第十一章

「振り上げる拳」






























賽は投げられた






























「…………じゃぁ、『Id』っていうのは」

透明な、感情の一切入らぬ声で、錬は問うた。

リューネの話が本当だとすれば、今まで追ってきた『Id』というのは組織というだけでなく・・・・・・・・・・






「――――――『グノーシス』の意思の全てを統合したモノ。それが、『Id』なのよ」






一つの”存在”でもあったのか。

それが黒幕。

かつてウィズダムと戦ったときからずっと、今の今までついてまわった影の正体こそが、『Id』というモノで あったのだ。

「錬たちは、”銀目”と戦ったことがあるでしょ?」

「……銀目?」

そんな奇妙な名前の人と戦った覚えはないのだけれども。

「あ、人じゃないよ。『ワイズ』に上る前に、メルボルンのプラントで戦った、半自律で論理回路を生成するヤツ のこと」

「えーっと、流体金属の?」

「そ。あれは”銀目”って言うのよ」

初めてディーとセラに出会い、共闘することになった戦い。

体表面の分子配列をいじることであらゆる状況に対応した論理回路を作り出す銀の不定形物を思い返す。

「あれがどうかした?」

「……今日は意外に鈍いね、錬」

「え?」

どういうことだろうか。

『Id』とこの「銀目」とやらに一体何の関係が―――

「―――あ」

そこでやっと気がついた。

銀目はゴーストハックによって体表面の分子配列を変換していた。

ということは、

「……そうか。ゴーストハックである以上”思考し続けなきゃいけないんだ”

演算機関など、他律ながらも思考演算ができるものをハックするならともかく、金属そのものは思考なんてできな い。

故に、あの「銀目」が論理回路を形成するには、”誰か”が思考演算をしていなくてはならない。

だが遠隔操作をしていたわけでもないし、付近に魔法士がいるわけでもなかった。

……それが意味するところは、たった一つ。



「あれにも……『Id』の意識の末端が入ってた、ってこと……?」



リューネはおろか、ウィズダムの存在さえ知らなかったあのときに、既に自分達は『Id』の末端に触れていたの か。

「正確に言えば、その試作品よ」

つい、と人差し指で「銀目」の移った映像を指し示し、リューネは言った。

「”意思”というものを無機物に移す実験の試作品。

―――でも移すときに失敗して、「銀目」は思考こそできるもの の、”生存””順応”の二つの思考しか残らなかったの」

だから廃棄されてたんだけどね。と続けるリューネ。

「けど、何かのミスで『ワイズ』から落っこちちゃったんだと思う。そのせいで、あんなところにいたんだね」

「や、落っこちた、って……」

機密事項なのではないのだろうか。

訝しむとリューネはあはは、と頬をかき、

「だって……管理人が、ホラ、ね?」

「…………ああ」

納得。ものすごく納得。

……そりゃぁ、ねぇ……?




























       *





























「ふーん。それで結局、糸は意識? を一つにまとめちゃったんだ」

「『Id』ね。―――ともかく、そういうこと」

わかっているのかわかっていないのか。微妙なファンメイだが、リューネは話を続けることにする。

「そこから『守護者』をさらに作り出し、紆余曲折を経て、今の体制になるのよ」

ミーナの脱走。

嵐と雷我の抹消。

アドヴァンストたるセロ、ラヴィス、ザラットラの誕生。

しかしそれらは今話すべきことではない。

「あれ? でも、『Id』の目的って結局、んーと、長生きすることだったんでしょ?」

だったら何でシティとか襲ってくる必要があるのか、とファンメイは問うた。

そう、そこがこの事件の核心だ。

彼らの目的は”世界を終わりまで知ること”

