展示室

●　●　　先　行　者　　●　●

もう一人の最高傑作Ⅶ

『VS　SEER’S　GUILD’S　CYBORG』
＆
『VS　BERLIN’S　BAAL‐ZEBUL』

＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋

闇夜に光る狼の眼は

悪魔の造りしもの

ただ愚者と心の盲いたるもの

これを美しく

かつ楽しきものと見る

ピエール・ド・ボーヴェー　著
『動物説』より抜粋

＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋

「・・・・・『賢人会議』・・・？」
呆けたような錬の声が、路地の薄暗闇に吸い込まれていく。
[そうだ。『賢人会議』。いずれはこの世界を統一し支配する、すばらしい組織だ。強い奴だけの世界を作るんだ。俺（・）やお前（・・）みたいな奴らの世界さ。悪魔使い]
何もかも悟ったような、高慢で馴れ馴れしいその態度は、錬の気にひどく障った。
「・・・・・それなら、お前の言う“弱い奴ら”はどうなるんだ？」
内心は「ふざけるな！」と叫びたい気持ちで一杯だったが、類稀なる強い精神力が錬に冷静な思考を維持させていた。
冷静さを欠くことも、欠いたことを敵に悟られるのも、即、死に繋がるのだから。
姉兄から耳にタコが出来るほど教え込まれ、また幾度と無く経験した戦闘から得た戦いにおいての鉄則だった。
噛み付いてやりたいほどの激しい衝動を抑える錬の気持ちなど露とて知らず、巨大な男は錬の質問に平然と答える。
［まあ、全員死ぬか、良くて奴隷だな］
その傲岸不遜な言葉に、錬ではなく今まで睨むだけで黙っていた少女がかっと眼を見開いて男に咆えかかった。
「なによそれ！？それじゃあ、ナチスのファシズムと同じじゃない！馬鹿みたい！成功するわけないじゃない！」
[ああ、それは大昔に在った、ユダヤ人の迫害主義がどうたらこうたら、のことか？それは“ヒトとヒト”の闘いだったからだ。俺たちは違う。人間や魔法士の中でも、特に優れた力を持つ者たちだけによって構成される『賢人会議』の力は絶対だ。反乱も抵抗も、在り得ない。それと、小娘。お前はもちろん死ぬ側だ。なんたって、“弱い奴”だからな]
「こ、こいつ―――――！」
ふん、と鼻であしらわれ、少女が奥歯を噛み締める。
そんなことは意にも介さず、男は少女の胴体ほどもある頭を錬へと向ける。
[そんなことは、まったくもってどうでもいい。悪魔使い。俺は、お前に用があるんだ]
（どうせ、ろくなことじゃあないんだろうな）
そうわかりつつも、一応尋ねる。
「突然グレネード弾を投げてきた奴が、僕に何か用？」
〔それは俺が自主的にお前の力を試してみた、ただそれだけのことだ〕
自主的に、という言葉に引っかかりを覚える。
では、今現在の行動はコイツの意思ではないということになる。
つまり、こいつが今自分の前にいるのは、賢人会議の意思ということ。
「・・・で、そのご立派な『賢人会議』が、一体僕に何の用なのかな？」
男の口から出た言葉は、本当にとんでもないことだった。

[俺はお前を『賢人会議』にスカウトしに来た]
「・・・なに？」「え！？」
錬だけでなく、少女も思わず聞き返してしまった。
男は、やれやれ、と子供に世話を焼く親のようにオーバーに両肩を上げる。
[なんだ？魔法士のくせに聞こえなかったのか？いいだろう。もう一度、簡潔に、わかりやすく言ってやる。仲間になれ、って言ってんだよ]
（・・・・・なんだよ、それ？）
一瞬、気が遠のくような感覚を覚えながらも、錬は冷静を装い、言葉を返す。
「・・・・・仮にお前たちの仲間になったとしても、そのことで僕に何か利点があるとは全然思えないな。お前の言い方だと、僕の大切な人たちはみんな“弱い奴”ということになる」
めちゃくちゃな真昼や月夜やヴィドはともかく、“町”のみんな――――弥生さんや河名さんや村長さん達――――は、なんの“力”も持たない。錬の言葉に同意を示すように、背後の少女もこくこくと何度も頷いていた。
しかし、男は低い笑いでそれを嘲笑い、今度こそとんでもないことを言った。

[あるさ。天使（アンヘル）の４番―――――フィアを殺さないでおいてやる]

冷静だった錬の頭を、一気に冷たい衝撃が貫いた。
「なっ！？一体どういう意味――――――」
「ま、待って！ちょっと静かにして！」
少女が、今にも掴みかかろうとしていた錬を制止して、耳をすませた。

タタ・・・タタタ・・・ドン・・・

「―――――銃、声？」
思わず漏れた錬の呟きに、青ざめた少女が頷いて返した。
途端に錬の顔が強張り、見る見るうちに蒼白の色に染まる。
仕方も無いことだ。
なぜなら、その音がする方向は――――――
「フィアが、向かった方向だ・・・・・！」
［その通りだ］
錬が、くぐもった男の声に振り返る。
その黒真珠のような精悍な眼には、怒りの炎が見て取れた。
[シティ・ベルリンの魔法士機動部隊と人間の精鋭の一個師団だ。“駐屯地襲撃犯”と４番（フィア）がここにいるって教えておいた。馬鹿な奴らだ。本物の犯人からのタレコミを信じるとは]
「「！！」」
錬が唇を噛み、少女の顔は一瞬で蒼白になる。
(――――しまった・・・最初から仕組まれていたんだ！フィアが危ない！！)
「――――フィアッ！」
[おっと。行かせるわけにはいかないな]
叫び、駆け出そうとした錬の目の前の視界に、人間では有り得ない（・・・・・・・・・）速度で大男が滑り込んできた。
予想していなかったことに慌ててつま先を地面に食い込ませ、加速しかけた小柄な身体に急ブレーキをかける。
「くっ！？」
丸太のような豪腕を拡げて壁のように立ちはだかる男が、嘲笑を含んで、言う。
[俺の気のせいか？まだ答えを聞いてないみたいなんだが・・・・・？仲間になるのか？ならないのか？なれば、４番（フィア）だけは見逃してやる。ならなければ、お前はここで俺が殺す。その後、そこのガキも４番（フィア）も殺す。俺はガキに興味はないからな]
「・・・・・・！」

《Ｉ－ブレイン、バイタルリンクを確立。通信を受信》
（え？）
少女のI－ブレインに突然、＜情報の海（バイタルネット）＞を介しての魔法士からの通信が入ってきた。いきなりの事にあたふたとする少女の頭の中に、声変わりにも至っていない聴きなれた少年の声が響く。
『僕だよ。君に、頼みがあるんだ』
『え？あ、あんたなの？悪魔使い――――さん？』
『錬でいいよ。こいつは僕がなんとかするから、君はフィアを助けて欲しいんだ。多分こいつは普通の人間じゃない。おそらくは、』
『・・・“サイボーグ”ね。しかもあの高機動性からすると、おそらく対魔法士用・・・・・』
『うん、僕もそう思う。えっと、悪いんだけど、君だとちょっと分が悪いと思うんだ。だから、僕がさっさとやっつけて、すぐに君に追いついて援護する。頼めないかい？』
『え？で、でも・・・・・』

この男の子は、忘れてはいないだろうか？
自分が、フィアを恨んで、殺そうとしていた者だということを。
それをわかって、信用してくれるというのか？

『お願いだ』
『・・・・・ねえ。私を、信用してくれるの？』
『・・・うん。どのみち、この状況じゃあ信用するほかはないしね』
『――――ありがとう！話はわかったわ。どうすればいいの？』
『僕がこいつの気を引き付けるか、もしくは一時的にでも視界を見えなくする。君はその間に、あの通路から行って。相手の手の内が分らないから最初はちょっと手間取るだろうけど、多分すぐに倒せるから』
錬の視線が、ほんの一瞬だけチラリと男の背後の通路を見た。それに、少女もまた視線だけで頷き返す。
『わかったわ。それと、私の名前はナナ。ナナ・スヴェロフスキーよ。覚えておいてね、錬』
『わかった。ナナ、フィアをお願い。・・・通信終わり（オーバー）』

錬とナナのI－ブレインでの人間の思考速度を超えた作戦会議は、ものの３秒ともかからずに終わった。
「断固として断る」
[決断が早いな。・・・まぁ、いい。“賢人方”はお前を入れたがっているらしいが、お前のような甘ちゃんの雑魚が入っても我が組織のプラスになりはしない。俺がいれば、それで充分だ。――――――――――死ね]
深く被ったフードに隠れた男の両目が、絵の具を直接絞り付けたかのような、赤い無機質な光を放った。
おそらくは、対騎士用に視覚増強装置を装備しているんだろう。
しかし、今の錬にとって、そんなことはどうでもよいことだった。立ちはだかる敵の後ろに、自分の助けを待っている少女がいる。

ならば、敵が何者であろうとも―――――――！

「お前を倒して、フィアを助ける！！」
《＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞を常駐。＜氷槍檻＞展開を開始》
マクスウェルによって空気中の水分が凝縮され一瞬で出現した氷の槍が、大男の周囲を隙間無く球状に取り囲んだ。
［な！？］
「――――今だ、ナナ！！」
錬の叫びに、いつでも走れるように低く身構えていたナナが頷き、一気に駆け出した。
同時に、氷の槍が一斉に、大男のフードを、コートを、身体を、次々と貫いていく。
［ぐぉおっ！］
氷の檻の中から、くぐもった叫びが聞こえる。
だが、これではまだ終わらせない。
フィアを危険な目に合わせた罪は、充分にとってもらう。

＜便利屋＞は、仕事によっては、やることは＜傭兵＞と大して変わらない。
共通した心構えがある。
それは――――――――

《＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞展開、氷槍を水蒸気爆発。水蒸気爆発エネルギーを任意一点集中。
＜大炎神＞展開》

敵を殺る時は徹底的に、殺れ。

転瞬、氷の槍全てが一斉に急激に沸騰し、膨大な水蒸気となる。
その高密度に圧縮されほとんど物質化した荒れ狂う凶悪な空気の塊は、中心点――――男のいる氷槍檻の中心――――に向かって一斉に突き進む。
［ぬがぁあぁあああああああ！！！］
男を包み込む形で、赤い光の光球が生まれ、どん、という凄まじい轟音と共に破裂。
近くの無人の家々の窓は大半が割れ、もうもうと俟う粉塵が辺りを埋め尽くした。
自身の周囲に＜分子運動制御の悪魔（マクスウェルデーモンプログラム）＞で空気の断層を作って衝撃を防いだ錬が呟く。
「これなら、幾ら堅くて厄介って評判のサイボーグ体だって・・・・・」
『そうそう！あのね！』
「わっ！？」
突然頭の中に響いた可愛らしい声に一瞬ビクリとしながら、錬は路地のほうに目を凝らす。
「？」
さすがは元軍人。
もの凄い速さで駆けて遠のいてゆくナナが、頭だけでこちらを振り返っていた。
『錬にそっくりな“零”ね、すんごく強いの！今はどこか別の町に出かけてていないけど、すぐに戻ってきて加勢してくれるから、それまで頑張ってね！』
《ノイズメイカーの影響により通信途絶。バイタルリンク永久消失》
I－ブレインの報告と同時にナナの姿が高い建造物の影に隠れる。
錬は、両の手を腰にあてがって、ため息をついた。
（僕にそっくり、ってことは、そいつが僕のプロトタイプの『ＥＶＥ－００』の可能性が高いな。・・・それにしても、）
先ほど爆発のあった場所を振り返る。
霧のような埃の中に衝撃で剥がれた建物の外壁がパラパラと降り注ぐ以外、何かが動く気配はない。

