■■先行者様■■







シティ・ベルリン東南東約500キロメートル

黒雲、上空






    ※    ※    ※    ※    ※    ※




フィアー・・・・。彼女は無事なのだろうか?

いつの間にか、あの娘の心配ばかりしている。自分の身が危ないというのに。

あの娘は、神戸に譲渡されたらしい。あそこは魔法士の待遇がいいと聞く。このシティとは人間の心の豊かさが違うのだろう。
ああ、しかし、あの娘はいずれ、その“豊かな心”を保つ為の生け贄マザーコアにされてしまう。
感情を持つことを一切許されない動力炉エンジンに。

ああ、また考えている。すぐそこに奴ら・・の足音が聞こえてきそうだというのに・・・・・。いづれこの場所もばれるだろう。逃げても逃げてもすぐに見つかる。危険は承知だが、一刻も早くこのシティから出なくては。日記なんかつけている暇などない。

しかし、習慣だから。
そういえば、あの娘・・こもI−ブレインのフォルダに秘密の日記をつけるのが好きだった。

ああ、また考えている。
でも、本当に、心の底から、生きていて欲しいと思う。
例え、一分、いや、一秒でもいいから、あの娘に生きて欲しい。
あの、屈託のない笑顔を思い出すと、本当に身体が温まる気がするのだ。
ああ、私の可愛い、フィアー。
神様、どうか、あの娘の笑顔を奪わないで欲しい――――――――――』




    ※    ※    ※    ※    ※    ※











『フィアー。予測通りならあと15分後に敵艦隊と接触します。戦闘準備を開始して下さい』

「・・・・・」

『フィアー?』
「分かった。すぐ行くわ。全システム系の最終チェックをしておいて」
『了解』
抑揚を聞かせた人口声帯のの声に答えて、私は紙製の日記帳を丁寧に閉じる。
ところどころが破れ、擦り切れているこの分厚い日記は、私の宝物。
だって、ママ・・の心が詰まっているから。
腰の後ろから、私には大振りな拳銃を外す。
重くて、暖かい。自分の体温じゃない。
これはパパ・・の温もりだ。

その二つを船体内殻の装甲に固定された机の引き出しに丁寧にしまい、ロックする。
『全システム系、最終チェック完了。異常なしオールグリーン
接触まで、ちょうど10分です』

黒いベストのファスナーを一気に下げて、備え付けの小さな洗濯機に放り投げる。ベルトのバックルのボタンを押し、剥ぐようにして外してから、ズボンとともに弧を描いて上着の通った道を辿らせる。重いブーツと靴下を脱いで、上下の肌触りのいいシルク製の下着も放り投げられて洗濯機の中へ音もなく落ちる。
もはや、私の身体を包み込むのは、オゾン臭の微かにする窒素や酸素や二酸化炭素その他と、さらにその周りから全てを守るようにして囲う、全長120メートルの友の身体・・・・のみになった。
つまりが全裸だ。
すっかり(培養槽で)生まれた頃と同じになった私は、そのまま部屋を出る。
恥ずかしいだなんて思わない。ここ・・には、私との二人だけだから。

エネルギーセーブの為に照明を最低限にしている目の前の暗闇の中、淡く照らされた銀色の祭壇・・に向かって、ヒタヒタと冷たいチタン装甲の床を歩く。
この冷たい床を歩くのに慣れてしまったのか、最近ではこの感覚が気持ち良くなってきた。
だって、とても機械的なあたたかさ・・・・・・・・・・がするから。

祭壇の上へと階段を登る。
直径1メートルの丸い円錐をした切り株のような祭壇は、私が乗り終えると上と下から透明な特殊強化ガラスを押し出してきて、私の目の前でその継ぎ目を跡形もなく消した。それと同時に足元から生暖かい養水・・が湧き出し、あっという間に私の自慢の金色の長い髪をたゆたせる。

【『統合槽・・・』とのリンク確立。<飛燕>全戦闘システムとの“同調”に成功。行動主権を『フィアー』に移行】

思い切り口を開けて養水を肺いっぱいに満たす。苦しくはない。逆に、不思議と心地がいいくらいだ。

 死ぬということも、こんな感じだといいのに。




「さあ――――――――行くよ、<飛燕>」















★〜SPEED‐STER〜★

― Tomboy ! ―




















それは、上空約17500メートル、地球を包み込むようにしてそこに存在する黒雲の少し下で、シティ・ベルリン所属の四個艦隊が重要機密の軍事貨物輸送の任務を実行していた時、なんの前触れもなく、起こった。


コーヒーがこぼれた。


もちろん、46歳という寄る年波のせいではない。
手から跳ね上がった白いカップが、チタニウム合金の濃灰色の床に叩きつけられ粉々に砕け散る。

「――――――なんだ!?各員状況報告ッ!」

シティ・ベルリン輸送艦隊旗艦、新鋭機動輸送艦<モロッサーMOLOSSZER>の艦長、ヨルグ・A・エアニングス大佐は、身体にかかった熱いコーヒーといきなり艦を襲った衝撃にしばし混乱していた。その混乱を後押しするかのように、けたたましいサイレンと赤色灯の血のような赤い光が作戦統合室―――各所に命令を下す大型艦のコクピット―――を満たしていく。
「本艦上部後方に被弾!第5から第4装甲板損傷!」
「本艦左方、小型索敵艦<ベルクフントBERGHUND>より入電!『我が艦は、何者かの攻撃により被弾。損害は重度であり、修復は望めない。また、これ以上の戦闘・航行も不可能と判断する。残った艦の善戦を期待、・・・・・・」
「どうした?続きはどうした!大尉!」
呼ばれた通信・分析兵が、ゆっくりと振り返り、首を振った。
「通信が途切れました。同時刻、小型索敵艦<ベルクフントBERGHUND>の轟沈を確認」
「なんだと―――――・・・・・!?」


――――――――いったい、どこから?


こちらは、索敵専用の艦<ベルクフントBERGHUND>をも同行させ、レーダーは下方・前後左右の全方位を向いていた。地対空ミサイルの接近も情報改変の反応も感知されたという報告はない。それに、この“雲”すれすれの場所には高角砲、高射砲といった地上からの如何なる攻撃も届きはしないし、レーザーユニットを地上に設置したとしても、<ベルクフントBERGHUND>は十分発見が可能だったはずだ。

ならば、答えは一つ。
雲の上か―――――――! 航空管制室!!」
8枚のパネルで構成された巨大なスクリーンに、唐突に若い男の管制官オペレーターの顔が映る。
『聞こえています』
「では、君の率直な意見を聞かせてもらおうか」
『はい。艦長のおっしゃる通り、先ほどの<ベルクフントBERGHUND>に対する攻撃は艦上方の雲の中から来ました。あの超電磁波雲の中を通ってきたところを見ると、時限式の自動起動ミサイル兵器だったと考えられます』
「どうやって雲の中から我々の位置を知ったのだ?雲の中では、レーダー類は一切使用不可能だ」
『方法は幾らでもあります。地上に残された昔の観測施設は未発見・使用可能のものもありますし、少々苦労しますが、ベルリンの極秘データを盗み出して速度・位置計算をすれば大体の範囲も特定できます』
「では、我々はこのままそのミサイルで嬲り殺されなくてはならないのか?」
ヨルグのストレートな質問に、他の管制官達に緊張が走った。
『いいえ。この巨大輸送艦<モロッサーMOLOSSZER>は最新式の複殻構造を持ち、他の3隻と同様、最新鋭の装甲と放熱・迎撃イージスシステムを装備しています。先ほどと同等の威力のミサイルを50基被弾したとしても完全に機能を停止させることは出来ません』
「そうか。どうやら、敵さんにもそれは理解できているようだな。攻撃がこない」
作戦統合室に流れる、安堵の空気。
「ヨルグ艦長」
副官艦長補佐のゼアハム中佐が、少しばかり青冷めた顔でこちらを見た。無理もないだろう。<ベルクフントBERGHUND>の艦長、クラーグス中佐は、軍学校で彼の同期生だったと聞く。おそらく、親しい仲だったのだろう。
「なんだ、副官」
「敵は、間違いなく<hunterpigeon>です。やはりロンドンに匿われているという情報は間違ったものだったのです」
「ああ」
それは、ヨルグもまったく同じ意見だった。現在、確認されている雲上航空艦は3つ。シティに所属しているものの中、ロンドンで何か問題を起こし現在作戦遂行が不可能な状態である1艦<ウィリアムシェイクスピア>を除けば、残ったのはマサチューセッツに所属する、艦対艦戦闘にはこれっぽっちも向いていない“ベ千里眼ヘルゼーセン(ドイツ語では千里眼のことをヘルゼーセンと呼ぶ)”操る高高度索敵艦<F/A−307>のみ。そして、おそらく、今現在この輸送艦隊を襲っていると思われるのが、どこのどんな組織にも属さない一匹狼のキザな空賊<hunterpigeon>だ。

――――――まったく。得体の知れない“絶対機密重要貨物”とやらを運ばせる軍令部も軍令部だが、それを狙う<hunterpigeon>もまた物好きなヤツだ。
もっとも、その物好きにわざわざ付き合ってやるほど、俺は馬鹿ではないがな。

