

……これは、まずいかな。いきなり……っ。

侮っていたわけではない。油断していたわけでもない。

「……小柄な割りに、なかなか丈夫だな、貴方は」

どことなく感心したように少女が言う。

「嬉しくないよ」

苦笑いを返す。

誤解からの戦闘、それもいきなり大打撃を食らったというのに、不思議と嫌な気分ではなかった。

呼吸を落ち着け丹田に力を入れる。

……今度は、こっちの番。

なんとなく目的がうやむやになってきている気がしてきたが、まぁ却下。



「炎神・百鬼」えんじん・ひゃっき 発動)



豪、と錬の周りを爆炎が埋め尽くす。

「炎使いか!」

それを見た『賢人会議』の少女が瞬時に距離を詰めてくる。

そう、『炎使い』の対処としてはそれが正しい。

しかしこの身は世界で唯一複数の能力を使うことを許された存在。

疾駆する少女にフェイクとして氷槍を放つ。

それは当然”運動能力を加速した・・・・・・・・・少女がゴースト・・・・・・・ハックした・・・・・腕に弾かれ・・・・・”、――――!?

今度こそ、驚愕が全身を支配した。

それらはまさしく、身体能力制御と仮想精神体制御。

思考が止まる。

しかし長年の経験によって染み付いた反射は先ほどの思考を反映して迎撃を開始。

『炎神・百鬼』の炎を発現させたままI−ブレインが唸りをあげる。

地を叩いた足より仮想精神体を送りこむ。

「な――――!?」

今度は目の前の少女が驚愕に硬直した。

錬の足元より生まれ出でるは無数の鋭線。
                                                      よるのやみにひとり


――――『チューリング・死線しせん



ナノ単位の薄さに研ぎ澄まされた極圧の鋼線。

触れるものを例外なく切断される刃はしかし、

「っ、この……!」

少女の振るったナイフに切り裂かれた。

次いで錬にゴーストハックの豪腕が襲い来る。

だがしかし、

「ぉ……!」

それは『炎神・百鬼』によって粉々に焼き滅ぼされた。

炎が舞い散り、土塊が砕け、銀光が走る視界の中、錬と『賢人会議』の少女は一瞬にして我を取り戻し、共にナイ フを振るう。

期せず重なる声は誰何。

「貴方は一体――――」

「君は一体――――」

袈裟懸けと薙ぎ。

走った二つの銀閃がぶつかり合い、



















「「――――何者だ!!」」



















火花を散らして弾けた。












      つむがれるうそぶき












       *























「…………」

「…………」

ナイフを突きつけあい、瓦礫と死体の荒野にて沈黙する二人の少年少女。

共に顔は驚愕と戦慄、そして何よりも激しい誰何の表情に覆われていた。

複数の能力の使用者。

『悪魔使い』たる天樹錬と、『賢人会議』seel's guildの長たるサクラ。

彼らこそは、情報制御理論の三傑、天樹健三とアルフレッド・ウィッテンの最高傑作たる二人。

「…………」

「…………」

沈黙は続く。

動かず語らず目線のみが重なり合っている。

少女と目を合わせたまま、錬は穏やかではない心中で思考に没頭していた。

何よりも疑問に思うのは、少女の能力。

ゴーストハックを発動し、そして身体能力制御までもその後に起動した。

並列起動こそしていないものの、それはまさしく複数の能力を有していることの証明に他ならない。

……僕と同じ、か。

得も知れぬ思いが胸をつく。

真昼と月夜に聞かされた自分の出生経歴を思い出す。

天樹健三。情報制御理論を考案した三人のうちの一人。彼の最後にして最高傑作。

後天的に新たな能力を学習でき、同時に能力の並列起動をも行える絶対の原石。

……それが、もう一人……?

