第二十一章

「この手には剣」



























――森羅万象、世界を穿つ――
























体中に鉄の棒を突き刺されていくようだ。

全身を駆け巡る『森羅』の仮想神経、仮想骨格が次々に損傷を補填してゆく。

さながら火箸を骨にしているような感覚。

血液の代わりに溶解した鉄が流れているような錯覚。



(制御論理式全展開中 稼働率82%)



脱力も疲労も最早ない。

この専心はただ眼前の敵の絶殺だけに捧げよう。

ゆらり、と緩慢にすら思える動きで、ディーは『森羅』を構えた。

森羅ルナ……そウいやァ、そンなもンも持ッてたなァ小僧」

じゅぅ、と肉がこげる生理的に嫌な音。

ザラットラは斬り飛ばされた左肩の断面を焼いて止血を施した。

肉体強化の恩恵を受けた守護者に、ショック症状などのダメージによる能力低下は見込めない。

騎士ならばともかく、相手は焔使い。

攻撃に関してのディスアドバンテージはないに等しいだろう。



だが、―――無かったがどうした。



(並列演算を開始)



身体能力制御と自己領域を同時起動。

ディーの体は半透明の膜に覆われて掻き消える。

客観時間にしてナノセコンド未満、主観時間にて3秒をかけてザラットラの背後へ回り込み、容赦ない斬撃を肩口に 見舞う。

「ッそがァッ!」

それに反応し、周囲に爆発を巻き起こして対応したのはさすが守護者と言えようが、それでも遅すぎる。

踏み込みから腰の回転へ。

腰を回したモーメントを肩へ伝達。

肩口から鞭のように肘へ、そして剣先へ。

襲い掛かるは微細な瓦礫を含んだ熱波の奔流。

どうすればいいかはもう見えている。

騎士剣が縦横無尽に振るわれ、その全てが叩き落された。

「おぉぉぉ…………!!!」

自然と、口から気合の声が漏れる。

この胸の中でマグマの如く煮えたぎるものを吐き出すように。

いつだったか、聞いたことがある。



心は熱く、頭は冷たく。



一時の情熱に任せて我を失うようではただの暴走に過ぎず。

全てを厭世的に冷たく見ているだけではただの木偶に過ぎず。

どちらが欠けても何もできない。

心の熱とは行動の原動力であり、

頭の冷とは動力の制御弁である。

それを今のディーは確かに体現していた。

「あなたはやってはいけないことをやった!」

「知ルかよンなこたァ……!」

「僕のルールだ、知らなくて当然! けど、ツケは払ってもらいます……!」

「だッたら取り立てテみやガれッてンだ……!!」

「もとよりそのつもりです!」

左手の騎士剣『陽』を逆手に構えて体の後ろに。

右手の騎士剣『森羅』を順手に構えて胸の前に。

ディーは獣のように身を低くして地を蹴った。

狩るべき獲物は灼爛炎帝。天蓋覆う全能機関の守護者は第三位!

クラウチングスタートのような姿勢から一気にトップスピードへ持っていく。

「ゲァハハハハハハハハ!!!」

左右両脇よりのクロスファイア。

『絶世悪火』アングラマイニュの十字砲火がディーを挟み潰さんと迫り来、



(身体能力制御を解除)



急激に速度を失ったディーの目の前で炸裂した。

そしてディーは寸前で跳躍。

再び身体能力制御を起動しながら、爆圧半径の円周をなぞる様に飛んでいる。

爆風の波に乗り、その跳躍は高く高く4mを記録。

両手の騎士剣を翼のように構えなおしながら、天井を蹴ってさらに加速。

一陣の矢となりてザラットラへ急襲をかける。

「小細工なンぞ、かけてンじゃァねェェェェェッッ!!」



―――『紅蓮の指』



指先に熱量を凝縮。

エントロピー制御によって”熱は高きより低きに流れる”という定理を誇張する情報制御。

ひとたびベクトルが決まれば、生まれるものは熱線だ。

ザラットラは知る由も無いが、この技は彼のオリジナル、エレナブラウン・ツィード・ヴィルヘルミナが好んで使 用する絶技「大紅蓮指弾」の劣化コピーである。

しかしそれでも人間一人を貫くことは軽々とやってのける。

数にして十本。

両の手全ての指からまるで檻のように熱線がディーに襲い掛かり、



「―――話にならないッ!」



(高密度情報制御を感知)



