第十八章

「鉄の戦場」



























――六天四宝――






















「!」

「つぅ!」

閃く刺突と、煌く氷礫。

それらがぶつかってダイヤモンドダストを輝かせる。

セロの「神の子殺し」に弾かれた氷弾は錬の頬を掠めて一筋の紅を浮かび上がらせた。

わずかに走る痛みと不快感を無視して錬は次の手を放つ。



(―――幻手・一穿)



足元から送り込まれる仮想精神体ゴースト。

命令は唯一つ。

「突き上げろ!」

形状は槍。顕現は刹那。その役目は貫通―――!

セロの足元より突き上がる鉄色の槍。

しかしそれはセロが無造作に振るった「神の子殺し」の軌跡に触れるや否や、崩れて消えた。





……『絶対穿孔』





セロの持つ魔槍「神の子殺し」の保有する特性。

常に情報解体が発動している・・・・・・・・・・・・・という異端のデバイスである。

それはゴーストハックの腕や氷の鎖を主な防御手段とする錬やサクラにとっては天敵ともいえる力だ。

なにせ防御のほとんどが無条件で貫かれてしまう。

柄の上部にのみその特性は展開されているので、手元を狙えば情報解体されることはないのだが、それでは攻撃部 位を相手に知らせているのと同義。

身軽さに真骨頂を持つ錬だからこそここまで耐えてきているが、それでもそろそろ限界だ。

「どうした手数が少ないぞ……!」

「つぅ……!」

閃光のように瞬く刺突をかろうじて『蒼天』で捌く。

『絶対穿孔』の特性名「無垢なる原罪」ミストルテインの情報解体と蒼天の情報強度が拮抗し、しかし解体はされずに火花を散ら す。

「ありがと、月姉……」

この新しいデバイスでなければ、錬の命はとうに無いだろう。

敵の情報解体速度は思った以上に高い。『月光』では2、3合で解体されてしまうだろう。



―――だが、逆に言えば、



「それを逆手にとることだってできる……!」

背後に回した左手で『月光』を抜き放ち、錬は両手を後ろに回したままセロへと肉薄する。

当然、放たれるのは急所を穿ち抜く魔槍の刺突。

狙われるは喉笛、心臓、大腿の三点。

はじめの一撃を蒼天で弾き、次の一撃を体を捻って回避、

「だがそれでは足りん!」

最後の喉笛への刺突が唸りを上げる。

対して錬は強引に首を逸らせながら『月光』を突き出した。

先の数合によって情報結合がぼろぼろにされていた『月光』は一瞬も槍と留めることなく砕け散る。

が、それでいい。

「!」

あまりにもあっけない『月光』の破砕に、衝撃を予測していたセロがわずかに”つんのめった”

錬はそのまま足元をゴーストハック。

地面の反発を全て足の裏へと集中させ、カタパルトのように地を蹴った。

肉薄するは、無論がら空きの脇。

しかし体勢的に錬に斬撃を放てる余裕は無く。

タイミング的にセロに槍を引き戻している暇は無く。

故に二人は、実に本能に適った行動をとった。



「おぉ!」

「ん……!」



激突する錬の右足と、セロの右足。

錬の放ったのは体のねじれを利用したローリングソバット。

最早体を戻している暇など無いと判断したが故の肉弾戦。

セロが決断したのは膝蹴りによるカウンター。

突っ込んでくる錬の細身を叩き折ろうとしたが故の蹴撃。

科学の粋を結晶した魔法士。

その中でも選り抜きの、世界最高レベルの魔法士たちは、ここにきて己の肉体を武器に選んだ。

そう、最後に勝負を決めるのはまさにそれ。

どんな武器を使おうと、どんな魔法を使おうと、最後に頼れるのはいつだって己自身だ。

錬は己の経験と信念からそれを理解し。

セロは誇りと意地よりそれを成し遂げた。

数瞬の静止の後、弾かれるように飛び退る二人。



……と、思いきや。



「ぬ……!」

「逃がすもんか!」

互いを弾き飛ばそうとしていたセロの蹴りを錬は読んでいた。

脇腹を削られるように受け流し、自分は身を深く沈めてセロの足元を急襲する。

それも道理。

槍使いを相手に距離をとって戦うなど愚の骨頂。

遠距離戦ならどうにかなるが、この部屋にそこまでのスペースは無く、第一『無垢なる原罪』を有するセロに錬の 遠距離攻撃はほぼ通じない。

なら、愚直なまでに相手に迫り、その喉笛に食らいつく!