それよりも気になるのは、あのサイボーグの言っていたこと。

（“賢人方”が言っている“らしい”、か。ということは、こいつは“賢人たち”っていうリーダー格に対面できない下っ端ってことなんだろうな）
下っ端がこの程度なら、上の奴らもたかが知れているだろう。
自分を過大評価するな、と常々真昼兄や月姉に言われてきてはいるが、身体の一部を義体化した、身体が硬いだけの前時代的なサイボーグに倒される筋合いはまったくない。そもそも、サイボーグは魔法士の一世代前の強化人間体だ。
南部式拳銃とブローニングＦＮハイパワーとの性能の違いくらいに力の差がある、“月とスッポン”のいい例だ。
『魔法を使えない』や『故障が起きやすい』など、要因は挙げればキリがないが、しかし、今はそんなことを考えている暇はない。
フィアたちを助けに行かなければ。
月姉や真昼兄やヴィドがついているから、並大抵のことではやられたりはしないという核心はあるが、自分が行かなくても大丈夫という保証もまたない。
戦力は多いほうがいい。

ほんの少し気になって、中に粉々に壊れ果てたサイボーグの破片が散らばっているであろう、もうもうと立ち込める土煙をちらりと後ろ目に見ながら、ナナという名の少女の後を追いかけようとする。
ふと、ナナの『頑張って』という言葉がくすぐったく感じた。

「頑張れ、って言われても、もう終わって――――」

[何が終わったんだ？]

「――――なに――――！？」
《危険勧告（ＤＡＮＧＥＲＣＯＬＬ）！電磁収束反応感。６時の方向より高速弾体急速接近。＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞強制終了。＜空間曲率制御デーモン（アインシュタイン）＞展開。空間歪曲出力最大》＜短期未来予測デーモン（ラプラス）＞の危険勧告に、肉体が反応するよりも早く空間歪曲を発動させる。
超高速で撃ち出された“何か”が、捻じ曲げられた空間の湾曲に従って背後から錬の真横を避けて前方の金属製の壁を轟音を立てて貫いた。
「なっ・・・！？」
錬の住む町とは違う、広大な“町”を囲っていることで全体を完全に守れないシールドの機能を保全するために、強風にも耐えられるように造られた金属と強化コンクリートで構成された堅牢な建物の壁に、錬の拳ほどの球形の穴が穿たれた。

〔こんなことで驚いてもらっては困るな〕
抑揚の在る人口声帯のような耳障りな声に、恐る恐る首だけで振り返る。
煙の中から突き出た、丸太のように太い、鎧にも似た拳の上。
こちらを向いた、紫電の走る黒い穴（・・・）。
「・・・まさか、＜電磁加速砲（ＥＭＬ）＞・・・・・！？」
〔その通りだ。強襲型歩兵用重電磁加速砲を内蔵している。通称＜レールキャノン＞だ。これ以外にもまだまだあるぞ。死ぬまでに全部見れるか？〕
（冗談、でしょ・・・・・？）
錬の頬を冷や汗が伝い落ちる。
＜大炎神＞に、あの爆発に耐えたというのか？
それに、レールガンを腕に内蔵したサイボーグなど、もはやアニメや漫画の世界の話だ。
しかしそれが現実に目の前に存在しているということは、まだ耳鳴りのする鼓膜が教えてくれている。
左足を軸に背後を振り向き、月姉お手製の疑似騎士剣型サバイバルナイフ＜朱榮（しゅえい）＞を胸の前に平行に構える。
“町”のシールドをすり抜けて吹く風に煙が吹き散らされ、コートのなくなった男の姿がはっきりと見えるようになった。

「・・・・・！！」
そこに現れたのは、まるで、西欧・東洋の中世の鎧を混ぜ合わせたような、芸術品とは百歩譲っても言えないような、無骨でごつごつとしたフォルムの巨体だった。
頭も、もはや人間であった頃（・・・・・・・）のそれには似ても似つかず、ガスマスクで形作られた（・・・・・・・・・・・）ような気味の悪い形をしている。
（――――全身、サイボーグ・・・・・？）
〔驚いたろう？〕
呆気にとられる錬に、男が、本来口の在るであろう部分に備えられているスピーカーから人口声帯の声を発した。
〔驚いたろう？俺は脳と脊髄の一部以外の全部を機械（サイボーグ）化したんだ。ただ、魔法士に勝つ為にな〕

（“ただ、魔法士に勝つ為に”・・・・・）
考えられなかった。
全身を機械（サイボーグ）化するということは、力を得ると同時に、人としての機能を失ってしまうということをも意味する。
暑いも寒いも痛いも心地よいも、今まで自らの皮膚・皮膜が感じていたもの全てが数字と記号でしかわからなくなってしまう。
それは想像以上の苦痛であろう。
全身を機械（サイボーグ）化する者が極端に少ないのは、自己の身体のあまりの変質に、人間の身体を構成する部品となった脊髄・脳組織や精神がついていけずに、発狂してしまう者が多いからだ。

ただ、物理法則を簡単に否定し自然の摂理を自在に操る魔法士と互角に渡り合い、対峙する為に得た力。

人間であること（・・・・・・・）を犠牲にしてまで手に入れた力。

それは、決して嘗めてかかることのできない力。

〔今から殺す人間に名前を名乗っても仕方がないが、一応言っておこう。俺の名はオブルグだ〕
『オブルグ』――――――それはチェコ語で化け物を意味する言葉だ。
「・・・・・僕は、＜悪魔使い＞、天樹錬だ」
オブルグが、くくく、とくぐもった歪な笑いを漏らす。

そして、“宣言”した。

〔さあ―――死合い（・・・）を始めよう！悪魔使い！！〕

※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

まっすぐと続く狭く暗い裏路地に、爆竹を打ち鳴らすような音が響き渡る。

さっと屈めた頭の上を、数え切れないほどの銃弾が通り過ぎていくのを肌で知覚した。
「この――――――当たったら危ないじゃない！」
疾走しながら振り返った月夜が、右手の＜Ｗｚ６３サブ・マシンガン＞を横へ一閃した。
「ぐぁっ！」
後ろから迫ってきていた黒い迷彩服の男が、防弾ベストの隙間を貫かれてもんどりうって倒れこむ。
そのまま後続していた別の男たちにぶつかり、数人が巻き込まれてゆく。
「あちらさんは当てる為に撃っているんだけどね。ま、なかなかやるね、月夜。腕を上げたんじゃない？でも、残弾が心細くなってきたかも」
月夜の隣を並走する真昼が、ベストのマガジン・ポーチを漁りながら息も切らさずに言う。
月夜が、銃把（グリップ）から長い弾倉（マガジン）を取り出し、残弾数を調べてから舌打ちをして後ろ手に放り捨て「わかってるわよ！」と悪態を返した。
「大体、何なのよあいつ等！？突然群れを成して襲って来て！」
「動きや装備からして、シティ・ベルリンの叩き上げの正規軍だね。かなり腕が立ちそうだ」
真昼の言うとおり、追ってくる男たちは皆特殊戦用に銃身（バレル）が切り詰められ銃床（ストック）を取り外してコンパクト化されたドイツのＨ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）社製の＜Ｈ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）ＭＰ－５Ｋクルツ＞を手に抱えていた。
「ふん、どうだか！」
路地の角を曲がると、目の前に二人の背丈と同じくらいの高さのフェンスが現れる。
しかし、二人ともそんなもの存在しないかのようにフェンスに向かって駆けると、まったく同時のタイミングで軽々とそれを飛び越えた。
そのまま、まったく同時に地面に足を付き、まったく同時に走り出す。
その後ろを、まるで鏡のようにそっくりの動きで、フル装備の兵士の群れが次々に飛び越え、着地してゆく。それを後ろ目に見た月夜が呟く。
「・・・・・前言撤回」
言いながら、壁に銃の先端を押し付けてスライドを後退させ射撃可能にする。
「でしょ？これは本気でかからないと、ちょっとやばいかも、ねっ！」
真昼が上半身を勢いよく翻して、アサルトライフルを点射した（バーストショット）。
ヴィドから手に入れた、神戸軍兵器開発局の跡から回収された新型の＜神戸九八式突撃銃（アサルトライフル）＞が凶暴な咆哮とともに火を噴いた。
突如光ったマズルフラッシュに、優秀な兵士たちは本能的に咄嗟に厚いアルミの看板に身を隠したが、７．６２ミリ弾の鉄の雨に看板ごと貫かれて一瞬で無言の蜂の巣と化した。
「すごいじゃない、真昼！」
「ヴィドさんに感謝だね！」
二人が角を不規則に曲がりながら後退し、点射を繰り返す。文字通りの猛射を敵兵の比較的複数集まっている所へ加える。
それも単なる一斉射撃ではなく、巧みに時間差を交えた交互射撃でマガジン交換のロスを補い合い、途切れる事の無い連射を追随させて驚異的な集弾率で迫り来る敵を火線に捉える。
６０回目の角を曲がり、曲がる寸前に真昼が後ろ手に野球ボール大の球を放り投げる。
数秒の滞空時間の後に地面に落ちたそれを目の前に見た追撃部隊の先頭の兵士が、「手榴弾！」と叫ぶのと球が爆発するのはまったく同じタイミングだった。
球――――＜Ｍ２６Ａ１破砕手榴弾＞――――が真っ赤な炎を噴き出し、叫んだ兵士は１０メートルも上空に吹き飛ばされ、そのまま地面に全身を打ち付けて即死した。
飛び散った鉄片が一団に真正面から襲い掛かり、彼らを行動不能にしてゆく。
何度かそういった戦闘を繰り返すうちに、路地を抜けて大通りへと躍り出た。
追ってくる兵士の数もかなり少なくなっている。
「敵についての情報が足りない。残弾もやばい。僕もまだまだだね。ひとまず追っ手を巻いて、隠れ―――――――」

ふと、真昼の耳に後方で、“バシュッ！”という空気の抜けるような微かな音が聞こえた。

（この音は―――――まさか！？）次に我が身に襲い掛かってくる爆風（・・）を予想した真昼が並走する月夜に叫ぶ。
「月夜っ！！携帯用ロケットランチャー（ＲＰＧ）だ！！！」
「え――――！？」
反射的にその身を旋転させた月夜の視界に、鉛色のグレネード弾の丸い先端が入る。
信じられなかった。
こんな狭いフィールドで。
しかも、仲間がすぐ近くにいるというのに。

月夜の視界を、血の繋がらない自分を姉と慕う、可愛い弟の顔が掠めた気がした。

（―――――錬・・・・・！）

※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

〔まずは――――――こいつだ！〕
オブルグの背中が盛り上がり、ボシュ、と音を立てて展開（・・）した。
続けざまに、そこから円筒形をした缶のようなものの群れが白い煙を引いて飛び出した。
全部で２５の光芒がオブルグの左右の空間に大きく弧を描く。
《レーザー補足感。解析。解析完了。回答、マイクロミサイル。２５基》
「ッ！！マイクロミサイル――――！？」
そんなものまで内蔵しているとは、もはや正気の沙汰とは思えない。誘爆したらどうするのか、とかいう心配はしないのだろうか？
俊敏な動きで大きく後ろに飛びのくと、続けざまに後転（バクテン）して十分に距離を稼ぐ。
もちろん、進化したミサイルは小型といえど追跡装置（シーカー）によって目標（ターゲット）を狙い続ける。

（でも、甘い！）

《＜運動係数制御デーモン（ラグランジュ）＞、＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞展開。運動係数を５倍、知覚係数を２０倍に加速。氷弾生成、マイクロミサイルに照準レティクルを捕捉（ロック）。レディ、攻撃（ファイア）、攻撃（ファイア）、攻撃（ファイア）・・・》
ミサイル群の動きが２０倍に引き伸ばされる。
２５ものミサイルに、無数に生まれた鋭い氷弾が次々と精確に撃ち込まれてゆく。
２５個の紅蓮の光臨が膨張し、２５の真っ赤な大輪が空中に咲いた。
発生した爆炎が、錬とオブルグとの間に炎の壁を作り出す。
（これを利用して近づけば―――――！）
ナイフを構え、姿勢を低くして爆炎に突っ込む。
＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞で自分の周囲に作り出した真空のバリアに守られながら炎の壁を抜けると、目の前には男の鎧のような巨大な身体。
その腹部に、迷わずナイフを突き立て―――――