少女を見やる。

ツインテールに分けた黒髪。怜悧な眼差し。祐一みたいに黒系統で統一された服。

目つきを除けば、どことなく顔つきも自分に似てるといえばそうかもしれない。

「……貴方は、何者だ」

少女が口を開いた。

咄嗟には応えられずに、錬は言葉に詰まる。

「最早隠すのにも意味は無い。貴方のI−ブレインは、私と同じように複数の能力を有しているのだろう?」

「……やっぱり、君もなんだね」

この少女も『能力創生』を有しているのかどうかは判らない。

だが複数の能力を備えていることからその可能性は大いにあってしかるべきだろう。

「やはり、か。……解せないな。私のような特異すぎるI−ブレインなど世界に二つとないと思っていたのだが」

少女が言う。

「僕もだよ。今の今まで、そんなこと思ってすらいなかった」

錬が答える。

「どことなく似ていると思えば貴方と私は似ているな。……生憎と、私に製作者の記憶は無いのだが」

敵意が薄れてゆく。

戦意を解いたわけではないが、ひとまず戦いの続行は中止するようだ。

応ずるように錬もナイフを下げた。

「名前を、教えてくれないか?」

「…………」

判断に迷う。

ここで果たして「天樹」の名を出していいものだろうか。

真昼が自分からこの『賢人会議』の少女に協力しているのならばいいのだが。

もしなんらかの形で拘束されていたとしたら少しまずいことになる。

……まぁ、真昼兄に限ってそれは無いか。

今は少しでも真昼について情報が欲しい。

「天樹錬」

少女の目を見据えて真っ向から言い放つ。

一瞬の沈黙。

刹那遅れて少女の顔に動揺が浮かんだ。

「あまぎれん、天樹、錬…………”天樹”だと?」

何かを噛み締めるように錬の苗字を反復する。

……やっぱり、真昼兄を知ってるんだ。

疑問は確信に変わる。

さて、これが吉と出るか凶と出るか――――。

しばらくの沈黙の後、少女はどことなくしおらしい風情で言ってきた。

「……天樹、錬。貴方は、その、まさか……」

そこで再び言葉に詰まる。

……?

それに錬がどうしたのか、と聞こうとした時、I−ブレインが警告を発した。

「!」

「!」

同時に少女も感知したらしい。    つつがなくうたうひ

しぼんでいた雰囲気が一気に鋭くなり、手も投擲用のナイフに添えられる。

反射的に錬と少女は背中合わせに戦闘体勢をとっていた。

まるでそれが当然のことであるかのように。

まるで長年タッグを組んでいたチームのように。

「……何人かいるな」

「うん。……誰かわかる?」

「いや……。貴方の仲間でもないのか?」

「ここには一人で来たからね」

……なんだろう。この感じは。

先ほどまで戦っていた相手だというのに、不思議と背中を預けることに何の疑問も感じない。

「ところで、君の名前は何て言うの? 『賢人会議』で通すのはまずいでしょ」

「……サクラ、だ」






――――――――男の子なら錬、
         女の子なら■――――――――






…………っ、あのときの……!

鋭い頭痛。

無理やり振り払う。

今はそれについて考えている時ではない。

「何人だ?」

「わからない。シティの軍かな?」

I−ブレインが捉えた反応は複数。

何らかの情報制御端末でも有しているのか、普段ならば捉えられない遠距離で索敵することができた。

「近づいてくるな」

「うん。……どうする?」

シティの軍と遭遇して都合が悪いのは錬もサクラも同様。

加えて錬は真昼の情報をサクラから聞き出したい。

「ひとまず、協力しない?」

下心大有りだが、今はこれは最善だろう。多分。

「……そうだな。ひとまずは異論無い。……私の仲間も来ているはずだ。合流しよう」

……仲間、って……真昼兄かな?

そんな淡い希望すら抱く。

「ねえサクラ」

先に確認しておこうと思って口を開いた。

「なんだ。天樹錬」

油断なく周りを見据えながら歩き出す。

「天樹真昼、って知ってる?」

「――――!?」

反応は劇的だった。

一瞬にして少女の顔色が七色に変わって最終的には動揺に落ち着く。

いや動揺に落ち着くというのも変な表現ではあるが。

「な、何故その名を、いや……となるとやはり天樹錬、貴方は」

頷く。

「うん。サクラが思ってる通り。真昼兄は、僕の兄さん」

「そう、か。……貴方は、真昼を探しにきたのか?」

俯いてサクラが言う。

「それもあるけど、今はこの事件の原因を探」



瞬く光。



「っ!」

互いを突き飛ばすように飛び離れる。

半瞬遅れてその場にナイフ・・・”が突き刺さった。

「これは」

「狙撃か!」

迂闊。まさかこんな短時間でこちらを補足したというのか?