小柄な錬が得意とする戦術だ。

大きいということがそれだけで力になるというのなら、小さいということはそれだけで速度になる。

自らに課すものは回転と連撃。

錬はまるで独楽のように回りながらセロへ攻撃を加えていく。

斬撃より蹴撃へ。

蹴撃より氷弾へ。

氷弾より爆裂へ。

一瞬たりとも攻撃を途切れさせること無く、ただただ戦闘を続行する――――――!

だが、そこは流石に『守護者』。

やりにくそうではあるが、錬に押されてはいるものの、セロはその連撃を次々に捌いていく。

 

―――互角。



能力的に言えばセロに軍配があがるこの勝負。

しかしそれは間合いのアドバンテージに打ち消され、いまや錬とセロの戦闘力は拮抗していた。





……だからこそ、”崩し”が必要になる。





「フィア!」

「―――はい、錬さん!」

「なに……!?」

そう、この場にはまだ仲間がいる。

まさか介入してくるとは思わなかったのか、セロの槍捌きがわずかに鈍った。

そこへ放たれるフィアの銃弾。

『月落とし』『星穿ち』

非力なフィアの攻撃力を補って余りある、情報強化甲殻型多弾帯炸裂弾―――!

求めるものは助け。

果たされるは援護。

『無垢なる原罪』でも一瞬では解体できない情報強度を持つ弾幕がセロへと襲い掛かる。

もちろん、この程度では”守護者”相手に必殺にはなるまい。

だがそれでも、ここで手足の一本は貰っていく―――!

先手は貰った、と。

裂帛の気合をこめて錬はナイフを突き出そうとし、―――顔の横を「神の子殺し」が吹き抜けていった。

「な―――!?」

20倍に加速された視界のなかで急激に速度を落としつつ、しかしそれでも錬の運動速度を遥かに越える勢いで” 投擲された”魔槍。

それは空気を情報解体して真空の刃で錬の頬を切り裂き、一直線に飛んでいく。

向かう先は、



「―――フィア!」



今しがた銃を撃ち終わった、フィアの元。

彼女の知覚ではこの投擲を認識することすらできまい。

だが今、「神の子殺し」を手放したセロが弾幕に囲まれて前にいる今なら、楽にコイツを打倒できる。

フィアを助けるか。

セロを倒すか。

「くそ、そんなの考えるまでもないよ…………!」

たとえそれで、どうしようもない事態になったとしても。

それだけは、それだけは、自分が”天樹錬”でいるために譲るわけにはいかない――――――!



(「サイバーグ」 展開)



半透明の膜が錬を包み込む。

一瞬にして光速度の70%にまで達した錬は主観上の時間軸を踏破し、『自己領域』内部に神の子殺しを取り込ん で蹴り飛ばした。

”絶対穿孔”の影響によって服の一部が消し飛んだが、傷にまでは至らない。

だが多大な隙を見せたことに変わりは無い。

錬はすぐさまセロの動向へ全知覚を傾ける。

錬を打ち倒すチャンスに何もせず、否、懐から短刀型の騎士剣を取り出し――――――!?



―――半透明状の膜が、セロを覆った。



…………『自己領域』!

怖気が背筋から全身へと拡大する。

今まで使ってこなかったから、「神の子殺し」には自己領域展開機能は無いものと思い込んでいた。

それは真実かもしれない。

だが、他の騎士剣を使用すれば、”守護者”のスペックを持つ騎士に自己領域が起動できぬ理由などない。

……しまった!

不完全な自分の自己領域と、騎士の本分を持つセロのそれでは加速度が段違いだ。

錬はすぐさま自分の自己領域を消去し、地面へゴーストを伝わらせていつでも防御を発動できるようにする。

ディーとは違い、さしものセロとて自己領域から攻撃に移るまでのタイムラグという騎士の弱点はカバーできてい まい。

酷く不利な状況だけど、覆せないわけじゃない……!

