第四章

「惑わす灯篭」



























――――寄る辺など最早無い――――



























「……『Id』、だって……?」

「左様」

呆然とした呟きにセロが首肯する。





――――『Id』イド



ときのないところにいるあなたへ


それは心理学的な用語で「欲望の源泉」という意味を持つ心の構成要素の一つだ。

『自我』エゴ『超自我』スーパーエゴと共に精神を構成する無形の最終単位。

……リューネが、ぽつりと漏らしてたような……?

「そう、『Id』だ。君らとは文字通り世界の違う天蓋上の住まい人」

セロの口上に合わせて”天意の宿り木”ギガンテス・オリジンが低くうなりを漏らした。

行動の前兆だ。

……まずい。

シティ・神戸の時や『地神』ヴェヘモットの時とは勝手が違う。

ただ鈍重に突っ立って暴れていたあれらとは違い、この”天意の宿り木”は自由自在に移動する。

ディー・セラ・サクラという世界最高ランクの魔法士が揃っていても真っ向から立ち向かうことなど愚の骨頂。

そしてさらには、

「どうした。今更これから何が起きるのか判らない、ということもないだろうに」

目の前の、この男の存在もある。




――――『Id』が守護者が第四位、「留まる破滅」セロ。




騎士剣ではなく”槍”を構えるその能力は全くの不明。

ただ、全力でかからなければ瞬時のうちに殺されてしまうということのみが、今この場所でわかっている確かな事 実であった。

「構えろ。デュアル、セレスティ。……でなければ、やられるぞ」

それを敏感に感じ取ったのか、サクラが緊張を含んだ声で言った。

「そうだ、それでいい。なに、私のこの身とて”天意”の欠片。退屈はさせぬと誓おう」

白銀真紅の槍を担ぐセロ。

一見やる気無さそうに見えるが、その実隙はおろか殺気の乱れすらない。

これがこの男の戦闘スタイル。祐一も使用した「無形の位」の亜種か。





「それでは始めようか。真意を得たくば、その剣を以って問いただしたまえ――――!」



ときつむぐところからおくります

風切。

旋風。

石火。

神の子殺しミストルテインは白銀の柄と真紅の刃を煌かせ、背後の”天意の宿り木”を伴って弾けるように突進する。

そして迎え撃つように飛び出したのは双剣の担い手。

運動加速度は60倍。世界最強騎士にも比肩する速度を以って二つの銀光が奔り、

「!」

ディーの驚愕と共に呆気なく弾き返された。

ありえない事実に息が止まる。

ディーの加速度は紛れもなく世界最速。

最強騎士・黒沢祐一と同等の力を以って放たれた一撃を受け止める、受け流すならまだしも、弾き返す、だと!?







「なかなかだが、――――まだ遅いな・・・・・







セロの姿が朧に霞む。

その加速度――――七十五倍!?

そんな加速、体が持つわけが無い。

反論の意はしかし現実の前に打ちのめされる。

ディーの騎士剣を弾き返し、援護にとサクラの放った氷槍までもを軽々と薙ぎ払い、セロは哂う。

「はは、なかなかどうしてやるではないか! イグジストの言うような腑抜けには思えんよ!」

「くぅ……っ」

負けるものか、とディーの剣戟が鋭さを増した。

斬り、払い、薙ぎ、裂き、打ち、突き――――

「まだまだ精度が甘い。――――60点だ」

奔る真紅。

今の今まで薙ぎ払いと弧ばかりを描いていたセロの攻撃が、ここにきて点へと変わった。

「そら、上手く受けてみろ!」

響く銀音。

鋼の交響が死に絶えた町への手向けの如く広がってゆく。

ディーが槍衾を捌ききれずに後ろへ跳んだ。

追撃するセロ。

そこへ、







「『魔弾の射手』!!」

「『炎神・百鬼』!!」







奔れ凶弾。纏いて穿て。

唸れ爆炎。集いて叫べ。

秒速一万mにも達する魔弾が荒れ狂う炎を引き連れて殺到した。

躱す術無し。回避敵わぬまま撃ち抜かれて散るのが道理。

だがしかし、回避できぬのならば、迎え撃つのもまた道理。


                                                          ときのきろくのさいごのひともじ
「気配りが足りないな……!」



神速で槍が旋回する。

すると穂先が鈍く光を発し、――――攻撃が円形に消滅した。

「なんだと!?」

これは、

「情報解体!?」

「あ、た、りだ!」

閃く三弾。咄嗟に体を捻るが躱しきれずに肩と左脇腹を浅く裂かれた。

I−ブレインに痛覚遮断の命令を叩き込んで距離をとる。

槍が、こんなに戦いにくいなんて……!