情報制御も何も使っていない錬たちを捉えるには、視覚的に捉えるしかない。

だがこんな起伏に富みすぎた瓦礫の山の中、こちらを捉えれるとしたら。

「上だ天樹錬!」

「!」

サクラの言葉に「ラプラス」を起動。

先ほどのナイフの威力、角度を解析し――――、そこで気づいた。







撃ち込まれたものは銃弾ではない・・・・・・・・・・・・・・・







「ナイフ、だと!?」

サクラが疑問の声を上げる。

地に刺さっているのは銀のナイフ。

サクラが首を傾げるが、錬はそれには見覚えがあった。

脳裏を過ぎるフラッシュバック。









            ナイフ






                              空賊






                                                                     論理回路






                                                    束縛






              結界

















ゆるしはもとめず

――――魔法士殺しの刃――――!
















「っサクラ! 逃げ――――」

――――遅かった。

上空から新たに二本が少し離れた場所に撃ち込まれ、





(――――システムエラー 演算処理に致命的な妨害を検出)





「っな!?」

サクラの体が揺れる。

錬も頭痛を必死で押し殺して踏みとどまった。

……どうして、これが――――!?

脳裏に浮かぶは一つの空賊。















――――――――『黄金夜更』















千人を超える人数、五百に達する戦艦を保有する世界最大の略奪者。

だが、『黄金夜更』は錬やファンメイ、ヘイズたちによって滅ぼされたはずだ。

旗艦たる『アレイスター』を消滅させ、構成員の大半を再起不能にしたはずだ。

「残党か……!?」

上空を睨み上げる。

I−ブレインの停止している今では見える術は無いが、錬は確かにそこに遊弋するステルス機の存在を感じ取っ た。

状況を理解していないサクラが息せき切って聞いてくる。

「天樹錬、これはなんだ。魔法士の能力なのか、それとも――――」

「詳しいことは後で! ナイフで囲まれてる部分の中にノイズメイカーの効果が発生してるんだ!」

混乱と驚愕と焦燥を無理やりに押し殺す。

先ずは、この魔法士殺しの結界より抜け出なければ。

サクラと並んで走り出す。

ナイフの刺さった範囲は想像以上に広い。

あの時はフィアの抜き撃ちによって何とかなったが、錬は飛び道具など持っていない。

おまけに前と違って人力ではなく上空からの射撃によってかなり深くまで刃は食い込んでいる。

一発で吹き飛ばせるかどうかもわからない。

「……っ」

周囲を、上空を警戒しながら走る。

横のサクラが何かを考えるように片目を閉じているが気にしている場合ではない。

魔法士殺しの結界を張ったということは、すぐにでも錬たちを制圧する者らが来るということだ。

果たしてそれはすぐに現れた。

瓦礫の丘を挟んで12人ほどの兵士が現れる。

マシンガンと携帯銃、そして『魔法士殺しの刃』アセイミで武装するその姿は、




『黄金夜更』!?」




疑念は確信に変わる。

……まだ諦めてなかったのか。

兵士たちの銃口が向けられる。

瞬間、サクラが呟いた。

「……よし。捉えた」

放たれる銃弾。奇しくも状況はあの時と同じ。

錬は舌打ちをして獲物を『迅雷』から『月光』に持ち替え、

くるひをとどめず

(大規模情報制御を感知)



その動作のうちに、空中より生み出された窒素結晶の盾が銃弾を受け止めていた。

錬が疑問に思う間もなく、『アセイミ』の結界によってI−ブレインを封じられている筈のサクラはくるりと身を まわして虚空をなぎ払う。

その軌跡より薄い青色の結晶が生まれて成長。瞬く間に壁と化した。

ざがぎぎぎ、と銃弾がその壁に跳ね返される。

その隙に錬とサクラは結界の範囲外へと駆け出した。

「ちょ、今何で魔法使えたの!?」

「このノイズパターンに修正を加えて抗体デバイスが何とか稼動できるようにしただけだ。この手の抗体デバイス ならばいつも持っている」

とはいえそれでも普段の20%に満たないが、と付け足す。

……僕そんなことできないけど。

同じ「複数の能力を保有する」カテゴリでも、どうにも細かい差異は存在するらしい。

錬はI−ブレインの基本領域に侵入したノイズの電磁波パターンに情報を書き足す、という器用な真似はできな い。

……となるともしかしたらサクラに『能力創生』の力は無い、とかかなぁ?

足元に着弾した弾丸を横っ飛びして躱し、とにかく立体的に逃げ回る。

あの手の銃の命中精度はかなり悪い。精密さを狙うならばライフルを選ぶべきだ。

ばら撒かれると厄介だ。なんとか早いうちに脱出しなければならない。

ならないが、

「――――っ、一体どこまでその『結界』とやらの効力はあるのだ!?」

「だからナイフの”点”で囲まれた部分だって!」

叫び返しながらも、錬も焦りに襲われていた。

効果範囲が全く知れない。

……ヤツら、上空からこっちの行く先々に展開してるのか!