不老不死などはそれを為すための過程で求めたに過ぎない。

この世の叡智を全て攫い、全知全能になるために。

ただそれだけを追い求めていたはずだった『Id』は、どうして下界へと攻めてきたのか。

リューネは数瞬目を閉じ、そして開く。





「そうだね。……ただ、世界の終わりが見たいのなら、ずっとずっと空の上にいればいい」





どこで間違えてしまったのか。

誰が間違えてしまったのか。

今となっては、そんなことすら定かではない。

「ファンメイ。それじゃぁ一つ聞くよ」

「なに?」








「今の世界ってさ、何か変わっていってるかな」








大戦が終わり、荒廃した世界。

そこにはもう新しい芽吹きなどは存在しなかった。

ただ過去の栄華に縋り、細々と生きていくだけの人間たち。

既に斜陽。

人類という種は、黄昏を迎えようとしていた。

「技術レベルは大戦前に敵うわけも無く、新しい文化が生まれていくわけでもなし」

その様子は、『Id』にはどう映ったのか。

見守るべき世界が、見据えるべき行く末が、淡々と腐敗してゆく様。

それは、













「――――――つまらない・・・・・と、そう思ってしまったのよ」














こんなはずではなかった。

こんなはずではなかった。

悠久を超え、世界の終わりを見たいという願い。

しかしその終わりは、すぐそこに緩慢ながら見え始めてしまっていたのだ。

何のために不老不死を求めたのか。

何のために意思を束ねたのか。

「第二次大戦後の日本のように、戦災から立ち直る時には物凄い技術革新や文化の成長が起こる」

それには、あくまでも立ち直れたら、という前提があった。

だが、太陽光という最大にして唯一の資源を失った人類に、最早立ち上がる力は残されていなかった。

「思ってしまったのよ、”つまらない”と」

繰り返す。

その顔に張り付くのは苦渋と怒り。

「本当なら、ずっとずっと世界の行く末を観察していくだけのはずだった」

そう、それだけを望んできたのだ。

天高い大樹の下で、この世全ての真理を掴むために。

「変な言い方するけど、愛情の裏返しみたいなものよ」

「えーっと……”貴方を殺して私も死ぬ”みたいな?」

「どこでそんな言葉覚えたのか知らないけど、うん、あながち間違って無いよ」

可愛さあまって憎さ百倍。

全てを掴んだと増長した『Id』だからこそ、それが徒労と知ったときの反動は大きかった。

「で、でも。でもでも、まだわたし達が終わっちゃうって決まったわけじゃないよ!」

胸の前で拳を握り、ファンメイは言った。

ああ、確かにそうだ。

生きている限り希望はある。

どんなに無価値な生だとしても、どんなに非力な存在だとしても、生きている以上、できることはあるはずだ。

それを笑って捨てるのかと、ファンメイはそう言った。

「そうだね」

リューネは弱弱しく微笑んだ。

酷く、彼女には似つかない笑みだった。







「――――――でもやっぱり、それも貴方達だから言える言葉なのよ」







魔法士だから。

人間だから。

そんな理由じゃ説明できないけれど。

人は、弱い生き物だから。

生物としては強いけれども、生命としては弱い。

勿論、ファンメイたちのような人間も少なからずいる。

それでも、そうでない人間の方が圧倒的に多いのだ。

一の黒は、百の白に勝る。

悲しいけれども、それが現実。

そこへ、








「―――それでも、あきらめちゃ、だめだと思う」








ゆっくり、一言ずつ区切るように、ファンメイはそう言った。

「おかしいよ、絶対」

一度俯き、何かをこらえるようにして、龍使いの少女は続ける。











「『Id』って人たちは、知りたかっただけなんでしょ? 難しくてよくわかんないけど、いっぱ いいっぱい勉強したかっただけなんでしょ!?」











夢は潰え。消えてゆく視界の彼方に、まだ映るものはあっただろうか。











「それなのに、どうして世界を壊そうとするの!? どうしてあきらめちゃったの!?」











その夢を。

その願いを。

その誓いを。

かつて輝いていたその道を、どうして誤ってしまったのか。














「ぜったいおかしいよ! 世界の終わりが・・・・・・・見たいから世界を終・・・・・・・・・わらせるなんて・・・・・・・!!」















ファンメイは嗚咽交じりに叫んだ。

リューネは何も言わない。

眼をつぶり、その言葉を静かに聴いている。

















「みんなでがんばってたなら、がんばり続けるだけでいいのに・・・・・・・・・・・・・・・……っ!!」

















ファンメイの言葉は、どうしようもなく真実だった。

誰から見ても本末転倒。

それに気づかないほど『Id』は壊れてしまったのだ。

いつしか、残ったものは傲慢と欲望のみ。

結果を得るために探り当てた過程に酔い痴れ、己を見誤った全能機関。

その末路が、現在だった。

「ある日突然、それまでの世界が無価値って、気づいちゃったんだよね……」

俯いて、ファンメイが呟く。

……そうだ。身近な世界がある日突然豹変してしまうことを、龍使いの少女は一番よく知っている。

かつて暮らした天空の「島」。

たった四人しかいない生活だったけれども、あの日々は、少女にとってかけがえのない大切なものだった。

「使い捨てなんて、ヤだよ……。最後の最後までどうなるかはわかんないんだからぁ……っ」

許せないと。

ファンメイの瞳が告げていた。

大勢の命を犠牲にした。―――多くの自分たちが暴走して死んでいった。

ずっと求めてきた夢があった。―――この天蓋を越えて、飛ぼうと思った。

けれど、それはたった一つの豹変で。―――ある日知った、致命的な欠陥。

”つまらない”と、そう思ってしまったのだ。―――それでも、生きていこうと、誓ったのだ。










「そのままあきらめるならまだいいよ。……でも、どうしてそれを八つ当たりなんてするの……?」










八つ当たり。

ああ、その表現は適切だろう。

全てを手に入れるためにあらゆる労力を惜しまず、しかしそれが徒労に終わったと感じた瞬間、『Id』は壊れた のだろう。

天高く伸びた大樹。

たとえ幹が天を目指そうと、枝葉が目指すはただ光の差す方のみ。

それでも支えきれればまだよかった。

しかし、今や幹すら朽ちかけてしまっている。







「ねぇ、リューネ。……どうして、こうなっちゃったのかなぁ……?」







指示語が何を指すのかすら抽象的な言葉。

……けれども、それはどうしようもなく、心を打つ響きだった。

「…………」

リューネは再び眼を閉じる。

そして、
















「…………ありがとう、ファンメイ」


















「ふぇ……?」

リューネの声に、涙を拭きながらファンメイが顔を上げる。

「ありがとう。そう言ってくれて」

「リューネ……?」

黒髪の調律士は静かに微笑む。

それは、最期の時に見せたあの微笑と同じ笑みだった。

「い、いきなり、なあに?」

真っ向から御礼を言われ、照れたファンメイが一歩二歩と後ずさる。意識の中だというのに器用なことだ。

「お礼。私の心が決まったから」

「心……?」

はてな、と首を捻るファンメイにもう一度笑いかけ、リューネは胸の前で祈るように手を握った。

「何を小さくまとまってたのかな、私は。……やっぱり、焦がれてたのかもね」

空色の少女から、光が生まれていく。

意識内において、それはI−ブレインが見せる抽象的なイメージの構造。

「そうだよね。死んだくらいでなんだっていうんだか・・・・・・・・・・・・・・・・・

光が強まる。

ファンメイには、リューネの背中から伸びる空色の翼が見えていた。



―――天使の翼。



今まで一度たりとも見たことの無かった、リューネの「同調能力」―――?