剣を相手にするとは全然勝手が違う。

何よりも主な攻撃の軌道が線ではなく点なのだ。

穂先という一点に体重と加速が威力として乗っている。

斬撃のように広範囲をカバーするわけではないが、その実威力は群を抜く。

加えて長柄というリーチ。

手首の返しと体の捻りによってさらに間合いは計りにくくなっている。

そしてとどめとばかりに、これに加えて石突での打撃、遠心力による薙ぎ払いなどが存在するのだ。

幾ら戦闘経験が豊富であろうと、初見の武具に対してはどうしても及ばない。

その担い手が達人級ならば尚更だ。

この道理は情報制御が発達した今とて変わらない。

武術とは即ち制し倒し君臨する技。

人体がもつ”反射”や”性質”を逆手に取ることによる絶技。

故に廃れることなく武術とは悠久の古より受け継がれてきたのだ。

判っていても食らってしまう。

理解していても避けることができない。

それが武術。それが戦い。

世界の解へと手を伸ばし、機械仕掛けの神すら存在するこの世界において、戦いは未だ技量に左右される。

「つぅ……っ」

奔る流星四十三。

セロの槍衾は今や瀑布。

ディーを以ってしても捌ききれない。

錬の『月光』、サクラのナイフでの加勢など焼け石に水。

セラに至っては同士討ちを恐れて加勢することすらできないでいる。

「未熟未熟未熟。まだまだ甘いな少年たち……!」

さらに速度が上がった。

だが望むところだ・・・・・・

錬はI−ブレインのギアをトップに叩き込み、右目を貫く軌道にあった『神の子殺し』をかろうじて逸らした。

返す刀で脳内ファイルを呼び起こす。


やがては、わたしもきえなければならない
(「ファインマン」 展開準備完了)



I−ブレインを奔る戦闘理論情報制御。

トップスピードになるのを待っていた。

槍の弱点は引き戻し。

点での攻撃を続ける限り、剣とは違い必ず”引き”が存在する。

それは円運動をなぞらぬものの弱点だ。

力を横へと変換しにくい武器なればこそ、”引き”を弾けば隙が生じる。

突きを弾いたのでは引き戻す時に修正される。

なればこそ、苦戦はこの一瞬のために。

錬は『月光』にて『神の子殺し』を受け流し、その刹那、控えておいたファイルを展開した。



(「砕覇・零朧」 発動)



指は大気を鳴らし、振動は論理回路を形作る。

場所はセロの右脇後ろ30cm。

石突が丁度通過するであろう部分の空気を残らずこそぎ取る!

「む、う!?」

引き込む槍の軌道が急激に弾かれる。

バランスが崩れれば長柄の獲物は恐ろしくないのだ。

「これはこれは……」

「もらった……!」

感心したように目を広げるセロに対し、ディーと錬は一気に間合いを詰め、








「――――浅慮」








瞬間。目の前を巨大な壁が踊ったかと思いきや、錬とディーの体は遥か後方へと吹き飛ばされていた。

「が、――――っ!?」

痛みも、理解も、衝撃さえもが現実の速度に追いついていない。

世界が回る。視界が回る。思考が回る。

「ディーくん!!」

セラの声。

D3が背後に回って重力制御を起動、それでようやく錬とディーの体は停止した。

「くぁ……」

息ができない。

まるで背骨を海月みたいに抜かれたよう。

体は衝撃で別の生き物になったみたいに不思議な感覚を返してくる。

「……っか!」

強引に背骨を伸ばす。

涙が出るほど痛かったがそれを無視して意識の覚醒を促した。

気道が確保され、錬は喘ぐように酸素を貪った。

視界は火花が散ったように極彩。それでも歯を食いしばって地を踏みしめる。
                                    そのまえに たったひとつのおくりものを
「はは、また随分と飛んだものだ。男にしては小柄すぎやしないかね」