それしか考えられない。

あれだけの空戦力を誇った『黄金夜更』だ。ヘイズとエドが討ち漏らした数が微々たる物とはいえ、一桁というこ とはありえないだろう。

だが、そうなると、

「いずれ追い詰められるよ!」

「く……!」

走る走る走る。

瓦礫の山を越えてゆく。

「建物内部はどうなのだ? 効果範囲に含まれるのか!?」

サクラが横で指差すは、『アトラ』の残骸。

……その手があった!

残骸とはいえ、軍の建物ならば内部のセキュリティは最上級。

地上部分は完全全壊しているが、地下ならばあるいは!

「飛び込むよ!」

「無論だ、――――いや、待て!」

突如の制止。

それにつんのめりながらも踏みとどまる。

それが錬の生死を分けた。

前髪を掠めてゆく炎弾。

「っ!?」

赤色が視界を焼き、同時にとんぼを切って後退する。

横でサクラが緊迫を顕に言った。

「炎使いだ。……『結界』とやらの安全地帯を進んできているな」

その言葉に振り返る。

果たして前方15mほどに悠々と歩み寄ってくる三人の魔法士がいた。

……まずい。

そう思うのも刹那、炎使いらが無数の弾丸を形成した。

数が千にも達する絶殺群。

「く――――」

むざむざやられるくらいならばと、錬はI−ブレインが焼ききれるのを覚悟して起動しようとし、










――――構えたその前で兵士たちが残らず吹っ飛んだ。








                                                            わたしはいとう

「…………は?」

目が点になる。

『アセイミ』によって作られた結界の隙間にいた兵士たちが根こそぎきりもみで吹っ飛んでゆく。

刹那遅れて光が瞬き、あちこちの地面を撃ち抜いていった。

「やっと来たか」

サクラが呟く。

が、錬には何が起こっているのか分からない。

光芒は一秒足らずで収まり、同時にI−ブレインの重圧が消え去った。

そして、





「――――サクラさん、大丈夫ですか!? ……あれ?」





どこかで見た少女が光る正八面結晶体を伴って現れた。

ポニーテールに結んだ金の髪。フィアとどことなく似ている大きな丸い目。

その少女の名は、

「セラ……、だっけ?」

「天樹錬さん、……ですよね?」

フラッシュバックする記憶。

天高い賢人の箱庭にてあの狂人と戦った戦友が、ここにいた。

……となると、もしかして。

先ほどあっちの方の兵士を吹っ飛ばしたのは、

「……あ、れ?」

驚きの声と共に二本の騎士剣を構えた少年が虚空より実体化する。

その少年もまた、あの時の戦友。

「ディーさん……?」

「……なんで、こんなところにいるんですか?」

ぽかん、と三人間抜けに呆ける。

「……知り合いなのか?」

訝しげにサクラが聞いてくる。

「そうです。話すと長くなりますけど、前に祐一さんと一緒に色々と……」

「ってみなさん和んでる場合じゃないですー!」

セラの叫びに我に返る。

いやはや、戦場で再会の挨拶をのほほんと交し合うなどどういう胆力か。

だがここに集う者は世界最高ランクの魔法士たち。

ディーが背後も見ずに騎士剣で銃弾を叩き落し、

サクラが一瞥もくれずに氷槍を切り払い、

そして錬が無造作に炎弾を薙ぎ散らす。

『アセイミ』の効果範囲から抜け出れば最早『黄金夜更』の残党など敵ですらない。

慌てたように上空の戦闘機が再び魔法士殺しの刃を地表へと射出するが、それは放たれるや否やセラのD3に撃ち 抜かれてゆく。

「ぬ、ぅ……!」

明らかな戦力差。それを目の当たりにした『黄金夜更』の兵士が悔しげに呻きを漏らす。

いや、そもそも奇襲の時点で錬を殺せなかったことで『黄金夜更』の負けは確定していたのだ。

飛来する弾丸を片っ端から空間の歪みで受け流し、錬は一人残った兵士の前へと立った。

「……小僧」

「『黄金夜更』で間違いないみたいだね」

油断なくナイフは構えたままで、問う。

「答えてもらうよ。今更僕を狙うのは、私怨? それともまさか、復活したわけじゃないだろうね」

答えが返るまでには数秒の沈黙があった。

何かを考えるような素振りを見せてから、『黄金夜更』の残党兵士は血走った目を錬に向けたまま口を開き、








「――――gulpoah?」








だらり、とその顔から”人間味”というものが文字通り零れ落ちた。

「……!?」

反射的に飛び退る。

兵士の顔はまるで炎にあぶられた蝋のように蠢き、異形の貌を作ってゆく。