どこから来る。

どこから来る。

視界の隅で今さっき蹴り飛ばした「神の子殺し」がくるくると回って今まさに地面に落ちようとしている。



―――そして、虚空より出現したセロがそれを手に取った。



「!」

そっちか!

錬の始末よりも、自分の武器を再び手にすることが目的――――――じゃ、ない!?

「――――――!」

今度こそ、息が止まった。

セロは神の子殺しを手に取ると、錬の方を見向きせずに、フィアへと駆けた。

邪魔者を始末すると。

つい一瞬前にサイバーグを展開し終えた錬は、I−ブレインの警告も無視して再び自己領域を発動。

領域内にフィアを取り込んで抱きしめ、無我夢中で飛び退った。

「錬さん―――!?」

「黙って! 舌噛むよ!」

強引に距離をとる。

が、敵の速度は80倍。

自己領域を解除した瞬間に、怒涛のような槍衾が錬とフィアに襲い掛かった。



(―――身体能力限界制御オーバーリミット



『蒼天』のリミッターを解除する。

I−ブレインの全演算速度を身体能力制御に宛てられるようになったことから、錬の加速度は30倍を超過してい る。

だがそれでも圧倒的に足り無すぎる。

できるのはただ致命の一撃を食らわぬように、背後のフィアに当たらぬようにただただ受け・逸らし続けることだ け。

「くぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああっっっっ!!!」

叫ぶ。

叫んで何が変わるということはないが、心が折られぬように絶叫する。

ここに来て槍の速さはまさに閃光。

最早錬の知覚速度では点が瞬いているようにしか見えない。

それでいて尚、錬が未だ存命しているのは、偏に彼のセンス故だ。

小柄な体というアドバンテージ。

そしてフィアを守るためにあえて自分の体の致命部位を晒すことにより、攻撃箇所の選択肢を狭めると言う戦法。

その二つがかろうじてセロの猛攻を防いでいる要因だった。

3本目の月光が砕け散る。

これで最早予備は無い。

蒼天ならばセロの「無垢なる原罪」を受け止めることはできるが、それでも百に達する刺突を耐えられるとは思えな い。

徐々に追い込まれていく。ジリ貧だ。

目の前には乱打する火花。

ナイフを振るう腕の筋肉が細いものから断線してゆく錯覚。

既に数十合は越えている。

右手の感覚などとうに無い。

少しでも気を抜くだけで蒼天が弾き飛ばされそうだ。



「どうした手数が足りないぞ……!」

「こ、の……うるさいよ……っ!」



あのときにも言われた言葉。

今度こそ、負けるもんか……ッ!