嘲笑うように両手を広げるセロ。

その横には、”天意の宿り木”の”足”が踏みしめられていた。

……蹴り、飛ばされたのか……っ。

親指だけで10mを超過する巨体からすれば”指を動かす”程度の行為。

だが巨体であるということはそれだけで武器となる。

今の一撃だけで肋骨が二本もイカれた。

紅色の霧を吐き出し、しかし錬とディーは己が獲物を構え直す。

「ほう」

驚いたようなセロの声。

「善哉善哉。それでこそだ。やはり、砕けず歪まぬ純なる心を穿つことこそが興というものよ」

『神の子殺し』が再び担ぐように構え直される。

不動・無形の位。

泰然自若を体現するその構えを以ってセロは潰しの一歩を踏み出す。

錬たちとの彼我距離は20m。肉薄するには互いに二歩を必要とする間合い。

セロが腰を落とし、ディーが地を踏みしめたその瞬間。



「――――今です!」



セラの声と共に無数の閃光が瞬いた。

「む!?」

セロの周囲半径20mを囲む正八面結晶体。『光使い』の武具たるD3。

それは今や淡く明滅を繰り返し、己が威力を誇示していた。

「幾ら速かろうと、荷電粒子砲より速くは動けまい!」

「ち……!」

舌打ちし、地を蹴ろうとするセロに答えるは『天の投網』

鋼の破片が紫電纏いて檻と為す。

『天の投網』で囲み、『フレースヴェルグ』で討つこの陣形はしかし、実のところ役割は逆であった。

ディーと約束したこと。

セラの脳裏に過ぎる映像。










――――”仕方がないなんて、絶対に言わないです”――――











汚すわけにはいかない。

破るわけにはいかない。

少年少女の、幼く青い故に尊い誓いを、どこの誰が陥れられようか。

たとえどんな苦界に直面したとしても。

この誓いだけは必ず胸に焼き付いているはずだ。

どれだけ甘いと言われようが、この夢は守り続けよう。

荷電粒子砲が火蓋を切った。

生まれるのは十連の白光。ちりにかえるわたしから

しかしそれはノズルフラッシュの如く眩い光を発するだけに留まった。

「ぬ、――――!」

閃光。

網膜が焼けるほどの光輝が場を満たす。

セラの持つD3全てを使用してのそれは、光を乱反射させただけの目くらまし。

だが強烈過ぎる光芒は網膜を焼き、セロの視界を黒く染めた。

「ハ、なんたる大判振る舞い! ――――だが甘いぞ!」

セロが手を挙げると同時に”天意の宿り木”が足を上げる。

いかに『天の投網』だとてあの質量を貫き通せる道理などは無い。

紫電纏ったナイフが捻じれ狂いて速度を宿す。

それは今まさに地を踏みしめようとしている”天意の宿り木”の足によって阻まれるだろう。





――――だが、サクラが狙ったのはセロそのものではなかった。





「……地面を!?」

まだ少し視力は残っているのか、着弾した場所を感じてセロが疑問を上げる。

サクラのナイフは円を描くようにセロの前の地面へ着弾。

そこへ、

「おまけだよ……っ!!」



(『氷槍・十波』、『炎神・百鬼』 発動)



間髪いれず叩き込む極熱極寒の双波動。

着弾時にぶつかったそれらは圧倒的な勢いで膨張し、水蒸気爆発を引き起こした。

「これは……!」

サクラのナイフで皹を入れられた大地が大きく抉られる。

そしてそこは丁度”天意の宿り木”の足が踏みしめられる場所。

あれほどの巨体にとってこの5mにも満たぬ穴など小石程にも感じまいが、人間サイズであるセロにとってはそう はいかない。

「……成程な!」

吹き上がろうとした水蒸気爆発の勢いが”天意の宿り木”の足に踏み潰され、周囲に爆裂をもたらした。

セロにとっては眼前よりの奇襲。

『自己領域』の展開もこのタイミングでは間に合わない。

視界の大半を封じられているセロのその状態では躱す術無し。






――――だが、「留まる破滅」の異名はそれを容易く凌駕する。






「及第点といったところだな!!」

声と共に『神の子殺し』ミストルテインが旋回する。

「!」

穂先が光る。

これは、――――先ほどの情報解体!?