「私は遅かった。うん、遅かったよ、ファンメイ」

にっこりと、リューネは笑う。

「それはもう取り戻せることじゃないけれど、これからでもできることはあるもんね」

光が増す。

それはまさしく、かつて見た「天使」の姿だった。

フィアのそれともまた違う。

フィアの翼は一対二枚。金色の光を振りまく、まさしく天使の翼だ。

けれども、リューネの翼は空色。

吸い込まれそうに綺麗な、透き通った六対十二枚の翼。

「結局、まだ逃げてただけだった。……あは、笑っちゃうね」

さらに光が増す。

I−ブレイン内のイメージとはいえ、ここまで強い情報密度はファンメイにとって初めてだ。









―――今再び蘇ったもの、それは天下を貫く風―――









「な、なに……?」

一際激しく輝く空色。

それにファンメイの意識が眩んだ一瞬のうちに、視界から極彩色は消えうせていた。

周りを見れば、世界樹の中。

どうやら、リューネが思考投射を終わらせたようだ。

「あ、あれ!?」

「戻った、のか?」

「ちか、ちか」

周りの皆も目を瞬かせている。

I−ブレインを持っていない月夜と真昼には投影ディスプレイによって説明したのか、彼ら二人の前には幾枚かの ディスプレイが存在した。

「で、あれ? リューネは?」

錬がそう言った。

その瞬間、




































――――――私の敗北を、貴方の勝ちと定めます――――――
































凛と、その声は響き渡った。

世界樹の内部を反響していくリューネの声。

見上げれば、彼女は中枢の瘤上組織に立っていた。

その背には―――六対十二枚の、空色の翼。

誰もが、息を呑んだ。

そして、




























―――――― 最秘奥根源調律機関、全力起動。情報の海と意識の海をLv9で接続――――――



























厳かに、祝詞が捧げられる。

物理域にまで影響を及ぼしかねないほどのフラックスが顕現した。

ざざ、とリューネの周りの空間にノイズらしきものが走る。
































―――――― オールシステムスタンドバイ。深度設定……クリア ――――――




























抽象的な光のイメージが強まる。

しかしそれは決して外には漏れない。

リューネの周囲、ここ世界樹の内部でのみ、このフラックスは暴れまわる。




































―――――― 認証開始ゴーアヘッド……突破ブレイク突破ブレイク突破ブレイク…………接続完了タッチ・ダウン――――――



































この場にいる全ての人が、その威容に釘付けになった。

空色の翼を背に宿す、青空の申し子。

彼女こそが『調律士』。この世界でたった二人、”セカイ”へと手が届く者。

そして、リューネはゆっくりと眼を瞑り、











































「全プロテクト解除。認証コードASH――――――『戦いの口上』!!」




























己が世界を、言祝いだ。





























          *




























……時間は少し、遡る。



















「ち、ぃ……!」

乱れる呼吸。

肩で息をしながら、イルは拳を握りなおした。

眼前には、錫杖型のデバイスを掲げる『Id』が守護者は第五位、ラヴィス。

そして、その背後には、天を衝く巨人”天意の宿り木”ギガンテス・オリジン

だが、その動きは今や止まっている。

「……なかなかに、そう、なかなかにしぶとい。いや、これは私のミスというわけか」

苦々しげに吐き捨てるラヴィス。

その手には、どう形容してよいのかわからない、ガラクタのような機械。

「……刹那。本当に刹那の差だった」

ぎり、と歯軋りの音を立てる。

「貴様の、貴様の力を見誤った私の落ち度だ。落ち度だとも」

背後の巨人は動かない。

否、―――動けないのだ。

ラヴィスが手に持つその機械「魂の歌」によって今現在、ここら一体の情報制御は禁止されている。

それは勿論ゴーストハックによって動く巨人も例外ではなく、



「後数秒、後数秒さえあれば組みあがっていたものを……早まったか」



『魂の歌』デミテスタメント・サーフィスの内部では、”それ以上の”情報制御が禁止される。

ノイズメイカーと違う点はここだ。騎士ならば、既に身体能力を加速していればそれが解除される、ということは ない。

それはゴーストハックもまたしかり。カタチさえ構成してあればあとは倒れこむなり何なりと、どうにでも破壊は 引き起こせる。

だが、目の前の男がそれを砕いた。

予想だにせぬ運動能力。

物体を透過する特異なI−ブレイン。