「しかし、<hunterpigeon>に50基ものミサイル兵器を搭載できる兵装搭載設備ペイロードがあるなど聞いたこともないな」
『はい。ですから、<hunterpigeon>は必ず降りてきて攻撃を仕掛けてくるはずです』
管制官が、ゼアハムの質問に的確に答えた。これは同時に、この艦に集められた優秀な兵たちの高い練度を表していた。
「よし。各艦隊に打信!艦隊は高度を15000まで降下、<光学拡散素粒子>を最大まで散布し、全ての迎撃イージスシステムの基本照準を艦隊上方に設定!<ベルクフントBERGHUND>のかたきを獲ってやれ!!」
ヨルグは、長年の軍人としての経験と知識をフルに使い、少しも逡巡することなく命令を下した。
「<ワイマラマーWEIMAUANER>・<ツベルクZWERGSPITZ>・<ヘレンシュタールフントHERRENSTALLHUND>の各艦より返信!『了解した。よい手土産が期待できそうだ』、です」
ヨルグの口元が、ニヤリ、と歪んだ。そして乱れた軍帽をきちんと被り直す。
「のこのこと現れやがったな・・・・・。総員、対雲上航空艦戦の訓練を思い出せ!雲上航空艦は雲中航空から通常航空に切り替わるとき、つまり雲から出る数秒間に行動が著しく制限される。顔を出した瞬間が勝負だ!そこを叩け!」
「了解!!!」
ヨルグの自信に満ちた命令が、少しの淀みもなく乗員全員に伝わっていった。それとまったく同時に、艦隊全ての主砲・副砲・各種兵器が天を覆う曇天へと向けられる。
如何に強固な装甲を持っていたとしても、この数、この戦力の一斉攻撃を喰らえば、木っ端微塵になるのは、誰の眼から見ても火を見るより明らかだった。
『“雲”の情報構造体に異常反応を感知!来ます!』

「さあ―――――――こい!」

<hunterpigeon>の現れるであろう予測ポイントを中心に、直径500メートルはありそうな巨大な夜空の穴がめくれるようにして開いた。
奈落のような夜空には、清冽な輝きを放つ星々が、物悲しそうに佇んでいた。
「――――いない・・・・・?  ん?」
一瞬、点々と光る輝きを、ほんの一瞬だけ、何か・・が塞いだように見えた。
が、その疑問はものの数秒で放り捨てられた。
何のことはない。大よそ、そこが偶然盲斑に入っただけのことだろう。
そう自分で結論づけて、こそこそと雲の中にでも隠れたのであろう真紅の機体を捜し―――――――――



刹那。

全長570メートルの巨体に、右真横から轟風が襲い掛かった。


津波に襲われたかのような揺れが床を左右にスライドさせ、支えを掴み損ねた副官のゼアハムが「うっ」と叫びを上げてチタンの壁に叩きつけられ昏倒した。
ヨルグも柱に後ろ頭を強く打ち付けたが、柱に腕を巻きつけるようにして体勢を整え即座に叫ぶ。
「各自損害報告っ!」
「我が艦には大規模な損害は認められず!右舷装甲板に歪み数箇所!」
「か、艦長!!本艦右方、護衛艦<ワイマラマーWEIMAUANER>、爆散を確認!!」
「なにっ!?弾薬庫が誘爆でもしたのか!?」
「げ、原因は不明でうわぁっ!!
5枚もの分厚い特殊装甲と複殻構造の壁をすり抜けて、腹の底に響く爆音と度を越した振動が立て続けに作戦統合室に響き渡った。
「<ツベルクZWERGSPITZ>・<ヘレンシュタールフントHERRENSTALLHUND>、と、共に轟沈を目視で確認!映像、出ます!!」
巨大なスクリーンに、艦外カメラから見た外の轟々たる風景が映し出された。細長い<ツベルクZWERGSPITZ>の機体が、下から突き上げられたかのようにくの字に歪み、各所から爆音と炎を吹き上げていた。

ツベルクZWERGSPITZ>と、その乗員たちの悲鳴だった。

「そんな――――――――あの艦には・・・・・」
まだ20を迎えて間もない幼い顔立ちの管制官が、呆然とした声をあげた。その小さく開けられた口からは、「セリシア・・・・・」と何度も何度も搾り出すようにな声が吐き出されていた。
その小さな悲痛の声が、ヨルグの焦りに更なる拍車をかけた。
馬鹿な。
俺は、いったいどこで判断を間違った?
わからない。
なぜこんなにも眩暈がするのだ?
わからない。
敵は<hunterpigeon>なんかではない。
敵は、そんな確定された確かなものではない。
ならば、俺が、俺たちが闘っているのは、いったい?
ダメだ。意識を保てなくなってきた。
なぜだ?
わからない―――――――――――・・・・・


「――――――――長!艦長!しっかりしてください!艦長!ご指示を!早く!が、<hunterpigeon>が転進して来ます!」
復活したゼアハムが、頭の傷を押さえながらぐったりと動かないヨルグの肩を必死に揺らした。
ふと、ヨルグの後ろ頭に回していた手の平に、ぬるり・・・とした感触を覚えた。
ゆっくりと手を目の前にかざして見る。

赤色灯の生々しい赤い光に照らされて、赤黒い液体が、べったり・・・・と張り付いていた。
「艦長・・・・・・!!!」

「ふ、副官!上空約6000メートルより超高速で接近する物体を感知!迎撃イージスシステムが目標を捕捉出来ません!そんな、有り得ない・・・・・・」
呟いた管制官の目の前のモニターに記される、【速度不明UNDEKANNT】のドイツ文字。
「くそっ!回避行動!なんとしても避けろ!」
ピクリとも動かない艦長の代わりに、ゼアハムが怒声を張り上げる。
「無理です!間に合いません!」


管制官が無情な報告を終えた、 瞬間 。

凄まじい衝撃に下から思い切り突き上げられ、床に着いていた足が宙へと浮いた。
かつて聞いたどんな音よりも大きい激音がすぐ後ろから聞こえ、照明という照明が残らず消えた。
ミサイルやビーム兵器とはまったく違う、もっと硬質で巨大な、取り返しのつかない衝撃が艦を貫き、船体全てを激震させた。
それ・・は、何の苦労もせず、まるで造作もないことのように重複装甲を破り内殻を破って、ありとあらゆる船室を設備を、人体に命中した弾丸が筋肉組織を貫き、骨や内臓に当たって砕くように破壊しつくし、新鋭輸送艦<モロッサーMOLOSSZER>をズタズタに引き裂いて、全長570メートルの船体に致命傷を与え、そして抜けていった。
「隔壁閉鎖効果なし!!航空管制室、砲雷管制室、兵員室、応答なし!!自動懸吊装置沈黙!!畜生Dar!まだ子供ガキの顔も見ていないのに!ちくしょ―――――――Verdammtッ!!!!!」






「―――――――なんて、不公平なんだ」






真後ろの通路から迫り来る真っ赤な爆風を眺めながら、ゼアハムは呟いた。
こんな闘い、不公平アンフェアだ。イカサマが平然とされているゲームを降りられない・・・・・こんなふざけたことが在るか!

「くっそおおぉおおぉぉぉおおおぉおおお!!!!!」

炎と爆風の渦がゼアハム達の肉体をちりぢりに吹き飛ばし、作戦統合室を打ち砕いていった。








「――――――早く逃げるぞ!何やってんだよ!?」
「あれだけは――――――あれだけは駄目なんだ!」
モロッサーMOLOSSZER内部>。
最重要貨物室から一向に出てこない戦友を、彼、バーン上等工作兵は必死に引きずっていた。
「何言ってんだ!?自分てめえが助からなきゃ元も子も―――――うわっ!?」
モロッサーMOLOSSZER>の作戦統合室に位置する強化耐圧ガラスが割れ、吹雪の舞う外界に炎を吹き上げた。それを追うように、次々と船の外板という外板が弾け飛び、船体を支える大黒柱の役割をしていた竜骨キールも音をたてて拉げ、真っ二つに圧し折れた。
その衝撃で、重要貨物の固定具が吹き飛び、細長く大きいモノが彼らの目の前にちて来た。




パリン――――――――――――ぐちゃ・・・




ガラスが割れる音。
大量の水がこぼれる音。

そして、生肉を落としたような・・・・・・・・・・、不快な音。

「な――――――――――――――」
バーンは自分の目を疑った。揺れる非常灯の光の加減で紫陽花ホルテンジエに似た、薄い紫にも、白灰色にも見える崩れたそれ・・は、


「の、の、脳ミソ!!??」
半分に砕けた脳髄は前頭葉にI-ブレインらしきものがあったが、彼は目の前の恐怖から後ずさりするのが精一杯で観察することはできなかった。
「あ、あ、ぁあうぁあっぁぁあ―――――――――――!!!」
逃げるのを頑なに拒否していた兵士が、飛び散り砕けてしまった脳髄の破片を必死に掻き集めだした。
這いつくばり手をプチプチした細胞で汚す、およそ正常とは思えないその行動を、バーンはただただ呆然と見ていることしか出来なかった。
炎が、閉まりきれなかった隔壁を巻き込みながら轟音をたてて輸送艦最深部である貨物区画に迫ってきた。
灼熱の炎に飲み込まれ、体毛を、皮膚を、眼球を、鼻と喉と耳の粘膜を残さず焼かれながら、煉獄の中、狂った兵士が叫んだ。

「申し訳ありません!!!申し訳ありません!!!賢人長様・・・・ぁ――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!!!!!!!」




弾薬庫にまで燃え広がった炎が、使われずじまいだった大量の炸薬に引火した。
弾頭の炸薬が艦内の空気を残らず消費しつつ燃え広がり、濃灰色をした図太い特殊合金の塊―――――輸送艦<モロッサーMOLOSSZER>を内部から誘爆させた。
膨張した耐衝撃殻が、補強材である鉄筋を次々に空中へ吹き飛ばし、巨体がまるでバナナの皮のように呆気なく裂ける。
赤黒い爆発の光球がそれを飲み込んで膨れ上がったが、荒れ狂う猛吹雪に吹き飛ばされて、すぐに消え去った。
一刹那の閃光が3000メートル上の黒雲を薄く浮かび上がらせ、数百人の人間の死の後には、今までとなんら変わりのない常闇が空一面に広がるのみとなった――――