そう歯を食いしばった錬だが、セロはここにきて攻撃を突きから払いに変えてきた。

槍のリーチ、その遠心力を生かしてのなぎ払い。

普段だったらかいくぐる。

だが、今後ろにフィアを庇っているこの状況では、受け止める以外に選択肢が無い。

「づ……!」

腕の筋肉が悲鳴を上げる。

当然だ。

20kg以上の体格差に加え、十分に遠心力を加えられた一撃が、小柄な錬の力で防げるわけも無い。

まるでラケットに打たれたボールのように、錬の体は横殴りに吹っ飛ばされた。

「存外、耐えたな」

そう言い捨て、

「それでは」

セロは、





「――――――執行だ」





無防備なフィアへ、その槍をかち落とした。


























               *




























「…………」

かつんかつんと足音だけがこの空間に反響してゆく。

黒沢祐一は一人、アルターエゴの回廊を歩いていた。

飛ばされてから既に5分が経過している。

「どうにもこれは……ハズレと言うやつらしいな」

守護者の影もカタチも見えない。

あの軌道エレベーターで襲ってきたのが月夜の言ったラヴィスという守護者だとしたら、今ここに残留している守 護者は四名。

それが錬、フィア、ディー、セラ、ファンメイに当たっていたとしても不思議ではない。

「……間抜けな話だがな」

子どもに戦いを任せて、何をやっていると言うのか。

紅蓮の柄を握り締め、何の気配も無い通路を急ぐ。

三枚目の扉を越えた。

どうやらこのアルターエゴの構造はらせん状、あるいは円状に通路が外周から中心までを網羅しているようだ。

根も葉もない言い方をすればたまねぎの皮のよう。

「つまるところ、ブロックごとの閉鎖が大前提にあるということか。実験施設には向く構造だが、古いな」

外層を剥離し、侵入者を排斥するようなシステムでもあったら手に負えない。

「あるいは、中心部のみを守るための壁、というわけか」

通路を突き当たり、まるでセキュリティなど何も無いかのように開く扉の中へ踏み込む。

そこには、



「―――成程。こういうわけか」



ぎしぎしとひしめく、数百にも及ぶ”銀目”がいた。

それはまるで質の悪いホラー映画を見せられているよう。

不定形の銀がところ狭しと動き回っている。

「確かにこれでは管理も嫌になるだろうな。あの狂人ウィズダムの言ったことも分かる」

やれやれ、と苦笑し、祐一は紅蓮を抜き放った。

途端、部屋中の銀目がこちらを向く。

否、既にここは部屋ではない。

「ゴミ処理場と言うわけか。先ほどまでとのブロックとは、広さが段違いだ」

1ヘクタール弱はあるだろう。

おそらくは複数の周を貫通しているブロック。

と、いうことはそれら全てからの”廃棄物”を集めているものと推定できる。

ぞろりぞろりと、”生存”と”順応”という意識しか持たぬ銀目が祐一へとにじり寄り、



「一度に来るなら少なくとも10匹以上にしておけ。……まぁ、言葉はわからないだろうが」



閃! と奔った紅蓮の一撃に切り裂かれて地に落ちた。

その手ごたえに、祐一の眉がよる。

「……あの時の個体より強度が低い? 情報解体も通用している……いや、論理回路の防壁を持っていないのか」

床に落ちた銀目は、結合を分解されて体の半分以上が元の水銀だか銀になってもがいている。

あの時の銀目は体表面の原子でもって論理回路を作り出し、尚且つ情報強化までもを行い、物理的・情報的な強度 は共に高かった。

だが、この銀目は物理的な強度は低く、さらには情報解体まで通用した。

それが意味するところは、



「まだ学習前・・・ということだな。―――好都合だ」



おそらく、あの『ワイズ』より零れ落ちた銀目は何度か情報解体や物理的な攻撃を受けたことがあったのだろう。

メルボルン跡地の外れと言えども人がいないわけでもなく、つまりはあれを見かけた者がなんだか分からずに攻撃 したこともあったはずだ。

それで情報解体に適応するために論理回路防壁を生み出したのだろう。

こちらはまだ、何も学んでいない赤子というわけか。

祐一は目を鋭く細め、紅蓮を正眼に構えた。

「悪いが、時間をかけている暇は無い」

一息。





「―――早々に退場してもらおう」





迸るフラックスと裂帛の圧力。

そして、絶技が展開される。


























                *





























神の子殺しの槍が一直線にフィアへ突き落とされるのを、錬の知覚は確かに捉えていた。

呆然と立ち尽くす天使の少女に死が迫っていく。

知覚速度の相対差はおよそ4倍。

だが錬の目にはそれがスローモーションのように映っていた。

死ぬ。

殺される。

―――誰が。

フィアが。

―――誰のせいで。

セロの。

いや。

助けれない。

それはつまり。

―――自分のせいで。

死ぬ。

フィアが。

自分のせいで。

殺される――――――!?







「うぅぅうわぁぁぁぁぁ…………!!!!!」







間に合わない。

届かない。

……ふざけるな!

たとえこの身が滅びようと、守ると誓ったのではなかったのか。

それを己のミスで潰すなんて、百回殺されたって許されるわけがない。

今のままでは届かないなら、届く術を探し出せ!