イルの力を読み違えたラヴィスは、あわや彼の攻撃が届く位置まで接近を許してしまい、反射的に『魂の歌』を発 動させてしまったのだ。

故に、”天意の宿り木”は未だ未完成。

拳を振り下ろすことは先ほどやってのけたが、その実動くのは上半身のみ。

強引に構成したのが仇となったか。

うかつに動くことはできなくなった。

ラヴィスもゴーストハックを使用できない以上、単純な白兵戦技能で彼はイルに劣る。

だが、懸念に囚われているのは相手も同様だ。

白髪の魔法士はこちらがまだ何かを隠し持っていると思っているだろう。

イルは油断無くラヴィスを見据えているが、動こうとはしない。

……時間との勝負だ。

このまま動かなかったのであれば、『魂の歌』を展開した意味が無い。

折角の好機に動かないのを不審に思った時点で、イルは行動を開始するだろう。

ある意味では千日手。

残る『魂の歌』の発動時間は、52秒――――――





















     *






















「…………」

拳を固め、油断無く敵を見据えながら、イルは疑問を感じていた。

……なんで攻めて来ぃへんのや?

情報制御が禁止された今、背後の巨人を動かせるラヴィスの方が圧倒的に有利。

だが、それをしないのは、

「…………なある」

ざ、と一歩を踏む。

合わせた様にラヴィスも一歩を、”退いた”

「―――ビンゴォ!」

瞬間、イルは溜めに溜めていた筋力を爆発させた。

「チ、ぃ―――!」

ラヴィスが後退する。

読みは当たりだ、アイツは今、何もできない……!

『魂のナントカ』を展開したのは苦し紛れのことだったのだ。

人形使いであるラヴィス、それならば、白兵戦での分は圧倒的にこちらにある―――!

「逃がすかボケぇ……ッ!」

白い獣。

体制を低くし、飛ぶように走るイルの姿は、まさに獣そのものだった。

たちまちラヴィスとの距離が詰まってゆく。

だが、そこで彼は懐から銃を抜き放った。

「!」

反射的に斜め前へと飛ぶ。

刹那遅れて銃声。

先ほどまでイルの頭が占めていた空間を突き抜けてゆく銃弾。

それを確認せぬまま、イルは思いっきり近場の瓦礫を蹴り飛ばした。

「なに!?」

「そないなモンで、おれが止まるとでも思っとんのか自分―――!!」

チタン合金の、丁度横の建物の隔壁だった部分が回転しながらラヴィスへと飛んでいく。

勿論、イルとラヴィスを結ぶ射線を塞ぐように。

ラヴィスは当然それを躱す。タイムロス!

一際大きく大地を蹴ってイルは加速する。

だが、

「テメ……っ!」

「悪いが、正道など持ち合わせておらんのでな」

ラヴィスの後退する先、そこに、負傷し倒れた幾人ものモスクワ兵たちがいる―――!

銃が彼らに照準を合わせる。

「―――ッ!」

間に合わない。

鍛えられていないように見えるが、ラヴィスの身体能力はイルをわずかに劣る程度。

そのような体つきには、筋肉のつき方には到底見えないが、あの男は確かに人間を越えている。

彼我の距離は7m強。イルと言えども追いつくには5秒近くを必要とする距離。

「一人残して撃ち殺し、盾だな」

イルに聞こえるようにわざわざ言い放つラヴィス。

血液が沸騰する。

「おおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」

ぐん、と視界が加速する。

まさに人類の限界レベル。

だが、それでも現実は変わらない。

何かを投げつけて妨害することも出来ない。

このタイミングで『魂の歌』が解除されようが、身体能力制御を持たないイルでは追いつくことは出来ない ―――!

「苦渋に歪め、――――執行である」

ソードオブショットガン。

近距離に弾丸をばら撒く銃身から絶殺の意思が吐き出される。

それにイルは思わず眼を閉じて歯を食いしばり、それでもスピードは落とさずに、







「呆けるな! イル!」







その声に、眼を見開いた。

ばら撒かれた弾丸は、倒れ伏すモスクワ兵には一発たりとも当たっていなかった。

その前で、

「……屈するなと我々に言ったのは君だぞ」

騎士剣を構え、降りかかる銃弾を切り払った老兵がいた。

だが、この近距離から全てを切り払うことは叶わなかったようで、左肩と右脇腹にじわ、と血痕が現れる。

「ぐ、ぅ……」

膝を突く老騎士。

そこへ、

「老兵風情が!!」

怒り心頭となったラヴィスの銃弾が再度放







「――――――すっとろいわ!!」







「っご、ぶ……!?」

―――たれる寸前、神速で回り込んだイルの双掌が問答無用でラヴィスの体躯をブッ飛ばした。

全体重を乗せた一撃。

決して小柄ではないラヴィスの体躯が紙の様に宙を舞った。

「ギ……!」

それでもなんとか体勢を立て直して着地をするところは、やはり一筋縄ではいかない。

ぽきぽきと両手の指を鳴らし、イルは一度大きく息を吸った。

「―――手応えありや」

……だが、内心は不可思議な思いに包まれていた。

今までの経験からして、今の一撃をまともに食らったならば、骨の二、三本どころか内臓破裂を引き起こしてもお かしくはない。

……痛覚遮断にしても変やな。

動きに淀みが一切無い。

……効いてへん、ってことか?