〔残念だったな。〕

突如、鋭い痛みが錬の脳天を稲妻のように貫いた。
《危険（ＤＡＮＧＥＲ）！電磁波ノイズ反応。Ｉ－ブレイン、動作効率３０％低下。＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞強制終了》
「ぐっ・・・・・！？」
目の前が痛みでぼやける。
眼前のオブルグの腹部に、見慣れたそれ（・・）がミニチュアのように小さくなって組み込まれていた。

（―――――――ノイズメイカー！）

〔ふんっ！〕
「ぐあっ！？」
鈍い音とともに、鉄骨のように太く硬い右腕がぶんと空気を震わせ、動きの止まった錬を軽々と薙ぎ払った。
錬の小柄な身体は、まるで投擲された小石のように放物線を描き、その先にあった民家の窓をぶち破って中の壁に激突する。
〔俺の半径３メートル以内に近づくと、小型高出力のノイズメイカーの餌食になるぞ。頭を使え。魔法士相手に、これくらいは当然だろう？〕

後頭部に床の感触を感じながら、オブルグの嘲り声に唇を噛む。
「ぐっ・・・・・くそっ！」
両足をぐんと持ち上げ、腹筋の力で弾機（バネ）のようにして一挙動で立ち上がる。
途端に、左肩にずきりと痛みが走った。
(何が“下っ端”だ！)
嘗めてかかった自分に腹が立った。
しかも、こんな奴が顔を合わせることも出来ない強者――――――賢人がまだ複数いるかも知れないというのだ。
自分の“世界最高クラス”という自負も、考え直す必要がありそうだった。

しかし、どうすればあいつに勝てる？
ベルリンの駐屯地襲撃跡に魔法を使った痕跡がなかったのも、あいつが犯人なら充分頷ける。
魔法を使う必要がないのだから。

ノイズメイカーがあるから、３メートル以内に近づけない。
つまり、ナイフによる直接攻撃はほぼ不可能。
出来たとしても、Ｉ－ブレインへの深刻なダメージは避けられない。
フィアたちを助けるためにも、なるべくそれは避けたい。
しかも、氷槍による攻撃も効果はなかったようだ。
先端が欠けたナイフにちらと目を落とす。
よほど堅いらしい。
《解析―――――解析完了。対象装甲、積層型モノコック装甲と特定。表面、硬化論理回路加工在り。現時点の装備では破壊は不可能》
試しに解析してみて、その結果に驚きを通り越してもはや呆れてしまった。
モノコックボディなんて、まるで中型戦車クラスの防御力ではないか。
ノイズメイカーを氷槍・氷弾・その他諸々で機能を完全に停止させるのがベストだが、簡単にそうさせてくれる相手とも思えない。
人間なら弱点の塊であるはずの頭部は、明らかに堅牢な構造をしていそうだ。
それに、ノイズメイカーを身体に埋め込むなんてするくらいだから、半端な攻撃が通用するとは思えない。
実際、＜氷槍檻＞や＜大炎神＞といった最初の攻撃では目立った傷すら与えることは出来なかった。
自分のプロトタイプ――――――零とやらが来る気配もない。
加勢は望めそうもなかった。

（だけど、ここで諦めるわけには絶対にいかない！！）

現状分析と次の行動作戦をコンマ８秒で決めると、同時進行で傍らにあったテーブルクロスを引き千切って、肩の裂傷を乱暴に巻いて止血を施す。
元々、加勢など計算に入れてはいない。『物事は常に最悪の方向に考えろ』。
真昼の口癖であり、戦いでの鉄則だ。

《＜仮想精神体制御デーモン（チューリング）＞展開。ゴーストハックをオートスタート。攻撃を開始（アタック）》
壁に手を突き、強化コンクリートをゴーストハックする。
鉄と強化コンクリートの構造材は瞬時に拳へとその姿を変え、首をもたげてオブルグへと突進する。
〔驚いたな！本当にゴーストハックも使えるのか〕
オブルグが緊張感などまるで無いように感心の声を上げた。
オブルグの巨体より一回り小さい拳が捻るように身を振りかぶり、オブルグに襲い掛かる。
その隙に窓から勢いよく飛び出し、着地の瞬間地面に手のひらを叩きつけさらに六つの拳を繰り出す。
（喰らえ！）
新たに生まれた六つの拳を合わせて七つの拳の群れが、同時にオブルグに撃ち落とされる。

転瞬、オブルグの右腕が高速で動き、全ての拳の手首を一閃した。

《情報構造体、消滅》
チリリ、とＩ－ブレインにノイズが走り、拳たちが砂と化してゆく。
オブルグの右腕には、いつの間にか銀色に輝く鉄板のような四角く分厚い“剣”があった。
錬には、それが何なのかがよくわかった。
「――――騎士、剣――――」
〔正解だ。Ｉ－ブレインというのは、要は多くの作業を同時にこなせ、＜情報の海（バイタルネット）＞にアプローチが出来るほどの演算速度を持った超高性能のバイオコンピューター。つまり、機能を特定し、Ｉ－ブレインに代わる高性能のコンピューターさえあれば、魔法士でなくとも騎士剣くらいなら使えるということだ。情報解体用のコンピューター・モジュールだけなら、楽に積めるしな〕
ここまで何でもありだと、もはや常軌を逸した装備としか言いようがなかった。
「くっ！」
〔無駄だ！〕
手当たり次第にランダムでオブルグの足元から地面のセメントをゴーストハックした槍を突き出させるが、オブルグは意にも介さずそれらを小枝のように跳ね除けながら錬へと迫る。
オブルグの左の握った拳が突き出され、錬を照準した。
〔これはどうだ！〕
錬の頭ほどもある手が、錬に向かって炎を噴き出しながら“発射”された。
「は――――――――！？」
（ロケットパンチ！？）
慌てて屈んで身を低くする。ロケットパンチは、頭上を一瞬で通過して、背後の建物にめり込んで停止した。
＜短期未来予測デーモン（ラプラス）＞の全方位視界でそれを捉えつつ、意識をオブルグに集中する。

オブルグの空になった手首の中に、四角い“銃口”が出現していた。

銃口というにはあまりに大きなそれが、２０倍に引き伸ばされた視界の中で、ぱりっと青白いスパークを走らせた。
「っ！！」
〔ひゃっはぁっ！！〕
瞬間、親指ほどの絶縁処理の施された劣化ウラン弾が、秒速８０００ｋｍにまで加速され、放たれた。

視認出来ない！速過ぎる！

《＜空間曲率制御デーモン（アインシュタイン）＞常駐。＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞強制終了。重力改変、右方に力場を最大レベルで発生》
＜空間曲率制御デーモン（アインシュタイン）＞によって自身の右の空間に力場を発生させる。
もちろん、秒速８０００ｋｍの大砲を自分の貧弱な能力で完全に止められるとは思っていない。
右肩がミシと軋み、錬の身体が一瞬で左へと弾け飛んだ。
右肩を親指ほどの劣化ウランが浅く削る。
「くっ――――――！」
錬が吹き飛びながら側転し、体勢を立て直そうと地面に手を突いた瞬間、ほんの１秒前まで自分の居た場所の後ろの建物が基礎を粉々に吹き飛ばされて轟々と音を立てて崩れ始めた。
（大口径のレールキャノン！あ、あんなものが当たったら・・・・・！！）
自分が小さく息を呑む音が耳朶に伝わる。
頬を冷や汗が伝い落ちた。
鋭い痛みを発する右腕の傷を押さえて、今の攻撃を回避出来た自分の実力と運に感謝した。

※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

――――予想した衝撃が、来ない。

眼を空けると、灰色のグレネード弾は空中に縫いとめられたかのようにして静止していた。
＜携帯用ロケットランチャー（ＲＰＧ）－７＞を構える敵兵が眼を見開く。
その視線の先には――――――
「大丈夫ですか！？月夜さん、真昼さん！」
金長髪の少女、フィアが、苦しげな顔をしながら走りよってきた。
「フィア！」
フィアの心配そうな表情とは裏腹に、少女の無事にほっとする。
しかし、彼女に付き添っていたはずの弟の姿がないことがわかると、すぐにまた背筋を緊張が走った。
「錬――――錬は！？」
「今、魔法士と戦っています。でも、きっとすぐに、来てくれ、ます・・・・・」
頭を押さえ、苦しげに表情を歪ませるフィアの顔から、見る見るうちに血の気が引いていく。
「フィア、あなたノイズメイカーに・・・・・！」

「月夜、真昼、フィアちゃん、伏せろっ！！」

突然、大型のワゴン・フライヤーがゴミ捨て場の粗大ゴミを蹴散らしながら、３人と敵との間に急停止した
チタン製のスライドドアを勢いよく開き、飛び出したヴィドが機関銃を構え、撃った。
１０キロ以上もある＜Ｍ６０Ｅ３機関銃＞の肉厚改造銃身（ブルバレルカスタム）がフルロードで大砲のような７．６２ミリ×５１ＮＡＴＯ弾を発射し、激しい反動（リコイル）が体格のよいヴィドの身体を震えさせる。
亜音速弾の雨が、最小限の範囲に抑えられた＜同調＞の効果範囲外の敵兵に見事に殺到する。
突如現れた敵の援護に気を取られた携帯用ロケットランチャー（ＲＰＧ）を構える砲兵の上半身が、鉄の雨に削られて一瞬でちりぢりになって吹き飛んだ。
誘爆する危険のあるグレネードを避けて精確に敵兵だけを射抜き、続けて強力な火力の登場に後退する敵も牽制する
。左手に支えられた弾薬ベルトを呑み込むと同時に次々と吐き出される空薬莢が雨のように地面を叩き、それを真似するかのように身体に大穴をあけた兵士たちがばらばらと倒れていった。
「ヴィドさん、いいところに！！」
真昼がフライヤーの中に入り、３秒して出てきた時には強力な＜Ｈ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）Ｇ３Ａ４アサルトライフル＞を手にしていた。
真昼が精確な援護射撃をしている間に、月夜もフライヤーへと飛び込む。
そのきっかり２秒後には、両手にリボルバーの＜マテバ２００８Ｍ＞とオートマチックの＜コルトダブルイーグル＞を持って飛び出した。
「――――ううっ！もう、限界です・・・・・！」
フィアが頭を抱え込み、その場に膝を突いた。
途端に、宙に浮いていたグレネード弾のずんぐりとした弾体が音を立てて地面に落ちる。
ノイズメイカーの＜結界＞が、フィアのＩ－ブレインを深刻なレベルにまで侵したのだった。
「フィア！」
月夜がフィアの前に立ちはだかり、フィアを狙って通路から迫る兵士たちに両の銃口を向ける。
真昼とヴィドも、月夜を援護すべくそちらへと銃を向けた。

３人の持つ銃が全て破壊されたのは、その時だった。

月夜の手にあったはずのリボルバーは弾倉（シリンダー）が真っ二つに切断され、３万発の連続射撃にも耐えられるステンレス製のダブルイーグルの銃身（バレル）は見事なまでに平面をした断面を見せていた。
ヴィドと真昼の銃も、機関部の薬室（チェンバー）をごっそりと撃ち抜かれている。
眼を見開いて、何が起こったのかいち早く理解しようと思考を廻らせる月夜の正面、兵士の一団の前に、抜き身の騎士剣を持った灰色の市街戦用迷彩服の騎士が降り立った。
周囲をすばやく見渡すと、いつの間にか、同じ服装をした騎士５人が直立不動で立っていた。
「いつの間に・・・・・！」
真昼とヴィドも、穿たれた銃痕の形状から、どこから撃たれたのかを瞬時に推測する。
二人が、５００メートル以上離れたそれぞれ別々の建物―――――大きさから言ってビルとも言える規模のもの――――の屋上と最上階の窓にうっすらと光る赤い光点を睨み付ける。
「――――くそっ！狙撃手（スナイパー）か・・・・・！」
「・・・うん。しかもかなりの手練だ」
呻くような声を出したヴィドに、真昼がアサルトライフルを放り捨てながら応えた。
使い物にならなくなったセラミックと繊維強化プラスチックの塊が、地面にぶつかってガシャリと虚しい音を立てた。
ヴィドも少しの間弄くってみてから舌打ちをして同じように投げ捨てる。
いつの間にか、通路という通路は兵士が埋め尽くし、建物の中にも狙撃手（スナイパー）が居座っていた。
どこに隠れていたのか、軽戦車や装甲車がそのチタン剥き出しの灰銀色の巨体をぬうっと現す。
「・・・・・どうやら、嵌められたみたいね」
あのグレネード弾は、最初から爆発させるつもりなどなかったのだろう。
フィアに＜同調能力＞を使わせて、厄介な要因を無くすためにわざとあの狭い路地で撃ったのだ。
つまり、自分たちは体の良い囮というわけだ。
月夜が、上辺では軽口を叩きつつ後ろ手で腰の後ろのホルスターの拳銃＜ベレッタ１７Ｌ＞を抜こうとする。
が、その途端に数え切れないほどの赤いレーザーポインターがうずくまるフィアの頭と月夜の胸を埋め尽くしたのを見ると、奥歯をギリと鳴らして、長めの銃身（バレル）を掴んで兵士の群れの中へと高く放り投げた。
乾いた音を立てて落ちた月夜愛用の拳銃は、堅いブーツに勢いよく踏み潰されて拉げてしまった。