無垢なる原罪ミストルテイン……!」







穂先が円を描く。

石突と先端を直径としたそれは光を放ったまま残滓の膜を残し、

「!!」

跡形もなく『ベイパーブラスト』の爆裂を消し飛ばした。

それは『自己領域』はおろか、情報解体を起動する暇すら無かったはずの刹那。

「なんだと……!?」

「そう驚くことでもない。私の『神の子殺し』の能力の一つは”絶対穿孔”というものでな。端的に言えば常に 情報解体が発動しているのさ・・・・・・・・・・・・・・・

セロの力ではなく、武具に秘められた能力。

認証された使用者以外のあらゆるものを解体する魔の加護持つ武具。

それが神話において唯一振り。神からの制約を受けなかった宿り木の槍、『無垢なる原罪』ミストルテイン

「気を抜いている暇は無いぞ」

言葉と共に動く泰山、”天意の宿り木”ギガンテス・オリジン

「いかん!」

奇襲を防がれた今、錬たちは援護しあえる位置にいない。

結束を断たれた羽虫に向かい、”天意の宿り木”は悠々とその拳を振り上げ、











「さぁ、――――逃げ惑え」











数万トンにも達する質量と体積を誇る巌を無造作に振り落とした。


うまれいずるあなたへ



















       *

























――――同時刻。


シティ・モスクワの軍部にある一室で、天樹月夜とイリュージョンNo,17は向かい合っていた。

「…………」

「…………」

互いに無言。

重い沈黙が威圧をもって空気を沈ませているようだ。

お茶を飲んでいるのはただのポーズで、実際には腹の探りあいでもしていそうな雰囲気。

かたん、と音を立てて月夜がチャイナグラスを置いた。

中に入っていた草色の飲み物は既に空。

嚥下していった暖かい感覚を思い出しながら月夜は言った。




「暇」




「やかぁしい」

イルが半目で返す。

それを一瞥もせず、月夜はぐでーっとテーブルに突っ伏した。

ティーカップを抱え込むように頬をつけ、溜息をつく。

その様はさながら有閑マダム・できそこない。

「何回も言ってる気がするんやが、アンタ一応捕虜なんやで……?」

対するこちらは、いうなれば冴えない上司・中間管理職。

「あーあ。こんな妙齢の美人捕まえといてこんな部屋に閉じ込めっぱなしでやってくるのはこんな老けた子ばっか でこんな退屈な時間ってないわよー」

「こんなこんなやかましいわ。ってかホント歯に衣着せんやっちゃなお前」

「真昼も祐一も何やってんだか。ねぇ白髪少年、『賢人会議』の動きとか掴んでないわけ?」

「……おまけに聞いとらへんし」

こめかみを押さえて溜息をつくイル。

しかしその目は穏やかに細められていた。

……なんつーか、あれやなぁ。

脳裏に過ぎるのは、もう二度と帰ってこない懐かしい日々。

ほんの数日でありながらも、そのときまでの冷たい”自分”を完膚なきまでに打ち壊してくれたあの少女の記憶。

人の話を聞いているようで全く聞いておらず、しかしそれでいてこちらを答えに窮させるというあたたかい理不 尽。

……今思い返せば、アンタも結構無茶苦茶なこと言っとったもんやなぁ。イリーナ。

「……? なに一人で笑ってんの?」さびしいきおくと

なんか通信でもはいったー? と空のティーカップを弄びながら月夜が聞いてくる。

「…………」

訂正。

イリーナとコレを同一視すると思い出にまで余計な影響を受けそうだ。

あくまでも似ているのは雰囲気のみ、と。おーけーや。

「アンタが今何考えてんのかわかんないけど、何かすこーしむかつくわよ?」

……この女ひょっとして頭ン中に自前のI−ブレインでも入っとるんやないか。

恐ろしいまでの勘の良さ。

身体能力もI−ブレインの特異性も、世界最強ランクの自負があるイルだが、改めてこういう手合いへの警戒を強 めた。

「で、どーなのよ」

「ん?」

「だから『賢人会議』の動向」

ぐでー、とさらに月夜の体がテーブルに平べったく広がる。

敵地のド真ん中。それも最大の敵であるはずのいイルの前でよくもまぁこうリラックスできるものだ。

半ば苦笑を交えながらイルは答える。

「それがまだこっちもつかめとらへんのよ」

再戦を誓ったあの少女と、双剣担う弟によってシティ・モスクワ特務軍は散々にかき回された。

その渦中に天樹真昼という化け物じみた電子戦のエキスパートにジャミングを食らったのだ。

軍の情報網はほぼ壊滅的に妨害され、『賢人会議』の潜伏先はおろか、大まかな見込みすらつけられていない状況 であった。

しかし、

「けどまぁ、シティ・マサチューセッツの『千里眼』クレアヴォイアンス。クレアのヤツの方に捜索要請がいくやろから、見つかんの は時間の問題やな」

サクラと真昼だけならば逃げ切れる可能性もあっただろうが、ディーとセラがいるのではどうしようもない。

シティ・マサチューセッツを脱走した彼らのデータは完全に『千里眼』、自分の姉たるクレアヴォイアンスNo, 7に把握されている。

と、そこまで考えたときにふと疑問に思った。

……なんですぐに頼まんのや?

『賢人会議』をロストしてからおよそ一ヶ月半が経過している。

体勢を立て直していたという言葉では最早言い訳が聞かないほどの期間だ。

それだけの時間が経過しているというのに、未だ同盟を結んでいるシティ・マサチューセッツへと依頼を行ってい ない……?

面子などを気にしている場合ではないはずだ。

『賢人会議』は全世界へ向けて宣戦布告を行った。

最早シティ・モスクワだけの問題ではなくなっているのだ。

……上層部の動きが、遅すぎやへんか?

かく思うイルも、今の今までそんなことなど思いもしなかった。

いや、逆か。

そんな当然のことはなされていて当たり前を思っていたのだ。

結果のみが知らされていない。

……どういうことや?