上空17999メートル。
“雲”すれすれの場所に、その異形の船は、まるでその空間に縫い付けられたかのように浮かんでいた。
誰が見ても同じようにイメージするであろうその外観は、“黒塗りの両刃剣”髣髴ほうふつとさせる。
あまりに鋭く攻撃的な船体の表面には、基調の黒色に眩しいほどに輝く金色の幾何学的な模様が走っている。

その中枢たる【統合槽】で、少女のライトグリーンの双眸が、正面のスクリーンに映し出される眼下の堕ち行く残骸を睨み付けていた。
「許さない。“姉さん・・・”を、あんたたちの好きにはさせない」
【統合槽】の中には、怒りに握った拳を振るわせる、少女の長い金色の髪と華奢を絵に描いたような小柄な裸体が漂っていた。
『救命艇が脱出した反応は探知されませんでした。生存者も、あの状況では・・・・・』
抑揚の効いた合成音声が、静かに少女に語りかける。
少女が、静かに目を閉じる。




『――――――――偉いね。フィアー。みんな驚いてたよ。あなたは、私の、自慢の娘よ――――――――』

――――― ママ・・


『――――――――電磁射出と火薬発射のどっちがいいかって?そりゃあ火薬さ!電磁は反動も音も小さくて済むけど、メンテがめんどくさいし、バッテリー切れたら使えないしなぁ。え?そうだ、これも火薬発射だ。俺のオリジナルカスタム<ドーベルマン>・・・・・お前がここから出られたら・・・・・・これをピカピカに磨いて、お前にプレゼントしてやるからな――――――――』

――――― パパ・・


『――――――――脇を閉めて、拳は突き出したらすぐに引くことを意識して・・・筋がいいな!・・・・・お前にも、培養槽ここから出て、いっぱい動ける時がくればいいなぁ。フィアー』

――――― おじさん・・・・


『――――――――な、なんで僕にだけ目隠しするんだよぉ!』
『あんたみたいないっつもハァハァしてる奴に裸の女の子見せられるわけないでしょ!ったく!なんであんたみたいなデブがここの研究員になれたのかしら?ねぇ、フィアー?』
『失礼だなぁ。僕は2Dにしか興味ないよ!』
『即!強制成仏――――――――っ!!』
『むぎぃぃひぃいいいいぃいい!!??ぼ、僕は分離合体なんかできないよひいぃいいいいぃびゃあぁっとっとれるぅううううぅううぅあうぁうぁああ!!!!』

――――― お兄さん・・・・お姉さん・・・・








『――――生きるんだStirbnicht。フィアー。
我らの分まで、精一杯生きて、笑って、怒って、泣いて。
―――そして、普通の子供として、生きていきなさい――――――――』



―――――― 博士 ――――・・・・





少女はしばしの間まどろむようにじっとしていたが、すぐにまた迷いのない厳しい、けれども、やはり心のどこかに迷いを押し隠しているような目つきになる。
「いいの。これでいいのよ。彼らには悪いけど、これで奴ら・・への“宣戦布告”が出来た。厳重な監視網の中、フル装備の輸送船隊を1分足らずで沈めたという最高の登場の仕方で」
『これから大変になりますね、フィアー』
その言葉に、少女が申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい、<飛燕>。でも、あなたの力が必要なの。悪いけど、一緒に死んでくれる?」
『神戸崩壊の際に、本当なら私も屑鉄となっているはずでした。私はあの時から、あなたにずっと付いていくつもりですよ』
「・・・・・・・ありがとう」




動力エンジンの音など少しとて鳴らすことなくその黒い船はそこから掻き消えるようにして去った。
“雲”が、一瞬で一筋の線を刻まれたが、すぐにまた元の平坦な曇天へと、何事もなかったかのように戻った。



痕には、どこまでも続く雪原に残骸で出来た兵士たちの乱雑な墓標が、今までもそこに在り続けたかのように無数に突き立っているだけだった。










    |    |    |    |    |    |    |  



「――――――凄いよ月姉!シティ間の戦争があったらしいんだ!」
興奮した錬の叫び声は、しかし、唸るような低い機動音にほとんどが掻き消されてしまった。
「ちょっと待ってよ。今最後のデータディスクを『解析くん』にかけるから」
―――僕から説明しよう。『解析くん』とは、さっきからうるさい音を鳴らしている原因の機械のことだ。正式には、『月夜&真昼合作、解析専用高性能端末Ver3,5』というらしいが、実質作った二人とも忘れているに違いない。ちなみに、性能はどのシティのそれよりも高い。それこそ、家10件分の報酬で解析を頼みに来る客がいるくらいに。
「さっきから不思議に思ってたんだけどさ、いったい何を解析してんのさ?月姉」
「ああ、言ってなかったっけ?神戸跡から見つかったコンピューターとかデータディスクとかで、ガードがおっそろしく堅いヤツがあるっていうから、わざわざ私の『解析くん』持ち出してきて、こうやって解析してるわけ」
「まだそんなものが残ってたんですか?」
フィアが、少しばかり驚いた様子で聞いてきた。
それもそうだろう。あの巨大な瓦礫の富士山に、よく耐えられたものだ。戦車でさえ、それが戦車の残骸なのかそれとも自動販売機の残骸なのかさえパッと見では解らなかったほどだというのに。
「それがさぁ、これ、すんごい地下にあったらしいのよ。シティから3、4キロくらい離れたところに、そりゃあもうでっかい搬入口が開いてたらしくてね。潜ること・・・・何百メートル・・・・だったかは忘れたわ。でも、マザーシステムより一層下だったって話よ」
「ああ、それは俺も見たぞ」とちょっと不機嫌そうに言うのはヴィド。
「かなりのスペースがあったぞ。この“町”が一つ丸ごと入んじゃねぇのかってくらいにな。まぁ、ほとんど潰れちまってるから使うのは無理だろうがな」
「へぇ〜〜〜」
「なにに使われていたんでしょう・・・・・すごく気になります」
「そうね・・・」
3人の間に流れた沈黙を、真昼が手を叩く乾いた音が破った。
「ちょっとちょっと、趣旨がずれちゃってるよ。ヴィドさんがせっかく最新情報知らせに来てくれたのにほったらかしにするから、ぶすっとしちゃったじゃないか」
「・・・・・・(ぶすっ)」
「可愛くない(錬)」
「うるせぇっ!!」
「続きをどうぞ、ヴィドさん?(真昼)」
「ああ・・・どっからだったっけ?」
「戦闘あった場所の様子」
「おお、そうだったそうだった。とにかく、何て言ったらいいのか・・・とにかくすげぇんだよ。目に入る景色の全部に船体の破片が残ってやがんだ。ベルリンの調査団が、BBブラックボックスとか回収してさっさと持ってっちまったみてぇだが、残った残骸集めたら中型艦一個くらい作れんじゃねぇのかな」
「そんなに凄かったの?で?どことどこのシティがやりあったのよ?まさか、全面戦争にでも突入するつもりかしら?」
「いや。そうでもないんだ」
「へ?どういうことなの、真昼兄」
素っ頓狂な錬の声に、真昼が頷いて続ける。
「『現場にある残骸のうち、60%から64%を回収、くまなく調査しましたが、<ベルリン機動輸送艦隊>の艦の残骸以外の痕跡は一切発見されず、また、BBブラックボックスの損傷も激しく、解析にはあと数日の時間が要する』、だって」
「それ、どうやって知ったのよ?」
「ん?ちょっと、ここをこうやってああやって・・・・・」
月夜が、真昼の端末の画面を覗き込む。画面には、ドイツ語で『シティ・ベルリン空軍<ベルリン機動輸送艦隊>についての一時捜査報告・極秘』と大きく記されていた。
「・・・・・さすが」
「どうも」
「じゃあ、ヘイズさんでしょうか?」
フィアが、自信なさげに言う。即座に、錬が手をポンと鳴らした。
「そっか!<huntepigeon>なら簡単だ!」
「いんやぁ。それがそうもいかんみたいなんだよなぁ」
「へ?」
再び間の抜けた声を出す錬をよそに、真昼とヴィドが同時に互いを見る。
「どうやら、お前さんもおんなじ見解のようだな」
「みたいだね」
「・・・あ〜〜っもう!じれったいわね!つまり何よ!?」
「よ、4日前、日本時間で午前2時23分に、モスクワの方で、モスクワ軍の新型戦艦のテスト飛行中に、コンピューターが“雲”のすぐ下を高速で進む<hunterpigeon>を捕捉。それと交戦したって話があるんだが・・・・・ふぅ。母ちゃんを思い出しちまったぜ」
「え?その時間は確か・・・・・」
フィアが眉を潜める。
「そう。正解だよフィア。その時間は、ちょうど、ベルリンの機動輸送艦隊が消息を断つ1分前なんだ。さらに言うなら、コンピューターは、自力で<hunterpigeon>を発見したんじゃない。発見させられた・・・・・・・んだ」
「え?“させられた”って、どういうことなの?真昼兄」
「『―――そもそも、索敵範囲が半径2500マイル(約4000キロメートル)の高性能I−R(informational-radar)が、3470マイル先の<hunterpigeon>を発見できたこと自体がおかしいのであり、あの<hunterpigeon>と我らが新型実験艦が、撃墜されたにせよ、善戦を繰り広げることが出来たことを差し引いたとしてもこれは由々しき事態であり、同時刻に起こったベルリンでの機動輸送艦隊全滅事件との関連性をここに指摘し――――――』と、モスクワの機密報告書に書いてある。要するに、何者かがモスクワ・シティの飛びっきりキツイ軍事索敵システムをハック。<hunterpigeon>の位置をわざわざ書き加えてベルリンの新型戦闘艦と闘わせたってことだよ」
「それは・・・・・偶然の一致にしては、なんだか意図的なものを感じるわね」
月夜が、疑問を通り越して、苦笑した。
「だろ?だからな。俺は、これを“自分の存在を知らしめる為”だと思ってるんだ?違うか?真昼」
「そうとってほぼ間違いないだろうね。ほとんど常に移動している世界最高クラスの高速機動艦の居場所を未来予測も含めて正確に把握し、強固なモスクワの軍事システムに侵入。これを書き換え、さらには、同時刻に地上からのあらゆる攻撃も受け付けない上空のフル装備のベルリン機動輸送艦隊を完全に無力化、生存者をひとりも残さずに全滅させた・・・・・」
「・・・・・全然わかんないんだけどさ、そんなことして一体何の意味があるのさ、真昼兄?」
「僕はね、これを“彼”もしくは“彼女”からの“メッセージ”なんじゃないのかと考えているんだ。『“僕”もしくは“私”は、世界で3本の指に入る最強戦艦の内の一つ<hunterpigeon>と同等・もしくはそれ以上の力を持ち、あなたたち・・・・・に敵対します』ってね」
「ますます意味ないじゃない!一気に強大な力を持つシティに、しかも2つに喧嘩売っちゃって、いったい誰になんの徳が――――――」
「なぁ、月夜。その『あなたたち』が、必ずしもシティと同意かっていうと、そうじゃないんじゃないか?」
「は?」