「抵抗は、無駄だ。お前たちは完全に包囲されているからな」
唐突に聞こえた肥えた男の野太い声と同時に、月夜の正面の兵士たちがモーゼの海のように二つに別れ、中央に道を造り出した。
そこから、一際大きな重量級の浮遊戦車が姿を現す。
地面から２０センチほど上空でゆっくりと前進する戦車の前には、声の通りの男がいた。
カツカツと規則正しい音を立てて歩く５０代半ばの中年の男は、見るからに嫌味そうな目をしていた。
左右整えられた口ひげをぴんと伸ばし、場違いなまでに絢爛な軍服をぴっちりと着込んでいる。
その左胸には、シティ・ベルリン軍佐官の大佐であることを示す金のバッジが輝いている。
男は、月夜を上から下までじろじろと観察してから、ふむ、と顎を撫でて嫌らしい笑みを浮かべた。
「東洋人、日本人だな。いやはや、美しいな。身体を売ったことは？おっと、その前にドイツ語はわかるのか？」
「な・・・・・！」
その、誰が聞いても無礼千万な台詞に、月夜が露骨に愁眉を逆立てる。
「誰がそんなことするか！！」
流暢なドイツ語で返した月夜に、男はくつくつと下卑た笑いを放つ。
「いやいや、これは失礼した。まあ、これから身売りのほうが何倍もマシな様な目に合うのだから、あまり気にせんでもいいだろう？」
その言葉を聞いた兵士たちの目が、戦闘用ゴーグルの下でニヤと笑う気配がした。
捕虜の扱いを厳しく規定していた戦時法がすでに消滅している今、そもそもシティの市民ですらない者の扱いは最低のさらに下になることは明白であり、事実、そういった目（・・・・・・）に遭った者も仕事柄知っている月夜は、自分の末路を容易に想像することが出来た。
「こ、この・・・・・！」
「だが、そこの４番（フィア）を大人しく差し出せば話は別だ。そうすれば、４番（フィア）以外の人間を生きて返すことぐらいは保障しよう。信用してくれてかまわんよ？私はシティ・ベルリン軍大佐、ギュンター＝Ｃ（クル）＝オートハイナーだ。この師団の総括指揮を執っているのは、私だ」
ギュンターの物言いに、月夜も真昼もヴィドも「誰が信用できるか」と言わんばかりにギュンターを睨み付けた。

「・・・・・ごめんなさい、月夜さん、真昼さん、ヴィドさん・・・・・」
「・・・フィア・・・・・」
俯くフィアの蚊の鳴くような声が耳朶を打つ。
この娘は、ある意味卑怯だ。
こんな悲痛な声を聞いたら、一体誰がこの娘を放り捨てて助かろうなどと思うのか。
「大丈夫だよ、フィア。僕らがついてる」
いつの間にか月夜の背後まで近づいていた真昼が、月夜の背後を守る形でフィアに語りかける。
「君は、僕の弟の大切な人だからね。絶対に傷つけさせやしないよ」
頭だけで振り返り、フィアを見る。
悲痛なフィアの瞳を見つめ返す黒真珠のような優しい瞳は、たとえ自身が穴だらけの肉の塊となっても守るという強固な意志を示していた。

「ふむ。そうか・・・・・。少しばかり勿体無い気もするが、仕方がない。殺れ（・・）」
そう言うと、ギュンターは気取った動きで右手を軽く上げた。それを見た最前列の兵士二人が腰のホルスターから＜Ｈ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）Ｕ（ユニバーサル）Ｓ（セルフローディング）Ｐ（ピストル）＞を一瞬で抜いて、何の躊躇いも無く、撃った。
ほぼ同時に撃ちだされた４発の９ミリパラベラム弾が、捕獲対象であり、足止めに有効な、月夜達の一番の“重荷”でもあるフィアに向かって空気を切り裂きながら襲い掛かかる。
咄嗟に、俊敏な動きで月夜が庇おうとするが、間に合わない。
フィアが、スローモーションのように迫る鉛で出来た“死”を、ノイズメイカーのダメージでうまく働かない頭でぼんやりと視界に入れた。

（錬、さん・・・・・）

「ダメ――――ッッッ！！」

突然、叫びと共に、フィアの視界を水色の髪の少女と氷の盾が遮った。

未熟な少女の作り出した脆弱な氷の盾は、それでも懸命に１発の弾丸を受け止め、粉々に砕け散る。
しかし、残り３発の弾丸は、受け止めることは出来なかった。
弾丸を自らを持って受け止めた（・・・・・・・・・・・）少女に押し倒されるようにして、フィアが地面へ倒れこむ。
突然の魔法士の出現に緊張したギュンターを護るようにして、忠実な兵士の群れが陣形を変えようと動く。
それを見逃さなかった月夜が、袖から煙幕弾を滑り落として地面に叩き付け、急いで地に伏せる。
ぼんっ！というくぐもった破裂音。
それと同時に、狭い路地を伸ばした手の先が見えないほどの濃霧のような煙幕が爆発的に満たした。
一瞬の隙を突かれたベルリン軍が月夜のいた場所に狙いをつけて撃ったが、とっくに伏せた月夜に命中することは無く、弾は見当外れの方向へと飛び去っていくだけだった。
真昼とヴィドもそれに続き、低姿勢でワゴン・フライヤーに駆け寄る。
「フィア、どこなの！？」
月夜が匍匐状態で叫ぶ。
月夜の声は、かなり焦っていた。
月夜には、確かに、銃弾がフィアとフィアを助けてくれた少女を襲ったように見えたからだ。

「――――けほっ」
「・・・・・？」
何があったのかを理解できないフィアの鼓膜を、自分と同年代の女性が咳き込む音が叩いた。
白い陶器のような頬に暖かい液体がぴしゃりとかかる。
自分の上にある、重くて暖かいものがぐったりとして動かないことに、それが何であり、どういった状況であるのかを鈍かった頭がゆっくりと悟っていく。
お気に入りのロングスカートを重たく濡らす生ぬるい液体に手が触れ、それがぬるりとした粘性を持ったものであるとわかる。
「・・・・・！！」
上身を起こして、倒れそうになった自分と同じくらいの年齢の少女の肩を力の入らない手でなんとか支える。
瞬間、フィアはぎょっとした。
霧の中、弱々しく息をして唇の端から黒っぽい血の筋を伝わせる少女は、数十分前に自分をシティ・ベルリンへ渡そうとした、魔法士だったからだ。
「そんな、なんで――――。あぐっ！？」
治療を施そうと身体を動かした途端、突然腹部を襲った激痛に悲鳴を上げる。
痛みに震える手で腹を押さえると、ニチャ、とした感触が手の平に伝わった。濡れている。

月夜の鍛え抜かれた動体視力は、正しかった。
４発の銃弾のうち、二人の魔法士の少女を襲ったのは３発。
そのうち２発は少女へ。

そして、残りの１発は―――――――フィアへ。

「うぅっ」
フィアの悲鳴に眼を覚ました少女が、低く呻いた。
ぼやける視界の中に、自分を顧みずにこちらを心配そうに覗き込むフィアの顔を見つけた。
いい娘だな、と少女、ナナは純粋にそう思った。
「ごめんなさい」
「え・・・・・？」
「貴方の苦しみは、私にもわかるはずなのに。私の独りよがりで、こんな目に遭わせちゃって・・・・・。許してなんて言えない。言う資格もない。本当に、ごめんね」
ナナの瞳に、痛みからではない涙が浮かび、頬を伝い落ちた。
「・・・いいんです」
頑張って、フィアはにこりと微笑んだ。
ぎこちない微笑みだったが、ナナの薄れゆく視界は充分誤魔化せた。
（本当に、いい娘なんだから・・・・・）
水面のような水色の瞳が、閉じられてゆく。
数秒と保たずに、ナナは気絶してしまった。
フィアがナナを運ぼうと脚に力を込める。
しかし、脚どころか身体も言うことを聞いてはくれなかった。
逆に、段々と力が抜けてきている。
痛みが、ただの痺れに変わってきていた。
鋭利過ぎる痛み故にそれが普段感じる痛みと同じものだと理解できない。
あまりの痛みに、痛覚さえも麻痺してきているのだ。
これは危険な兆候だと本能が訴える。
月夜を呼ぼうと口を開けるが、肺に力を込めることもできなくなっていた。
呼吸もうまくできない。
腹が焼けるように熱い。
ぼんやりとした頭が覚醒するに連れて痛みが増し、撃たれたんだ、と気付く頃には、今度は痛みが思考を乱し脳を侵していった。
視界に映る景色全てが、その彩度を急激に落としてゆく。
動けなくなる、とフィアは直感的に感じた。
不安だとは思わなかった。
正確には、不安といった感情が生まれる余裕すらなくなってきていたのだ。
ふらり、と細い身体が崩れ落ちてゆく。
頬に、冷たい地面の感触を感じた。
その感触さえも、段々と遠のいてゆく。
びくん、と自分の身体が痙攣するのがわかった。
喉元から逆流する血液が、最後の痛みの到来を告げる。
フィアが、最期（・・）に声の出ない唇を動かした。

「ごめんなさい、錬」、と。

戦車砲が怒りを吐き出すかのように、吼えた。
音速の何倍もの速度で飛んでいく砲弾が、立ち込める煙幕を吹き飛ばしてゆく。
赤外線を反射する特殊な煙幕で暗視装置が使えないので、砲弾の衝撃波で煙幕を吹き飛ばすという強硬手段に出たのだ。
３発目の砲弾が“町”の外に飛び去ると同時に、煙幕が分散され、視界が晴れてゆく。
その中に最も見たくなかった光景があるのを見つけて、月夜は自分でも気付かないうちにその場に膝を突いていた。
「フィ、ア・・・・・？」
か細い声で呼びかけるが、倒れ伏すフィアからも同じように倒れている少女からも、当然のように返事はない。
装甲車の中から顔を出してその光景を見たギュンターが、顔を真っ赤に紅潮させて叫んだ。
「誰が４番（フィア）を殺せといった、この能無しの馬鹿者どもがっ！！貴重なサンプルを壊しおって（・・・・・・・・・・・・・）！私の昇進に影響などしてみろ、貴様ら全員強制労働施設行きだぞ！？」
「貴重なサンプル、ですって・・・・・？この・・・・・！！」
月夜が、スラックスの裾をずり上げ、脚に固定してあるアンクル・ホルスターから＜グロック１９自動拳銃＞を抜き、ギュンターを狙う。
「！！ダメだ、月夜っ！！」
真昼が制止しようと叫ぶ。

しかしその声は、銃声によって掻き消された。

月夜の手から、拳銃が落ちる。
ポリマー製のそれががしゃりと音を立てて地を跳ね、その上に倒れてきた月夜の身体が覆い被さった。
その後頭部には、ぽっかりと穴が開いている。
「・・・・・・！！」
「っ！！貴様らぁああぁあああっっっ！！」
真昼が息を呑み一切の動きを止めた。
＜ＭＰ５短機関銃＞を構えたヴィドが、狙いを定め、その引き金に指をかける。