一般とは乖離した情報統制を行っている軍部は、時として一般のゴシップには疎い。

なまじ機密を抱え、緘口令を敷いているからこそ軍には”人伝え”というものがないのだ。

それはどういう事態をもたらしているか。








シティ・モスクワは、未だシティ・シンガポールの崩壊の事実を知らないのだ。






かなしいおもいを

海賊放送にこそなっていないが、一般の方に流布しているこの噂。

それを知る者は、イルを含めてシティ・モスクワ軍の中には誰一人としていないのだ。

どころか、今の状況は『賢人会議』を警戒しているためあらゆる兵士が全て一般階層へと立ち入っていない。

これでは情報の仕入れ用が無いのだ。

諜報に重きを置かなければならないこの状況において、あるまじき上層部の判断。

それはまるで兵士たちを軍部・・・・・・・にとどめておくことで・・・・・・・・・・一網打尽にしようとしているような・・・・・・・・・・・・・・・・――――





(大規模情報制御を感知)




「!」

「な、なによ?」

突如脳裏を走るI−ブレインのメッセージに、イルは弾かれたように顔を上げた。

……近い。

情報の海を通じて伝わってくる情報制御は酷く近い空間から感じられた。

だが、ここはシティの奥も奥。最上級の防御を誇る軍部の中だ。

このような異質な情報制御など完全にシャットダウンされるはずなのだが。

「…………」

油断なく回りを見渡すイル。

その目線が、壁にて止まった。

壁の一部。そこの部分が盛り上がって見え――――、!?



(大規模情報制御を感知)



全ては刹那。

一瞬のうちに膨れ上がった壁から”獣”が生まれ出でた。

銀色に身を鎧った無機物の獣。

これは、

「ゴーストハック!?」

叫びは月夜のものだ。

椅子を蹴倒し、瞬時に部屋の中央へと移動している。

同時に、獣が月夜に向かって飛び掛った。

「ち……っ!」

意識よりも先に体が反射を選択。

バネ仕掛けのようにイルの足が跳ね上がり、その体躯を叩き落とした。

獣の動きはそれだけでは終わらない。

叩きつけられた動きそのままに重心を沈め、その反動で再び襲い掛かってくる。

猛る獣性。人なる身では理解できぬ動きをもって爪牙が走る。

だが知るがいい人ならざる意思よ。

魔を討つ技は人にこそある。

毒を以って毒を制すならば、外法を以ってその存在を叩き落そう――――!



「おぉ……らッ!!」



振り回される死神の鎌。

閃光の如く奔ったハイキックが獣の頭部に叩き込まれ、その部分が”消し飛んだ”

否、消し飛んだのではなく存在構成そのものを抉り取られて霧散したのだ。

これが幻影たるイリュージョンNo,17の能力。





(――――『シュレディンガーの猫は箱の中』)




はなたばをそえて

I−ブレインの回転が跳ね上がる。

返す刀で獣の四肢の間接を消し飛ばし、気合と共に突き出された掌底が獣の喉下に叩き込まれてその体躯を吹き飛 ばした。

無機物の獣が砕け散る。

それを確認して手を下ろそうとしたイルだが、振り向いた瞬間、目に入った光景に驚愕した。

……なに!?

背後の壁。

その周囲の築材を食らって生まれているモノは、――――同じ獣・・・

五匹の獣が産声をあげ、月夜に向かって襲い掛かる。

「!」

……間に合うか!?