「もしかして――――――<賢人会議>、ですか?」
フィアの、不安そうな声。
その瞬間、錬は思い出す。
<世界樹>の一件で、ヘイズと彼の慕う『先生』より聞かされた、エドをそそのかし<世界樹>を暴走させ世界中で魔法士についての情報を盗み続ける正体不明の大規模暗躍組織。

通称名―――――<賢人会議>

「おそらくね。実際、この輸送艦隊の到達目標地点への行程図の途中に、さも『そこを通ることがまったくの近道だ』とでも言わんばかりに<シティ・メルボルン跡地>の真上を通過することが書かれている。
今までに<賢人会議>が依頼した魔法士やエージェントに支払われた報酬金額から、その総資産はおそらく一シティにまで匹敵する。さらに、他国の盗まれた魔法士のデータは各国には貴重極まりないものだ。シティの取引先相手としての条件も十分だ」
「えっと、つまりが、全滅した輸送艦隊はシティ・メルボルン跡にある<賢人会議>に何かを運んでいる途中に<賢人会議>に敵対する正体不明のだれかに襲われたってこと?なら、輸送艦隊はいったいなにを運んでいたのさ?」
「そんなこと、私が分かるはずないでしょ」
「思い出してみてよ、月夜。この輸送艦隊の構成。この『護衛艦3機を含む戦闘艦4機編成』。・・・・・どこかで聞いたことない?」
「・・・・・そういえばどこかで誰かから聞いたような・・・・・」
フィアが、唐突に「あっ」という声を上げた。



「――――――マザー・・・・・・」



「そう。正解。これは、錬が『ジークフリード』を襲ったときに、祐一が立案した艦隊構成にほぼ忠実なんだ。ある意味、これほど運んでいる荷物がわかりやすい輸送はないね」
「じゃ、じゃあ」
錬の声が、震えた。
「じゃあ、運ばれていたのは・・・・・」
錬には、モニターの淡い光を下から浴び、不適な笑みを浮かべる兄が、幽鬼のようにも見えた。
「この捜査報告書にも、運んでいたものについての情報はわざと避けられて書かれていない。これだけ防御の堅い極秘書類は、かなりの上層部の人間にしか見られないはずなのに、それでも“積荷”のことは一切書いていない。――――――――――多分、『マザー・コア』。例え違ったとしても、シティの命にかかわる、マザーシステムにかかわるものに違いはないはずだ」
「嘘・・・・・また、私と同じような・・・・・?そんな・・・・・」
痛々しさの滲み出てくるようなフィアの悲痛な声は、錬の耳も心も耐えられないほどに痛かった。

「ね、ねえ!そんなすごい空中戦艦なんて、いったいどこの誰が作れるのさ?」
真昼は一瞬目を丸くしたが、それが話題を変えようという錬の気遣いだとすぐに悟って頷いた。
「ごめんね、フィア。ちょっと推測が過ぎたかもしれない。違う可能性だって十分にあるしね。謝るよ」
「いいえ!そんな、別に・・・・」
「そうね。今はその“積荷”のことを話し合ったところで肝心の証拠がないんだから推測の域は出られないわけだし、とりあえずはその戦艦がいったいどこの誰が作ったのかってことを考えましょうか」

「あ〜〜〜、それなんだけど・・・・・」
真昼が、今度こそ気まずそうに言った。
「大体の見当は簡単につくよ。条件はこの3つだけ。

1、『これだけの高性能艦はシティでもない限り製造は無理である』。

2、『昔に消滅したシティのものならば、今まで何の活動がなかったのはおかしい』。

3、『仮に昔に滅んだシティによって製造され、今まで一切の資料が発見されなかったとしても、消滅したシティは全てジャンク屋などが根こそぎ調べ解体し尽くしたから、その可能性は限りなく低い』。

これを総合して考えると、こうなる。

『最近シティとしての機能を停止したばかりの、技術力がバカ高くて、まだジャンク屋による調査・解体が終わっていないシティ』―――――――」

少しの間、部屋に沈黙が流れた。
「・・・・・え?それって・・・・・」
「やっぱり・・・・・みんな、同じこと考えてるみたいね?」
「ああ。それが全部ぴったり当てはまるシティ跡は、今のこの世界にたった一つだけだからな。
―――――――シティ・神戸、か・・・・・確かに、不思議はないかも知れんな」

「で、でも、そんなこと、おばあさまは確かに知りませんでした・・・・・!」
確かにその通りだった。フィアは、シティ・神戸の最高司令官七瀬将軍と一度同調し、その記憶を確かめたことがあるのだ。
「七瀬将軍―――――おばさんも、詳しいことは知らなかったのかもしれない」
「あの人に限って、そんなことがあるの?真昼兄」
錬は、前に見せてもらった見るからにやり手の老婆の姿を思い出した。
「ああ。あながち有り得ない話じゃねぇ。神戸には優秀な技術将校が腐るほどいたからな。無断で兵器開発、なんてしょっちゅうあったみてぇだし、もしもの話、将軍が“あの事件”に躍起になっているのをここぞとばかりに見計らって戦艦作ってたのかも知れん」
「知っていても、どのシティも雲上航空艦の開発に躍起になってるこの時期に、変に拒否したり監視を厳重にし過ぎたら、誰かに怪しまれて“計画”がばれてしまうかも知れない。あえて黙認して、ほとんど製造計画に手を出さなかったとも考えられる」
「で、でも、その艦が神戸で造られたっていう明確な証拠はないわけだし―――――」


チ―――ン。



月夜の部屋から、電子レンジの鳴らすような音が聞こえた。
『解析くん』の、解析終了の合図だ。
話の腰を折ってしまったと月夜が両肩をオーバーに持ち上げて席を立つ中、いつも通り、解析くんの甲高い合成音声が解析した対象の題名を小さく告げる。






『題名 ヲ ゲトー シマスタ。

【特一級強襲用格闘高速雲中戦艦 ALCS系列1番艦 ALCS−01  通 称 名 パーソナルコード<飛燕>の完成祝いの出席者、及び幹事の取り決めと出席会場を焼肉屋にするか寿司屋にするかについて】
ノ 解析 ヲ 終了 シマスタ。 次 ニ 解析 スルモノ キボンヌ。 キボンヌ。 キボンヌ―――――』



再び流れる沈黙の中、

「び――――――――――んご」


月夜の呟きが、よく聞こえた。













+    +    +    +    +    +    +



『行くんだ、フィアー。もうじきここも崩れる』
初老の白衣の初老の男が、少女に必死に言い聞かせる。
『いや!博士たちも一緒に行こう!みんなで、ここから逃げよう!?』
『・・・・ダメなんだよ、フィアー。ダメなんだ。私たちは、確かに<飛燕>に全員乗ることが出来る。しかし、その後はどうするんだ?』
『どこかの“町”ってところに行って、みんなで住もうよ!ね?ね?』
少女が必死に詰め寄る。しかし、初老の男も、後ろにたたずむ十数人の白衣たちも、首を縦には振らなかった。
『習ったことがあるだろう?フィアー。どこの“町”も、こんな人数を受け入れてくれるだけの“町”なんて、数えるほどしかない。それに、我々の顔は世界中に知れ渡っているんだ。有名になれた見返りがこれとは、なんとも皮肉なものだよ』
白衣たちが、諦めにも似た、自嘲じみた笑いを浮かべた。
『どうせ、すぐにエージェントに見つかるか通報されるかして、どこかのシティに連れて行かれる』
『だったら、私が守る!捕まえに来た奴は、みんな私が――――――!!』
『フィアー!!』
『ひっ!?』
少女が、怯えた様子で咄嗟に頭を両手で庇った。それを見て、怒声を浴びせた初老の男が、しまった、という顔になる。
『あ、ああ。すまないね、フィアー。・・・・・でも、よく考えておくれ。お前には、闘いなどとは何の関係もない世界で生きて欲しいのだ。お前には・・・・・』
少女は、こちらと同じ目線で優しく話す男の眼が、少女を見ているようで、違う人間を観ているように見えた。
『生きろって・・・・・』
少女の声を遮るかのように、腹の底に響くほどの振動と、巨大な足音・・が広大な鉄の空間に響き渡った。
『急ぐんだ、フィアー!』と少女の腕を掴む男の手を渾身の力で振り解いて、うろたえる男をよそに構わず叫ぶ。
『生きろって、じゃあ、私はどこでどうやって生きていけばいいの!?どうして・・・・生きなくちゃいけないの!?パパもママも、警備のおじさんも研究員のお姉さんもお兄さんも死んじゃった!みんなも死んじゃったら、私は<飛燕>と二人ぼっちになっちゃう!私はもう万人の命を支えるマザーコアじゃないし、“ブレーカー”の役割もできない!ただの人殺しの為の“兵器”なのよ?私は、私は・・・・・・!!!!』
声にもならなかった。頭の中がごちゃごちゃに混ぜかえってしまって、どれから話せばいいのか、どう言えば伝わるのか、何にも分からなくなってしまった。
俯いていても、みんなが口をつぐんで黙ってしまったのがわかった。
みんなすごく頭がいいくせに、それでも答えられない問題を私に解けだなんて、そんなの意地悪すぎる。