そして、次の瞬間二人は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

ゴトリ、と頭がアスファルトを叩く音が二つ、狭い路地に嫌に大きく響き渡る。
伏射（プローン）の姿勢でビルの上からスコープを覗いていた狙撃手（スナイパー）が顔を上げ、ふぅ、と息をついた。
銃身から湯気をたゆたせるスナイパーライフル＜アンシュッツ＞を後ろに控えていた部下に手渡しながら、肩に装着したレシーバーに口を近づけると、作戦終了と手短に報告した。

※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

（使いたくなかったけど、こうなったら・・・・・！）
ナイフを握る手に力を込め、Ｉ－ブレインとナイフの論理回路をリンクする。
《全デーモンを強制終了。＜世界面制御デーモン（サイバーグ）＞展開》
Ｉ－ブレインが抑揚のない声でそう告げた瞬間、世界がその一切の動きを停止させた。
正確には、錬が光速の６０パーセントで動いているのだ。
ぴくりとも動かないオブルグの背後に回りこんで、ナイフを構え一気に飛びかかる。
狙うは、首の間接（ジョイント）を守るラバー装甲の隙間。
無闇に闘っているわけではなかった。
錬は、戦闘の間少しの手がかりも見逃すまいとオブルグの弱点を探っていたのだ。
《ノイズメイカーによるノイズを確認。＜世界面制御デーモン（サイバーグ）＞強制解除。＜運動係数制御デーモン（ラグランジュ）＞展開。疑似騎士剣能力＜情報面消去デーモン（シャルンホルスト）＞を最大出力で展開。ノイズメイカーによる汚染を一時無視》

（僕は、みんなを―――――フィアを、護らないといけないんだ！）
自己領域の半透明の膜が掻き消え、突然、錬がオブルグの背後に出現した。
＜世界面制御デーモン（サイバーグ）＞の大負荷に耐えられず、＜朱榮（しゅえい）＞の柄と刀身の境目に嵌め込まれた真紅の論理結晶体が半分ほど砕け散る。
思考速度は錬と同じ２０倍でしかないオブルグには、錬のその動きはまさしく瞬間移動にしか見えないだろう。
平行に構えたナイフが、ラバー装甲の最も薄く弱い部分に突き立った。
［っ！！なにぃっ！？］
内部の配線やジョイントを、情報の側から解体していく。
［くそっ！クソガキがっ！！自己領域に情報解体まで使えるなんて、聞いてないぞ！］
オブルグがその巨体を激しく振って錬を振り落とそうとする。
ジェットコースターのような激しい揺れに、錬は装甲の出っ張りを掴んで必死に耐える。
《ノイズ汚染率７０パーセントを突破。負担増加。＜運動係数制御デーモン（ラグランジュ）＞強制終了》
間近くからもろに受けるノイズメイカーのノイズが、Ｉ－ブレインを着々と汚染していた。＜運動係数制御デーモン（ラグランジュ）＞が解除され、世界が急速に元の速度を取り戻す。
同時に、オブルグの振り落とそうとする力も１５倍になる。
［この・・・・・いい加減にしろっ！］
眼の前に走ったノイズに焦ったオブルグが、一際激しく身体を振った。
「くっ・・・・・あっ！？」
遂に、錬の小柄な身体が宙へと投げ飛ばされた。
それを好機と見たオブルグが、すかさず右のレールキャノンの照準レティクルを受身を取ろうとする錬にロックした。

［ＮＯＷ　ＹＯＵ’ＲＥ　ＤＥＡＤ！］

レールキャノン独特の青白い閃光と衝撃音が響く。
錬を挟んでオブルグの直線上にある家の壁に穴が穿たれた。

悪魔使い、天樹錬の上半身（・・・）が、地面に転がった。

※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※　　　　※

狙撃手（スナイパー）からの作戦終了の報告を聞いたギュンターが、ドリンクを飲む手を止めた。
「やっと終わったか。天使（アンヘル）の回収に取り掛か・・・・・ん？」
取り掛かれ、というギュンターの語尾を、地響きのような音が遮った。
次第にその音はマシンガンのような爆音へと変わり始める。
その音に、誰かが呟く。
「・・・・・エンジン音？」
技術が進歩し、情報理論が構築され、省エネ・低騒音の浮遊車両（フライヤー）が一般に普及してから、バイクも車もその姿を消した・・・・・はずだった。
今、その聴き慣れないエンジン音は、兵士たちをいぶかしめていた。
しかし、近づく爆音に一瞬の自失から立ち直った彼らは素早い動きで全周防御（ラウンドバリイ）の陣形を組む。
通常の“町”のように２階建ての家ばかりとは違い、高い建築物が多く、整然と区画整理されたシティと比べ物にならないほど巨大な石碑のような建物が乱立するこの“町”では、音が複雑に反響して音源がどこから来るのかまったくわからない。
兵士一人一人が、戦闘用ゴーグルの下の眼を凝らし、それぞれの正面の暗闇へと続く通路に手に持つ＜Ｈ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）ＭＰ－５Ｋクルツ＞の銃口を突きつけ――――――――――

闇空を（・・・）、４階建てのビルの屋上から飛び立ち後塵を巻き立てながら、漆黒のバイクが舞った（・・・）。

今度こそ度肝を抜かれた兵士たちが見上げる中、サスペンションの長いオフロードバイクのようなシルエットから、小柄な人間が跳び立った。
少年らしき人間はくるりと空中で回転すると、そのまま勢いをつけて強烈な蹴りをバイクへと放った。
途端に、見た目だけでもかなり重厚そうなバイクが、木の葉のように二転三転しながら兵士の群れへと打ち落とされる。
「―――――　緊　急　退　避　（Ｅｕｔｋｏｍｍｅｎ　Ｓｉｅ）ッ！！」
隊長の一声に、シティ・ベルリン屈指の精鋭たちが訓練された犬（シェーファーフント）のように俊敏な動きで散開する。押し潰されてしまうような馬鹿は、精鋭とは呼べない。

「―――――甘い」

空中の人間が、少しハスキーな声で呟く。
それと同時に、彼の腕ほどあるかと思われるほどにゴツイ漆黒の銃が火を噴いた。
強力な化学薬筒、マーベラス化学薬筒ＮＮＡ９の爆発的な力によって撃ちだされた１１．５ミリの特大ホロー・ポイント弾が打ち落とされたバイクの荷台に縛り付けてある５００グラムのＨＭＸオクトーゲン―――――ＴＮＴやＣ４などのプラスティック爆弾の数百倍の威力を持つミサイル用の高性能火薬―――――を精確に射た。
ホロー・ポイント弾の凹んだ先端が潰れその衝撃が雷管に伝わる。
小さな火種が生まれ、薬筒内の装薬に引火し、さらにその火がオクトーゲンへと引火した。

抗いようのない“死”が、そこに具現した。
次の瞬間火球へと姿を変えたその“死”は、爆風の指向性までをも射手によって計算され、ナナやフィアたちには襲い掛かることは無かった。
その代わり、ＴＮＴの爆風４００メートルに対し９２００メートルもの圧倒的な威力を持つ超破壊的な衝撃波は全て、ベルリンの精鋭たちへと襲い掛かった。
その衝撃をストレートに受けた兵士たちは、猛速で壁に激突したかのごとく吹き飛んでいった。
各々が建物の壁や地面に身体を打ちつけ、即死していく。
同じく吹き飛ばされ真っ二つに圧し折れたオフロードバイクの車体がそこに激突し、五体をトマトのように押し潰したが、もう痛みを感じることは無かった。
“死”は、間近くの者たちだけの命を食い尽くすだけではその空腹を満たすことは無かった。
慌てて高く跳躍した６人の騎士全員が、見えない巨大な手に叩き落とされたかのように吹き飛ばされ、千切れた脚や腕が狭い路地を乱舞する。
劫火が全身を包み込み、肺の中の酸素も巻き込んで内部からも燃やされていく。
灼熱を纏った爆炎は兵士の服も皮膚も一瞬で消し飛ばし、動く人体模型に仕立て上げた。
その痛みは、彼らに人のものではない断末魔の悲鳴を上げさせた。
ある者は飛ばされた上空から重力によって地面に叩きつけられ、ある者は薙ぎ倒された装甲車の横腹に押し潰される。
下手に距離を置いて壁に跳ね返った爆風と爆風に挟まれた者たちは、生きながら両方の衝撃波に弄ばれて内臓を破裂させ、絶叫の中弾けるように手足を四散させていった。

辛うじてそれらの“死”の食指から逃れることが出来たのは、ほんの５秒前の隊員数から半分以上少なくなった者たちだけだった。
彼らにしても、さらにその３分の１は早急な治療を必要とする者たちばかりだった。
一人は落ちてきた瓦礫に片腕をもぎ取られ、別の一人は飛来した騎士剣に腹を切り裂かれ血の池を作っていた。
多くの命を死に併呑し、たっぷりと虐殺を終えた爆風は“町”の外にまで強風を吹かせ、やがて消滅していった。
一拍おいて、爆発の重低音が巨大な“町”の外に響き渡る。

抉られた道路の舗装と土砂がゆっくりと沈下してゆき、彼らがやっと自分たちの身に何が起こったのかを理解しだす頃には、辺りは地獄絵図と化していた。
「な・・・なんだったのだ？何があった！？」
重厚な戦車の陰に一瞬の間に移動したギュンターがパクパクと口を動かしながら叫んだ。
もちろん、肥えた彼が自ら動いたわけではなかった。
彼の周囲には、一般の騎士たちとは違う装備の騎士が５人、何事も無かったかのように静かに佇立していた。
彼らは、皆全身を黒光りするレザースーツのような戦闘服で包んでいた。
鋼鉄線の２０倍の強度を誇るカーボンナノチューブで編まれたスマートなそれらの上に、薄く高性能なプレートアーマーを各部につけ、頭には髑髏を模したフルフェイスの戦闘用ヘルメットを被っている。
揃って左腰に装備した新型の騎士剣――――優秀な技術者によって開発された騎士剣の量産版＜天皇百式＞――――は鞘から抜いてはおらず、時折飛来する石などは全て拳で弾き返していた。
状況がまったく理解できていないギュンターに、先頭の一人が耳元で説明してやる。
見る見るうちに、ギュンターの狼狽顔に笑みが戻ってきた。
「そ、そうか！ここは地獄ではないのだな！よくぞ私を助けてくれた。さすがは＜バアル－ゼブル隊＞だ！精鋭中の精鋭なだけはある！」
「光栄でございます。大隊長閣下」
騎士たちが、示し合わせたように機械的に一礼する。
それを見て、ふはは、と笑ったギュンターが、唐突に笑いを止めてはっとした。
その顔から血の気が引くや否や、戦車の陰から身を乗り出して問うた。
「“サンプル”は！？天使（アンヘル）の死体は無事か！？」
周囲で絶叫する兵士たちには眼もくれず、首をぐるぐると回して４番（フィア）を探す。
「閣下」
騎士の一人が土煙の中の一点を指す
。ギュンターが眼を凝らすと、そこにはぐったりと四肢を投げ出す金の髪の少女と水色の髪の少女があった（・・・）。
「ご安心を、閣下。サンプルは今のところ無傷です。ですが――――――」
騎士の言葉に応じるかのように、少女たちの前に影のように黒い石碑がじわりと染み出るように現れた。
よく見ると、それは漆黒の服を着た少年だった。
見るからに東洋系である少年。
その少年の精悍な顔つきに不相応なまでに鋭い眼が、ギュンターの背筋をぞくりと震わせた。
護衛付きの高みの見物といえど何度も実戦に赴いたことのあるギュンターには、こちらを睨むその奈落の深淵のような闇色の双眸は、伝説の冥界犬（ガブリエルハウンド）の瞳に見えてならなかったのだ。