咄嗟に地を蹴るイルだが、先ほどのコンマの遅れが致命傷だった。

始めに生まれ出でた二匹の獣が爪牙を振り上げ、



「こ、の……なめんじゃないわよ!!」



激突音。

咄嗟に月夜がとった行動は回避でも防御でもなかった。

醜悪なまでに開かれた口。

今まさに自分に噛みつかんとばかりに光る牙を、――――蹴り飛ばしたのだ。

速度差に負け、弾かれる月夜。

彼女は壁に叩きつけられる前に反転し、受身を取る。

「……ヒュウ」

イルの口より思わず漏れる賞賛。

……成程。あの兄ちゃんの方が頭脳労働でこっちが肉体労働ってやつか。

つくづく異常な双子だ。

今この姉までもが『賢人会議』にいたと考えるだけで少々恐ろしい。

追い討ちをかける獣に疾駆し、死神の魔手を叩き込む。

「ギ、――――!」

崩れ去る獣。

ゴーストハックによって生まれ出でた存在は、そのまま原子の結合が崩壊して粒子に還るハズ――――

「なに!?」

驚愕の声がハモる。

地に還ろうとした獣の体躯が、再び再構成される。

沈む四肢より周りの構造体を吸収し、再び実態を取り戻す。

「なによコレ!? ゴーストハックじゃないの!?」

「まさか近くにいやがんのか……!?」

このような現象、周りに情報制御を行っている魔法士がいなければありえない。

「とにかく出るぞ! このままやとやばい!」

いずれにせよ、このような密閉空間では四方を囲まれているのと同義だ。

扉を蹴り破り、廊下へと躍り出る。






――――無数の獣に埋め尽くされている廊下に。






「な、ん――――ッ!?」

さしものイルも言葉を失った。

壁。天井。床。あらゆる構造体から湧き上がる無数の獣。

「ちょ、情報強化されてるんじゃないの!?」

「しとらんわけないやろ!」

怒鳴り返す。

ここより地上まで出るにはこの廊下を突っ切る必要がある。

イルは月夜を守りながらそれができるか、と戦術をたてようとし、



「イル! こちらだ!」



深く響く声がそれを遮った。

「!」

廊下の端。おくります

情報解体を以って壁を突き崩して現れたのは、自分に忠告をくれたあの老魔法士。

騎士たる彼は薄い青色の騎士剣を振り回し、次々に獣を屠ってゆく。

そこに特筆すべき能力は存在しない。

身体能力加速度は50倍。一流といえるものだがそれだけだ。

しかし老騎士の一撃は流水のように澱みなく、針を通すような精密さで敵を殲滅してゆく。

何も特殊な力を持たぬ、大戦前に誕生した魔法士。

だがそれ故にその技術は洗練の言葉を体現する。

培った経験こそが最大の武器。

「こちらから抜けれる、来い!」

斬り伏せるのではなくバットを振るように獣らを弾き飛ばし、老騎士が叫ぶ。

「恩に着ます! 行くで!」

「あぁもう足が太くなる……!」

はだかる獣をイルの打撃が吹き飛ばし、月夜が飛び越え、二人は老魔法士の場所まで到達した。

「こちらだ、行くぞ」

指し示されたのは情報解体によって作られた即席のダストシュート。

……おぉ。

これが機転か。

改めて感服する。

だがそれより今は、

「一体どないなっとんです?」

「不明だ。いきなりゴーストハックによって作られた獣らが軍内部に大量出現した。今現在他の魔法士達が掃討に 当たっている」

と、そこで男は言葉を切り、

「強さ自体はたいしたことはない。Bクラスの魔法士でも倒せるほどだ」

だがしかし、

「再生、するんですね」

「ああ。全く原理がわからんのだ。倒しても倒しても再び再生する。どころか――――」

一息。






「倒すたびに徐々に姿形を大きく成長させているようなのだ」






「……なによそれ」

わけがわかんない、と月夜が呻く。

「不明だ。ともかく下の魔法士部隊と合流しよう」

「了解です」

老魔法士とイルで月夜を挟むようにして地上へと下りる。

降りる場所はフライヤーの発着所。

そしてすぐに仲間と共に獣の掃討に加わるはずだった。
                                                     それは
しかし、地上に降りて見たものは、無数の獣などではなく、最早人間と同サイズの大きさを体現した怪物の群れ だった。

「なんだと……!?」

反射的に男が抜刀する。

周りで響く剣戟と爆音は魔法士たちが応戦しているのだろう。

「、――――――――ッ!」

可聴外の獣声。

三匹の人獣がイルと老騎士に飛び掛る。

「んの、なめんなや!!」

「む……、ん!」

迎撃は二発。

イルの回し蹴りが獣を叩き落し、男の騎士剣がその首を切り飛ばす。

ぐずり、という形容しがたい擬音と共に獣の体躯が溶けかけ、そして三匹が寄り集まった。

「またか!?」

再構成されたのは先ほどの三匹が融合した怪物。

既に大きさは3mを超えている。

倒されたのならばそれ以上の存在を望むように、次々に周りでも巨人が生まれてゆく。

どないなっとんやこれは……!

心の中で悪態をつくイルだが悪夢はこれだけでは終わらない。

甲高いノイズと共に通信が入る。



『全兵に通達! シティ一般階層にも無数の敵影を確認! 至急市民の救出に当たれ!』



「なんだと……!?」

この場において巨人と交戦している全兵士・魔法士が怒号を上げた。

そうだ。この襲撃が軍部だけだと何故考える。



『全武装の使用を許可する。シティ全域に第一級警戒宣言を発令――――!』



最早通信すら絶叫。

それを嘲笑うが如く、無数の巨人が咆哮した。

「やかましいわ、ボケ――――!!」

ふざけるな。

純粋な怒りがイルの胸を埋め尽くす。

同時に地を蹴り、その姿が現実より掻き消える。

存在確率情報制御、『シュレディンガーの猫は箱の中』。

巨人の豪腕をすり抜けたイルが肩上で実体化。

既にその腕は振りかぶられている。

放たれるのは全てを刈り取る崩壊の鎌。







――――”牙!”―――







がぉん、と形容し難い音と共に巨人の頭が消し飛んだ。

情報強度が高い人間には使えない”存在消去”も、ゴーストハックされたこの巨人には通用する。

だがその崩壊も一瞬のみ。

崩れ去ろうとした巨人はその体躯を揺らがすと、周りの巨人と溶け合い、新たな巨体を形成した。

その体長、3m。

「キリがないじゃないの!」

月夜の叫び。

それを聞きながら着地したイルは猛禽のように目を光らせ、その体躯を深く沈めた。






――――瞬間、空気が凍った。いんをまといてようをおび






圧倒的な闘気が幻影の少年より吹き上がった。

ゆらり、と翳された拳が独特の構えを形作る。

「……!」

思わず月夜は息を呑んだ。

空気が、世界が軋んでいるようだ。

イルが厳かに呟く。

「――――消えろ」

剥目せよ魂無き人形。

これこそが六道を貫く矛。

イルの体が引き絞られ、一瞬の呼気を持って神速を放つ。

「おぉ…………!」

跳躍し、空へと駆け上がる影。

引き絞られた躰が弓を体現する。

――――否。それは弓などではなく、紛れもない「攻城兵器」であった。





薄雲うすぐも――――――――」





弦が引かれる。

その威容は正に「弩弓」

限界まで溜められた貫きの力を今解放する――――――――!