……検索

…………検索

―――――――――該当無し














―――なら作れ。

いや、ゼロから作っていた・・・・・・・・・のでは間に合わない・・・・・・・・・

今持っているものを組み合わせるんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・

最大限に活用しろ。

一片の無駄も許されない。

無限の可能性を。

無窮の選択肢を。

あらゆる全てを総合し。

たった一つ、自分だけの絶対を作り出せ!



(―――program06 start)



I−ブレインに今までとは全く違うコマンドを叩き込む。

欲するものは防御。

だが今までのゴーストハックでは潰される。

論理回路の後押しがいる。

物理的な強度の後押しがいる。

それは騎士剣を盾に展開するようなことだ。

言うなれば、ゴーストハックの騎士剣を・・・・・・・・・・・・―――――



演算速度は十二分。

ならば叩き込め。
























(――――――『能力融合・・・・』を開始)

























                *





















「――――――っ!」

迫り来る”死”。

圧倒的なまでのその気配を前にして、フィアは悲鳴すら上げることができなかった。

感じたことは恐怖ではなく悲しみと申し訳なさ。

自分が死ぬことで、錬が、みんなが悲しむということが途方も無く悲しい。

……錬さん……ごめんなさい……!

せめて最後は大好きな少年の顔を見たいと、目線を向けた。

黒髪の少年は歯を食いしばり、間に合わないと知りつつ尚、こちらに手を伸ばそうとしていた。

……ごめんなさい。

それにもう一度だけ謝罪を向ける。

もう、間に合わない。

少年の能力は自分もよく知っている。

横からゴーストハックの盾をこちらの前に展開することは可能だが、それでは簡単に貫かれてしまう。



……だから、この状況はもうチェックメイト。



あまりにも呆気ない結末だけれど、死ぬときはこういうものなんだろう。

フィアは目を閉じ――――――なんの衝撃も襲ってこなかった。

「…………?」

もう終わったのだろうか。

そう馬鹿なことを思って目を開ける。

目の前には、

「――――――え?」








――――――床から生えた幾本もの”騎士剣”が、セロの槍を受け止めていた。









ぽかん、と間抜けな表情で硬直する。

目をこすっても同じ。

ナノセコンド後にフィアを貫くはずだったセロの槍は、自分を守るように床から生えた騎士剣によって阻まれてい た。

「錬……さん?」

横に吹き飛ばされた少年を見やる。

彼は先ほどと変わらない場所に、しかし床に手をついてこちらを見ていた。

「なんだ、これは!?」

セロの声。

この守護者にも状況は分かっていないようだ。

こんな防壁を発動できるものはこの場にはいなかったはず。

錬の能力では「絶対穿孔」を発動させたセロの槍を受け止められるゴーストハックを生成できない。

フィアの目の前で論理回路によって「絶対穿孔」に抗った床と同じ色の騎士剣が、ついに押し切られて崩れてい く。

だが、その前に彼女の体は横合いから飛び込んできた錬によって抱きかかえられ、セロの間合いから離脱した。

普段よりも厳しくなった顔つきの中に、確かにフィアを守れたことに対する安堵が浮かんでいる。

「何をした、少年……!」

セロが追撃をかけてくる。

が、そこで信じられないことが起きた。

「――――――」

錬の腕の動きに従い、崩れかけていた騎士剣が形を再構成した。

そこまではいい。

普通の人形使いでもゴーストハックの再思考は簡単に行ってみせる。

……だから、問題はその後だった。



ゴーストハックで作られたと思しきその騎士剣が、加速してセロを追った・・・・・・・・・・



「なんだと!?」

信じられないものを見たようにセロの声が揺れる。

無理も無い。

こんな能力なんて見たことが無い。

さらに驚くべきことには、騎士剣の生成はそれだけに留まらなかった。

壁から。床から。天井から。

次々に新しく論理回路を刻み込まれた同色の騎士剣が生え、そして例外なくセロへ向かって”加速して”殺到して いく。



……そう。まるで”身体能力制御”を行ったかのように。



「なんだ……。これはなんだ! 少年、お前は…………”何になった”!!