すなわち、その名を呼ぶのも忌み嫌われた“死”の使いの瞳に。

壮絶な眼光を放つ少年の恐ろしさに思わず身を隠したギュンターが、黒服の騎士たちに問う。
「げ、ゲジヒトッ！どのくらいの時間で始末できるか？」
「何とも言えません。しかし、確実なことが一つあります」
即答した、ゲジヒトと呼ばれた隊長騎士が正面方向の少年と睨み合いながら、言う。
「我々５人が全員でかからねば、確実に殺すことは出来ません」
その言葉に、自己の命と地位の昇降とを天秤に載せたギュンターがすぐにゲジヒトに指示を出す。
「い、一時撤退だ！４分で陣形を立て直すぞ！」
ゲジヒトが頷き、左の拳を軽く肩まで上げ、開く。
それを確認した背後の騎士４人が一斉に散開し、命令系統の混乱した各部隊に指示を伝えていった。
ギュンターは大急ぎで動き出した戦車の中で、悔しがりながら親指の爪を噛んだ。
もっとも、彼の主な心配事は、４番（フィア）の死体（サンプル）の腐敗（・・）と破損（・・）であるのだが。

敵――――おそらくはベルリン軍――――が撤退してゆく。
だが、あの司令官らしき男の悔しそうな顔からして、すぐにまた態勢を立て直してくるだろう。
一刻も早くナナを連れ出して逃げなければならない。
一瞬でそう結論をつけた漆黒の少年―――――零が背後に振り向く。
途端に、冷酷を体現するようだった闇色の双眸が大きく見開かれた。
その視線の先には、自らの血溜りに倒れ伏す少女。
「――――――ナナッ！！」
零が凄まじい焦りの形相でナナの元へと駆け寄る。
抱き起こそうと肩に手をやり、生暖かい血に触れて、最悪の結果を予想してぞっとする。
「ナナ！ナナ、しっかりしろ！撃たれたのはどこだ！？」
血だらけのナナを抱き起こし、止血しようと手近な布を探す。
こんなことならバイクから医療キットだけでもとっておくべきだった、と後悔しながら、仕方なくナナの服を破り一番に眼に留まった肩の傷をきつく締め上げる。
しかし、布は一気に赤く染まり、蒼白なまでに白くなった肌を赤い血筋が伝い落ちてゆく。
「う・・・・・」
「ナナ、気がついたか？」
瞼がぴくぴくと震え、力無く開いてゆく。
水面のような水色の瞳がこちらを見るのを確かめると、零はほっと小さく溜息をついた。
「ごめんね、零。また迷惑かけちゃって・・・・・」
「構わん。いつものことだ」
死ぬほど心配していた先ほどまでとは打って変わってつっけんどんに返した。
（自分はなぜ、この娘の前では常に冷静になろうとするのだろうか？）
自分の中で渦巻く戸惑いや不安のしこりを心の内に押し隠し、零がもう一度溜息をついた。
それは、「厄介な奴だ」という意味での溜息ではなく、「無事でよかった」という安堵の気持ちが言葉としての行き場をなくし、溜息となって外界へと吹き出たものだった。
しかし、ナナはそうは取らなかったようだった。
「ごめんね・・・。でも、もう迷惑はかけないから・・・・・」
「――――どういう、ことだ？」
心臓がどくんと震えた。
蚊の鳴くような小さな声は、あまりに弱々しかった。
半分しか開いていない虚ろな瞳が、零を見て薄く微笑んだ。
「あのね、零。最後に（・・・）言いたいことがあるの」
零よりも一回り小さく細い指先が、零の頬に触れた。
その冷たさに、心臓が早鐘のように唸りだす。
想像したくない、しかし不可避の結末を見た零の脳が悲鳴を上げる。

「貴方のことが、好きでした。

会った時からずっと好きでした。

こんな私の傍に居てくれる貴方のことが好きでした。

私を守ってくれる貴方のことが好きでした。

私を大事にしてくれる貴方のことが好きでした。

強くてかっこいい零が、大好きでした」

ちっぽけな少女の心の声が、零の身体へと静かに染み込んでゆく。
どんどん冷たくなっていく柔肌をいなくなってしまわないように（・・・・・・・・・・・・・・）きつく抱き締める。
「ナナ・・・・・！」
「・・・あはは。こんな時にしか告白できないなんて、やっぱりダメだね。私って」
ナナが、力なく、しかし春のように美しく微笑んだ。
「だから、ね？」
瑞々しい雫のような双眸が、苦笑を形作った。
「全部私が悪いの。だから、零は泣かないで・・・・・」
「え・・・？」
零は、その言葉の意味を理解できなかった。
ナナの瞼が、静かに閉じてゆく。
「今まで迷惑かけてごめんなさい。・・・さよ、なら・・・・・」
冷たくなった繊手が、頬を擦ってするりと落ちた。
呆然とする視界の中で、ナナの閉じられた瞼の上にぽつりぽつりと水滴が落ちる。
自分の目元に、指先でそっと触れた。
そこには、涙腺が崩壊したかと思わせるほどに、滝のように流れる涙の筋が幾つも生まれていた。

零は、生まれて初めて悲しくて涙していた。

「ぁ・・・ぁ・・・あ・・・！！」
息が獣のように荒くなり、肩が激しく上下する。
何が起こったのかを理解しだした脳が、狂わんばかりに絶叫する。
背後から兵士たちの軍靴の音が聞こえたが、冷静に対処することなど出来るはずが無かった。
頭を押し潰しかねないほどに抱え、身体を悶えるように震えさせる。

なんで、この日に限ってこんなことが起きるんだ？

神は“ヒト”の味方しかしないというのか？

今日もまた、俺を、俺の大事な存在を奪い去るというのか？

震える零の懐から、小さな箱が落ちた。
小さいながらも濃紫色を基調に美しい装飾の施されたそれが、地に落ちた拍子に開く。
中から、透明な光を放つ輝石が転がり出る。

―――――――小さな、指輪だった。

もはや渡す者のいないダイヤのそれは、虚しい煌きを放つだけ―――――

「う・・・あぁああ・・・！！！」
頭蓋が軋む音が耳朶を打ち、食い込む爪の鋭い痛みがこめかみを刺す。
だが、零には、そんなことはもうどうでもよくなっていた。
背後でガシャリと銃を構える音が幾つも重なって聞こえた。

本来なら脅威であるはずのその音は、零の“限界”をブチ切るにはあまりに打って付けだった。

「あ゛ぁああぁあぁぁぁあ――――！！！！」

零の魂の咆哮が、辺りを、“町”を、世界をも震えさせた。
その胸を締め付ける怒りの叫びに耐え切れなかったかのように、周囲の窓が粉微塵に砕け散り、四散してゆく。
それに呼応するかのように、兵士たちの鼓膜を得体の知れない圧力が圧し、電子機器を麻痺させていった。
ゆらりと立ち上がった零が、シティ・ベルリンの一個師団を真正面から睨みつける。
そして、魂の命ずるままに、叫んだ。

「俺は生きている・・・・・！俺は紛れも無くここに生きている！
だが、お前らはこの娘の命を排除（・・）した！
あたかも自らが裁きを下すものの如く、あたかも自らがその権利を有するが如くにだ！」

そのまま殺意によって殺されてしまうのではないか、と危惧させるほどの圧迫感。
その異常なまでの迫力にたじろぐ兵士を前に、零はさらに大きく声を張り上げる。

「命に優劣があるのか！？生きたいという切実なる思いに優劣などあるのか！？
ただ一つの生を謳歌する命の重みに優劣などあるのか！？
あるはずがないっ！！
しかしお前らは眼に見えぬ天秤にこの娘を、魔法士たちの命を載せた。
それがお前らの権利であるというのなら、その逆もまた然り！
我々魔法士がその権利を有することもまた可能なのだ！」
零は、かっと憤怒に燃える眼を見開いて腰の刀を抜刀した。
鋭い銀の切っ先が、彼の敵を向く。
その叫びは、シティ・メルボルンで世界を相手取り魔法士の為に戦い続ける少女とどこか通ずるものがあった。
創造主である人間に対して創造された者が牙をむくさまは、天界の雷に対して地獄の炎を纏って戦うことを決意した悪魔の姿のようでもあった。
あくなき闘争を決意する零のその姿は、もはや高貴ですらある。

「俺は人間（きさまら）を決して許さない！」

柄を握り潰すほどに強く握る。
誰がくれた力なのかは知らない。
ただ、この力は、零自身と、零にとって最も大切な人を護る祝福の力であるはずだったのだ。
そして、今まさに零はその力を行使することを選んだ。
護るべき力ではなく、憎悪の“チカラ”として。

「俺は俺の命の命ずるまま、俺の意思の赴くまま、そして俺の憎しみの赴くまま、貴様らに敵対する！死んだこの娘の恨みを――――――晴らしてみせるッ！！」

零の騎士剣、＜雪風＞の刃が、涙が伝うかのように耀く。
その鈍銀の刃に映るのは、零が人生の中で最も愛することの出来た少女の横顔。
傾けられた刃に映りこんできたのは、恨みと憎しみに燃える地獄の炎を宿した瞳。

「―――――殺すッ！！！」

踏み出した零の右足が、敷き詰められたアスファルトを打ち砕いた。

零の疾走が始まった。
所々が抉れたアスファルトは大量の血で塗れ、ノイズメイカーの効果範囲内だというのに、それは見惚れるほどの速さだった。
「何をぼさっとしているんだ！？撃て！殺せ！」
ギュンターの喚き声にはっとした師団最前列の兵士たちが＜Ｈ＆Ｋ（ヘッケラー＆コック）ＭＰ－５Ｋクルツ＞の引き金を一斉に引いた。
数え切れないほどの７．６２ミリ弾が、獣のように迫る零の身体に着弾した。

――――着弾しただけだった。

表面に微細な衝撃吸収用の論理回路が刻まれた黒色の戦闘強化服は、零の身体を完璧に守っていた。
顔の前で交差された腕の間に、獲物を狙う“動物”の眼を見た兵士が本能的に後退る。
それは小さな出来事で、しかし決定的なミスだった。
零を囲む形の陣形が、ほんの少し乱れた。
それを見逃さなかった零の瞳がギョロリと動いた。
《＜古典力学制御＞出力上昇》
反作用を打ち消し、接地面との摩擦係数を操作する＜古典力学制御＞の出力を強化させ、疾走方向を突然変える。
狙うは、怯んだ敵（エモノ）。
「はあぁあああっ！！」
怯えた眼をする兵士の懐に入ると、間合い０で横一文字に刀を薙いだ。
振るわれた刀の一閃は、まさに閃光。
闇の中にいつまでも軌跡が残るような白銀の一振りが、周囲の兵士たちの胴体を透ける。
ずるり、と反応に遅れた数人の体が倒れていく。

――――――上体と下肢が離れて。

「ぎ――――――ぁあぁああああっ！？」
残った上体が暴れるが、芸術品のように美しい断面を見せる傷口は血飛沫一つ流さない。
下肢も痙攣するようにのたうつ。
やっと我が身に起きた事態を把握した兵は、狂ったように叫んだ。
無理も無い。
鋭利過ぎる一閃は痛みすら無いのだから。
ばしゃばしゃと血を吹き始める身体は、何時れ出血死するだろう。

数人の兵士から始まった“処刑”は、今や美しい“舞い”と化していた。

煌く刀の一振り一振りが、鬼神の如き凶暴な力を孕んでいた。
その一振りに一切の無駄はなく、骨と骨の隙間を切断し、肉と肉の狭間を当たり前のように貫通して、自分よりも大きな敵を積み木のように壊していく（・・・・・）。
群れの中に入られた兵士たちは、彼らが魔法士に対処できる唯一の武器である銃を封じられ、成す術もなく肉塊となっていく。暴れまわる羅刹に対し、勇敢にもナイフの腕を心得た者が突進したが、心臓を一突きされて呆気無くその一生を終えた。
敵の侵入を許してしまった群れに対処する暇さえ与えず、手近の者から薙ぎ斬ってゆく。
「う・・・うわぁああぁああ！！」
若い兵士が戦闘用ヘルメットをかなぐり捨て、突然絶叫した。
「俺達がやっていたことは間違っていないんだ！これは正義なんだぁああぁあ！！」
何も出来ずただ黙って殺されるという理不尽さと恐怖に負けた一人が、アサルトライフルをでたらめに斉射した。
自分の撃った弾で仲間がばらばらと倒れてゆく中、黒い少年の姿は無い。
――――――耳元で血と肉が砕かれた音。
彼が気付かぬうちに、彼の後頭部はその脳漿をさらけ出していた。
ぼとぼと、と紫をした脳漿がこぼれだす。
それをぐしゃりと踏み潰した零が、腰の巨銃＜ガーゴイル＞を抜きながら、咆える。