まるで糸くずのように、かき消された。

「!?」

情報解体。

それは分かった。

だが、あの速度、あのタイミングで数mmの幅しか持たぬ「紅蓮の指」を残らず撃墜したディーの能力は、明らかに オーバースペックだ。

「なァにかやッてやがンなァ……。クスリでもキメてきたカ?」

追撃に振り下ろされたディーの双剣を飛び退って躱したザラットラが低く呻いた。

着を決めたディーは翼のように両手の騎士剣を構えなおす。

心には激昂と凪が等しく波を立てている。






(――――――『万生乃穿』ばんしょうのせん 稼働中)






I−ブレインの無機質なメッセージだけが、ただ響いた。























           *

























無駄な言葉はいらない。

無駄な動きはいらない。

そう、『森羅』とはただそれだけを極限まで追求するものだ。

自らの命をも勘定に入れず、ただ敵を殲滅するだけの最適動作を突き詰めるもの。

使用者の意思をも飲み込むもの。

だが、今ここにおいてディーの意志は森羅のそれと合致する。



『殲滅曲線描画準備完了』



I−ブレインを駆け巡る無表情な命令伝達。

それは普段の『万象乃剣』となんら変わることの無い一連の処理だ。

相違点と言えば、たった一つ。



(―――殲滅対象確定)



白と黒の視界を縦横に入り乱れる赤い線、殲滅曲線のそのほとんどが姿を消した。

残ったものは5本足らず。

そしてその線はザラットラの放った炎弾を迎え撃つ軌道にある。

ディーの双剣は滑るようにその線をなぞり、バターを切るかのように炎弾を情報解体した。

筋繊維の動きから残心に至るまで、無駄など一つもありはしない。

視界から殲滅曲線が掻き消える。



(―――再描画



次いでザラットラの『煉雀獄焔』より火線が迸る。

だがその数瞬前に分子運動の流れを感知したディーのI−ブレインは一本の殲滅曲線を提示している。

振り払う必要は無い。

その線を覆うように『森羅』を掲げ、情報解体を発動。

ザラットラの『絶世悪火』は吸い込まれるように自ずから解体された。

彼の驚愕と動揺の気配がありありと分かる。

が、そこは流石に「守護者」の一端を担う者。

熱線系が通用しないと見るや否や、すぐさま背後の壁を爆破。

破片を大津波のような爆風で加速させ、火山弾の如くこちらを狙ってくる。

その切り替えは評価すべき速さだ。



―――しかし、的外れ。



モノクロの視界を三度乱舞する赤の曲線群。

120倍に加速された知覚、さらにその時間単位を圧縮させたI−ブレイン内の自己意識に遅れることナノセコンド。

騎士剣『森羅』に供された『万生乃穿』がその本領を発揮する。

殲滅曲線描画機構の開放。

I−ブレインがめまぐるしく回転数を上げ、自身の筋力・体調から果てや地形情報まで考慮に入れた最適運動曲線 を生成していく。

ここまでは『万象乃剣』と全く同じアルゴリズム。

殲滅対象であるザラットラを倒すための最適手段が導き出される―――そこに『万生乃穿』はたった一つの命令を 付け加えるのだ。



(殲滅対象を再指定)