その沈黙を破ったのは、バキバキ、という柱のひしゃげる音だった。
『崩れる・・・・・!』そう誰かが呟いた瞬間、みんなが一斉に少女に突進する。突然の出来事に抵抗する間も無く、少女は<飛燕>側面のハッチから乱暴に放り込まれた。
背中の痛みにしばらく動けないでいると、プシュ、という、空気の抜けるような音がした。
それがハッチ閉鎖の音だと気付くのに、1秒もいらなかった。
痛みにかまっている暇はなかった。
身体をバネのようにして一挙動で立ち上がり、駆け出した。
<飛燕>には、窓は一切ない。統合室へつまずききながら飛び込んで、急いで船外カメラを呼び出す。

外には、岩塊のような天井の残骸や瓦礫が数え切れないほど降り注ぐ地獄のような光景が広がっていた。
視界に映る白衣の何人かが、頭から血を流して絶命しているのがはっきりと見えた。途端に、少女の顔が死人のように青冷める。
『いやぁっ!博士!博士!!博士!!!』



『―――――さあ、<飛燕>。行ってくれ』
『了解しました。おたっしゃで・・・・・・、博士』
初老の男は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに、満足そうな笑みを顔いっぱいに浮かべた。半数以上が死んだ他の白衣たちも、みな同じような笑みを船外カメラに向ける。
『ああ。これでやっと、天国の娘と、七瀬雪に謝ることができるよ。二人には本当に悪いことをしてしまった。親として、科学者として、私は失格だよ。・・・・・娘が向こうで反抗期になっていないことを祈っておいてくれ。――――――さらばだ』

その言葉に後押しされるかのように、<飛燕>が、機体を繋ぐ牽引具や連結具を無理やり弾き飛ばして急加速で離陸を開始した。

『いやぁ!戻って<飛燕>!戻れ!!博士たちが死んじゃう!!!』
『フィアー』
<飛燕>の声が、落ち着け、と投げかけてくる。
ガコン、と、巨大な何かが枠から外れるような音が地下層に大きく響き渡った。
咄嗟に、男たちを映し出しているカメラの倍率を変化させる。


男たちの頭のすぐ上に、<飛燕>の一回りも二回りもある瓦礫――――大きさからして天井自体が落ちてきたと思わせるほどのもの――――が落下していた。


『はか―――――』


男の口が、小さく何かを告げるように動いた。
そして、巨大な鋼鉄の塊に潰されていった。


『い―――――いやあぁあぁあぁぁあぁあぁぁあ―――――――――――――!!!!』


その光景を眼に焼付けながら、いつまでも泣き叫ぶ少女を載せた黒色の鋭い船は、発射口から虚空の空へと羽ばたいていった。






―――振り返るな、フィアー―――











『―――――アー、フィアー。大丈夫ですか?』

「 ぅ・・・・・ん?」
泥の中から浮かび上がるような、夢の続きのような、とにかく最悪の感覚。
それが眠りから覚める感覚だと理解するのに、大した時間は必要なかった。

「ごめん―――――なに?」
いつ蹴飛ばしたのか、足元の床に落っこちている毛布をベッドの上に直しながら姿なき声に質す。
『いえ、うなされていたようでしたから』
「・・・・ちょっと久しぶりにあの夢・・・を見ちゃってね。大丈夫、心配いらないから」
『いいえ。フィアーの心拍数はだいぶ上がっています。昨日から何も食べていませんし、何か口にすべきです』
「・・・・・そうね、そうする。ありがと、<飛燕>」



―――――――――――――――

――――――――――

―――――

――

森閑とした通路に、機関の振動と低く唸るような風を切る音が果てることなく続いていた。

ママ。パパ。おじさん。お兄さん。お姉さん。博士―――――――――

「っ!!」
さっき観た夢を思い返していると、不意に腹の心張り棒が外れ、どうしようもない心細さが喉元まで這い上がってきて、フィアーは通路の壁に手を付いた。
持っていた缶詰たちが手から零れ落ち、思い思いの方へと転がっていく。
久しぶりに観た夢で流した涙が、きつく締めていたはずの感情の蓋を緩めてしまったかのようだった。
忘れられない、あの日・・・。マザーシステムの真下に位置した秘密実験層は、四方八方の壁全てが真横から核爆発の直撃を受けても耐えることができる設計だったが、暴走した『マザー』による情報の側からの“侵食”には半刻とて持ちこたえられなかった。壁という壁が崩壊し、みんな死んでしまった。私を生き延びさせるために。
こんな、私なんかを――――――――――

いけない。

このループにはまってしまったら、しばらく抜け出せなくなってしまう。
かぶりを振って、全ての思考を振り払い、支えにとつるつるした壁に手を付く。
ふと、平らなはずのチタンの壁にゴツゴツとした凹凸の感触を感じて、一瞬背筋をビクリと震わせた。

ああ、なんだこれか―――――――。


見なくても、それが何で、なんと書いてあるか・・・・・・すらわかる。眼を閉じれば、一字一句、さもそこにあるかのように瞼の裏にはっきりと思い描けるほどに。
一字一字を白く細い指先でなぞりながら、一文字一文字をと同じく噛み締めるように心に刻み付けていく。


決して立ち止まるべからず。

決して振り返るべからず。

ただ踏み出すことのみを考えよ。

その一足が“道”を創りだす。

その一歩が“道”となる。




小さく開いた口から、自然に言葉が零れ落ちた。


「――――――――――おなか、すいたな・・・・・」



頬を伝った一筋の輝きを、少女は無視した。










    |    |    |    |    |    |    |  

天樹家の居間に、『解析くん』の小さな端末画面を食い入るように、天樹双子、そしてフィアとヴィドとその間に挟まれて、隣のフィアのシャンプーのいい香りとヴィドの、主に脇部から漂ってくる(なぜだかわからないが)磯っぽい匂いで、にやけていいのかそれとも苦しんで泣いていいのか迷っている錬がいた。
「そんな・・・私たち・・以外にも、天使がいたなんて・・・・・」
「みたいだね」
震える声のフィアに、真昼が努めて冷静に返す。が、声の震えは押さえ切れてはいなかった。
「それにしても・・・・・この航空艦はなんと言ったらいいか・・・化けもんだぜ」
「そうね・・・・。これほどの機体なら、10機編成の輸送船団だろうが20機編成の大艦隊だろうが、ものの一瞬ね」
ヴィドが、感嘆、というよりも半ば呆れ口調で言った言葉に、同じような口調で月夜が返した。
錬が、ヴィドを押しのけて深呼吸をして涙を拭いてから、言う。
「ね、ねえ。じゃあさ。これに乗って、輸送艦を撃墜したのも、撃墜された輸送船に載ってたのも・・・・・もしかしたら同じ姉妹かも知れないってこと?そんな、そんなことって・・・・・」
錬は、知っている。
輸送船<ジークフリート>の貨物区画の中、一人寂しく培養槽にたゆたい、ずっと自分という非力な救いを待っていた悲しい少女―――――隣で涙を流している、この娘フィアを。
もしも輸送船の中に錬の愛する少女とまったくそっくりな少女がいたのだとしたら。
同じ境遇、同じ思いで、同じように誰かの救いを待っていたのだとしたら。
その娘を殺したのが、血の繋がった姉妹だとしたら。
それは、余りにも残酷すぎるではないか――――――――――。

胸を締め付けるような痛々しい沈黙の中、真昼がマウスを操る音と、胸を締め付けてくるようなフィアの嗚咽だけが耳に刺さった。















+    +    +    +    +    +    +

『フィアー。大丈夫ですか?アドレナリン分泌率が正常値より少しばかり多いですよ』
「・・・・・神戸が、近いから。ちょっと思い出しちゃっただけ」
『・・・気が利かず申し訳ありません』
「いいのよ。気にしないで。忘れて」
『話は変わりますが、フィアー』
「はやっ」
『ほぼ正面、進路上に、比較的大規模な隊商の列を感知。規模等からしておそらくはここ一帯を仕切るヴィド商会と呼ばれる隊商であると考えられます。どうしますか?』
「え?まだ缶詰も結構残ってるし、銃弾は訓練以外全然使ってないし歯磨き粉もあるしタオルもあるし服も下着もあるし・・・・・」
少女が指を折って数える。
『合成シュークリームが残り50袋しかありませんが?』
少女の指が、ピタリと動きを止めた。
「なにしてるのよ!速く行くわよ!!」
『・・・・・りょーかい』


―――――――――――――――

――――――――――

―――――

――

「―――――じゃ、ここで待ってるのよ。“同調”しっぱなしでリンクしとくから、異常を感じたらさっさと知らせる。私が合図するまで迷彩は切らない。いいわね?」
『ええ。いつも通りですね。ところで――――――――――なぜ泣いているのですか?
「・・・・え?」
少女が、慌てて頬に手を当て、確かめた。
「え?え?なんで?へ?」
『私が聞いているのですが・・・・・』
「・・・・・もうとまっちゃった。変なの。じゃ、行ってきま〜す」
『服を買うのもいいですが、どうせそんなに着ないんだし、お金の使いすぎには気をつけてくださいね。ああ、あと、将来の為にとか言って大きめのブラジャーを買っても使わないんだからそれも――――』

一瞬、世界を凍りつかせるかと思うほどの沈黙が流れた。

「っっっもうトサカ(頭)に来た!!人が気にしていることをよくもヌケヌケと―――――――――っ!!!」

バンバンバンバン!!