「――――――――清風さやかぜ!!」












拳戟と蹴撃の嵐が顕現した。

そのどれもが深く巨人の体を抉りぬいてゆく。

存在そのものを根こそぎ吹き飛ばしてゆく台風。

そして一過。

イルの前に立っていた巨人は、その姿を完全に消していた。

「……くそったれが」

苦々しげにイルが吐き捨てる。

そして次の敵を叩き潰しに向かおうとし、







「ほう。そこそこに骨のある者もいるらしいな」






ごうじゅうやどし
その声に、動きを止められた。

「!?」

この場にいる全員が振り向いた。

異様なまでの存在感をもった声。

その声の主はどこから現れ出でたのか、一体の巨人の肩の上に仁王立ちしていた。

黒い長髪を髷のように縛った風体の青年。

「何者や!」

イルの誰何に対し、その男は静かに答えた。



















「『Id』が守護者は第五位。「転法蓮華」てんぽうれんげラヴィスだ」
























        *






















「、――――――――!!!!!」

可聴外の咆哮が世界を震わせる。

その咆哮は最早衝撃と化して錬たちの体を打ち据えてゆく。

「く、ぅ……!」

「どうした手数が少ないぞ……!」

『月光』にてセロの放つ連弾を辛うじて逸らす。

断続的に放たれる槍衾は既に流星。

回避はおろか、反応すらおぼつかない。

加えて、

「はは、そら逃げろ少年!」

頭上より落ちる影。

それを確認した瞬間、「アインシュタイン」を以って全力で後方に”落下”する。

刹那遅れて、錬のいた場所に巨人の拳が突き刺さった。

濛々たる土煙。きょじつをぞうす てんのひほう

セロの姿が視界から外れる。と同時に横を駆け抜けてゆく疾風。

「おぉ……!」

土煙を突き破って突貫するは双剣の少年。

騎士剣『陽』の一払いにて視界を包む霍乱を吹き飛ばし、セロの意識を刈りに走る。

だが、それすらも「留まる破滅」は迎撃した。

奔る双剣を迎え撃つ無数の流星。

たちまち鋼のオーケストラが開幕する。

「ディーくん!」

飛び入り演奏は瞬く光芒。

しかし荷電粒子砲はこの土煙の前に拡散して効果をなさない。

歯を食いしばるセラに向かい、無情とばかりに巨人の拳が降り注ぐ。

「いかん、セレスティ!」

寸前、サクラがセラを抱えて跳躍。

『魔弾の射手』を放つ反動で離脱した。

同時にディーも弾かれるように距離をとる。

……くそ。

先ほどからこの繰り返しだ。

”天意の宿り木”の攻撃を躱しつつセロへ接近し、攻撃。

だが巨人の攻撃を避けながらでは簡単に迎撃されてしまう。

故にディーと錬が遊撃として単独攻撃をしかけているのだが、決定打を与える前に再び”天意の宿り木”の妨害を 食らうのだ。

このままではマズイ。

いずれ体力・I−ブレイン、共に限界に達する。

しかし解決策など思いつかない。

こんな能力の即時展開時間すら危うい状況では『終わる世界』など使いようがない。

焦りばかりが身を焦がす。

「く、ぅ……っ!」

『神の子殺し』が錬の防刃チョッキを巻き込んで脇腹横を掠めてゆく。

驚くべきことに、此処に来てセロの槍衾の速度が上がってきたのだ。

最早錬では対処の仕様がない。

故に、

「ディーさん!」

怒号一喝。

地表、自分とセロの足元に『ベイパーブラスト』を叩きつける。

火炎と氷結の融和。そして爆裂。

「……ぬ」

『神の子殺し』の”絶対穿孔”が水蒸気爆発をかき消してゆく。

しかしこれで一手使わせた。



(『幻手げんしゅ一穿ひとうがち』)



返す刀で地面をゴーストハック。

セロを囲むように無数の腕が生え、しかし生えた瞬間に叩き潰された。

「小賢しい真似を!」

旋風纏う白銀真紅の槍。

地に手をつけた錬の体勢からは躱しきることなど敵わぬ一撃が殺到し、寸前にセロの背後に『自己領域』を纏った ディーが現れる。

「!」

さしものセロの顔にも、緊張の文字が走った。

『自己領域』と「身体能力制御」を並列起動したディーの双剣が水蒸気爆発を切り裂いて疾駆する。

「考えたな……!」

『神の子殺し』が迎撃に爆ぜる。

槍のリーチは、それ即ち受け止める場所が多いということである。

遠心力によって旋回したそれは”絶対穿孔”によって真空の断層を作り出しながら加速し、『陽』を受け止めた。

だがもう一つの『森羅』が翻る。

「ちぃ……!」

躱しきれずに肩口を裂かれるセロ。

決め手ではないが、浅くもない傷だ。

錬は『月光』を強く握り締めた。

こんなチャンスは、二度と無い。

……ここで、決める――――!