ザラットラへ向けて収束しようとしていた殲滅曲線が、打ち出された火炎弾を貫く位置へと移動を開始する。

そう、打ち消すのにもっとも効率の良い・・・・・・・・・・・・・・・運動曲線が捕らえる位置へと。

滑るように両手の騎士剣が新しく描画された殲滅曲線をなぞる。

迫り来る火炎弾のうち6割近くは逃げ場を封じる目くらましのフェイク。

自らの体を直撃するコースにあるものだけを叩き落せばそれでいい。

騎士剣が閃くことわずか7回。

撃ち落した破片でさらに破片を弾き落とすという魔技を見せたディーは、悠々と炎の海の中に立っていた。

さらにおいては、後ろのセラに直撃するコースのものすら叩き落していたところが、その異常さを際立たせてい る。

「小僧――――――」

最早罵声を吐くことも無く、ザラットラは呆然と立ち尽くしていた。








―――『万生乃穿』。








それは『万象乃剣』における”敵”という認識を自由に変更できるようなプロセスを付け加えただけのものであ る。

本来の『万象乃剣』は殲滅対象である敵を滅ぼすまでは、自らの体の損傷や敵の攻撃などを全て戦術から度外視す るもの。



……ならば、その”敵”という対象を指定できるようにすれば、どうなる?



敵の放った攻撃を”敵”と『森羅』が認識できるようになればつまり、それを殲滅するための最適運動曲線が作り 出されることに他ならない。

城主を突貫で討ちに行くのではなく、外堀から一つずつ崩していき、丸裸になったロードを叩 き潰すというある意味では正道の戦術。

”攻撃は最大の防御”という古来よりの格言の究極系。

それがこの、『万生乃穿』である。










(―――再描画)



全方位よりの爆圧を一太刀で切り開く。



(―――再描画)



降り注ぐ火炎の雨を一振りで潜り抜ける。



(―――再描画)



最早止めることなどできはしない。

今のディーの”視界”にはありとあらゆるものの”綻び”が知覚できる。

「だらッしゃァッ!」

ましてや相手は『焔使い』。

分子運動制御の正のベクトルを突き詰めることで守護者となった煉獄の使い手だ。



―――煉獄のみ・・の使い手だ。




これがサクラや錬が相手だったのならまだ話は違っただろう。

複数の攻撃パターンを持つ敵を相手取る場合、『万生乃穿』の処理は格段に負担を増す。

しかしザラットラが使う攻撃はせいぜい区分しても炎、炎弾、弾頭を用いた炸裂弾の三種。

必要となるのはほぼ情報解体だけでよく、残りは軌道を捉えるだけだ。

「がァは……ッ! そうカ、そうかィ優男! そレがテメェの”一線”だッたカ……!」

今さら気づいても、もう遅い。

「ガキはホントに我侭とてめェの都合で動イたってわけだァな……!」

セラを傷つけられたこと。

それだけだ。

守護者だとか、『Id』がどうだとか、そんなものはどうだっていい。

そもそも、だ。

「ンだがそレでいい……。間違ッちゃァないゼ小僧」

後退しながら『絶世悪火』を放ち続けるザラットラ。

詰みは近い。

彼もそれを理解しているだろうが、しかし口元に浮かんだ笑みは消えていなかった。

「マザーコアがどォだトか、シティがどォだとカ、世界の終ワりがどォだとか―――ンなもンは戦の前と後だけに 言ッてりゃァいィんだヨ」

……残り、5m。








「殺しに来たンだろウ? 殺さレに来たンだろゥ!? 
―――だったらその手で他人をブっち殺すのニ、いちイち正義だ のを持ち出すンじゃネェ…………!!」








正義を謳えば人を殺してもいいのか。

善を気取れば敵を討ち果たしていいのか。



―――断じて否。



戦場とは剣と銃が殺意を動力として回転する歯車だ。

ひとたび身を投じれば最早殺すか殺されるかしかそこにはない。

その覚悟を持たずして、戦場へ出ることまかりならん。

だが、逆に言えば、戦場に出る以上は敵もその覚悟を持っているということだ。

……ならばどうする?

そこで信念を貫き通すのはいいだろう。

目的を叶えるために戦うのもいいだろう。

だが、だが、だがしかし!



―――それは全て己の意思だ。



剣を振るい、銃を撃ち、策謀にはめ、後ろから斬りつけて首級を得る。

そう、戦場に立つからには”そう”望んだはずだ。

何も言う必要は無い。

信念や決意なんぞ、胸のうちに留めておくだけでいい。

命をぶつけ合うというただそれだけを突き詰めれば――――――!