目は血走った赤から狂気の黄色に蝕され、口は口蓋骨格の可動限界を超えて尚開いていき、そこからは奇妙にねじ くれた舌が垂れ下がる。

錬は生理的な嫌悪と恐怖を感じてさらに後ずさった。

……なんだ、これ!?

背後のディー、セラ、サクラも異常に気がついたらしく、走りよってくる足音が聞こえる。

だが、その前に異形と化したその兵士が動いた。
















「るぅぅぅぅぃぃぃぃぃいいいぃぃいぃああああぁぁああああああああああああああああぁぁぁああああああああぁああああああぁぁぁぁあぁぁぁあああああああああああああっっっっ!!!」







                             ひるのやみにいかり








獣咆。

背骨が折れんばかりに身を反らせ、天へ向かって咆哮が上がる。

人間の声帯でどうやったらこのような叫びが出せるのか、と思うほどの奇声。

息継ぎすらなく咆哮は続く。

その獣の声嵐の中、錬は一つの”声”を聞いた気がした。

気のせいといえば頷いてしまうし、何かあると言われればそれまたもっともに思えるほどの希薄な感知。

耳に届いたものをそのまま言うならば、その”声”はこう言っていた。





















――――”天意の宿り木ギガンテス・オリジン”――――





















瞬間、変化は始まった。

今までのを”変容”と形容するならば始まったものはまさしく”変化”

人間の耳では聞き取れない可聴範囲外のレベルまで咆哮は及び、何かの召還を思わせるが如く響き渡ってゆく。

そして、”変化”は牙を剥く。

「、―――――――――ッッッッ!!!!!!」

最早声にすらならない咆哮を上げている兵士の脚が、ぼこり・・・と膨れた。

「!?」

悪趣味な漫画のようだ。

続いて逆の足も元の三倍以上にまで膨れ上がり、膨張に耐え切れなかった衣服が破れ散った。

顕になったものは、異様なまでに神経の浮き出した、肉塊。

「ぅ……っ」

そのグロテスクさにセラが顔を逸らしてディーにすがりついた。

「なんだ、これは……!?」

サクラでさえ動揺を隠せない。

四人の前で、兵士は肉塊と化した足、であったものを地に打ち付け、次いで両腕を大きく広げた。

まるで天にいる何かへと傅くような行為。

だがその瞬間、



(――――超大規模情報干渉を感知)



I−ブレインがけたたましい警告を発した。

発信源は無論目の前の男。

今や下半身だけであった肥大が徐々に上半身へと移ってきている。

一体、何が起きるというのか。

結果を言うならば、錬やディーはここでこの男を滅ぼしておくべきだった。

たとえそれがどんな禁忌に触れようと、その行為こそが今この場で行うべき”最善”であったのだ。

だがそんなことを彼らが知る由も無い。

どう動くか決めあぐねた逡巡。






その一瞬で、――――大地が陥没した。






「なに!?」

男を中心として大地がどんどん”食われて”いっている。

地盤沈下のように、ドミノ倒しのように、侵食は広がり、それに応じて男の体躯が、

「大きくなっていってる……!?」

平均的な成人男性の身長だったものが、今や5mにも届く巨人と化し、――――巨人だと・・・・!?

「まさか!」

侵食は止まらない。

次々に大地が削れては流砂のように男の下へと集い、反比例するように男の体躯が肥大化してゆく。

「周りの質量を食らっているのか!!」











――――”なんのために・・・・・・?”
ひるのうみにひたり












破壊されたシティ・シンガポール。




それを為したのは・・・・・・・・一体どういう存在・・・・・・・・だったか・・・・




「いかん! セレスティ、破壊しろ!!」

「は、はいっ!」

サクラの一喝の下、『魔弾の射手』が咆哮を上げ、数瞬遅れて荷電粒子砲の煌きが錬鉄の巨人に突き刺さった。

……だが、それだけだった。

「っ、再生の方が速いのか……!」

右腕を吹き飛ばすという損傷はしかし、一瞬にして補填された新たな腕に取って代わられた。

そしてサクラたちを嘲笑うように、さらに肥大化するスピードが増した。

今錬たちがいる足場までもが侵食にさらされる。

後ろへ飛びのく四人。その時には既に巨人の体躯は200mを超過していた。

侵食は止まらない。周りの瓦礫の山を取り込み食らい、巨人は己が血肉を増やして行く。

……瓦礫が少なかったのはこのせいか!