”入った”手応えはあったが、骨を砕いた手応えはなかった。

ばかりか、こちらの手がわずかながらしびれている。

「…………」

拳を再度、握り締める。

ラヴィスは鬼気迫る顔でこちらを睨みつけていた。

「ぐ、ぬ、ぬぬぬぬぬぬぬ……っ!」

その視線たるや、見るだけで人を呪えよう。

しかしそんなことに頓着している場合ではない。

『魂の歌』の効力が終わるまで後わずか。それまでにコイツを潰さなければ。

「覚悟を決めろや、次で終わらせるで」

「ほざけェ……ッ!!」

「!」

ラヴィスの叫びと共に地面が隆起する。

ゴーストハック!

「なんやと!?」

ラヴィスの言葉を信じれば、という条件付だが、まだ効力が切れるにはわずかながら速いはず。

だが事実は前にあり。

能面のような顔を取り払い、今や阿修羅と化したラヴィスは咆哮と共にゴーストハックの腕を数百本生成した。

「ちぃ―――――!」



(「シュレディンガーの猫は箱の中」起動―――失敗、エラー。情報の海との接続速度に問題あり)



反射的に己が絶対防御を発動させようとするが、できない。

いや、できかけてはいる。だが、まだ情報の海との接続速度が普段のレベルへ達していない。

……しもた!

そこで、イルは敵と自分との差を理解した。

存在確率制御と仮想精神体制御。

どちらにより高度な情報の海への接続が求められるかといえば、話は早い。

ただ一方通行。仮想精神体を流し込めばいいゴーストハックと、

情報の海に存在する”自分”というものへ手を加えなければならない存在確率制御。

どちらが楽に発動できるかなど、赤子でも分かる。

確かに今、『魂の歌』の効力は消えかけていよう。

だが、わずかに残った残滓とて、存在確率制御を妨害するには余りある―――!








「残るは4秒、肉塊と成り果てよ愚物めが――――――!」








数百本もの打撃が降り注ぐ。

いくらイルとて、全てを迎撃することなど不可能だ。

捌けて精々十数本。しかしあの打撃は一発一発が人間を肉の塊へと変える威力を持つ。

背後の老魔法士も動けない。

それでもだと拳を握り締め、イルは迎え撃つ。

―――四秒、四秒耐え切ればこっちの勝ちや!

だがそれは絶望的だと、思考より先に肉体が理解していた。

どうあがいても以って一秒半。

半秒で片腕を潰され、続く半秒で両足。そして頭を潰されると、今までに培った戦闘経験が告げている。

横へ逃げても、後ろへ飛んでも、結果は同じ。

「ぎ――――!!」

割れんばかりに奥歯を噛み締める。

それでも、それでも、ここで屈するわけにはいかない――――――!

しかしその決意空しく、鋼鉄の怒涛がイルへと襲い掛かり、



































「――――――『炎鳳零式・炎天火光尊』」




























炎の鳳凰が、その全てを完膚なきまでに焼き滅ぼした・・・・・・

「なに……!?」

「なんやぁ!?」

驚愕の声は双方から。

ラヴィスは己のゴーストハックを砕かれたことで目を見開き、

イルは放たれた炎の規模の大きさに眼を剥いた。

……炎使いやと!?