チュインチュインチュインチュイン!!


『あっ、痛い。痛い(棒読み)。銃の乱射はやめて下さい。痛い。痛い(棒読み)』














    |    |    |    |    |    |    |  

沈黙に包まれる天樹家の扉が大きく開け放たれ、13、4歳ほどの見るからにごつい少年が現れた。
「あ、父ちゃん。こんなとこで油売ってたのか」
「・・・・・え?(錬)」
「おお。我が息子ギドよ。今は遊んでやれるような暇はないぞ」
「・・・・・は?(錬)」
「ああ、違うんだよ。フィア姉ちゃんがグレちゃったってみんなが大騒ぎしててさ、」
「私が、ですか?」
「あれ!?じゃ、じゃあ、今町外れの売り場にいる娘はだれ?」

「――――――真昼!」
「うん。都合が良すぎるかもしれないけど、輸送艦隊全滅地点から一番近い“町”はこの“町”を入れてわずか3つ。ここに立ち寄るのもありえないわけじゃない!」
「い、行きましょう!真昼さん!月夜さん!」
「フィア。でも、」
「・・・・・会って、みたいんです。知りたいんです。どんな人なのか。私のことをどう思っているのか。・・・・・マザーコア・・・姉妹がのっているかもしれないのを知ってて、輸送船を壊したのかも・・・・・。もしかしたら、知らなかったのかもしれません。もしかしたら、友達になれるかもしれないんです。姉妹になれるかもしれないんです。困っているのなら助けてあげられるかもしれないんです。・・・・・お願いします」
「・・・・・わかった。行こう!ギド、案内して!」
「俺も行くぜ!」

「ね、ねぇ!みんなちょっと待ってよ!?驚かないの!?あっれ〜〜〜?おかしいんじゃない?ギド君の存在僕今はじめて知ったんだけど!?なんでみんな“もうとっくに知ってます”口調なのさ!?ずるくない!?ねぇったら!!あっ待ってったら!!誰か僕の話を聞いて!?知らんぷりしないで!地味に痛いんだよそう言うのさぁ!!!」

錬の叫びは、誰に聞かれることもなく冷たい空気に絡め取られ、消えてしまった。











+    +    +    +    +    +    +

「あ、あとそのクッキーも頂戴。・・・うんそれ。ありがと」
店員に、3番目に好物のチョコチップクッキーを取ってもらう(ちなみに2番はエクレア。1番はダントツでシュークリーム)。
特にシュークリームは1日に7、8個は食べないと気が済まないほどに大好物なのだ。あのサクッとしたパイ生地、ふわっとした中身。それらに優しく包み込まれる、生クリームとカスタードクリームの絶妙な甘み・・・・・。うわ、よだれが。
「さ〜て、帰って食べよう!じゃあね!」
「・・・・・まいどあり〜〜〜〜・・・・・」
若い男の店員が、こちらの顔をじろじろと覗き込んできた。
シュークリームを両手に抱えるダンボール一杯に残さず買い漁っただけで、ずいぶん大げさなヤツだ。

「・・・・・どこかであったかしら?」
「え!?いや、だって・・・・な、なんでもないよ。多分人違い」
記憶にない。
試しにI−ブレインに照合させてみるが、該当はなし。
これが初対面のはずだ。

ふと気がつくと、周りの人間がみんなこちらを見ている。
全員東洋系、話している言葉から、ほとんどが日本人で構成されている“町”のようだ。
おそらく、神戸に住んでいた人間もいるのだろうが、私の扱いは極秘だったはず。それに、私の知る、私を知っていた人間はもういない。
面識はない。
すると・・・・・

「・・・・・変な格好、なのかしら?」

視線を下へと下ろす。
黒い、サイズを合わせた特注の戦闘ブーツ。
同じくサイズを合わせた、特注の黒い戦闘パンツ。
またまたサイズを合わせた、色々なツールを入れるポケットが前面にたくさんついた黒いジャケット。
全部、微細なシャークスキン加工が施されていて、高性能な防弾服の役割も担っている。
腰の後ろには『ドーベルマンカスタム』が1丁。もちろん、昔ながらの火薬発射式だ。
特に目立つわけでもない。この物騒な時代、丸腰では寂しいと感じるのは何も珍しいことではないだろうに。

それとも、私が突然銃を乱射するようなキチ○イに見えたのかしら?失礼ね。私は自分の身を守る上でしか銃は使わな―――――・・・・・例外を除いてないわよ!!

「・・・ふんだ。私だって、オシャレぐらいしてみたいわよ」
そう呟いて、大き目の下着と可愛いウサギのデザイン(『ヴィドお手製☆』と刺繍がしてある)のマフラーとシュークリームとクッキーの入った箱を抱えなおし、“相棒”のところへ帰ろうと失礼な店員たちにきびすを返して―――――




「「――――――――――え?」」




まったくそっくりのソプラノが重なった。



目の前に、自分がいた。

白と水色のいかにも女の子らしい可愛いデザインのセーターとスカートを着込んだ長い金髪に両碧眼の女の子。
向こうも、こちらと同じように思い切り驚いている。その後ろに、口をこれでもかというほどにあんぐりと開けた間抜け顔の東洋系の男の子。背が低い。
そのまた後ろには、眼を見開く、顔のそっくりなおそらく双子であろう顔のそっくりな男女と、熊みたいな中年の大男。
でも、そんなことはどうでもいい。



自分とそっくりな女の子への、この奇妙な既視感。


一時期ベルリンの上層部で話題になった“4番フィア生存説”。


神戸に近い、この“町”。




間違いない。この娘は。


Wie ist dein Name?あんた、名前は?


いきなりのドイツ語に、相手の少女はしばし戸惑ったが、すぐに答えた。



 fi, Fia. フィ、フィアです






わかっていたことだというのに、頭の中が急激に真っ白になってゆく。


天使アンヘル計画。

4番 フィア。

闘 争 魔法。

壁 命 崩壊。

死 悲。

叫 恐怖。



























その名前が真っ白な心に浮かび上がってきた途端、今までどこに隠れていたのか、押さえ切れない憎悪と憤怒の感情が溢れ出て来た。頭の中の神経という神経がまとめてぶち切れるブチブチという音を、私は確かにこの耳で聞いた。

フィアは、七瀬将軍のお気に入りなんでしょう?フィアーが気の毒ね・・・・』


恨むべき“あの女”のお気に入り。
わかっている。この娘は何一つ悪いことはしていない。だから、私が行き場のない怒りを怒りをこの娘にぶつけるのは単なる八つ当たりに過ぎない。
私が恨んでいるのは、七瀬静江。
フィアは心優しい、利用されたに過ぎない可愛そうな娘。
そうだ。その通りだ。
でも―――――――
コイツガアイツノタクラミニキヅイテイレバ、ミンナハシナナカッタ。
シヌコトナドナカッタ。
コイツサエイナケレバ―――――――!!!!!


気付いたら、勝手に口が開いて何かを喋り始めていた。


「なによ、元気そうじゃない。フィア?お姉ちゃんたちは元気かしら?」

少女の顔が、悲壮なまでに歪んだ。

違う。

私はなにを言っているの?

私が恨んでいるのは、この娘じゃない。

この娘は悪くない。

私はこの娘に救われたも同然なのに。


でも、収まらない。収まってくれない。

行き場をなくした怒りが私を狂わせる。

すごい頭痛と吐き気がする。

おかしい。だんだん自分がわからなくなってきた。

こんなの生まれて初めてだ。


自分と同じ、顔が。姿が。声が。

自分とは違う、自分にはない、服が。大勢の仲間が。

まるで挑発しているかのように、無性に私の神経を逆なでする。


「どうしたの?何黙ってるのよ?あ、そういえば、この“町”って人口多いわよね。神戸の生き残りが集まってきてるんだぁ。何千人くらい生き残ったのかしら?いえ、何十万人死んだのかしら?ねぇ?」

後ろの男の子が、顔いっぱいに怒りを表す。

違う。違うの。

感情と行動のコントロールがまるでできない。

ぺらぺらと動く口先だけが、私という存在と別の生き物みたいに嫌味な侮蔑の言葉を紡いでゆく。


「うるさい!!お前なんかに、フィアの気持ちが分かるもんか!!」

男の子が、身を乗り出して吠え掛かる。


ふん、と自分ではない誰かが私の鼻を鳴らす。

もうやめて、という声が芽生え、次から次へと湧き出す感情にたちまち飲み込まれていく。

氷みたいに冷たくて、炎みたいに熱い感情が胸の中で真っ黒になって渦巻いている。


「そんなのわかりたくもないわね。あんたこそ、何がわかってるっていうの?私情で甘く許しているのかもしれないけど、その4番と天使アンヘルシリーズたちのせいで、いったいどのくらいの被害が、死人がでたかを。愛する子供を失い途方にくれる親。まだ恋することさえ知らずに苦しみ死んでいった少女・少年。身寄りのない、それでも親の姿を探す小さな子供・・・・・」

フィアの顔が蒼白を通り越すほど青ざめる。

やたら饒舌じょうぜつになっていく口は、もはや私自身では閉じれなくなってしまっていた。


誰か、誰か止めて。

私はこれ以上この娘を傷つけたくない!