弾幕を突き抜ける。

残るは3歩。

ついに殲滅曲線がザラットラの肉体にまで到達する。

瞬間、ディーはI−ブレイン内で絶技のスイッチを押し込んだ。

『万象乃剣』と違い、『万生乃穿』の発動時間は10分足らず。

故にこそ、ここでの絶殺を果たす。





















(――――――閃獄せんごく





















無駄な殲滅曲線を極力削除。

全方位よりザラットラを急襲する形、360度の赤い檻を仮想視界が捉える。

最早眼前の守護者は弾幕を放たない。

代わりに得物である「煉雀獄焔」プルガトリオを用い、大火球を顕現させ始めていた。

圧搾された大気がプラズマ化。

万に近い温度にまで達したそれは容赦なくディーの肌を焼く。

騎士剣の、否、金属の強度を鑑みれば、あれは止められない。

情報解体が発動する前にミスリルを溶かしきられるだろう。

―――だから、





















(――――――狂神乱舞きょうしんらんぶ





















その発動を許すわけも無く。

無慈悲に、無感動に、されど激情を胸の中に押し殺して。

全周囲より襲い掛かったディーの斬撃は、ザラットラの腕を斬り飛ばし、脇腹を吹き飛ばす。

そして霧散しかかった彼の最強絶技である『太陽落とし』オメガフレアを縦横無尽に解体し、



















「そォだ…………。いーィ目をするよォになッたじゃねェか小僧。―――それが戦人の目ダ」



















この戦いを、終わらせた。



























               *






























―――同時刻。

『アルターエゴ』外周にて。





「どぅぉぉぉぉなってんだよお前んとこの物量は――――――!!」

「はいはい叫んでないでキリキリ避けて避けてー。―――後今は私のとこじゃないからそこんとこ間違えんな」

「…………」





閃く荷電粒子砲。

炸裂するマグナムミサイル。

うひゃーとレミングスのように逃げ回るヘイズの悲鳴。

世界を周回する『アルターエゴ』付近の空域で繰り広げられる空戦は、戦いとも呼べないワンサイドゲームになり かけていた。

ヘイズの駆るHunterPigeonも、エドの乗るウィリアム・シェイクスピアも、敵の攻撃から逃げ回るだけ。

それも当然と言えば当然。

なにせ、



「『黄金夜更』ん時の比じゃぁねーぞ!」

「あー、戦力比は1対1000くらいだもんねぇ」

「悠長に言ってる場合か!」



見渡す限りの敵・敵・敵。

1発の攻撃を投げ込めばそれが数百倍になって帰ってくるという生き地獄。

この場所でなかったらヘイズとエドといえども、とっくの昔に空の藻屑になっていただろう。

それがまだ生き延びている要因としては、敵機が無人操縦であり、『アルターエゴ』には攻撃を加えないようにプ ログラミングされているであろうことがある。

「った!」

機首を回し、強引に『アルターエゴ』の地表へ向けてパワーダイブ。

今まさに荷電粒子砲を放とうとしていた十数機の敵機が射線を重ねられて砲撃を断念する。

が、それも一瞬。

すぐさま誘導可能なスマートボムをばら撒き始め、ヘイズとエドは慌てて再上昇する。

しかしそうなると再び襲い来る弾幕の波。

チャフをばらまき離脱を図るが、どういう反則性能か、『Id』の機体が放つ砲弾の半分くらいはチャフを躱し てくる・・・・・・・・・のだ

「死ぬ! これは幾らなんでも確実に死ぬだろ!」

『ヘイズ、いつものことです』

「いつもは”死にそう”なだけだこの間抜け!」

ハリーとの掛け合いにも精細が無い。

「第一お前はなにやってんだよ! とっとと一網打尽にできんだろ!?」

既に錬たちが『アルターエゴ』へ突入して30分と少し。