それもかなりの能力者だ。

間違いなく、最高レベル。モスクワ軍にここまでの使い手などいない。

弾かれるように振り向く。

それにかぶさるようにして、ラヴィスの叫び。

「何者かァッ!」

振り返ったその先には、瓦礫を踏みしめるようにして歩いてくる、一つの影。

先ほどの炎の影響か、すすと煙のせいで顔がいまひとつ分からない。

その体格からして、

「女……?」

呟くイル。

それに応えるように、一陣の風が吹いた。


















「――――――何者か、とはいきなりなご挨拶ですね」

















鈴を転がしたような、透き通った少女の声。

視界を遮っていた煙が晴れる。







―――はじめに見えたのは、銀色。







煤と血に満ちたこの戦場において尚輝き映える銀色の髪。

肩よりも少し長いその髪が揺れる。


















「ですが、聞かれたのなら応えましょうか」


















―――次に見えたのは、紅。







瞳だ。

どこまでも凛と光を宿す、紅の瞳。

シティの軍服にも似た戦闘服の裾がたなびく。

その少女は、




































「私の名前は、―――エレナブラウン・ツィード・ヴィルヘルミナ」





































左手に大口径の銃をひっさげ、この地獄を裂いて現れた。































       *






























「エレナブラウン・ツィード・ヴィルヘルミナ……? アンタ、一体……」

何者だ。

と、そうイルが続けようとする前に

「あ、呼びにくかったらミーナでいいですよ?」

「んなこた聞いてへんわっ!?」

エレナブラウン・ツィード・ヴィルヘルミナと名乗った少女―――ミーナは、にっこりと人差し指を立ててそんな ことを言ってきた。

咄嗟につっこんでしまうイル。

それにミーナはあはは、と笑い、歩を進めてイルの横に並んだ。

身長はイルの方が頭一つ分高い。

だが、イルにはこの目の前の銀髪の少女が、どうしても自分より小さいとは思えなかった。

と、ミーナはこちらを見上げ、

「ケガはありませんでした?」

「あ? あ、あぁ、あらへんよ」

そこで、自分がこの少女に助けられたのだと理解できた。

……何者や、コイツ。

心中で呟く。

モスクワ軍にこんなヤツはいないし、また、あそこまでの炎を操る炎使いだとしたら名前くらいは知れているはず だ。

けれども、エレナブラウンなんとか、とかいった長い名前など聞いたこともない。

不審と疑念を募らせるイルに、





「……解せんな。貴様のような使い手がノーマークのはずがあるまい」





胸中を代弁するように、ラヴィスが唸った。

その周囲には、再びゴーストハックの獣が生まれ始めている。

ミーナはこれに対し、









「はぁ、安心しました。――――――私のこと知らないんですね・・・・・・・・・・・・









「っ!?」

横のイルが思わず一歩を退くような、そんな威圧感を含んだ笑顔で答えた。

彼女はイルのその反応には眉一つ動かさず、





”気づいてますか?”





ラヴィスの方を向いたままで、そう、囁いてきた。





”気づくって、何にやねん”

”巨人の動きです。ゴーストハックの攻撃を繰り出すときに、あの巨人は動きを止めてますよ”





「!」

そういえばそうだ。

既に『魂の歌』の効果などとうに切れている。

ならば、あの巨人を使ってこちらを仕留めるのが最善の策のはず。

ゴーストハックと同時にかかられたら、最早為す術はない。







”……それをやらへん、いや、できへんってことやな”

”おそらくは”







思考を切り替える。

素性は知れないが、このミーナという少女はこちらを助けてくれるようだ。

実力は、ゴーストハックされたチタン合金の津波を残らず消し飛ばすほど。申し分なし。







”なら、さっさと決めたほうがええか”

”いえ、もうすこし待っていてください。今攻撃すると怒り心頭ですから、逆効果です”

”……む”







確かに。

巨人を動かさせぬように一発で仕留めなくては意味がない。

だがこれでは膠着状態、いや、ゴーストハックを展開してゆくあちらが有利になっていくだけ――――――



「―――来ました」

「は?」



何がやねん? と問う暇も無い。

ミーナは大地に足形が残るほどの踏み込みを以って既に飛び出していた。

「ちょ、待つっていうたのはおまえやろ!?」

第一、彼女は炎使いではないのか。それが、接近戦を挑む、だと?

慌てて飛び出すイル。

だが、

……ほんまか!?

追いつけない。

いや、どころか距離が一歩ごとに離されていく。

まるで一歩ごとにカタパルトを使っているがごとくミーナは加速していく。

いや、それはあながち間違いではないかもしれない。

彼女が大地を踏みきる瞬間、そこに小規模な爆発が起こっているのを、鍛えられたイルの動体視力は確かに見た。

「潰せ!」

突撃するこちらを迎え撃つように、ゴーストハックの獣が走り出す。

ラヴィスまでの距離は5m。イルより2mほど先行しているミーナが先頭の獣と接触し、









―――その獣が、砕け散った・・・・・









「い……ッ!?」

なんやねんそらぁ!?

驚愕に止まりそうになる足を何とか動かし、イルは後を追う。

情報解体ではない。

爆発を叩き込んだわけではない。

ミーナの肩辺りで何かが光ったと思った瞬間、ゴーストハックの獣は木っ端微塵に砕け散っていた。

彼女の右腕が振り切られているところを見る限り、打撃で破壊したのだろうか。

ミーナは振り切った右腕を体の左側へ回し、勢いを殺さず半回転。

瞬間、今度は左足の近くで何かが瞬いたと思ったら、三体の獣が首から上を砕かれていた。

……なにもんやねん、ほんまに!