これ以上嫌な女になりたくない!

誰か―――――――――!








「君が、4−2番フィアーなのかい?」




いきなり双子の男の方に名前を呼ばれて、勝手に卑屈な笑みを浮かべていた口元が元に戻る。
背中を濡らす汗が背筋を伝い、肌を粟立たせ、頭を冷やした。
「・・・・・あんたは?」
ようやく止まったという安堵と動揺を押し隠して、言う。
「僕はこの子の兄、天樹真昼。こっちが姉の月夜。この人が・・・まあ知り合いみたいなヴィドさん」
「おい」
「みんな、フィアを大事に思う友達だ。特にこの子、錬はね。で、質問の答えは?」
男の態度は冷静そのものだったが、本能的に、この男が内心ではかなり怒っていることが分かった。
「・・・・・正解よ。よく知ってるわね?」

「そんなことより、聞きたいことがある」
錬と呼ばれた男の子が、敵愾心丸出しで聞いてきた。
「『ベルリン輸送艦隊全滅事件』。あれをやったのは、お前か?」
「・・・正解」

暴走する感情が急速に冷えていき、代わりに焦りに似た感情が表れる。

私を知っている。多分、この口調だと<飛燕>も知っているに違いない。
おそらく、神戸の残骸に残ったデータディスクでも解析したのだろう。


でも、それ以上に私を凍りつかせたのは、次の言葉だった。







「それは――――――輸送艦隊の運んでいた荷物が、『天使』だって知っていてやったのか?












「――――――――――――!!!」
心臓を射抜かれ、握り潰された感じがした。




「やっぱり・・・・・当たってたのね」
双子の女のほうが呟いた。

なぜ、そこまで知られている?

こいつら、侮れない。

どうやらフィアは、いい仲間を持ったようだ。

まださっきの感情が収まりきれていないのか、自然とフィアを睨み付けてしまった。

私が『天使』を殺したとだけ知られているこの状況でそんなことをしたら、絶対誤解されるってわかっているのに。

「――――――――させない!!」

案の定、誤解したらしい男の子が、私とフィアの間に割って出る。明らかに激情に駆られた男の子は、どうやらI−ブレインの反応から言って魔法士。もしも<騎士>だとしたら、これだけの距離で攻撃されたらろくな抵抗ができない。

悟られないように、後ずさりして距離をとる。
このまま、逃げれるようなら逃げたい。でも、誤解されたままの中途半端な真似もしたくはない。
なんとか、穏便にことを終わらせないだろうか――――
私の迷いを察したのか、男の子が叫んだ。

よりによって、私の気持ちがかつてないほど不安定なこのときに。



一番、頭にくる台詞を。



「どうして姉妹なのに殺すんだよ!?どうして殺しちゃったんだよ!?助けを求めていたのかもしれないじゃないか!フィアにだって、もうお母さんがいるんだぞ!家族がいるんだ!お前になんかわからないだろうけど――――――――!!!




男の子が言い終わるか終わらないかって時には、もう身体が勝手に動き出していた。
また、自分が抑えられない――――――――









    |    |    |    |    |    |    |  


とんでもなく速かった。
お世辞でもなんでもなく、だ。
相手はフィアと同じ『天使』。だから、他者は絶対に攻撃できないと油断してしまっていた。
とても簡単なことじゃないか。
見逃していた自分に腹が立ってくる。
生身の身体を鍛えれば、『天使』だろうが誰だろうが、闘えるじゃないか。

それこそ、訓練すれば、銃だって扱えるくらいに―――――――




ゴリ、と額に黒く冷たい銃口が突きつけられた。
I−ブレインが緊急回避を呼びかけて<身体能力増強ラグランジュ>を慌てて発動したが、その時でさえ油断していた。
温厚なフィアの姿に見慣れていたせいかもしれない。
「さっきからごちゃごちゃと五月蝿うるさい、この糞チビ。お前こそ、いったい私の何が分かるっていうの?何が・・・・・・・!!」

これほど凄絶な感情をぶつけられたのは、人生で初めてかもしれない。
腰が抜けるか抜けないかのところを行ったり来たりしている感じだ。
正直に、怖い。
身体能力増強ラグランジュ>を使っている今、例え引き金を引かれてもギリギリ避けられるはずだ。
だから、絶対的優位はこちらにあるはずなのに。

「く・・・!」

なのに、僕は完全に気迫負けしてしまっていた。
殺気、と言ってもいい。視線が僕の目玉を刺してくる。
刺す、というのはもはや比喩などではなく、僕の脳は確かに物理的な感触を持つ何かが自分の両目を串刺しになるのを知覚していた。

僕のどの部分のセリフが気に触ったのか。
まあ、謝ったところで、青筋を浮かべるフィアそっくりのこの娘は、許してくれそうにもないが・・・・・。



銃を突きつけられても、こうやってある程度の平常心を保っていられるのも、ひとえに“VS<大戦の英雄>”、“VS<暴走マザーコア>”、“VS<世界最高の人形使い>”、“VS<hunterpigeon>”、“VS<世界樹>”といった究極の戦いによって培われた、一種の悟りのおかげだろう。
感謝の気持ちで胸がいっぱいだが、とりあえず今はそんな状況ではない。

気圧されている。
精神的なものではなく、本当に物理的な何かに手足を縛られているみたいだ。
1秒が1分に感じる。
その可愛い顔にはまったく似合わない、冷たく、鋭く、獲物を狙う蛇のような眼つき。
傍から見れば、僕は今まさしく“蛇ににらまれた蛙”状態だろう。
よりによってフィアの目の前で、しかもフィアにそっくりな少女に、だ。
我ながら情けない。後でフィアにする言い訳を考えておかなくては。
もっとも、生きていられればの話だが・・・・・。






――――――あれ?


ふと、射殺すような碧眼がさっきと微妙に違っている事に気付いた。
あいも変わらずこちらをえぐるような目つきに違いはなかったが、その視線が、まるでこちらを見ているようで誰か別の獲物を見ているような感じになっっていた。

油断してくれたのか、と一瞬だけ安堵し、腰のナイフに手を伸ばしかけたが、僕の考えはまったく違った。
直感の方が正しかったらしい。

フィアそっくりの少女の顔が、鋭い視線のまま、世にも恐ろしい凄惨な笑みを浮かべる。

その真の目線の先には誰がいるのか。

僕は、知っている気がした。








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『<飛燕>より【同調通信】あり。通信を許可します』
『フィアー。お取り込みのところ申し訳ありませんが、緊急事態です。すばやく帰艦してください』
『どうしたの?見つかった?』
唐突なI−ブレインの報告に、灼熱状態だった頭がさぁっと冷めていくのがわかった。
I−ブレインへの直接通信に、目の前の、キレて銃を突きつけてしまった男の子に悟られないように頭の中で答える。
『はい。“あちら様・・・・”はずいぶんお怒りのようですね。船速およそ時速1万9000キロでこちらへまっすぐ接近してきます』

・・・・・時速1万9000キロ?

この世界でそんな並外れたスピードを叩き出せる艦は、私たちと、“あの艦・・・”だけ。

自然に、口元が緩んでしまう。
『いつか闘ってみたいとは思っていたけど、まさかあっちから来てくれるなんて。サービスのいい鳩さん・・・じゃない?』
『“鳩さん”は“燕さん”と早く喧嘩してみたいそうですね』
『すぐ行く。機動開始。“全開機動状態フルスロットルモード”で待機』
『了解』




さっさと銃をしまい、足元に投げ出していたダンボールを男の子に手渡す。
男の子――――そう、たしか名前は、
だったかしら?許してあげるから、これ持ってて」
「へ?」
マンガのような間抜けな声を出す論(すでに確定)は放って、その隣に立ち尽くすフィアをちらりと視界に入れ、私は<飛燕>を隠してある“町”の隅の雪山地帯へと駆け出した。
後ろから何かを叫ぶ声が聞こえたが、今はそんなのに構っている暇はなかった。
なぜなら、もう私の頭のすぐ上に、“鳩さん”が来ていたからだ。

うずうずする!

どきどきする!

やっと本気で闘える!

私の力を確かめられる!