魔法士の戦闘時間を鑑みればもういくらかは決着がついているはずだ。

「そうね。多分、アルにあたったの以外はもう片付いてると思うわ」

「だったら何さぼってんだよ。つーか防御くらい担当しろ」

「かわいいエド守るならいいけどねー。ヘイズじゃねー」

「余計なお世話だ守備範囲外」

悪態をつきながらもアクロバティックは止まらない。

しかしジリ貧はもうすぐだ。

いくらなんでも無傷で回避し続けれるわけも無し。

ウィリアム・シェイクスピアとは違い、ヘイズのHunterPigeonは修復が効かないのだ。

既に被弾回数は二桁を数えようとしている。

「ちっ……こいつはマジで―――」

『ヘイズ。下より対空砲です』

「っまじか……!」

不意打ち。

というより、そちらまで完全に注意を向けている余裕が無かった。

いい加減の止めなのか、それともそちらへ回す余裕が『Id』に生まれたのか、

「形振り構わなくなったか、ね」



(―――『主よ』キリエ



リューネが指を弾くと共に生まれる空間歪曲。

砲塔より放たれた砲弾が粉粉に砕け散る。

「貸し一つよ」

「ツケといてくれ」

「返済は?」

「踏み倒す」

「上等♪」

エドの放つ銀尖が2機の敵機を落とすのを横目で確認しつつ、上空へ向かって再突撃。

追いすがる弾幕をリューネが最小限の空間歪曲で破砕していく。

「このくらいが限度よ。”世界”に干渉すれば私のことは多分気づかれる」

こんなチマチマした防護しかできないとぼやくリューネ。

「あ? んじゃぁまとめて一網打尽とかダメなのか?」

「一網打尽の後まっすぐ『Id』中枢まで突っ込むのが前提よ。それには”守護者”を倒してもらわないといけな い」

だから先に錬たちに行ってもらったのだ、と。

『Id』に対してリューネが存命していることを知られるわけにはいかない。

故に、彼女が本気を振るうのは一直線に叩き潰しに行くときのみ。

「その前にこっちが落とされちゃ話にならんだろ!」

「それが問題なのよねぇ……あ、エド危ない」

「緊張感ねぇなテメェ……ん?」



(質量物体の接近を感知)



何かが下からやってくる。

この場合の下、というのはつまるところ『雲』の下からと言うわけになる。

「おいおい、まさか―――」

ヘイズが言い割るか終わらないかのうちに、雲を突き破って”それ”が現れる。

最早何かと聞くまでもないだろう。

雲上航行艦の残る一隻―――FA-307

「随分と重役出勤だな」



「重役の分は働くわよ。遅れた分はね」



随分とまぁ、武装なんぞ露ほどくらいにしかないくせに大きいことを言うものだ。

ヘイズは思わず苦笑した。

「そこのアンタ。デューネとか言ったっけ?」

「リューネよ。そんなやられ役っぽい名前はイヤ」

「それじゃぁリューネ。手っ取り早く何すれば『Id』を―――ディーとあの子の助けになるのかを言いなさい」

「――――――」

絶句。

ああ、なんともまぁ――――――



「……こんな馬鹿ばっかが集まったもんだな」

「「―――黙れ筆頭」」



即座に入る二人の冷たい言葉。

で、



「けんか、だめ」

「「「すいません」」」



エドこそが正義なのだった。

もちろんこの間にも凄まじい攻防戦は繰り広げられている。

「で、どーすんだよ」

つくづく緊張感がねぇなと思いつつ、バレルロールで弾幕を躱し、破砕の領域で解体するヘイズ。

全く以ってI−ブレインがあると思考と肉体を分けることができて便利だ。

「どうもこうも、援軍が来たところで一撃決殺できないことには変わらない―――ヘイズ、『虚無の領域』は?」

リューネに限って威力を測りかねていることはあるまい。

ならばこの質問の意図はそれ以外のことだ。

ヘイズはその意図を正確に汲み取って答えた。

「ダメだな。あんだけぶんぶん飛び回れちゃ一網打尽どころか全機捉えるだけの空気分子を俺が処理しきれない」



(疲労率46%)