イルの眼を以ってしても、今何が起きたのか捉えられなかった。

落ち着いてみれば話は別だろうが、少なくとも、今彼女が何をして獣を壊したのか分からなかった。





――――――ミーナは止まらない。





彼女の足が、肩が、肘が、拳が、そのいずれかの付近が一瞬光るたびに、周囲の獣が打ち砕かれていく。

そして、

「いきますよ……」

「!」

背筋を駆け上がる寒気。

それを感じた瞬間、イルは「シュレディンガーの猫は箱の中」を発動した。

……その選択は正解だった。

ミーナが地面に拳を打ち付ける。

刹那、彼女の周囲20mに渡って大爆裂が生じた。

「ぬ、ぐ……っ!?」

一つ残らず打ち砕かれる獣達。

かろうじて盾を形成したものの、衝撃波に大きくゆらぐラヴィス。

その喉下へ、









「――――――詰みチェック









ぴたり、とミーナの抜き手が当てられた。

「―――――」

それを、イルは呆然と見ていた。

「なんつー……」

言葉が出ない。

単身シティを滅ぼしに来たようなバケモノを、ものの一分足らずで追い込んでしまった。

「貴様…………!!!」

ラヴィスは動けない。

いや、動いたら即座にこの手刀は己の首を叩き折ると分かっているのだ。

「どうします? ”天意の宿り木”を解除すれば、この場は見逃してあげますよ」

「おい、どういうこっちゃ!?」

馬鹿な。今が絶好のチャンスではないのか。

イルはなりふり構わず叫んだ。

「…………」

ラヴィスは応えない。

「意地を張る状況ではないと思いますけど?」

再度ミーナは問う。

ラヴィスは、心の底から苦々しげに、

「……承知。この勝負、預けよう」

そう、ミーナの言葉を受け入れた。

「な……!」

ミーナが喉下から手を引くと同時に、”天意の宿り木”がゆっくりと足から建材に還って行く。

その還元が腰まで達したとき、ミーナは無言で手を振るった。


(大規模情報制御を感知)


「!?」

瞬く一陣の光芒。

おそらくは熱量を凝縮されたレーザーの一種であろうその光芒は、寸分違わず巨人の胸部中央を貫いた。

ラヴィスの顔が引きつる。

「貴方の考えなんてお見通しですよ。”天意のカケラ”は潰させて貰いましたから」

「ぐ、小娘が何故それを……!」

「それに、再構成する前にあれごと砕くこともできますよ」

ほら、と上を指差すミーナ。

「?」

空を仰ぐ。

そこには、

「船……!?」

いつからいたのか、シティの内壁に沿うように遊弋する、数隻の飛空艦の姿があった。

そして、そのうちの一つは、データとして見覚えがあるものだった。

全長およそ150m。そのサイズでどこからシティ内部に入ったのかは不明だが、隊列の中央を陣取る船。

限りなく流線型に近いそのフォルムは、












「―――Hunter Pigeon!? ……いや、違うんか?」












世界最高速の船。

この世に三隻しか存在しない雲上航行艦の一つ、Hunter Pigeon――――――に、酷似していた。

だが、かの人喰い鳩は真紅の機体色なのに対し、こちらは群青。

加えて、胴体部に対してかなり大きい可変翼を有している。

「…………!」

王手を悟ったか、ぎり、とラヴィスが歯を鳴らす。

それに追い打つように、ミーナが言った。










「――――――『四大天神』が一つ。東の風を司る空の剣。『武侠艦隊・グレイテストロックス』」










「『武侠艦隊』やと!?」

その名前は、イルにも聞き覚えがあった。

東西南北。四つの区域をそれぞれ代表する空賊の最高峰、『四大天神』

その中でもさらに異端。構成人数が最小であるにも関わらず、”最強”の名を冠する組織。

極東に拠点を持つと言われている、東の風を司る空の剣、『武侠艦隊』!

構成メンバーも人数も、装備の規模も、ほぼ全てが推測の域を出ていない。

分かっていることは唯一つ。彼らは”義を以って侠を為す”というスローガンを唱える義賊。

魔法士の構成員を持たずして尚、数々の戦を完勝してきた、不敗の組織。

それが、『武侠艦隊・グレイテストロックス』という空賊であった。






「――――――これ以上やりあうというのなら、私は止めませんけど」

ざ、とミーナが腰を落とす。

「ぐ……仕方あるまい」

弾けるように跳躍するラヴィス。

ミーナは別段追わず、顔だけを傾けてその姿を追った。

ラヴィスは軍部の倉庫らしき建物の上へ飛び乗り、





「この屈辱……忘れんぞ!」





それだけを言い残し、視界から消えた。

「…………」

その様子を後ろでぽかん、と見ていたイルははっと我に返り、

「っておい! なんで逃がすんや!」

厳しい顔でミーナに詰め寄った。

「倒してもよかったんですけど。それだとあの巨人はそのままになってしまうので」

「……ほんまに、か?」

「はい。さっき私がコアを潰したからもう大丈夫ですけどね」

私から逃れて再構成するつもりだったんでしょうね、と続けるミーナ。

そう言われては、言い返すことは出来ない。

と、その時上の『武侠艦隊』の船から、するするとロープが降りてきた。

「あ、もう時間ですか。それじゃ、この辺で私は失礼しますね」

「は? ちょい、アンタ――――――」

ミーナはこちらの制止など全く聞かずに、ロープの先の金具に足をかけた。

たちまち引き上げられる銀髪の少女。

呆然とそれを見上げるイルに、ミーナは最後の最後、面白がるような微笑を湛えて言った。










「貴方がもしリューネっていう女の子に会ったら、こう伝えてください」








一息。

そして、




























「――――――”ひとりじゃないよ”って――――――」






























それで最後。

エレナブラウン・ツィード・ヴィルヘルミナという名の銀髪の炎使いは、あっという間に船に吊り上げられてい き、イルの視界から消えた。

わずかに表舞台へと現れた少女。

それが反撃の狼煙であったことに気づくものは、誰もいなかった。



























 おまけこーなー 再動編

〜聞こえねぇ〜



ミーナ 「貴方がもしリューネって子にあったら、こう伝えてください―――――」(遠ざかっていく)