サクラと遭遇する前に思った疑問。

その答えが、これだったのだ。

「厄日だな、今日は……」

苦々しげにサクラが呟く。

その遥か頭上で、かつてのシティ・神戸のそれにも匹敵する体躯、全長2000m近い巨人――――天意の宿り木ギガンテス・オリジンが、誕生の咆哮を上げた。




















      *



















廃墟と化した人類最後の砦に響き渡る咆声。

それは遠雷のように木霊しては消え去ってゆく。

「ここまで、だとは……」

実体験として一度も”巨人”を目の当たりにしたことのないサクラが半ば苦笑するように言った。

呆れるほどの巨体。

これに比べたら『アレイスター』もおもちゃに見える。

かつてシティ・神戸を蹂躙したマザーコアの化身を彷彿させる体躯はしかし、決定的に違う部分が存在した。



――――足があるのだ。



人間でいう腰の部分からくびれた二本の大円柱は、まさしく足とよべる器官であった。

膝の関節も見受けられる。つまり、この巨人は、

「……動くんだよね」

錬の言葉と共に巨人が”歩いた”

一歩。それだけで大地震もかくやという揺れが起こった。

セラがバランスを崩してディーにしがみつき、サクラも錬も身体能力制御を起動していなければ立っていられな い。

「なんて馬鹿げた……!」

どうやって自重を支えているのか。

本当ならば一歩を踏んだ瞬間に足から折れてゆく筈の巨人は悠々と二歩目を踏んだ。

重量に耐え切れなくなった大地がところどころ断層を起こす。

「成程……っ、これならば確かにシティを滅ぼせるのも道理か……!」

踏み潰されないように逃げながらサクラが毒づく。

沈黙しているが他の三人も同じ意見だ。

「ど、どうするんですか!?」

ディーに抱えられながらセラが叫ぶ。

視線の先には、錬をまとめて100人ばかり押しつぶせそうな馬鹿げた体躯。

こんなものを滅ぼすには、

「…………『終わる世界』エンドオブデイズ

それくらいしか、ない。

だが、

「うわわわわわっ!!」つむがれるとどろき

着地しようとした地面が断層に浸食される。

慌てて「アインシュタイン」を起動し、空中を跳ねて安全な場所へと着地する。

……こんな状況じゃ、起動なんてしてらんないよ!

『終わる世界』エンドオブデイズ『虚の太陽』ステナトンも、起動しても発動までにかなり時間がかかる。

そんな悠長にしていたのならそれこそ踏み潰されてぺしゃんこになるのがオチだ。

「くそ、こんな巨人――――」

なんとかそれでも活路を見出そうとI−ブレインを回転させる。そのときだった。


















「――――――――木偶の坊タイタンではない、神の眷属ギガンテスだ。」


















「!?」

唐突に降り注ぐ朗々たる声。

錬たちが反射的に顔を上げる。

声の主は、目の前にいた。いや、降り立った。

「誰だ……!」

降り立ったのは錬よりも頭二つ分大きい、つまりは祐一と同じくらいの体躯。

鳶色の目がぎらり、と輝き、その男は静かに告げた。

















「――――お初に目文字仕る。私の名はセロ。守り手の四番にして「留まる破滅」の字を拝している者だ」

















その名乗りは四方を圧した。

静かに、淡々とした声がとんでもない存在感をもって世界へと溶けた。

男――――セロは錬たちを一瞥すると、背後の巨人を示して口を開いた。

「どうだね。我らの”天意の宿り木”は」

まるで子供がおもちゃを作り上げて喜ぶように、セロは言う。

「素晴らしいだろう? 意思持つ物体を”意思の海”への伝達媒介となし、そこへ”天意”を埋め込むことで作ら れる神造兵器だ」

……なにを、言っている……?