「笑止！！武力でしか得ることの出来ぬ正義など、正義ではないッ！！！」

ばがん。
雷が落ちてきたかのような轟音。
凄まじい初速で撃ち出されたホロー・ポイント弾は、７人の兵士を貫き大量の臓物をぶち撒け、８人目の身体の内部でようやくマッシュルーミング。
体内を好き勝手に引き裂く異物の痛みに耐えられず、彼は穴という穴から汚物を垂れ流して即死した。
ホロー・ポイント弾は作られた目的通り自身の内部の火薬に引火し、宿主の腹部を爆発させた。
細かく刻まれた腸（はらわた）が飛び散る。
それを見た兵士たちの顔が引き攣った。
彼らの恐怖は、すでに臨界点に達しようとしていた。
弾倉内が空になるまで手当たり次第に撃つ。
「ノイズメイカーがあるのに、なんで」
腹に大穴を空け泣き叫んだ兵士が息絶える。
零は身体の構造自体が元々強化されており、さらに、身に着けている戦闘強化服は＜身体能力増強＞のみだがノイズ干渉を阻止する働きをする。
零にとっては、ノイズメイカーはあってもなくても変わらないものなのだ。

と、別の騎士剣の閃光が二つ、零に向かって振り下ろされた。
それを持ち前の超身体能力で感づき、論理回路の施された＜ガーゴイル＞の銃身で弾き返す。
頭を髑髏で覆った悪趣味の騎士が、弾き返された反動を利用して軽業師のように電柱の上に降り立った。
それを確認した刹那、新たな二つの閃光の気配を背後に感じる。
再び＜ガーゴイル＞でその攻撃を受け止める。
対情報解体用の特殊な＜ソードブレイカー＞が騎士の情報解体を一瞬だが受け止める。
１秒もせずに、二振りの騎士剣の情報解体を受けた銃身にびきりと亀裂が走る。
懇親の力を二の腕に込め、二人の騎士を押し返した。
一人がバランスを崩し後ろへ跳躍するが、もう一人は懸命に上段から騎士剣を振り放ってくる。
「―――――おぉおっ！」
強く握られた零の拳が、剣撃が届く前に騎士の腹部を殴り上げた。
大木でさえ貫きそうな一撃に騎士の身体が持ち上がり、フルフェイスのヘルメットの隙間から吐血が吹き出る。
胸部のプレート・アーマーが叩き割られ、ばきばきと音を立てて、内臓とそれを守っていた骨が砕かれる。
（まずは一人）
内心でにたりと狂気めいた笑みを浮かべた零が、途端に眼を全開にする。
―――――髑髏の騎士が、殴り上げた零の拳を掴んでいた。
（しまった！こいつは“死番”か！）
“死番”――最初に囮となる者――が敵の攻撃を引き付ける役目を負う。

ならば、次は―――――――！！

焦って振り向いた零の視界を、白い光が踊った。

ぐらりと体勢の崩れた身体を、刀を杖にして支える。
頭をうな垂れ、荒く呼吸する。
目の前のアスファルトに、袈裟斬りにされた躯幹からぼたぼたと大量の血が滴っている。
「―――――く、そ・・・・・」
口から血がこぼれる。
臓腑から追い出され、逃げ場を失った血が耐え切れずに吐き出される。
袈裟切りにされた戦闘服が、ぶらりと垂れ下がるのが視界に入る。
その視界の隅に、黒い戦闘ブーツが五つ入っていた。
「・・・！！」
首だけで見上げると、そこには自分を囲むようにして威圧的に鞘の騎士剣の柄を持つ髑髏の騎士たちがいた。
先ほどの騎士の一人は、仲間の兵士に支えられてはいたが、健在だった。
（ナナ・・・・・）
ナナのいる方向へ手を伸ばす。
微妙に成り立っていたバランスが失われ、ばしゃ、と血溜りに小柄な少年の身体が地面に崩れ落ちる。

悔しかった。
せめて、敵（かたき）を取ってやりたかった。

「・・・・・・、ナ・・・・・」

白銀の騎士剣＜雪風＞が、力を無くした手から滑り落ち、乾いた音を立てた。
硝煙に混じる鉄が溶解する臭いが充満する中、ゲジヒトが平然として肩の通信機のスイッチを入れる。

「閣下、処理致しました（・・・・・・・）」
そのの言葉は、神託か何かのように、重く路地裏に響き渡った。

・　・　・　・　・　・　・　・　・　・　・　・　・　・

・　・　・　・　・　・　・　・　・　・

・　・　・　・　・　・　・　・

・　・　・　・　・　・

・　・　・　・

・・・ＴＯ　ＢＥ　ＣＯＮＴＩＮＵＥＤ・・・・・？

【用語解説】

※銃の名前と特徴については劇中で出来得る限り説明しています。
興味のある方は先行者にお気軽にＢＢＳ等でお尋ね下さい。
素人マニアの答えでよかったら、お答えいたします。
ＮＯ.１＜薬室（チェンバー）＞
＊オート・マチック式銃に共通する、最も複雑な部分であり最も故障（ジャム）を引き起こしやすい弱点でもある部分。
弾丸を撃つ前に必ずこの部分に運ばれ、ここから一発ずつ射出される。
心臓部であるここを破壊されるとオート・マチック銃はただのゴミとなってしまう（鉄をほとんど用いない銃もあるので“鉄くず”とは表現しない）。
ちなみに、リボルバー式銃にはこれは無い。
だから構造が単純で故障が少ないと言われる。

ＮＯ.２＜オブルグ＞
＊＜賢人会議＞と呼ばれる組織の末端兵士。
全身が兵器の塊の化け物サイボーグである。
末端といえど、その力は絶大で、＜悪魔使い＞をとことん苦しめる。
全長は３メートルを超えており、一見すると「なんだこの壁？」と思われるほどに巨大な図体をしている。
人格は凶暴。
しかし理性は有り、それが余計に性質（たち）を悪くしている。
魔法士に嫌な思い出でもあるのか、魔法士を毛嫌いしている。
魔法士と互角に戦うために、発狂の可能性もある全身サイボーグ化を行い、見事“力”を手に入れた。

実は、作者が今流行の＜メカ・ファンメイ＞をアニメ＜ガオガイガー＞風にしてオリジナルの小説を作ろうということで設定していたもの。
全身武器で膝にドリルとか付いているメカ・ファンメイだった。
しかしＷＢ同盟ＢＢＳで「マニアック過ぎるのは如何な物か」と注意されたことで計画はあえなく崩壊。
ここに敵キャラ設定として回されることとなる。

ＮＯ.３＜マッシュルーミング＞
＊『肉体に弾丸が命中した時、そのまま貫通するよりも体内で潰れて広がった方がダメージが大きい』という各種実験の結果を元に鉛の弾頭を用いてそれを実現すること。
この『弾頭が命中と同時に潰れる現象』はマッシュルームの傘のように開くことから『マッシュルーミング』と名付けられた。
軍用弾ではこの弾頭が『必要以上に苦痛を与える兵器を廃止』と定める『ハーグ陸戦協定』に接触するために表面を銅でコーティングしただけの『フルメタルジャケット』という弾頭を使用している。
某国が本当に使っていないのかどうかはわからないが。

ＮＯ．４＜ＥＶＥ－００／零＞
＊錬にそっくりな容姿で、錬より少しハスキーな声をした少年。
＜悪魔使い／錬＞の素体を作るための実験体であり、＜騎士＞の能力を限界まで特化させた＜騎士＞でもある。
Ｉ－ブレインの演算機構までもが＜騎士＞専用に調整されている。
肉体面においても、赤筋・白筋といった筋組織の細胞レベルでの強度から毛細血管の身体の隅々までの拡張、赤血球の酸素運搬能力、受けた傷の回復速度に至るまで全てが常人の５～１０倍の数値を叩き出し、＜騎士＞としての潜在能力（ポテンシャル）だけを取れば＜大戦の英雄＞や＜紅蓮の騎士＞以上の能力を有すると豪語しても過言ではない。
その絶大な膂力（りょりょく）から放たれる拳の一撃は、大砲並みの威力を誇る。
反面、経験の面から見れば明らかに英雄両者よりも劣っており、自らの能力に振り回され持て余しているというところも見受けられる。
鍛錬はしているものの、その力はいまだ発展途上の状態である。

ちなみに、錬より３～４センチ背が高い。
外見年齢は１６～１７歳程度。
『零』という名前は自分でつけたもので、正式名称は定かではない。
感情の起伏は少ないが、情が無い、というわけではない。
シティ・ベルリン外警戒軍駐屯地の襲撃地に偶然居合わせ、そこで唯一生き残ったナナを成り行きで保護することとなった。
ナナに対しての自分の好意が自分自身理解できず、素直になれないでいる。
だが、結果として・・・・・。

ＮＯ.５＜ナナ＞
＊本名、ナナ＝スヴェロフスキー。
ドイツ系の美少女だが、ＷＢには珍しい“落ちこぼれ”。
能力は＜炎使い＞だが、その力は錬の＜分子運動制御デーモン（マクスウェル）＞にも劣る。
水色の髪をし、髪型はツインテール。大きめの瞳は水色。
身体の発達面においては、残念ながら『まだ未来はあるよ』と慰めることしかできない。
完成する前から能力的に使えないことが判明しており、シティ・モスクワに譲渡されるはずだった（なので、苗字はロシア風）。
ところが直前でモスクワがドタキャンしたので、結局ベルリンに残ることとなった。
能力が低い上に、激しい虐めと抑圧に堪えていたせいで能力はさらに低下していた。
シティ・ベルリン外警戒軍駐屯地で仲間の兵士に襲われそうになったところを＜賢人会議＞の手下＜オブルグ＞が襲撃。運良く一人だけ生き残ったところに現れた零に保護を求め、現在に至る。
零への好意は日に日に高まるが、告白ができずにいた。
今回、悲しい結果となるのだが・・・・・。

ＮＯ.６＜雪風＞
＊変異銀＜ミスリル＞を特殊チタニウム合金と幾重にも積層させたものを高々熱で鍛え上げた超高純度の刃を持つ日本刀型の騎士剣。
通常の西洋型騎士剣に比べ情報解体の能力は遥かに劣るが、その分戦闘においては絶対の強度と攻撃力を誇る。
ミスリルと他物質のハイブリッドタイプの騎士剣としては実在する唯一の例。
刃が触れた部分しか情報解体は出来ないが、身体能力増強においては使用する騎士に限界以上の能力を与えることが出来る。
俗に言う“普通の騎士剣”とは性質上扱い方がまったく異なる為に、戦闘を通常通りに行えるはずも無く、極端に使用者を選ぶ騎士剣でもある。
製造上の点にも高い技術を必要とする為、量産性に優れたものとは言えない。