”天意の宿り木”が頭上で拳を振りかぶる気配。

だが遅い。

このタイミングならば、セロの防御よりも巨人の拳よりも、こちらのナイフが先に斬り果たす!



(肉体負荷を無視 右腕と左足の運動加速を30に再設定)



肉体へのフィードバックを無視して踏み切る足と『月光』を持つ右腕を加速させる。

筋肉や毛細管が断裂してゆく感覚。

その全てを無視して錬は『月光』を握り締めて肉薄する。

瞬間、セロの口が三日月につり上がった。

……!?

その行為が何を意味するか知る間もない。

唯聞こえたのはたった一言。














「――――――――間抜け」














刹那。

今正にナイフがセロの体を刻もうとした六十五瞬の一。

遥か遠距離より飛来した真紅の閃光が、錬の体を貫いた。












そう、すべてはちりに――――――














 ???

 

火の粉を数えて灼熱を思い、火炎を導き業火を言祝げ

――――吾は「灼爛炎帝」ザラットラ


《守護者は三位 「灼爛炎帝」ザラットラ 戦いの口上》





back write(後書き?)

「うぁー……手間取った」

ファンメイ 「HTML化が普段よりも二、三倍時間かかったねー」

ルーティ 「テスト前だからじゃないの?」

シャオ 「勉強しろ」

「血も涙も無いのか君らは」

カイ 「まあまあ、そう言わない。――――しても変わらないんだし」

「てめぇが実は一番残酷かーッ!?」

カイ 「はははは、そんなわけないよ」

「……うぐ。菩薩の如きプレッシャー……っ」

ヘイズ 「諦めろ。この面子にゃ絶対に勝てねぇよ」

「うむ。二巻の面子はある意味最強のチームワークを誇るからなぁ」

ルーティ 「それじゃ、さくさくっと解説しちゃいましょ」

シャオ 「おれたち全員この章に関連してないけどな……」

ファンメイ 「ほらほら、そんなこといいでしょシャオ?」

「の前にこのメンバーだと生存率が四割だワばっ!?」

ファンメイ 「……次それ言ったら消すわよ?」

「さて、この章だが」

カイ 「うんうん、立派になってきたねメイ」

ルーティ 「そうねぇ。……ビデオ持ってないのが悔やまれるわ」

シャオ 「ルーティ。いつまで続ける気……」

「ってか聞け。まぁ確かにこの章はバトルばかりで進展はあんまないんだがね」

ヘイズ 「だが守護者の第五位が出てきたぞ? これで残るは第一位だけか」

シャオ 「第二位と第四位が騎士。第三位は炎使いで第五位は人形使い……?」

ルーティ 「第三位が炎使いかどうかはまだ判らないわよ?」

ファンメイ 「というかー。先ず五人かどうかもわかんないの」

カイ 「それは多分五人だろうね」

ファンメイ 「どして?」

カイ 「作者が五人以上考えるとは思いがたいから」

「…………クリティカルで俺の後ろめたい部分をぶん殴るのはやめてください」

ヘイズ 「となると第一位は『光使い』あたりか?」

シャオ 「それよりなんか永久欠番があるんだって?」

「うぃ。第零位と第終位のことだね。既に登場してるヨ」

ヘイズ 「かたっぽはアイツっぽいんだがね。もう一人がわからんな」

「ああそりゃ当然。現時点で二人とも知ってるのは錬とフィアしかいないから」

ファンメイ 「およ、そなの?」

ルーティ 「へぇ。いかにもそろそろ明かします、って口ぶりね」

「ま、事実そうだし。次章あたりから『Id』の目的などが明らかになってくるぞ」

カイ 「そういうわけで、次章は第五章『心を穿つ』」

シャオ 「現れたのは灼熱の帝。『神の子殺し』と『煉雀獄焔』の前に打つ手はないのか?」

ファンメイ 「ところでわたしたちの出番はー?」

「君とヘイズはもうすぐ。他はまだ先」

ヘイズ 「前も気になったが……”まだ”ってことはお前つまり」

「それは秘密よー!」(脱兎)

シャオ 「あ、逃げた」

ルーティ 「それじゃ、次章をお楽しみにね♪」















本文完成:2月24日 HTML化完成:3月4日


written by レクイエム



                                            








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