思考は冷たく停止。

だがそれは驚きによるものではない。

……こいつは、つまり……

眼前に突如現れ、セロと名乗った一人の男。

その口から語られたこととは、つまり――――

「お前が……っ?」

お前が、シティ・シンガポールを滅ぼしたのか。

斬りつけるかのごとき錬の問いはしかし、途中で言葉にならずに掻き消える。

だがそれでもセロには通じたようだ。

「あぁ、それが気になっているのか」

髪を掻き揚げ、飄々と相槌が打たれる。

そして一息の後。


                                                                       つつましくとどくひ


何を今更、――――そんなこともわからないのか・・・・・・・・・・・・・





怜悧な侮蔑が世界を停止させた。

錬の脳裏を瓦礫と死体がフラッシュバックする。

何一つ動くものの無い町。

飛び散った鮮血。積みあがった瓦礫。

それを為したのは――――

「お前が……っ!」

「ふむ。何を憤っているのか君は」

心底判らない、といった風体でセロが両腕を上げる。

やれやれと首を振って嘆息するその様子が、酷く癇に障った。

「実験動物が幾ら死のうが悲しむ必要などない。違うのかね」

脳髄に穴を空け、数が足りなくなれば掛け合わせ、いらなくなれば廃棄する。



それと何が違うのか・・・・・・・・・”とセロは言った。



「ああいや。だからこそ君らは面白いのだったな。やはり下等な生物ほど命の弄び甲斐があるというものか」

「お前……!」

思考が沸騰する。

激昂に任せて白刃へと手をかけた。

それを見てセロはほぅ、と感嘆の息をついた。

「はは、流石は半世紀以上も脳が退化している連中だ。自ら私の役目を果たさせに来てくれるとは有難い有難い」

セロは拍手までもを打つ。

「そうだな。ただ殺されるだけでは君らも不満だろう。きっちりかっちり足掻いて足掻いて血反吐を吐き、その顔 を絶望と苦悩と辛酸と恐怖に彩ってから華々しくモノに還るがいいさ」

一息












しるしはもどらず


「楽しませろ。――――それだけが君らの存在意義だ」












                                                         しめしはとどかず




「――――っ!」

瞬間、背筋に氷柱を差し込まれたような寒気が走った。

どこから取り出したのか、セロの手に握られるのは真紅の”槍”





「――――出番だ、『神の子殺し』ミストルテイン





ぶぅん、と一振り、肩に担ぐように構える。

半ば反射的に、錬も『月光』を逆手に持ち替えた。

背後でサクラ、ディー、セラも戦闘体勢に入る。

今わかっていることは、この、目の前のセロという男が”巨人”を作り出した犯人であり、同時にシティ・シンガ ポール崩壊に関与しているということ。

……偶然じゃ、ありえない……!

心の奥底で歯噛みする。

シティ・シンガポールへと調査に来たら偶然ディーたちに出会い、偶然『黄金夜更』の残党と遭遇し、偶然”巨 人”が作り上げられ、そして今、その黒幕が姿を見せている。

明らかに異常。明らかに異質。
                      わたしはうたう
「お前は、何者だ……!」

焦燥と逡巡、畏怖と混乱を押し殺すように叫びを上げる。

セロはその問いに少しだけ思案する素振りを見せ、

「そうだな。あえて一言で言うとなれば――――――――」

空を仰ぎ、













わたしはいとう












「――――――――『Id』、だ」




























錬たちが未だ知る由も無い、五つの守護者を纏う全能機関。

その名を、確かに告げた。












わたしは――――――
















 ざ・楽屋裏

〜夢想空想大暴走中〜

いま頭の中でやりたい&書きたい、と考えているコト。


・学園暴走編「お前のその手が真っ赤に燃える」
・学園暴走編「どっかその辺で哀を叫ぶ」
・学園暴走編「いま、刺しにいきます」
・学園暴走編「WB学園大運動大会 〜ドキッ! ド馬鹿だらけの狂乱祭り編〜」
・学園暴走編「世紀末救世主伝説・北斗の錬」
・学園暴走編「たまにはこんな一日を」
・学園暴走編「中華料理を食べに行こう 〜屋台編〜」
・学園暴走編「愛なんていらねえよ 夏」
・学園暴走編「リアルかくれんぼ」
・学園暴走編「ざ・合唱祭」
・脳内妄想企画「双方向無差別対戦」
・無差別対戦「リ・ファンメイVS黒沢祐一」
・無差別対戦「天樹錬VSイリュージョンNo,17」
・無差別対戦「エドワード・ザインVSクレアヴォイアンスNo,7」
・無差別対戦「カイ・ソウゲンVSフェイ・ルーティ」
・無差別対戦「マリア・E・クラインVSセレスティ・E・クライン」
・無差別対戦「七瀬雪(紅蓮)VS黒沢祐一(森羅)」
・無差別対戦「デュアルNo,33VSレイ・シャオロン」
・無差別対戦「ベルセルク・MC・ウィズダムVSリューンエイジ・FD・スペキュレイティヴ」
・無差別対戦「天樹錬VSサクラ」
・無差別対戦「ヴァーミリオン・CD・ヘイズVSデュアルNo,33」
・無差別対戦「ベルセルク・MC・ウィズダムVS黄金夜更」
・「deus ex machina」外伝「リューネの受難 〜朝食戦争〜」
・「deus ex machina」外伝「女三人ゲーセン荒らし」
・「deus ex machina」外伝「天なる意思を宿す者」
etc...