ちなみに、名前＜雪風＞の由来は帝国海軍の駆逐艦＜雪風＞。
１３もの海戦で奮戦し、終戦まで生き抜いた優秀な艦だった。

ＮＯ.７＜バアル－ゼブル隊＞
＊シティ・ベルリン軍、魔法士部隊の中で、最もチーム戦が得意とされる隊。
ほとんど全員が騎士。
２０～３０人はいるとされているが、対外的に不透明な面も有り、それがこの部隊の重要さをうかがわせる。
通常は騎士が四人一組（フォーマンセル）で行動し、要人護衛の際は５人で護衛する（今回はギュンターの護衛ということでこれになる）。
強い結団力と不屈の精神を持つ屈強な者たちで構成され、この部隊と闘うことは並みの魔法士では不可能である。
その力は、対外演習という恐喝的外交手段に使われたこともあるほどだ。
この部隊だけの特別な装備として、全身を鋼鉄線の２０倍の強度を誇るカーボンナノチューブで出来た黒色の戦闘服で包み、それらの上にプレートアーマーを胸や肘などにつけ、頭には髑髏を模したフルフェイスの戦闘用ヘルメットを被っている。
これだけでも高価な装備だが、この部隊には常に新型の優秀な騎士剣が支給されるようにもなっている。
通常の騎士よりも、支給される装備から昇進スピードや給与など様々なところで待遇が上回る。
故に、この部隊を目指し厳しい試験を受ける魔法士も少なくは無い（見事隊長試験に合格すれば、尉官レベルから一気に佐官レベルに昇任できるほど）。
現在配備されているのは、優秀な科学者が製造したと言われる騎士剣のデータを元にベルリンで簡易化して製造された騎士剣＜天皇百式＞。
簡易化したとはいえ、その性能はシティ・神戸軍で正式採用され、世界各地で使われる名剣＜冥王＞シリーズの最新機種にもまったく引けを取ることはない。

ちなみに、語源は悪魔王＜Ｂｅｌｚｅｂｕｂ（ベルゼブブ）＞の別名。
ベルゼブブはハエの化身で名前の意味は『糞山の王』という意味。
正直あまりありがたくない名前である。
しかし、ヘブライ語では『高い館の王』や『気高き主』という意味を持っており、部隊名はおそらくこちらの意味で付けられたのだろう。

ＮＯ.８＜八日蝉（ようかぜみ）＞
＊作者＜先行者＞の思考体が、＜森羅＞の論理結晶体を埋め込まれ寿命が一日伸びた人ほどの大きさの蝉に転移した姿。
虫の癖に二足歩行。
正面からの姿を見た子供は十中八九泣く。
先行者であって先行者でないという深み（なんの？）も持つ。
時折バイオレンスな凶行を断行してしまうこともあるが、通常時は溺れた犬を助けるくらいに極めてジェントルメンな奴である。
彼の頭の中には実際の生活にはまっっったく役に立たないミリタリーな情報ばかりが蓄積されている。
最近はライブドアや木村建設との関連が騒がれていたりするが、本人は否定している。
近々控訴する構えらしい。

―――【ミリタリーなトリビアを貴方へ・・・・・】―――

《番外編》

説明しよう！この企画は、作者でありこの世界の神である先行者の転移した姿八日蝉（ようかぜみ）を主人公として
ＷＢキャラとミリタリー＆トリビアチックなキャラトークを繰広げるものなのだ！
ちなみに本人は至ってマジメだぞ！

【謎の古代戦闘機！？＜リグ・ベーダ＞】

八日蝉「え～と、今回は＜ＳＰＥＥＤ－ＳＴＥＲ＞じゃないから同時並列で別のトリビアをご紹介したいと思います。で、今回来てくれることになってるＷＢキャラは、」

サクラ「どうも」

イル「ちわ！」

八日蝉「このお二人です！二人も来てくれるなんて、かなり豪華だねぇ」

サクラ「レクイエム様や画龍点せ～異様のキャラトークには５、６人出てたりしたぞ」

八日蝉「・・・財政難なんだよ。ほっとけ！」

イル「うわ。リアルな話やなぁ・・・」

八日蝉「シャラップ。黙らないとそのペラペラ喋るお口にホチキスの御まじないをかけちゃうぞ。大学で教室を間違ってしまってアジア系留学生向けの日本紹介講座に参加しちゃったから今凄く機嫌が悪いんだ。踵飛ばしとかやりかねないぞ」

イル「何やってんねん。あんた生粋の日本人やろ」

サクラ「踵飛ばし！？踵落としではなくて！？」

八日蝉「よし、ＷＢキャラたちと親交も深まったところで、今回のトリビアを二人に見てもらおう。ちなみに君たちに自由な発言権は無いからそのつもりでな！久しぶりの主導権だから張り切っちゃうぞ！」

サクラ「な、なんて横暴な奴だ・・・・・」

＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋

『雄雄しき神の車は上昇し、

あまりの速さに白熱しつつ

天界を横切って英雄は疾走する。

閃光と雷鳴は天界を横切り、

あまたず的を貫き誇り高き敵を倒す』

＜リグ・ベーダ＞より抜粋

＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋　　　　＋

八日蝉「これを見て何を連想した？はい、イル君っ！」

イル「あ～～～・・・・・飛行機やろ？音速いったら大気と摩擦して“白熱”するやろ？あれって」

八日蝉「大変に的を得た答えだ。サクラ君は？」

サクラ「そうだな・・・。“閃光”“雷鳴”“貫き”は、おそらく戦闘機のバルカン砲の類を表しているのではないのかと思うのだが。“敵”という言葉もあるしな」

八日蝉「今回来てくれたＷＢキャラはどっちも優秀だな。Ⅴ巻上下で凄まじい戦いを繰広げてくれただけはある。あ。あとでサイン頂戴ね。これサイン色紙」

イル「ＯＫ。・・・って、“ダイソー”って書いとるやん！ほんまに財政難なんやなぁ！」

サクラ「あ！ば、馬鹿・・・・・！！」

八日蝉「・・・・・・・・・・・（無言でホチキスに芯を入れる）」

サクラ「ほら、いじけた。私は知らんぞ」

イル「げえ・・・・・。な、なあ！結局この＜リグ・ベーダ＞ってなんなんや？」

八日蝉「・・・・・ん？ああ、紀元前から伝わるインドの古代経典だよ」

サクラ＆イル「紀元前！！？？」

八日蝉「ぎゃああ！間近で大声はやめろ！虫は全身が耳なんだぞ！？（←小トリビア）」

イル「いや、ありえへんやろ！紀元前に音速超えた飛行機が白熱化するなんてわかるはずない！」

サクラ「バルカン砲が閃光を発し雷鳴に似た轟音を立てて目標に穴を穿つことがわかるはずもない。別の何かなのか？」

八日蝉「んとね、しかもその“戦闘機”は“車”―――すなわち乗り物であり、“英雄”とは鍛えられたパイロットということだろうね。“天界”っていうのは多分高空のことなんだろうと想像できる」

サクラ「そう考えるとつじつまは合うが、しかし・・・・・」

八日蝉「インドでは、数多くの謎の遺跡・遺物が見つかっているんだ。現代の航空力学に匹敵する、極めて合理的な形状をした飛行機型の遺物が複数発見されたし、壁画には機械に囲まれ宇宙服を着た人間の絵が描かれてあった。完璧に人間の頭蓋骨を模倣した水晶の髑髏なんかもある。そいつらは一般に“失われた古代高文明（ロストテクノロジー）”とか“超文明遺跡（オーパーツ）”と呼ばれている」

イル「ほ～～～。ものごっつい壮大な話やな」

八日蝉「嗚呼、古代の音速戦闘機の形状・材質・武装・・・・・青空に一筋の白い雲を引くその雄姿を是非とも拝んでみたいものだ・・・・・」

イル「マニアックな奴や」

サクラ「だから・・・・・」

八日蝉「・・・今どこからか僕を挑発する声がしたよ？ホチキス銃準備レディ」

イル「はん！そんなの、＜シュレディンガーの猫は檻の中＞で幾らでも避けたる！俺の力を使えば、サクラのブラジャーだって掠め取れるんやで！」

八日蝉「くっそぉおお！本当なのかいサクラ！？（←なぜか聞く」

サクラ「・・・え？あ、えっと・・・・・そう、だな。うん」

八日蝉「・・・・・？」

イル「・・・・・あ！サクラ、お前まさか必要ないからつけてないんじゃ・・・・・！？」

サクラ「なっ！？ば、ばばばばばばばば馬鹿な！！そそそんなことは・・・・・！！」

八日蝉「なにぃいいいいいいいいぃいいぃ！！？？画龍様の『サクラないちち説』は本当だったのか！おい、カメラを回せ！ホームページも開設しなければ！これから忙しくなるぞぉ！彡(　゜∀゜)彡（羽根を広げて飛び立つ）」

「ちょ、こらっ！なんだその説は！？あることはあるんだ！！ただ成長が遅いだけであって・・・・・って待て――――――！人の話は最期まで聞け！大体なんなんだホームページって！？」

イル「（携帯電話に向かってぼそぼそと）ええ、やっぱりあの説は正しかったみたいですわ。はい。ですから調査はそっちで・・・・」

サクラ「イリュージョン！貴方も勝手に何をやっているんだ！？誰に報告している！？」

イル「え？もちろん真昼さんにやけど・・・・・」

サクラ「真昼――――――――――――――ッッ！！！」

ＥＮＤ！

サクラ「これから成長するんだ、馬鹿――――――！！！」

イル「わ―――――っ！？ナイフを手当たり次第に振り回すなや―――――！」

ぴゅ～～～！（飛んでいくナイフ）

そして、

八日蝉「（ドスッ！）ぐえっ！？な、何かが背中に刺さった！？蝉は背中に手が届かないからなんだか分からないけど絶対何か刺さった――――――！！痛いって痛いって！！」

・・・ＦＩＮ！？

＜＜超作者コメント～（パチパチパチ）＞＞

うふふふふふふふふふ・・・・・私の大好きなハンドウェポンたちがたくさんですよ！？（←怖いよ

マニアックになり過ぎないように今回は一応気を使いました。ええ、一応。

銃とかにちょっと興味があったり、バイオハザードとかゲームをした人は、「あ、これ知ってる！」と思われた方もいるかもしれません。

え？知らない？修行せいっ！（←何をだよ

「え？でもこれって現代の火薬発射式の銃だよね？劇中は電磁射出じゃなかったっけ？」と思われた方、貴方は偉いっっ！！

よりリアリティを醸し出す為（新しくオリジナル武器を作るのはめんどくさいしぃ）、あ・え・て、現代戦でまだ現役のハンドウェポンたちに登場願いました。

興味を持って頂けたら幸いです（笑

＜デザートイーグル＞といった、知名度は高いけど戦場での実用性は低い、といった武器たちは今回は
外させていただきました。「なんで？」といった質問はＢＢＳで訊いていただけると嬉しいです。

他にも銃関係の基本的な質問にはＢＢＳ上で答えられると思います（無責任な発言

・・・まぁ、専門書も幾つか持っていますから、なんとかなるでしょ！多分！（←ぅおい！

例を上げるとすれば、

『例Ｑ１：重機関銃と軽機関銃の違いってなに？』

『例Ａ１：今日では区別はありません。第二次世界大戦初期には汎用機関銃が開発されました』

とか、

『例Ｑ２：“口径”という言葉をよく聴くけど、口径は大きいほど威力は高い？』

『例Ａ２：オート・ピストルやリボルバーなど、同一カテゴリーの弾薬内で威力を比較するのなら目安にはなるでしょうが、単純に大口径＝大威力にはなりません』

といった感じでお願いしたいと思います！

さぁてさて、主要登場人物全員が死んでしまいましたね！これからどうなるのやら！（まるで他人事

大逆襲なるのか！？もしかして、みんなゾンビ化！？

ところどころにクッサイ台詞があったりしますが、お気になさらず！！（笑

これと並行して、＜ＳＰＥＥＤ－ＳＴＥＲ＞の執筆も進んでおります。そちらもまたかなぁりマニアックな内容となっていますが、

一般ピープルの方でも充分楽しめる内容となっておりますので、どうか目を通してやってください（懇願

では最後に、この小説を私の壊れたメールシステムの代わりに同盟に送ってくれ、

尚且つ、また修正にも協力してくれた
クリスマスに半袖Ｔシャツ一枚で町を徘徊する悪魔超人友人Ｎ氏に最大級（・・・）の感謝を。

そして、今この小説を読んでくれている貴方にも力の限りの大感謝を！！

＜作者サイト＞
【Ｉ　ＨＡＶＥ　ＴＨＡＴ・・・・・ＳＯＲＲＹ.】

◆俺がここを支えているうちに早く閉じるんだ！さあ、早く！うぉお、もうダメだー！！（←はやっ◆