I−ブレインに命令を送り、現在のコンディションを再度チェックする。

この数値では撃てるかどうかがギリギリというところか。

「ちょっと、人の話聞いてるの?」

返答の無いことに痺れを切らしたか、クレアの顔が投影ディスプレイに映し出された。

と、リューネの目が見開かれる。

「どうした」

「思いついた」

「何をだ」

一拍。

そして。


















「――――――裏技よ」




















にんまりと、親の仇でもとったような顔で、世界を名乗る少女は笑みを漏らしたのだった。























 裏こーなー 

〜多分誰もが思うこと〜






万生乃穿=直死の魔眼






……何も言うな。俺も後から気づいたんだっ!




 あとがきー

「大・強・行・軍!」

セラ 「何がですか?」

「いや、この章のこと。頑張って一日で仕上げてみた」

ディー 「なんでそんなことを」

「俺は世界を縮める男だぜ?」

ディー 「シグマさんくらいしか分からないネタはやめてください」

「ん。というかねぇ、ここ一月弱くらい音信不通になってたもんで、ブランクを取り戻すためってのもあるんよ」

セラ 「死亡説も流れてましたです」

「まじで!?」

ディー 「はい」

「ぬぁ、それは困る、というかなんだそりゃ」

ディー 「更新速度、というか、不必要なネタ満載だけが売りだったのにそれが消えちゃったからかと」

「あ、それは何か分かる気がする。嬉しくないけど」

セラ 「何やってたんです?」

「んー……まぁホント色々やけん。ここで話すこっちゃないからちゃっちゃと解説に行こう」

ディー 「あれ、珍しい展開に」

セラ 「そうですね」

「じゃっかぁしい。ほれほれ今回はお前さん方の決着なんだからもっとこうエンタメっぽい言葉を喋れ」

セラ 「私の出番ナシですけど」

『極光』アウローラの出番がホントはあったんだけどねぇ。忘れてた」

ディー 「僕もなんだか我武者羅のうちに終わってたんですけど」

「それは当然だろに。VSザラットラの話は要するに我侭な弱肉強食の話なんだから」

セラ 「?」

「考えてもみ。そもそも『Id』との戦いも”お前気に入らないからぶっ潰す”の域から出てないんだよ」

ディー 「うわ。同盟の方々が聞いたら引きそうな言い草ですね」

「そうかもしれんけど、これはこれでいいと思ってるよ。戦いに理由とか正義とか未来を求めるのは間違ってない、というか当然のことだけれども、実際に戦ってる間にんなこと考えてる暇なんてそうそう無いと思うんだべさ」

セラ 「それは……そうかもしれませんけど」

「その手で剣を振るうのに、いちいちそんなこと持ち出さなくちゃいけないほうが狭量だと思わないかい?」

ディー 「詭弁の気がします……」

「詭弁っつーよか解釈の違いかな。”そういうものだってあるはずだ”って、そんな感じ」

ディー 「はぁ」

「ま、そーゆー難しい話は俺の専門じゃないし。第一今さらLGOでそんなこと言ったってしゃぁないだろう?」

ディー&セラ 『確かに』

「だからもうこの物語はこれでいいのさ。心に秘めるよく分からない熱さでも、確かに人は動くことができる」

「ああ、勿論開き直りで言ってるわけでもないし、丸投げしてるわけでもないから。そこだけは誤解しないでほしいのでござる」

ディー 「語尾で一気に説得力が消えましたね」

セラ 「すずめの涙ほどもないです」

「くは、それもいつものことかも」

「さ、なんか意外に平和なあとがきになったんで、崩れる前に予告しとこう」

ディー 「次章は第二十二章『約束の一撃』」

セラ 「唯一のオリジンさんのイグジストさんとファンメイさんの決着ですっ」

「んではお楽しみに」


















本文完成:11月18日 HTML化完成:11月18日

SPECIAL THANKS!

ジブリール

ミラン
written by レクイエム



                                            








                                                                                ”Life goes on”それでも生きなければ...