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「僕の名前は錬だ!!論は画龍点せー異様の小説に出てくるキャラだ〜〜〜!!聞いてんのか〜〜〜!?」
錬の叫びは、誰に聞かれることもなく冷たい空気に絡め取られ、消えてしまった。
「またかよ!?」
「錬さん!あれ・・・・・!!」
フィアが空を指差した。錬はその指の先を憮然とした表情で見て、瞬時に自分の直感の鋭さに感心した。
住民たちの視線の先。少女が向かった反対方向の空に、全長150メートルの船体全てを真紅に染めた、世界で3本の指に入る雲上戦闘艦<hunterpigeon>が音も立てずに静止したのだった。







    *    *    *    *    *    *    *  
『特殊な重力操作の痕跡あり。比較的新しいですね。どうやらこの辺りにいると考えてよさそうです、ヘイズ
「多分、この辺りのどこかに光学迷彩で隠れてやがんだ。ったく。どこの誰だか知らねえが、俺をはめるとはいい度胸してるな。
ハリー、索敵有効範囲を半径1キロにまで縮小。精度をギリギリまで上げろ。名前くらい聞いてやる」
『名前を聞いた後は?』
「問答無用で沈めてやる」
『賢明な判断ですね。<世界樹>事件の後に<hunterpigeon>も大幅改修して性能も幾分か上がりましたから、腕試しにもなるでしょう。サーチを開始しま―――――――
熱源感知。回避開始』
「なにっ!?」
<hunterpigeon>が艦尾を持ち上げるようにして真正面から放たれたビームを自動回避。ギリギリのところをかすった真紅の耐熱塗装が、一瞬で3億度以上にまで達した高熱に放熱機構が追いつかず何層か剥がれ落ちる。
『くそっ!ハリー!』
『確認しました。前方のダイヤモンドダストに強力な重力反応と熱源反応を感知』
<hunterpigeon>から見て正面で、雪が蒸発し再結晶化して出来たダイヤモンドダストが舞う中、唐突に、大気をビリビリと振動させ純白の景色を突き破りながら、黒く鋭い艦が現れた。
「ああ――――はっきり見えるぜ、ハリー」
ヘイズは、モニターに映る敵艦をまっすぐに見据えて、懐から有機コードを取り出しながら心の中で呟いた。

苦労しそうだな、と。




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『さすがですね。インパルス砲の発射時特有の大きな熱量を瞬時に感知し、即座に回避行動を取りました』
「・・・ねえ、私たち、勝てると思う?」
少女が少しばかり不安そうに聞くのに対し、抑揚の効いた人口音声は軽い口調で答える。
『人間を食べるような不健康極まりない“人食い鳩”は、身軽な“燕”には到底追いつけませんよ』
少女――――フィアーが、クスリと微笑んだ。
「オッケー。じゃあ・・・ブッ飛ばしてやる!」

『了解。
戦闘行動を開始。
行動主権を<飛燕>から<フィアー>に移行。
全戦闘システム系再チェック。
・・・全返信リザルトコードを受信完了。異常なしオールグリーン
光学迷彩を解除。
<応龍98式> 機 動 開 始 スタートアップ
 歪 空 間 ディストーションシステム>起 動 準 備スタンドバイ
 歪 空 間 ディストーションシステム> 機 動 開 始 スタートアップ。』
<ディストーション>展開を確認。
カウントダウン・・・・・・・開始。
タイムリミット・・・・・・・まで残り9分56秒23


「フィアー、了解。・・・・・こんなところでやられるくらいなら、私はやつら・・・には勝てない!みんなの敵も取れない!復讐の後にはなんとかっていう理想はいらない!!私は――――――――勝ちたい!!

黒色と金の模様の刻まれた艦、<雲戦闘艦・飛燕>が、眼前の<hunterpigeon>に対峙するように一瞬だけ空中で静止。

「いっけぇえええええええぇぇぇぇええええ!!!」


全身を声にして叫ぶ。
と同時に船体に走る金色の刻線が眩しいほどの光を放ち、次の瞬間、そこに時速20000キロ、全長120メートルの巨大な弾丸が生まれた――――――――














<TO BE  CONTINUED>






― NEXT STAGE ―


<blackbard>
黒妖鳥
VS
<hunterpigeon>
人食い鳩






好ご期待・・・・・☆










-------【 補 足 説 明 】-------



その1≪統合槽≫
艦と魔法士のI−ブレインを直接繋げるもの。有機コードよりも動作効率が比較的上。
F/A−307やウィリアム・シェイクスピアなどにも採用されている。衣服は情報伝達の際に支障になるので全裸でないといけない(サービスも含めて)。


その2≪光学拡散素粒子≫
金属粒子を強力に帯電させ散布するもの。いわゆる『対光学防御兵器』。インパルス砲などのビームを屈折・拡散させる。
対光学兵器としては格段の性能を誇るが、実体弾には微塵の効果もなく、風によって次第に流されてしまうという短所がある。
また、使用回数にも限界がある為、もっぱら敵艦に囲まれた時などの緊急時に使用する(劇中、ヨルグ艦長は相手が強敵の<hunterpigeon>だと考えたので使用した)。


その3≪迎撃イージスシステム≫
20世紀後半に考案されたミサイル迎撃ミサイルシステム。劇中の22世紀では砲弾も迎撃可能。


その4≪自動懸吊装置≫
元々は潜水艦の装備していた安全姿勢を自動制御する装置。航空艦にも搭載されており、マニュアルで姿勢制御を行うのは限りなく不可能に近い。


その5≪4 − 2 番ヌマー・フィア・アインツ
(ドイツ語では、『ヌマー・フィア・アインツ』と読む)。
通称(というよりあだ名・・・に近い)『フィアー』。
天使アンヘル>シリーズの後継型ではなく、もっとも出来の良かった<4番フィア>のクローンで、他にも2体、合計3体が新たにベルリンで製造され、1体は<賢人会議>に売り渡され、もう1体も同組織に渡される予定だった。
<飛燕>の開発に伴い、シティ・神戸の軍研究部が極秘裏に購入した。
“同調”によって支配する力は強いが、記憶領域が<4番フィア>に比べて小さく、マザーコアには不向きとされる。
ベルリンではマザーコアの開発に関わった人間達(研究員・警備員・護衛兵)と親しい関係になり、神戸では<七瀬雪>の死に疑問を感じていた者たちに可愛がられ様々なことを学んでいたが、全員がある人物に殺されてしまい、精神的に不安定な状態が続く。
<賢人会議>の悪事を知り、脳髄だけにされた姉を楽にするためにも自らの力を試したがっている。
フィアとは性格が正反対で、非常に好戦的な性格。弱気を助け強気を挫きまくるタイプ。
主にロック・ミュージックを好み、ジーン・Dの『パーフェクト・ワールド』を怠け者の歌だと言ってはばからない。


その6≪飛燕≫
神戸で開発されていた、雲戦闘艦の 通 称 名 パーソナルコード
正式名称は<特一級強襲用格闘高速雲中戦闘艦 ALCS(Angel Link Combat System)系列一番艦 ALCS−01>というずいぶん長ったらしい名前。
世界初の<簡易マザーシステム>搭載艦であり、その永久機関を利用して極めて得意な戦闘方法をコンセプトに開発されている。
 歪 空 間 ディストーションシステム>などといった特異な技術の結晶体であり、その戦闘能力・防御能力は『無敵』の域に達している。
また、飛燕は隠密活動も行えるように設計されているので居住設備を施されており、居住性は高い。

しかし、一つ致命的な欠陥があるのだが・・・・・。
サポート・AIは<飛燕>。<ハリー>のように漫画顔は表示されず、声のみで意思表示する。割と軽い性格にプログラムされている。
(作者的なコンセプトは忍者。やっぱり日本と言えば忍者でしょ!という感じで。この<補足説明>であげた機能以外にも様々な装備が隠されています。さらに、気になっている方もいるとは思いますが、<雲“中”戦闘艦>の意味は次回に取っておきましょう。見りゃわかる?それもそうですよね・・・)


その7≪光学迷彩≫
光を屈折させ姿を隠す隠密兵器。精度が荒いと景色に揺らぎが生じてしまいかえって目立ってしまう。
もっぱら撃墜されるのは中古や旧型を使用したマヌケである。
(うるせぇっ!:ヘイズ談)


その8≪応龍98式≫
情報改変を介さずに航空する、神戸独特の装置(船体表面の金色の刻線がそれ)。人為的に任意の複数方向に磁石の反発状態を作り出すシステム。片方の極を自機とし、もう片方の極を<力場>として発生させることで飛行する。
旋回能力・飛行速度は驚異的な値を叩き出す。
超大規模な電力エネルギーを必要とする為、理論証明しかなされていなかったが、永久機関である<マザーシステム>の出現により研究開発が再開され、現在に至る。


その9≪ 歪 空 間 ディストーションシステム≫
機体全面に次元的に傾斜させたフィールドを形成させるシステム。ダメージを次元の側から捻じ曲げて本体装甲に行き届く前に屈折させて消滅させる。ほとんど全ての電磁波を通さない。
同じく超大規模な電力エネルギーを必要とするetc・・・・・。


その10≪ギド≫
ヴィドの息子。いろいろと謎。ジャイ○ンを想像して頂けるといい。今回初登場となる。


その11≪セリシア & 論≫
言わずと知れた画龍点せ〜異様のキャラ。あの方にはいろいろとお世話になっているので、ちょっとしたお礼も含めて今回名前だけだけど登場。迷惑だったらごめんなさい(←だったら最初から了承とっとけよ)





<作者様コメント>
わ〜〜い。
やっと前半が完成した!
そして私の人生も終焉を迎えた・・・・・(泣)。
レクイエム様や画龍点せー異様もおっしゃってましたが、
テスト前になると妙に書き上げたくなるんですよね・・・。
これが有名な現実逃避のようです(泣)。
この小説はまだ続きます。
(ちなみに捕捉しておきますと、劇中は4巻の
続きということになっております。)
構成や添削を、未熟なりに
頑張ってきましたが、やっぱりいろいろと
失敗があると思います・・・・・我慢して(爆)
上記のお二方を始め、まだまだ他の方々の
すんばらしい作品には追いつけませんが、
頑張って、皆様に読んで楽しかったと
思ってもらえるように頑張ります!
とてもよい刺激をくださる三枝先生並びに
他の作者様方に感謝!
同盟管理者で創設者でもある咲様に感謝!
そしてこの小説を故障した私のメールシステムの代わりに
同盟に送ってくれた友人に感謝!!
そして最後に、
「かったり〜〜な〜〜」とか思いながらも
最後まで読んでくださったあなたに大感謝!!

P・S(作中、かじっただけのドイツ語を
使っております。間違いに気付かれた方は、
黙殺していただけると助かります・・・・・テヘ←死)

<作者様サイト>
『NOTHING』

◆とじる◆