ミーナ 「”ひとり―――………(視界から消える)


イル 「…………いや、聞こえへんて」





 あとがき

「うむ、やはり”テスト前は執筆速度が上がるの法則は”今回も正しいと証明された!」

錬 「法則なのに一回一回証明しなきゃいけないんだね……」

フィア 「でも、この章はほんとに速かったですよ」

錬 「ん、確かに。なぜだか今日一日で書き終わっちゃってるし」

「俺の眠れるリビドーが体を突き動かしたのサ!」

錬 「脳内麻薬の間違いでしょ?」

フィア 「えっと……」

「うむうむ、やはり一日一個のリンゴは欠かせないのぅ」

リューネ 「……何アホ言ってんのよ」

錬 「あれ、リューネ? 今は出番じゃなかったの?」

リューネ 「ちがうよー。いいところまで見せといて結局私の”戦いの口上”は次回に回されちゃったから」

「詰め込んでも良かったんだけどねぇ。急遽イルの方の話が付け加えられたから」

フィア 「え、急遽って……え?」

錬 「書いてるうちにいきなり、ってことでしょ。はぁ、いつもながら無計画だね」

「臨機応変と言えぃ!」

リューネ 「いきなりミーナ出しといてそりゃないでしょ……はぁ」

「……や、それについてはマジ御免なさい。LGOでは名前以外出す気はなかったんだけどなぁ」

ミーナ 「呼びました?」

フィア 「わ!?」

錬 「うわうわ、敬語だ、敬語キャラだ……!」

リューネ 「おっひさー! 元気にしてた?」

ミーナ 「それはもちろん。逃げ出す際には少し不覚をとりましたけどね」

リューネ 「イグジストね。足ちょんぱされたっていう。大丈夫なの?」

ミーナ 「ええ。今はほら、こんな感じですよー」

錬 「……ちょっとちょっと作者。女の子二人がスプラッタな会話してるけど止めないの?」

「怖いからヤダ」

錬 「……この外道は……!」

フィア 「でも、綺麗な人ですね……」

錬 「そうだね。今までとは違ったキャラなんだと思うよ」

「今までの二人が異常すぎると思うんだがなー…………待てぃリューネ。まだ解説してないからその手を下ろせ」

リューネ 「まったく……。それじゃ、さくさくっと解説しちゃおっか! ミーナはどうする?」

ミーナ 「そうですね、……今日はこの辺で帰りますよ」

リューネ 「ん。それじゃぁね!」

ミーナ 「錬くん、フィアさんも、また今度会いましょうね」

錬 「あ、はい」

フィア 「はい! さようなら――――」

(ミーナ、帰る)

「まぁ、あの子は本来LGOに関わらないしねぇ。出番はまた今度作ってあげよう」

フィア 「―――そろそろ解説に入りますね。今回の章は中盤への折り返しの位置づけです」

錬 「『Id』の正体も分かって、やっと僕らのターンってわけ」

リューネ 「私も本気。さぁ、あとは真っ向勝負よ!」

「んで、ホントはリューネの戦いの口上シーンで終わる予定だったんだけど、その後にモスクワの戦いが入ってます」

「書いてる途中にふと思いたってね。偶然とはいえ、リューネの決意とミーナの最後のセリフが上手く合致あった気がするよ」

錬 「偶然でね」

「ぐ……。うん、そう」

フィア 「それと、この章には色んな次回作ネタが散らばっているそうです。……ミーナさんと、他はなんなんですか?」

『武侠艦隊』『四大天神』だね。これらも又、そのうち紹介していくことにする」

リューネ 「ちなみに『武侠艦隊』の元ネタは、巨匠・押川春浪の小説「武侠艦隊」からとってるんだって」

錬 「へぇ。じゃぁ、『四大天神』の後三つはなんなの?」

「一つはもう無い」

フィア 「はい?」

錬 「どゆこと?」

リューネ 「うん、無いね」

「とある戦いでとある二人の魔法士に地上部隊を潰され、とある二隻の船に旗艦諸共艦隊も潰されたんだよ」

錬 「わ、すごいね、それ」

フィア 「……どこかで聞いたような気がします」

リューネ 「そりゃそうよ。だって、『黄金夜更』だもん」

錬&フィア 「え――――――ッ!?」

「そういうこと。だから『四大天神』は今は三つ。武侠艦隊を除くあと二つはお楽しみに」

リューネ 「また用語集が増えるようなマネして……」

「現在90kb突破したヨ。―――さて、そろそろ終わろうか」

錬 「りょーかい。次章は第十二章『GET SET!』

フィア 「ついに火蓋を切る『Id』への反撃。その準備の章です」

リューネ 「みんなもう覚えてないと思うけど」

錬 「ここでようやく、僕の「四宝」が登場するよ」

『六天』はもうすぐだ。―――それでは、次章をお楽しみにー!」
























本文完成:12月10日 HTML化完成:12月10日


written by レクイエム



                                            








                                                                                ”Life goes on”それでも生きなければ...