錬は一歩を前に踏んだ。

”悪魔使い”であったはずの黒髪の少年は無数の剣を従えて、雄雄しく立ち、




















「――――――今の僕は、『鋼使い』だ」

























 裏こーなー 

〜もしもフィアが火力中毒だったなら〜

セロを月落としと星穿ちで撃つシーンより



錬 「フィア!」

フィア 「―――了解ヤヴォール<かたっぽの目を光らせながら

錬&セロ 「…………え?」

フィア 「吼えろケルベロス!」

錬 「それ違うッ!」



オチどころか考えナシ








 あとがき

「時間が足りないZE!」

ファンメイ 「ちょ、いきなりなに叫ぶのよー!」

祐一 「―――暑さにやられたか」

真昼 「―――主に脳が」

月夜 「―――そして魂も」

「三連コンボッ!?」

イル 「やかましいわボケ」

「ぐぅ、追撃でゲージアップか……」

錬 「……もういいから、それ」

セラ 「ちゃんとお話進めてください」

エド 「…………」<(無言で槍を作り出す)

「最後が一番怖いわッ!」

月夜 「さっさとしなさい」

「いや、マンネリも一応最後まで続けたらネタになんのかなーって」

ディー 「そんな計算はいりません……」

「はい。じゃぁ普通のあとがきといこう」

フィア 「錬さん大活躍の回ですねっ」

「ここからだけどね。活躍するのは」

祐一 「六天か。一年ほど前にBBSで行われた能力当てクイズの題だったな」

「ん。先行者さんが確か言い始めてねぇ。2週間くらいBBSが満杯になった覚えがある」

錬 「つまりまぁ、ネタバレはされてるんだけど……皆覚えてるわけ無いよね」

「風の中の連中は別だろうけどなぁ……うん」

ファンメイ 「結局どーゆーことなの? あれって」

サクラ 「私のそれと結果は同じだが、過程が違うのだろう?」

「そそ。君に『並列』が無いように、錬に『合成』の能力は無い」

セラ 「なら、どうしてあんなことできるんです?」

サクラ 「『能力創生』の差と言うわけだな。私の能力は『合成』と『操作』、そして『創生』だ」

真昼 「対する錬は『創生』と『並列』に、限定的な『操作』。この違いがわかるかな?」

ディー 「サクラより、錬の方が『創生』に秀でてる、ってことですか?」

月夜 「ご名答。そして『能力創生』を行うにはね、創生する能力の一部始終を実際にデータとして観測して取り込むか、自分で1から設計するか、どっちかなのよ」

サクラ 「私には前者しかできないというわけだ。”神の賽子”を創生したときも、時間がかかっていたしな」

フィア 「えーと、つまり……今回は既に材料があったんですよね……」

錬 「僕は『合成』はできない。でも、合成でできるであ・・・・・・・・ろう能力を一から・・・・・・・・作ることはできる・・・・・・・・

ファンメイ 「うわ、反則じゃんそれー」

「1+1=2だけど、2をそのままもってきても2のハズだ。発想の転換っつーか、抜け穴をついただけだよ。もちろん個人的な独断偏見な説明補完はありまくりだけどもネ」

イル 「小賢しいってこっちゃな」

「そうとも言う」

イル 「認めんのかい!」

「まぁともあれ、ここから先は新能力目白押しだ。ディー&セラ、ファンメイ、錬、サクラと、四つの戦いが決着するよ」

月夜 「定番よねー」

「定番だねぇ。でも俺はそれが好き。陳腐をかっこよく見せてこそ本当の良さが出るだろうさ」

真昼 「かっこいいこと言ってるけど要するに他に思いつかないんでしょ」

「……ぬぅ」

錬 「や、前々からバレバレだから、それ」

「や、もう開き直ってるし」

セラ 「尚悪いような気がします……」

「……えーっと、ではそんなわけで次章は19章『霞桜』ですー」

祐一 「逃げたな」

月夜 「逃げたわね」

「う、うるさーい!」

















本文完成:8月15日 HTML化完成:8月21日(丸々一週間放置して忘れていたという)






SPECIAL THANKS!(敬称略)


画竜点せー異
ジブリール
澄谷

ミラン


written by レクイエム




                                            








                                                                                ”Life goes on”それでも生きなければ...