……おおぅ、果たしてこれ全部書くとしたら二年くらいかかりそーだなぁ。



あ と か ぎ (さりげに一文字違う)

「うぉー、ちょいと普段よりも長くなったなぁ」

セラ 「そうですか? そんな感じはしませんけど……?」

ディー 「まぁ、僕らも出てきたし、少しは長くなるんじゃないかな?」

「んー、今回は三巻組かね。……平和にはなりそうだけどツッコミがいない気がするな」

祐一 「必要か」

「ぶぶぶ物理的なツッコミは禁止ー!」

クレア 「はいはい馬鹿なことやってないでちゃんと解説するわよ」

ディー 「……姉さんが一番まともなこと言ってる」

「うぃー、そんじゃぁ始めますかねぃ」

セラ 「この章でやっと私たちが出てきました」

ディー 「サクラさんはそういえば初登場ですね」

祐一 「となると、後出番がまだ無いキャラは、イリュージョンくらいのものか?」

「そだな。ルーティとかシャオとかカイとか故人系はまだだし」

ディー 「……”まだ”?」

「ぬ、忘れろ。――――さて、それでついに『Id』が動き出したわけだが」

クレア 「あたしのところに来たのは第三位でこっちには第四位が来てるわね。……というかあたしはどうなったのよ」

「それはもう少し先で判明するよ。その前に今はこの窮地をどう切り抜けるか、だ」

祐一 「巨人に加え、謎の組織の”第四位”か」

セラ 「やっぱり、四番目に強いんでしょうか?」

ディー 「シティを易々と滅ぼせる組織の四番手、ですか……。正直、恐ろしいですね」

「『Id』が守護者は第四位、「留まる破滅」セロ。さて、こいつは一体どういう能力者だろうな?」

クレア 「あたしのトコに来たのはザラットラ、だったっけ?」

「そ。第三位、「灼爛炎帝」ザラットラ。こいつは二つ名から想像つくかい?」

ディー 「炎帝、ってことは……炎使いですか? でも「留まる破滅」からは想像できないんですが」

祐一 「武器が”槍”だったな。あれは騎士剣代わりなのか、それとも特殊な武器なのか……」

セラ 「謎ですー……」

クレア 「それも謎なんだけど、最初の方もあたし気になってるのよね」

「ん、サクラと錬のバトル辺りからかい?」

セラ 「あー……、サクラさん激しく勘違いしてましたね……」

ディー 「本気でやったらどっちが強いんですか? 今回は途中で休戦してますけど」

祐一 「そうだな……。総合的に見るとやはりサクラの勝ち、といったところか」

「そだねぃ。能力値は同じくらいだが、経験が違う。それに何よりサクラは躊躇しないからなぁ」

クレア 「ふーん。それと変な組織も出てるわね」

「あー、『黄金夜更』ね。多分読んだ人いきなり過ぎてびっくりしたんじゃないか?」

セラ 「前作の敵、でしたっけ?」

「おーよ。今回じゃ間抜けなやられキャラよ」

ディー 「……いや、何か巨人化してますけど?」

「気にしない気にしない。さーて、次章はその巨人との大バトルが始まるぞー」

祐一 「始まり、というわけだな。戦争の」

「ご名答。敵の名は明かされ、世界は戦火に覆われてゆく」

セラ 「第四章『惑わす灯篭』。お楽しみに、です」

「……ってか何も騒動ナシのあとがきってこれが始めてじゃねーかー?」




















本文完成:1月20日 HTML化完成:1月21日


written by レクイエム



                                            








                                                                               ”Life goes on”それでも生きなければ...